ETC利用率は95.8%へ――20年の推移と、料金所に残る車種差
高速道路のETC利用率は、2006年7月の60.5%から2026年7月の95.8%へ、20年間で35.3ポイント上昇した。料金所での支払いは、ETCがほぼ標準となっている。
ただし、全車平均では見えない差がある。最新の6社計では普通車が96.9%、軽自動車等の「軽」区分は89.0%。これからの料金所のキャッシュレス化では、全体の普及率よりも、ETCを使っていない通行をどう扱うかが重要になる。
この記事で分かることは、次の3点だ。
- 同じ7月で比べた20年間の利用率の変化
- 道路会社別・車種別に残る差と、その読み方
- ETC利用率とETC専用料金所の拡大が、利用者にとってどう違うか
使用データは「所有者の割合」ではなく「通行の割合」
ETC利用率は、自動車を持つ人の何%がETCを使っているかを示す数字ではない。
本稿は国土交通省の「ETCの利用状況」と月毎の利用状況を使う。2026年10月8日の確認時点で、掲載されている最新月は2026年7月だった。ページには更新日の明示がないため、確認日とデータの対象月を分けて記す。
比較条件は以下のとおり。
- 期間:2006年7月~2026年7月。長期比較は同じ7月を抽出する。
- 対象:NEXCO東日本・中日本・西日本、首都高速、阪神高速、本四高速の6社計。
- 指標:ETC利用率、ETC利用台数、会社別・車種別利用率。
- 単位:利用率は%、利用台数は台/日。ETC利用にはETC2.0も含まれる。
国土交通省の指標説明資料は、利用率を「ETCの導入済み料金所においてETCを利用した車両の割合」と定義している。
つまり、頻繁に高速道路を走る車は、たまにしか走らない車より多く通行実績に現れる。95.8%という数字を、そのまま「全国の車の95.8%に車載器がある」と読み替えることはできない。都道府県の住民別の普及率でもない。
20年間で60.5%から95.8%へ、伸びの中心は前半だった
ETC利用率は大きく上昇したが、近年の伸びは初期の普及期より緩やかになっている。
季節による違いを抑えるため、各年の7月を並べた。年平均や年度末の値ではない。
| 対象月 | ETC利用率 | ETC利用台数 |
|---|---|---|
| 2006年7月 | 60.5% | 465.8万台/日 |
| 2011年7月 | 80.9% | 680.8万台/日 |
| 2016年7月 | 89.7% | 758.7万台/日 |
| 2021年7月 | 93.3% | 749.4万台/日 |
| 2026年7月 | 95.8% | 879.2万台/日 |
出典:国土交通省「月毎のETC利用状況」。台数は掲載値を万台単位に換算し、小数第1位に丸めた。
初めの10年で29.2ポイント上昇
2006年から2016年までの上昇幅は29.2ポイント。その後の10年間は6.1ポイントだった。
これは普及が止まったという意味ではない。利用率が9割を超えると、追加でETCに移る通行の余地は小さくなる。60%から70%へ上げる段階と、95%から100%へ近づける段階では、残っている利用者の条件も異なる可能性がある。
ただし、この統計には未利用の理由が載っていない。利用頻度、車載器の費用、カードの保有状況などがどれほど関係するかは、利用率だけでは判断できない。
「残り」の割合は39.5%から4.2%に縮小
100%からETC利用率を引くと、ETCを利用していない通行の割合は2006年7月の39.5%から2026年7月の4.2%へ縮んだ。割合で見ると約89%の縮小である。
ここで注意したいのは、非ETC通行をすべて現金払いとみなせないことだ。この系列はETC利用の有無を示し、非ETC側の支払手段を分けていない。クレジットカードなどで支払った通行まで含めて、「現金が4.2%残っている」とは言えない。
残る差は、会社平均より車種別に見ると大きい
最新の会社別利用率はすべて94%を超える一方、車種別では軽区分と普通車の差が7.9ポイントある。
2026年7月の全車利用率を会社別に見ると、次のようになる。
- 首都高速:99.1%
- 阪神高速:97.9%
- 本四高速:96.8%
- NEXCO中日本:96.7%
- NEXCO東日本:94.7%
- NEXCO西日本:94.2%
最高と最低の差は4.9ポイント。ただし、これは住民の地域別ランキングではない。道路会社ごとに路線、交通量、車種構成、利用目的、料金所の運用条件が異なる。
たとえば首都高速の高い数字を、東京の自動車所有者全体の普及率として扱うことはできない。他地域から走ってくる車も集計されるからだ。
軽区分は89.0%、大型車は99.3%
同じ月の6社計を料金上の車種区分で分けると、差がさらに明確になる。
| 車種区分 | ETC利用率 | ETCを利用していない割合 |
|---|---|---|
| 軽 | 89.0% | 11.0% |
| 普通 | 96.9% | 3.1% |
| 中型 | 97.7% | 2.3% |
| 大型 | 99.3% | 0.7% |
| 特大 | 99.0% | 1.0% |
出典:国土交通省「ETCの利用状況」、2026年7月。非ETC割合は100%から利用率を引いて算出。「軽」は料金上の区分で、軽自動車だけでなく二輪車などを含む。
全車平均では非ETC通行は4.2%だが、軽区分では11.0%ある。料金所の専用化に伴う案内や周辺入口の確認は、車種によって必要になる頻度が違うことを、この数字は示している。
一方、軽区分の数字から低所得世帯の利用状況を推定することはできない。車種と所得は同じ指標ではなく、この資料には世帯所得も載っていない。
会社ごとの車種差も無視できない
軽区分のETC利用率は、首都高速で97.3%、NEXCO東日本で86.5%だった。同じ車種区分でも、走る道路が変われば利用実績は異なる。
この差には利用者の構成や専用料金所の配置などが関わる可能性がある。しかし、会社別の集計だけで原因を分解することはできない。専用化が利用率を押し上げた面と、利用率の高い場所から専用化を進めた面は、区別して検証する必要がある。
利用率の上昇と、通行量の増加は別の変化
ETC利用率が上がっても、ETCを使う通行台数が増えるとは限らない。
月別データでは、2020年3月のETC利用台数は732.8万台/日、利用率は92.9%。翌4月には台数が560.0万台/日へ減った一方、利用率は93.2%へ上がった。
- ETC利用台数:約23.6%減
- ETC利用率:0.3ポイント上昇
割合は、分子だけでなく分母にも左右される。ETC通行が減っていても、それ以外の通行がさらに減れば利用率は上がる。
この2か月の数字だけで、個々の運転者がETCへ切り替えたとは判断できない。長期の変化を読むときも、「ETCが選ばれる割合」と「道路を利用する量」を別々に確認する必要がある。
ETC2.0は40.8%――支払いの普及とは別の段階
ETCによる支払いはほぼ標準になったが、ETC2.0の利用は同じ水準には達していない。
2026年7月のETC2.0利用率は40.8%。通常のETCを含む95.8%に足す数字ではなく、その内数である。ETC2.0の集計は2016年4月から始まっており、ETC全体の20年系列とは期間が異なる。
国土交通省の白書によると、ETC2.0は料金収受に加え、道路側の機器と車載器の双方向通信を使って渋滞情報などを提供し、走行履歴や車の挙動データも活用する仕組みだ。
2026年7月のETC2.0利用率は、普通車以下で32.0%、中型車以上で75.7%だった。料金の自動支払いと、道路情報をやり取りする機能の利用は、分けて追うべき変化である。
専用化で変わるのは、使える入口の条件
ETC利用率が高いことと、すべての料金所がETC専用であることは別だが、専用化が進むと未搭載車の経路選択に直接関わる。
国土交通省と高速道路会社は、2020年12月にETC専用化等のロードマップを公表した。当初は都市部で5年、地方部で10年程度の概成を掲げたが、個別の工程は、その後の事業者の公表資料で確認する必要がある。
首都高速の2026年4月の利用案内では、ETC専用入口は90箇所。2026年度に134箇所へ拡大し、2028年春までに本線料金所などの一部を除く入口料金所の専用化を目指すとしている。134箇所は年度の予定であり、確認日時点の完成数としては扱わない。
ここがポイント: ETC利用率は「通行の割合」、ETC専用化は「入口を使う条件」の変更だ。全車平均が95%を超えていても、未搭載車が使える入口は別に確認しなければならない。
未搭載車と、通信できないETC車では対応が違う
首都高速の公式FAQでは、ETC専用料金所は車載器未搭載車が利用できないと説明している。カードを持っているだけで、専用入口を使えるわけではない。
一方、カードの挿し忘れなどで通信できない場合に備えて、サポートレーンが設けられている。誤って専用入口へ進入した場合も、公式案内はサポート表示のレーンで係員の指示に従うよう求めている。Uターンや後退は行わない。
利用者にとっては、支払い方法の選択が入口の選択へつながる。高速道路を日常的に使わない人ほど、以前使えた入口が現在も同じ条件とは限らない点に注意が必要だ。
便利さを支える設備にも役割が残る
専用化には、停車・発進やETC車と現金車の交錯を減らす狙いがある。ただし、利用率の統計だけで、待ち時間や事故がどれだけ減ったかを測ることはできない。
首都高速の2026年度の専用化資料は、無人化に伴うテレビインターホンや、カード挿し忘れなどに対応する追加アンテナの整備を示している。人が料金を受け取る機会が減っても、通信できない車への対応そのものは残る。
次に見るべき数字は、平均利用率と「残る通行」の両方
今後の進捗は、利用率が100%に近づくかだけでなく、未利用車への対応がどう変わるかで評価したい。
このデータから確認できるのは、ETC利用が20年で大きく広がり、現在も車種別・会社別の差が残っていることだ。未利用の理由、料金所での待ち時間、専用化後の誤進入件数までは分からない。また、月別表と概要表には一部の台数表示に差があるため、本稿の長期台数比較は月別表に統一した。
今後は、次の3点を合わせて追うと、生活への変化が見えやすくなる。
- 軽区分の利用率:全車平均との開きが縮まるか。
- 専用入口の実際の運用開始:年度計画の箇所数と、使える入口の変更を分けて確認する。
- 未利用車・通信不良車への対応:案内、代替入口、サポート設備がどう整うか。
高速道路を利用する前に必要なのは、全国平均の確認よりも、使う入口の条件と車載器・カードの状態の確認だ。95.8%という高い利用率の先では、その小さな確認が、通れる経路を左右する。
