MENU

65歳以上の夫婦だけで暮らす世帯は756万へ――39年の増加と単身世帯との違い

自宅の食卓で家計のノートを見ながら過ごす高齢夫婦のイメージ。

65歳以上の夫婦だけで暮らす世帯は756万へ――39年の増加と単身世帯との違い

夫婦とも65歳以上で、二人だけで暮らす世帯は、2025年に755万9千世帯となった。1986年の100万1千世帯から約7.6倍に増えている。ただし、2022年と比べるとほぼ横ばいで、長期の増加と足元の動きは分けて読む必要がある。

二人暮らしには、住まいや光熱費を共有できる面がある。一方、配偶者がいることだけで、家計や日常生活の支援が十分だとは判断できない。単身世帯との違いを、世帯数と家計の両方から確かめる。

  • 夫婦とも65歳以上の二人暮らしは、1986年から2025年に約656万世帯増加した。
  • 少なくとも一方が65歳以上の夫婦のみ世帯まで含めると、2025年は882万8千世帯となる。
  • 65歳以上の単独世帯は933万5千世帯。夫婦のみ世帯より多く、最近の増加も大きい。
  • 2025年の無職世帯の平均では、夫婦の消費支出は単身の約1.78倍。二人だから支出が単純に2倍になるわけではない。
目次

使用データと定義――「夫婦とも65歳以上」を中心に見る

この記事の中心は、夫婦の両方が65歳以上の二人暮らしであり、片方だけが65歳以上の世帯とは区別する。

世帯数には、厚生労働省の2025年国民生活基礎調査「世帯数と世帯人員の状況」を用いる。全国を対象とした2025年6月5日時点の推計で、結果の公表は2026年7月15日。2026年10月8日時点で確認できる最新の年次結果である。

同じ資料の中にも、似ているが範囲の違う数字がある。

  • 夫婦とも65歳以上の夫婦のみ世帯:755万9千世帯。「高齢者世帯」の内訳に掲載される。
  • 少なくとも一方が65歳以上の夫婦のみ世帯:882万8千世帯。「65歳以上の者のいる世帯」の内訳に掲載される。
  • 65歳以上の単独世帯:933万5千世帯。65歳以上の人が一人で暮らす世帯である。

国民生活基礎調査の「高齢者世帯」は、65歳以上の人だけで構成される世帯、またはそこに18歳未満の未婚者が加わる世帯を指す。ただし、その内訳の「夫婦のみ」には子どもなどが同居していないため、夫婦とも65歳以上となる。

片方が65歳未満でも含む882万8千世帯を、そのまま「夫婦とも高齢者の世帯」と呼ぶと、約127万世帯分だけ対象が広がってしまう。

家計の比較には、総務省統計局の家計調査・2025年平均結果を使う。こちらは2026年2月公表の全国の年平均で、対象を65歳以上の夫婦のみの無職世帯と、65歳以上の単身無職世帯に絞る。働いている高齢者を含む世帯数の統計とは、対象が一致しない。

39年で約7.6倍――ただし最近3年は横ばい

夫婦とも65歳以上の二人暮らしは長期で大幅に増えたが、2022年以降の数字は750万世帯前後で推移している。

次の表は、国民生活基礎調査の同じ分類を抜き出したもの。単位は万世帯で、割合ではなく世帯数を比較している。

年夫婦とも65歳以上の夫婦のみ65歳以上の単独
1986年100.1128.1
2001年325.7317.9
2010年487.6501.8
2019年693.8736.9
2022年756.2873.0
2024年749.8903.1
2025年755.9933.5

出典:国民生活基礎調査、概況表3。1986~2025年、全国。千世帯単位の公表値を万世帯に換算した。

1986年から2025年までの夫婦のみ世帯の増加は655万8千世帯、倍率は約7.6倍となる。一方、2022年から2025年は3千世帯減で、増減率は約マイナス0.04%。長期の拡大を、そのまま「現在も急増している」と言い換えることはできない。

対照的に、単独世帯は2022年から2025年に60万5千世帯、約6.9%増えた。最近の高齢者の小規模世帯の増加を読むなら、夫婦世帯と単独世帯を別々に追うことが欠かせない。

世帯数が増えても、構成割合は上がるとは限らない

高齢者世帯全体に占める夫婦のみ世帯の割合は、1986年が42.4%、2025年が43.1%。世帯数の約7.6倍という変化に比べ、割合の差は0.7ポイントにとどまる。

これは分母となる高齢者世帯全体も増えたためだ。「高齢夫婦の世帯が増えた」という事実と、「高齢者の中で夫婦暮らしがより一般的になった」という評価は、同じ意味ではない。

ここがポイント: 長期では高齢夫婦の二人暮らしが大幅に増えた。足元では横ばいで、単独世帯の増加がより目立つ。人数・世帯数・構成割合を分けると、変化の速さが見えてくる。

単身より少ない世帯数でも、暮らす人は多い

夫婦世帯と単身世帯では一世帯の人数が違うため、世帯数だけで生活者の規模を判断できない。

夫婦とも65歳以上の755万9千世帯には、単純換算で約1,512万人が暮らす。単独世帯の933万5千世帯は約934万人である。世帯数では単独の方が多くても、この二つの分類に暮らす人の数では夫婦世帯の方が多い。

行政サービスを見るときにも、この違いは重要になる。訪問や連絡の対象を考えるなら世帯数、移動や食事などを必要とする人の規模を見るなら人数が手掛かりになる。二人を一世帯として数えるからといって、二人分の支援需要が一人分になるわけではない。

一方、この人数比較だけで支援の必要量は決められない。二人がそれぞれ自立している場合と、一方がもう一方を支えている場合では、同じ一世帯でも必要なサービスが違うからだ。

家計は「単身の2倍」ではない――共有できる支出がある

無職世帯の平均では、夫婦二人の消費支出は単身の約1.78倍で、一人当たりに直すと夫婦の方が少ない。

2025年の家計調査による月平均額は次の通り。金額はその年の価格で表した名目額で、中央値ではなく平均値である。

項目(月平均・円)65歳以上の夫婦のみの無職世帯65歳以上の単身無職世帯
実収入254,395131,456
可処分所得221,544118,465
消費支出263,979148,445
収支差(黒字)−42,434−29,980

出典:総務省統計局「家計調査報告・2025年平均結果の概要」参考4、表2。全国、各対象世帯の一世帯当たり平均。公表表は年計から算出しているため、表示額の引き算と収支差に1円の差が生じる場合がある。

可処分所得は、実収入から税金や社会保険料などを差し引いた額。「黒字」はそこから消費支出を引いたもので、マイナスはその期間の所得だけでは消費支出を賄っていないことを示す。

二人で共有する費用と、人数に応じて増える費用

夫婦の消費支出26万3,979円を二人で割ると、一人当たり約13万1,990円。単身の14万8,445円より約1万6,455円、約11.1%少ない。

費目別でも、光熱・水道は夫婦が2万3,540円、単身が1万5,565円で、夫婦は単身の約1.51倍にとどまる。暖房や照明などを共有できることは、この差を説明する一つの要因として考えられる。

ただし、これは別々の世帯集団の平均比較だ。同じ人が二人暮らしから一人暮らしに変わった際の支出を測っているわけではない。住まい、男女構成、生活習慣などの違いも含むため、約11%の差をそのまま「結婚による節約効果」とは呼べない。

赤字額が大きい夫婦と、所得に対する不足が大きい単身

月の収支差は、夫婦がマイナス4万2,434円、単身がマイナス2万9,980円。金額だけなら夫婦の不足が大きい。

しかし不足額を可処分所得で割ると、夫婦は約19.2%、単身は約25.3%となる。単身の方が、所得に対する不足の割合は大きい。

ここでも評価は一つに決まらない。毎月いくら不足しているかを見るのか、毎月の所得に比べてどれくらい不足しているかを見るのかで、目立つ世帯が変わる。

なお、平均の赤字は全世帯が赤字という意味ではない。貯蓄の取り崩しなどもあり、この表だけでは資産残高や生活の持続可能性まで判断できない。平均赤字に年数を掛けて、誰にでも同じ老後資金が必要だとする計算にも限界がある。

二人暮らしの支えは、配偶者の状態で変わる

夫婦世帯を理解するには、同居者がいるかどうかに加えて、その人が何を担えるかを見る必要がある。

夫婦のみ世帯の増加は、子どもなどと同居せず暮らす高齢者が増えたことを示す。ただし、別居の子どもが近くに住んでいるのか、日常的な連絡があるのか、家事や通院を誰が支えているのかは、世帯構造の数字だけでは分からない。

二人暮らしには、日々の変化に気づく相手がいる、家事を分担できる、といった可能性がある。その一方で、支えを配偶者一人に頼っている場合は、その人の入院などで生活の段取りが変わる。これは世帯数から確認された発生率ではなく、サービスを考える際に分けておきたい条件である。

  • 二人とも日常生活を自立して送れる場合:家計や家事を共有できる余地がある。
  • 一方がもう一方を支えている場合:支える側の体調や外出の可否が、二人の暮らしに関わる。
  • 一人暮らしへ移る場合:支出が半分になるとは限らず、連絡先や家事の担い手も変わる。

単身世帯には同居者がいないが、外部の支援が十分な人もいる。夫婦世帯にも、家庭の外との接点が乏しい場合がある。「夫婦だから安心」「単身だから孤立」という分類では、実際の暮らしを取り逃がしてしまう。

数字を読む際の限界――全国平均と世帯の移行は分ける

今回の統計は全国の世帯の姿を捉えるもので、特定の夫婦の将来や地域の支援需要を直接予測するものではない。

調査方法や比較範囲について、次の点を押さえておきたい。

  • 標本調査の推計である。国民生活基礎調査は全世帯を数えた結果ではない。2025年の世帯票の集計対象は18万7,633世帯で、大規模調査と簡易調査では対象規模も異なる。小さな前年差だけで転換点を断定しない。
  • 施設入所者などは対象から除かれる。社会福祉施設の入所者や、住民登録を病院に移した長期入院者などは世帯票の対象外である。高齢者全体の居住形態を網羅した数字ではない。
  • 夫婦から単身への移行を追った調査ではない。各年の集計を比較しており、単独世帯の増加のうち何世帯が死別などによるものかは、この表からは分からない。
  • 全国平均を地域にそのまま当てはめない。交通手段、住宅、親族との距離が違う地域では、同じ二人暮らしでも生活上の条件が異なる。

調査対象と実施方法の詳細は、厚生労働省の2025年調査の概要で確認できる。

地域別に掘り下げる場合は、国勢調査との定義の違いにも注意したい。総務省統計局の統計FAQが案内する国勢調査の区分には「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯」がある。今回の「夫婦とも65歳以上」とは対象が違うため、異なる統計の数字をそのまま継ぎ足して推移や地域差を作ることはできない。

次に見るべきもの――世帯数より先に、二人の暮らしの条件を確かめる

高齢夫婦の二人暮らしは大きな規模になったが、今後の生活を読む鍵は、増加率だけでなく世帯内外の支え方にある。

統計の続報や自治体の公開資料を読むときは、次の三点が手掛かりになる。

  1. 年齢の組み合わせ:二人とも65~69歳の世帯と、二人とも80歳以上の世帯を分けて見る。
  2. 就業と住居:働いているか、持ち家か賃貸かによって、今回の無職世帯の平均家計との距離を確かめる。
  3. 外部との接点:買い物、通院、家事を配偶者だけで担っているのか、親族や地域サービスともつながっているのかを確認する。

長期では約7.6倍、足元では横ばい。この二つを押さえたうえで、地域の高齢夫婦を「二人いる世帯」と数えるだけでなく、どちらかが動けなくなったときに誰が日常の用事を引き継げるかまで見る必要がある。

参照リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次