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ショッピングセンターは減っているのに売上は増える――全国3,013施設の変化を読む

郊外のショッピングセンターと住宅地、遠景の駅周辺商業施設を描いたイラスト。

ショッピングセンターは減っているのに売上は増える――全国3,013施設の変化を読む

全国のショッピングセンター(SC)は、施設数が増え続ける段階を過ぎている。旧基準で比較できる2018~2024年には3,220施設から3,037施設へ減り、最新の2025年末の集計は新基準で3,013施設だった。

一方、2025年の年間売上高は推計33兆1,238億円で、協会公表の前年比は2.7%増。施設数の減少と、売上金額の増加が同時に進んでいる。ただし、この数字だけで郊外の買い物客が増えたとは判断できない。

この記事で分かることは、次の3点だ。

  • 施設数はいつから減り、基準変更で比較がどう変わるのか。
  • 売上の回復は、施設の増加、既存施設の成長、値上げのどれを含むのか。
  • 「周辺地域」の統計から、郊外型消費をどこまで読み取れるのか。
目次

使用データは全国のSC集計と販売調査

施設数と売上高は、同じSC業界を捉える指標でも、集計方法と時点が異なる。

本稿は日本ショッピングセンター協会の公開資料を使用する。政府の公的統計ではなく、業界団体が施設情報を集計し、販売調査を行った一次資料だ。確認時点は2026年10月8日である。

  • 施設数・店舗面積:2026年6月1日発行の『SC白書2026』に対応する全国概況。対象は2025年末の全国SC。
  • 長期推移:2025年12月16日公表の冬季定例記者懇談会資料に掲載された、2024年までの年別データ。
  • 年間売上:2026年2月25日公表の2025年販売統計。暦年の売上を比較し、調査サンプルは483施設。
  • 直近の動き:2026年9月25日公表の2026年8月販売統計。年間値とは分けて扱う。

SCは、商業・サービス施設を一体として計画・管理する施設の集合体である。協会の現行基準には、小売業の店舗面積1,000㎡以上、テナント10店舗以上、共同活動の実施などの条件がある。大型の郊外モールだけを数える統計ではない。日本ショッピングセンター協会「SCの定義/用語解説」

この対象範囲が重要だ。駅周辺の施設も含む全国SCの売上を、そのまま車で訪れる郊外モールの売上と置き換えることはできない。

施設数は2018年を境に減少へ転じた

同じ旧基準で追える期間を見ると、SCの総数は2018年をピークに減っている。

以下は各年末の全国施設数だ。2025年は基準が変わっているため、表を分けた。

年末SC数集計基準
2010年3,050施設旧基準
2015年3,195施設旧基準
2018年3,220施設旧基準
2020年3,195施設旧基準
2022年3,133施設旧基準
2024年3,037施設旧基準

2010~2018年には170施設増えたが、2018~2024年には183施設、約5.7%減った。増加期と減少期を一緒に平均すると、この転換が見えにくくなる。

2025年との比較には基準をそろえる

協会は2025年1月1日にSC取扱い基準を改定した。冬季資料には、2024年末の施設数を新基準で数え直すと3,065施設になることも示されている。

  • 2024年末・旧基準:3,037施設
  • 2024年末・新基準を適用:3,065施設
  • 2025年末・新基準の最新集計:3,013施設

新基準を適用した2024年の値と比べると、2025年は52施設、約1.7%少ない。旧基準の3,037施設から単純に差し引いた「24施設減」では、比較条件がそろわない。協会「2025年度冬季定例記者懇談会資料」、協会「全国のSC数・概況」

また、総数の差はそのまま閉店件数ではない。開業、閉店、対象施設の見直しなどを含む集計結果であり、閉店数を知るには増減の内訳が必要になる。

売上は回復しているが、買った量の増加とは限らない

売上金額の回復は確認できるが、そのすべてを消費量の回復と読むことはできない。

税抜きで公表されている全国SCの年間推計売上高を、主要年で並べると次のようになる。

暦年年間推計売上高・税抜き
2019年31兆9,694億円
2020年24兆9,016億円
2022年28兆897億円
2024年32兆1,254億円
2025年33兆1,238億円

2020年の落ち込みから売上金額は回復し、2024年には2019年の水準を上回った。ただし、2018年以前は税込み、2019年以降は税抜きである。長期比較ではこの境目をまたぐ単純な増減率を避けたい。協会「2025年度冬季定例記者懇談会資料」

2025年の「2.7%増」は補正後の比較

2025年の売上推計では、基準改定に合わせて2024年の売上推計を新基準で補正している。そのため、上表の2024年公表値と2025年公表値から直接計算した増加率は、協会の公表する2.7%と一致しない。

売上の水準を並べることと、同じ条件で伸び率を計算することは別の作業だ。この補正を無視すると、施設数だけでなく売上の増減も読み違える。協会「SC販売統計調査報告2025年・全表」

既存施設の売上も増えている

2025年の既存SC売上高は前年比3.5%増だった。全SCベースの推計売上高とは別の指標で、既存施設の販売動向を比較している。

協会は、改装、テナントの入れ替え、販促やイベントなどが売上を支えたと報告している。同時に、食品スーパーでは商品の価格上昇が売上増につながったとしている。協会「SC販売統計調査報告2025年年間」

例えば、買う数量が変わらなくても価格が上がれば売上は増える。飲食の利用や商品の組み合わせが変わっても客単価は動く。したがって、この統計から来館者数や購入数量の増加率を逆算することはできない。

物価調整にも注意が要る。食品、衣料、飲食、サービスを含むSC売上に、単一の物価指数を当てると品目構成の違いが残る。本稿の売上は名目金額であり、実質的な消費量の増減は算出していない。

周辺地域は伸びているが、中心地域の伸びが上回る

郊外型消費に近い「周辺地域」の既存SCも売上を伸ばしたが、2025年の伸び率は中心地域より低かった。

年間販売調査の立地別結果は、次の通りだ。

  • 中心地域:前年比4.6%増
  • 周辺地域:前年比2.9%増
  • 全国総合:前年比3.5%増

中心地域と周辺地域の差は1.7ポイント。協会は周辺地域について、広域から集客する大型SCや観光地周辺の施設が好調だった一方、競合店や休日日数にも左右されたと説明している。協会「SC販売統計調査報告2025年年間」

これは「郊外は一律に低迷している」という見方を修正する材料になる。しかし、全国の売上回復を「郊外への消費移動」と説明する根拠にはならない。中心地域も、それ以上の率で伸びているからだ。

「周辺地域」の約85%を郊外と呼べるか

2025年末のSCは、中心地域439施設、周辺地域2,574施設。周辺地域が全体の約85.4%を占める。

ただし、中心地域は「人口15万人以上の都市で、商業機能が集積した中心市街地」、周辺地域はそれ以外という分類だ。小都市の中心部も周辺地域に入り得るし、大都市内にも周辺地域のSCがある。協会「全国のSC数・概況」

周辺地域の比率は、自動車利用者の比率でも、郊外の売上シェアでもない。車中心の買い物が増えたかを検証するには、施設別の交通手段、商圏、来館者数を追加して見る必要がある。

新規開業の少なさと施設の規模を分けて見る

開業件数が減っても、新しく加わる売場面積が同じ割合で減るとは限らない。

全国概況による新規オープンSC数は、2015年が60施設、2024年が38施設、2025年が18施設。2025年の開業施設の平均店舗面積は22,935㎡で、2024年の11,094㎡を大きく上回った。なお、2024年までと2025年では取扱い基準が異なる。協会「全国のSC数・概況」

件数が少ない年に大型施設が加われば、平均面積は上がる。これは、新しく開いた施設の構成を示す数字であって、全国の既存SCが一斉に大型化したことを示す数字ではない。

生活者にとっても、施設の数と便利さは一致しない。一つの大きな施設に店が集まれば、一度の訪問で用事を済ませやすくなる可能性がある。一方、身近な施設がなくなれば移動先が遠くなる場合もある。どちらが起きたかは、全国総数だけでは決まらない。

最新月も売上増、ただし年間の結論はまだ出せない

2026年8月も既存SC売上は前年を上回ったが、単月の伸びを年間成長率として扱うことはできない。

2026年10月8日時点で確認した最新月の公表値は、8月の全国総合が前年同月比2.8%増。中心地域は4.6%増、周辺地域は2.1%増だった。協会は家族連れや観光客の来館増を報告する一方、一部施設では値上げが客単価を押し上げたとしている。協会「SC販売統計調査報告2026年8月」

売上増の中身を考える際は、集客と価格の両方を見たい。夏休みや天候に左右される1か月の結果だけで、通年の消費行動が変わったとは言えない。

また、既存SCの調査は全施設の悉皆調査ではない。2025年年間の483施設は全国総数の一部であり、調査対象の平均的な動きと、近所の一施設の状況は分けて考える必要がある。

地域の買い物環境は「何施設あるか」の先を見る

全国では施設数の減少と売上増が併存しており、地域の便利さを判断するには売場の中身と移動条件が必要になる。

売上が伸びる施設では、改装や店の入れ替えが利用を支える可能性がある。逆に、売上増が主に値上げによるものなら、利用者が買える量や施設の収益が同じように改善するとは限らない。売上から利益を判断するには、人件費や維持費なども必要だ。

今後の分岐を見極めるなら、次の組み合わせを確認したい。

  • 売上と来館者数がともに増える:利用の広がりを確かめやすい。地域住民と観光客の内訳も見る。
  • 売上だけ増え、来館者数は横ばい:客単価、値上げ、購入品目の変化を確認する。
  • 施設数は減るが売場面積は維持される:残る施設への集約が起きているか、所在地と増減内訳を調べる。
  • 身近な施設が閉まり、別の場所に大型施設が開く:全国の売上より、自宅からの距離や交通手段が生活への変化を示す。

次に見るべきなのは、新しいモールの開業件数だけではない。食品を買える売場がどこに残り、日常の用事をどれだけまとめて済ませられ、そこへどう移動できるか。施設数と売上高は、その確認を始めるための数字である。

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