65歳定年はまだ約4社に1社――「65歳まで働ける」との違いを企業データで読む
65歳を定年にする企業は、2025年時点で27.2%。定年がさらに高い企業や定年制を廃止した企業まで含めると34.9%ですが、60歳定年はなお62.2%を占めます。
一方、65歳までの雇用を確保する措置は99.9%の企業が実施しています。広く普及したのは「65歳まで働き続ける制度」であり、定年そのものを65歳にする仕組みは、まだ多数派ではありません。 この違いが、60歳前後の契約や働き方を考える際の出発点になります。厚生労働省の2025年集計で確認できます。
この記事で分かることは、次の3点です。
- 65歳定年と、定年後の継続雇用は何が違うのか。
- 定年引上げと継続雇用の割合が、近年どう変わったのか。
- 企業の制度導入率から、個人の働き方について何が分かり、何が分からないのか。
使用データは全国の企業報告――働く人の割合とは異なる
今回の数字は、従業員の人数ではなく、制度を設けた企業の数を基準にしています。
中心に使うのは、厚生労働省「令和7年 高年齢者雇用状況等報告」です。2026年10月8日時点で確認できる最新の全国集計は、2025年6月1日の状況をまとめ、2025年12月19日に公表したものです。
集計条件は次のとおりです。
- 対象地域: 全国。
- 対象企業: 常時雇用する労働者が21人以上の237,739社。
- 企業規模: 21~300人を中小企業、301人以上を大企業と分類。
- 比較期間: 主に2023~2025年の各年6月1日時点。
2025年の対象企業のうち、中小企業は220,466社、大企業は17,273社です。制度の広がりを見るための集計ですが、20人以下の企業は含まれません。また、少人数の企業も大企業も1社として数えるため、34.9%という企業割合を「労働者の34.9%が65歳以上定年の職場にいる」と読み替えることはできません。
65歳定年27.2%と雇用確保99.9%は、別の問いへの答え
定年年齢の数字は「いつ定年を迎えるか」、雇用確保の数字は「定年を迎えても働き続ける制度があるか」を表しています。
定年年齢では、60歳がなお最多
2025年の定年制の内訳は、報告した全企業を分母にすると次のようになります。
- 60歳定年:62.2%。
- 61~64歳定年:2.9%。
- 65歳定年:27.2%。
- 66~69歳定年:1.2%。
- 70歳以上定年:2.5%。
- 定年制の廃止:3.9%。
「65歳以上定年企業(定年制の廃止を含む)」の34.9%は、65歳定年だけの割合ではありません。定年が66歳以上の企業と、年齢による定年を設けない企業も合わせた数字です。内訳は四捨五入されているため、表示された割合を足した値と合計が一致しない場合があります。2025年発表資料
継続雇用は、定年後の働き口をつなぐ制度
定年が65歳未満の企業は、65歳までの雇用を確保するため、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止のいずれかを実施する必要があります。
継続雇用制度には再雇用などが含まれ、定年後も本人の希望に応じて雇用を続けます。継続雇用先をグループ会社とすることも認められています。したがって、60歳定年を維持しながら65歳までの雇用を確保することは、制度上両立します。厚生労働省「高年齢者の雇用」
ここがポイント: 「65歳まで働ける」と「65歳で定年になる」は別です。就業規則の定年年齢と、定年後の継続雇用の条件を分けて読む必要があります。
働く側にとって、この違いは契約を確認するタイミングに関わります。定年を迎えて再雇用される場合と、定年年齢自体が延びる場合では、雇用のつながり方が異なります。ただし、制度名だけで賃金や仕事内容が維持されると判断することはできません。
2023~2025年は、継続雇用中心から定年引上げへ少しずつ動いた
近年の変化は、雇用確保措置の普及率よりも、その中身に表れています。
2023年、2024年、2025年の雇用確保措置の実施率は、いずれも99.9%でした。一方、実施済み企業がどの方法で対応したかを見ると、継続雇用制度の割合は下がり、定年引上げの割合は上がっています。
| 指標 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 65歳以上定年・定年廃止の企業割合 | 30.8% | 32.6% | 34.9% |
| 定年引上げによる雇用確保 | 26.9% | 28.7% | 31.0% |
| 継続雇用制度による雇用確保 | 69.2% | 67.4% | 65.1% |
各年6月1日時点、全国の常用労働者21人以上の報告企業が対象です。1行目の分母は報告した全企業、2・3行目の分母は雇用確保措置を実施済みの企業です。出典は厚生労働省の2023年集計、2024年集計、2025年集計です。
65歳以上定年・定年廃止の割合は2年間で4.1ポイント上昇しました。同じ期間に、継続雇用制度による対応は4.1ポイント低下しています。65歳までの雇用をつなぐ方法として、定年そのものを延ばす選択が広がっていることが読み取れます。
ただし、各年の報告企業は完全に同じではありません。この集計だけでは、どの企業が継続雇用から定年引上げに切り替えたかまでは追えません。割合の変化を、そのまま制度を変更した企業数に換算するのは避けるべきです。
また、2025年でも継続雇用制度による対応は65.1%です。方向は変わりつつあっても、定年後の雇用をつなぐ方法が依然として中心であることは変わっていません。
2025年4月の変更は「一律65歳定年」ではない
2025年4月に全面的に義務付けられたのは、希望者全員の65歳までの雇用確保です。
以前から、継続雇用制度は原則として希望者全員を対象にする仕組みでした。ただし、一定の企業では、労使協定による対象者基準を年齢に応じて適用できる経過措置が残っていました。その措置が2025年3月31日に終了しています。2025年発表資料の制度説明
この変更によって、すべての企業の定年が65歳に統一されたわけではありません。企業には、継続雇用制度で対応する選択肢もあります。
導入率が横ばいでも、対象者の条件は変わる
実施率が2024年も2025年も99.9%だったため、数字だけを見ると制度に変化がなかったように見えます。しかし、導入の有無と、誰を対象にするかは別の項目です。
これは統計を読む際の注意点です。「制度あり」という集計がほぼ上限に達すると、その後の変化は対象者の範囲や契約条件などに現れます。導入率だけでは捉えきれません。
また、2025年の定年引上げの増加を、経過措置の終了だけが引き起こしたと断定することもできません。この報告は制度の実施状況を示すもので、企業が引上げを選んだ理由を特定するためのデータではないからです。
65歳の先は別の段階――70歳までの措置は34.8%
65歳までの雇用確保がほぼ普及した一方、70歳までの就業機会を確保する措置は約3社に1社にとどまります。
2025年の実施率は34.8%で、前年の31.9%から2.9ポイント上昇しました。企業規模別では次の差があります。
- 中小企業(21~300人):35.2%。
- 大企業(301人以上):29.5%。
- 両者の差:5.7ポイント。
大企業の実施率が必ず高いわけではありません。ただし、この比較も企業数を基準にしており、働く人が制度の対象になる割合を表したものではありません。2025年集計
34.9%と34.8%は、近い数字でも意味が違う
65歳以上定年・定年廃止の34.9%と、70歳までの就業確保措置の34.8%は、同じ企業群を示す数字ではありません。
前者は定年制の状態、後者は70歳までの就業機会を確保する措置の有無を数えています。60歳定年でも、継続雇用制度によって70歳まで対応する企業はあり得ます。反対に、65歳定年であることだけでは、70歳までの制度があるとは分かりません。
さらに、70歳までの措置は努力義務であり、雇用に加えて業務委託などの方法も含みます。65歳までの雇用確保と同じ条件で理解すると、契約の違いを見落とします。厚生労働省の制度解説
制度の普及率から、賃金や働きやすさまでは分からない
企業データが示すのは制度の入口であり、定年後の生活を左右する条件のすべてではありません。
例えば、継続雇用制度がある企業でも、勤務時間や職務、契約期間は確認が必要です。定年を延ばした企業でも、年齢に応じた賃金制度や役職の扱いまで、この割合から判断することはできません。
今回の数字には、次の限界があります。
- 企業割合と人数割合の違い: 1社ごとの制度を数えており、対象労働者数で重み付けしていない。
- 集計範囲の限界: 常用労働者20人以下の企業を含まない。
- 制度と実績の違い: 制度があることと、本人が利用して働き続けることは別。
- 待遇情報の不足: ここで使った指標だけでは、賃金、勤務時間、仕事内容の変化を比較できない。
- 時点の違い: 2025年6月1日の状況であり、2026年の職場の状態を直接示すものではない。
年次比較でも、同じ名称の指標と同じ分母を使う必要があります。「定年を65歳にした企業」「65歳以上定年の企業」「65歳までの雇用確保措置を実施した企業」は、互いに置き換えられません。
職場では「定年年齢」と「その後の条件」をセットで確認する
生活への意味を確かめるには、全国の導入率を見たうえで、勤務先の制度を具体的な条件に分けて読むことが役立ちます。
確認する項目は、次のように整理できます。
- 定年年齢は何歳か。引上げが決まっている場合、いつから誰に適用されるか。
- 定年後に継続雇用する場合、雇用先、契約期間、更新条件はどうなるか。
- 賃金、賞与、勤務日数、仕事内容はどう変わるか。
- 65歳以降の制度はあるか。雇用契約か、別の契約形態か。
今後の企業データでは、定年引上げの割合が伸び続けるかが一つの注目点になります。継続雇用が引き続き中心なら、定年を迎える前にその後の条件を把握する重要性は残ります。定年引上げがさらに進んでも、待遇の変化を確かめるには別の情報が必要です。
「65歳まで働ける」という説明を受けたとき、次に確認したいのは、何歳で定年を迎え、その前後で契約と待遇がどう変わるかです。27.2%と99.9%の違いは、その問いを省略できないことを示しています。
