女性の賃金は男性の76.6%に――縮まる男女差、年代と役職で残る隔たり
男女の賃金差は、長期的には縮まっている。2025年の一般労働者の平均賃金は男性37万3,400円、女性28万5,900円で、男性を100とした女性の水準は76.6となり、比較可能な1976年以降で最も差が小さくなった。
ただし、月額の差はなお8万7,500円ある。若い年代では差が小さい一方、50代では大きく、同じ役職に区分しても男女の平均賃金は一致していない。厚生労働省の2025年調査の公表資料を起点に、全体の改善と残る差を分けて見ていく。
この記事で分かることは、次の3点だ。
- 長期の男女差は縮小しているが、毎年一方向に改善しているわけではない。
- 年代別では、20代前半と50代後半で差の大きさが大きく違う。
- 役職内の賃金差と、どの役職に就いているかの違いは、別々に確認する必要がある。
使用データ――比べるのは年収ではなく、6月の所定内給与
この記事の中心は、全国の一般労働者について、同じ定義の月額賃金を男女別に比較したデータである。
使用するのは厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査」の結果の概況。2026年3月24日に公表された、2026年10月8日時点で確認できる最新の年次結果だ。賃金の対象は2025年6月で、調査は同年7月に実施された。
調査の概要によると、概況の集計対象は常用労働者10人以上の民営事業所5万2,242か所。調査自体は小規模事業所や公営事業所も含むが、この記事で使う概況と、その全範囲は同一ではない。
指標にも、次の区別がある。
- 一般労働者:短時間労働者に該当しない労働者。正社員だけに限定した区分ではない。
- 賃金:6月分の所定内給与額の平均。残業などの超過労働給与を除いた、税などの控除前の金額。
- 役職別の比較:一般労働者のうち、雇用期間の定めのない人が対象。
したがって、ここで示す金額は手取りでも、賞与込みの年収でもない。一般労働者と短時間労働者は就業形態の区分で、正社員と非正社員という雇用形態の区分とは異なる。主な用語の定義を押さえると、異なる統計の数字を混ぜずに読める。
長期推移――女性の賃金水準は上がったが、改善は一直線ではない
男性に対する女性の平均賃金の比率は上昇しており、長期の縮小傾向は確認できる。
以下は、各年6月の一般労働者の所定内給与額から計算された、男性=100に対する女性の水準だ。賃金の推移・第1表から主な年を抜き出した。
- 2001年:65.3
- 2010年:69.3
- 2015年:72.2
- 2020年:74.3
- 2022年:75.7
- 2023年:74.8
- 2024年:75.8
- 2025年:76.6
2001年と2025年では11.3ポイント上昇した。一方、2023年には前年から0.9ポイント低下している。「長期では縮小」と「毎年縮小」は区別したい。
また、76.6は「差が76.6%ある」という意味ではない。女性の平均が男性の76.6%に当たり、男性の賃金を基準にした不足分は23.4%という意味だ。
比率が改善しても、円単位の差は残る
2024年の平均賃金は男性36万3,100円、女性27万5,300円で、差は8万7,800円だった。2025年は男性が1万300円、女性が1万600円増え、差は8万7,500円となった。
女性の伸び率が男性を上回ったことで比率は改善した。しかし、月額の差の縮小は300円にとどまる。割合で見た改善と、円で見た差の縮小は、同じ大きさにはならない。
なお、長期表では2019年から対象産業の範囲が一部変わり、2020年には有効回答率を考慮する推計方法へ変更された。長期の方向を読むことと、細かな年差を同条件の変化として扱うことは分ける必要がある。
年代別――20代前半の小さな差は、50代まで続いていない
2025年の年代別比較では、年齢が高い層ほど男女差が大きくなる傾向が、50代後半まで見られる。
性・年齢階級別賃金の第2表を基に、特徴の分かる年代を比較する。金額は月額の所定内給与で、女性の比率は掲載値から計算し、小数第1位に丸めた。
| 年齢 | 男性 | 女性 | 女性/男性 |
|---|---|---|---|
| 20~24歳 | 24万5,700円 | 23万9,600円 | 97.5% |
| 30~34歳 | 33万400円 | 28万3,200円 | 85.7% |
| 40~44歳 | 39万8,200円 | 30万3,600円 | 76.2% |
| 50~54歳 | 43万7,500円 | 30万5,400円 | 69.8% |
| 55~59歳 | 44万5,600円 | 30万5,700円 | 68.6% |
| 60~64歳 | 35万8,500円 | 27万800円 | 75.5% |
20~24歳の月額差は6,100円。55~59歳では13万9,900円になる。全体平均だけでは見えない差だ。
ただし、この表は同じ人を追跡した結果ではない。現在の20代と50代では、就職した時代、勤続年数、職種や役職の分布が異なる。若い層の差が小さいことから、その世代の将来も差が小さいままだと断定することはできない。
60代前半で比率が再び高くなる点も、女性の賃金上昇を意味しない。この比較では男女とも50代後半より月額が下がり、男性の下げ幅が大きい。比率を見る際は、分子と分母の両方を確かめたい。
役職別――同じ役職の平均差と、役職構成の違いは別問題
同じ役職に区分すると全体平均より男女差は小さくなるが、差は残る。
役職・性別賃金の第8表による2025年の月額は、次のとおり。対象は雇用期間の定めのない一般労働者で、比率は掲載値から計算した。
| 役職 | 男性 | 女性 | 女性/男性 |
|---|---|---|---|
| 部長級 | 64万2,400円 | 57万8,300円 | 90.0% |
| 課長級 | 54万1,400円 | 47万300円 | 86.9% |
| 係長級 | 41万900円 | 36万5,700円 | 89.0% |
| 非役職者 | 33万2,100円 | 28万100円 | 84.3% |
「部長級」は同じ会社の同じ仕事をそろえた比較ではない。企業規模、産業、担当業務などは混在するため、この差だけで同一業務への報酬差を測ることはできない。
全体の平均には、どの役職にいるかも効く
役職内の差が小さくても、高い賃金の役職に就く人の割合が男女で違えば、全体平均には差が生まれる。
厚生労働省が2026年10月2日の審議会資料として示した「働く女性の実情」のポイントでは、2025年の女性の役職構成を男性と同じと仮定した場合、賃金比率を押し上げる効果は9.1ポイントだった。資料で比較した学歴、年齢、勤続年数、役職のうち、役職の効果が最も大きく、勤続年数は3.3ポイントだった。
これは、女性の登用先や働き続けた年数の違いが、全体平均を読むうえで重要であることを示す。ただし、各要因を個別にそろえる単純分析であり、9.1と3.3をそのまま足して格差の説明割合にすることはできない。
ここがポイント: 男女差を見るときは、「同じ役職内で賃金が違うか」と「高い賃金の役職に就く割合が違うか」を分ける。片方だけでは、全体平均が変わる理由を捉えきれない。
全体が改善しても、すべての役職で改善するとは限らない
第8表の前年比では、部長級は女性の伸び率が男性を上回った一方、課長級と係長級は男性の伸び率が女性を上回った。
全体平均の改善を、すべての層での改善と読み替えることはできない。役職ごとの賃金変化に加え、各層の人数がどう変わったかも必要になる。
注意点――平均賃金の差から、個人の待遇や家計の余裕は決められない
この統計が示すのは集団の平均差であり、一人ひとりの給与の分布や、その差が生じた原因のすべてではない。
誤読を避けるため、次の4点を確認したい。
- 平均と中央値は違う。 この記事の金額は平均であり、給与順に並べた中央の人の金額ではない。高賃金の人の割合も平均に影響する。
- 全就業者の比較ではない。 自営業者や短時間労働者などを含めた、働く人全体の収入差とは異なる。
- 休業などの影響をすべて捉えるわけではない。 概況には実労働日数などの集計条件がある。一般労働者は原則、対象月の実労働日数18日以上、1日当たり所定内実労働時間5時間以上などの条件を満たす人が対象となる。利用上の注意で範囲を確認できる。
- 名目賃金の上昇と購買力の改善は別。 物価上昇を差し引いた数字ではないため、男女双方の賃金が増えても、生活の余裕が同じだけ増えたとは限らない。
また、年代別の差と役職別の差を別々に示した表から、「年齢も役職も同じなら差はいくらか」は計算できない。企業や仕事の条件までそろえた比較には、さらに細かな集計が必要になる。
次に見る数字――全体比率に加えて、年代と登用の変化を追う
今後の縮小が広く進んでいるかを判断するには、76.6という全体比率だけでなく、その内側の変化を追う必要がある。
2025年の結果では、若年層の差は小さく、50代の差は大きい。役職をそろえると差は小さくなるものの、なくならない。この3つの事実を同時に見ることが出発点になる。
次の年次結果では、特に次の数字が重要だ。
- 30~50代で、女性の男性に対する賃金比率が上がるか。
- 課長級・係長級で、女性の賃金の伸びが男性に追いつくか。
- 女性が高い賃金の役職に就く割合と、勤続年数がどう変わるか。
- 比率の改善とともに、円単位の月額差も縮むか。
職場の賃金公表を読む際も、全体の男女比だけで判断せず、対象が年収か月給か、短時間労働者を含むか、役職構成はどう違うかを確認したい。2025年に比率が改善しても月額差はほぼ変わらなかったことは、その確認が必要な理由を具体的に示している。
