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医師の人口比は徳島が最多、埼玉が最少――2024年の都道府県比較で見える差

日本地図上に医師と病院を配置し、地域ごとの医師数の違いを表したイラスト。

医師の人口比は徳島が最多、埼玉が最少――2024年の都道府県比較で見える差

病院・診療所で働く医師は、人口10万人あたりで徳島県345.4人、埼玉県189.1人。厚生労働省の2024年統計では、最多と最少の間に約1.83倍の差があります。

ただし、この数字だけで「受診しやすい県」「医師不足の県」を決めることはできません。医師が県内のどこで働くか、どの診療科を担当するか、県境を越えて患者が移動するかによって、住民が利用できる医療は変わります。

この記事で分かることは、次の3点です。

  • 医療施設で働く医師の人口比が高い県・低い県
  • 全国の医師数が増えても、地域差を見る必要がある理由
  • ランキングを、通院や地域の医療体制の確認につなげる方法
目次

比較するのは「病院・診療所で働く医師」

今回の比較は、医師免許を持つ届出者全体ではなく、医療施設従事医師数にそろえます。

使用したのは、厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」です。2026年10月8日時点で確認できる最新の公表結果で、公表日は2025年12月23日です。厚生労働省の公表ページに、概況と統計表が掲載されています。

比較条件は次のとおりです。

  • 対象地域:47都道府県
  • 医師の基準日:2024年12月31日
  • 対象:病院・診療所に従事する医師。歯科医師は含めない
  • 地域の分け方:主たる従業地。医師の居住地ではない
  • 単位:人口10万人あたりの人数
  • 人口の基準日:総務省統計局「人口推計」の2024年10月1日現在の総人口

計算は「医療施設従事医師数÷人口×10万」です。人口規模が違う地域でも、住民数に対する医師の多さを同じ物差しで比べられます。

一方、医師全体の届出数には、行政や研究などに従事する人、無職の人も含まれます。全国の人口10万人あたりの値は、届出医師全体では280.9人、医療施設従事医師では267.4人です。記事や資料を比較するときは、どちらを使っているかを確かめる必要があります。

最多の徳島と最少の埼玉には156.3人の差

医療施設従事医師の人口比は、上位に西日本の県が多く、下位には関東の県も入っています。

以下は、厚生労働省の統計表10から、47都道府県を同じ条件で比較した上位5県・下位5県です。順位は公表値をもとに整理しました。

区分・順位都道府県人口10万人あたり
最多・1位徳島県345.4人
2位長崎県333.8人
3位京都府333.2人
4位和歌山県327.7人
5位高知県325.2人
全国全国計267.4人
43位岩手県223.8人
44位新潟県222.2人
45位千葉県213.3人
46位茨城県198.1人
最少・47位埼玉県189.1人

徳島県と埼玉県の差は156.3人。全国値と比べると、徳島県は78.0人多く、埼玉県は78.3人少ない計算です。

割合では、徳島県は全国値を約29.2%上回り、埼玉県は約29.3%下回ります。ただし、全国値は「医療に必要な人数」の基準ではありません。全国の医師数を全国人口で割った値です。

都市部なら必ず人口比が高いわけではない

東京都は324.1人ですが、隣接する埼玉県は189.1人、千葉県は213.3人、神奈川県は233.3人です。大阪府は290.1人、愛知県は243.0人で、人口の多い地域が一律に上位に来るわけではありません。

ここから確認できるのは、人口の集積と医師の集積が同じ割合では起きていないことです。

ただし、「東京に医師が集まったから埼玉で少ない」とまで、この表から断定することはできません。医師の移動や研修先、病院の配置、患者の受療先を確認しなければ、地域差が生まれた理由は分かりません。

「全医師」のランキングとは順位が変わる

対象を届出医師全体に広げると、徳島県360.6人、京都府354.2人、長崎県354.1人となり、京都府と長崎県の順序が入れ替わります。

小さな順位差ほど、定義の違いが効きます。「医師数ランキング」という名称が同じでも、病院・診療所の従事者だけを数えたのか、すべての届出医師を数えたのかをそろえて読むことが大切です。

全国では増加しているが、人口比の上昇だけでは判断できない

全国の医療施設従事医師は増えていますが、その増加率と人口10万人あたりの増加率は同じではありません。

同統計の年次推移によると、全国の医療施設従事医師数は2022年の327,444人から、2024年には331,092人へ増えました。増加は3,648人、約1.1%です。

人口10万人あたりでは262.1人から267.4人へ、5.3人、約2.0%上昇しました。人数より人口比の伸びが大きいのは、分母である人口の変化も反映するためです。統計表6

同じ系列を2012年までさかのぼると、人口10万人あたりは226.5人でした。2024年までの12年間で40.9人、約18.1%増えています。

この推移は、全国の医師の人口比が長期的に上がったことを示します。一方、これだけで都道府県間の差が縮まったとは判断できません。差の変化を検証するには、各県について同じ定義の過去年と最新年を比べる必要があります。

人口が減る地域では、人数と人口比を一緒に見る

人口比は、医師が増えなくても上がります。

たとえば、医師数が変わらず人口だけが減れば、人口10万人あたりの人数は増えます。これは計算上の性質です。病院の診療日や救急当番、通院距離が改善したことを意味するわけではありません。

地域の推移を読むときは、次の3つを並べると変化の中身が見えます。

  • 医療施設従事医師の実人数
  • 同じ期間の人口
  • 人口10万人あたりの医師数

医師が増えて人口比も上がったのか、人口減少によって比率が上がったのか。この違いは、地域の医療体制を評価するうえで欠かせません。

県の平均と、住む場所の受診環境は違う

県全体の人口比が高くても、その県のすべての地域で医師が多いとは限りません。

同じ2024年の統計では、京都府の医療施設従事医師は人口10万人あたり333.2人、京都市は426.2人です。新潟県は222.2人、新潟市は303.0人でした。

県全体と中心都市の値が違うことから、県平均だけでは内部のばらつきが見えないと分かります。ただし、市の医師は市内の住民だけを診療するわけではありません。周辺地域から患者を受け入れる病院もあるため、市の高い人口比をそのまま市民の受診の容易さに置き換えることもできません。

なお、市の人口比には各自治体が推計した2024年10月1日現在の人口が使われています。都道府県比較と基準日は同じですが、人口の作成主体が異なる点にも注意が必要です。

診療科の違いが、暮らしへの意味を変える

全診療科を合計した医師数は、医療体制の規模を見る入口です。必要な診療科が利用できるかは、別に確認しなければなりません。

  • 子どもの受診を考えるなら、小児科の医師数と子どもの人口
  • 出産に関わる体制を見るなら、産婦人科・産科の医師数に加え、分娩を扱う施設
  • 救急医療を見るなら、医師数に加え、夜間・休日の受入体制
  • 継続的な通院を見るなら、診療所の所在地、診療日、交通手段

e-Statの2024年統計表には、業務や診療科などで分けたデータへの入口があります。診療科別の表には「主たる診療科」と「複数回答」の区別もあり、後者を足し合わせても医師の実人数にはなりません。

医師不足を評価するには、人口構成や患者の移動も必要

人口10万人あたりの医師数は分かりやすい指標ですが、地域ごとの医療需要までは調整していません。

同じ人口10万人でも、住民の年齢構成が違えば必要とされる医療は変わります。また、医師の人数が同じでも、勤務時間や入院・外来の担当が違えば、提供できる診療の量も同じにはなりません。

厚生労働省は、地域の医師の多寡を評価するために「医師偏在指標」を示しています。人口構成に応じた受療率や、医師の性・年齢別の労働時間の違いなどを調整する指標です。単純な人口比とは計算方法も意味も異なります。医師確保計画策定ガイドライン

ここがポイント: 人口10万人あたりの医師数は「住民数に対して何人働いているか」を示します。「地域の医療需要を満たしているか」を判断するには、診療科、患者の流出入、勤務状況も必要です。

厚生労働省の医師確保対策ページでは、都道府県別・二次医療圏別の医師偏在指標が公開されています。2026年4月公表版も掲載されていますが、これは今回の人口比ランキングとは別の指標です。公表年月が新しくても、元データの対象時点や算定条件を確認して使う必要があります。

二次医療圏は、主に入院医療を地域で確保するための区域です。県全体より細かい範囲で見ることで、県平均に隠れた差を調べられます。

県境を越える受診は、人口比にどう響くか

医師は勤務先の県で数えられ、人口は住民のいる県で数えられます。県外の病院へ通院しても、その医師が住民側の県の医師数に加わるわけではありません。

したがって、隣県の医療機関を利用できる地域では、県内の人口比だけでは利用可能な医療を捉えきれません。反対に、県外患者を受け入れる地域では、住民人口で割った値が高くても、医師が担う患者数は県内人口から想像するより多い可能性があります。

これは順位の誤りではなく、指標の範囲の問題です。患者の移動を確かめるには、患者調査などの別データが必要になります。

数字を生活につなげるなら、次は医療圏と診療科を見る

自分の地域を調べるときは、県の順位を入口にして、必要な医療が届く範囲まで絞ることが役立ちます。

今回の比較で確認できたのは、2024年の病院・診療所の従事医師の人口比が徳島県で最も高く、埼玉県で最も低いこと、全国では長期的に上昇していることです。待ち時間、医療の質、夜間の受診のしやすさを直接測った結果ではありません。

また、この統計は届出に基づく人数で、常勤換算した診療能力を示すものではありません。医師の基準日は12月末、人口は10月初めと、約3か月のずれもあります。2024年の値を、2026年現在の個別病院の診療体制として読むことはできません。

地域の医療を確かめる次の焦点は、次の4つです。

  • 範囲:県平均だけでなく、居住地を含む二次医療圏の値を見る
  • 役割:病院と診療所、必要な診療科を分ける
  • 継続性:医師の実人数と年齢構成を過去年と比べる
  • 利用条件:自治体や医療機関の公開情報で、診療日、救急対応、交通手段を確認する

医師の人口比が上がった地域でも、近くの診療所の診療日が減っていれば、通院の負担は軽くなりません。地域の変化を見るうえで確かめたいのは、順位の上昇と、必要な場所・時間に診療を受けられる体制が同じ方向へ動いているかです。

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