MENU

家庭のエネルギーは電気が53.5%に――ガス・灯油と比べる半世紀の変化

家庭で使う電気・ガス・灯油を表すメーターと灯油容器。

家庭のエネルギーは電気が53.5%に――ガス・灯油と比べる半世紀の変化

家庭で使うエネルギーは、電気・ガス・灯油がほぼ三分していた1973年度から、電気が過半を占める形へ変わった。2024年度の電気の構成比は53.5%、灯油は13.9%。ただし、電気の割合が高くなったことと、家庭のエネルギー消費全体が増えたことは別だ。

最新の確報では、家庭全体の消費量は前年度とほぼ同じだった一方、1世帯当たりでは減少した。半世紀の燃料の入れ替わりと、近年の使用量の減少を分けて見ると、暮らしの変化を読み取りやすくなる。

この記事で押さえる点は次の3つだ。

  • 長期比較では、電気の比率が上がり、灯油の比率が下がった。
  • ガスは都市ガスとLPガスで動きが違う。合計だけでは変化を見落とす。
  • 構成比はエネルギー量の割合であり、光熱費の割合や利用世帯の割合ではない。
目次

使用データ――最新の2024年度確報と長期比較を組み合わせる

比較するのは、全国の家庭で消費されたエネルギーを共通の単位に換算した数値だ。

最新値には、資源エネルギー庁が2026年4月14日に公表した「2024年度エネルギー需給実績(確報)」を使う。2026年10月8日時点で、総合エネルギー統計の結果一覧に掲載されている最新の年度確報だ。長期の比較には、エネルギー白書2024のエネルギー源別構成比を用いる。

比較条件は以下のとおり。

  • 対象地域:日本全国。
  • 対象期間:1965年度、1973年度、2024年度を中心に比較。
  • 対象範囲:家庭部門の最終エネルギー消費。自家用車などの運輸関係は含まない。
  • 比較する指標:電気、都市ガス、LPガス、灯油などのエネルギー量と構成比。

電気はkWh、ガスは立方メートル、灯油はリットルで計量される。そのままでは足し合わせられないため、統計ではエネルギー量に換算する。GJはギガジュール、PJはペタジュールで、1PJは100万GJに当たる。

ここでの「最終エネルギー」は、家庭が使う段階のエネルギーを指す。発電所で電気をつくるために投入した燃料まで含めた比較ではない。

構成比の変化――電気は約3割から過半へ、灯油は約3割から1割台へ

半世紀の最も大きな変化は、電気と灯油の比重が逆転したことだ。

下表は、家庭部門全体のエネルギー消費に占める割合を示す。ガスを合計する前に、都市ガスとLPガスを分けて見るのがポイントになる。

エネルギー源1965年度1973年度2024年度
電気22.8%28.2%53.5%
都市ガス14.8%17.0%約23%
LPガス12.0%17.4%約9%
灯油15.1%31.3%13.9%
石炭35.3%6.1%主要な構成要素ではない

出典:1965・1973年度はエネルギー白書2024の図表「家庭部門のエネルギー消費の推移」、2024年度はエネルギー需給実績確報の家庭部門・図表21。2024年度の都市ガスとLPガスは図表の整数表示による概数。表には熱などの小さな区分をすべて載せていないため、各列は100%に一致しない。

1973年度との比較で見える入れ替わり

1973年度には、都市ガスとLPガスの合計が34.4%、灯油が31.3%、電気が28.2%だった。ガス、灯油、電気が、それぞれ約3分の1を担っていた。

2024年度までに、電気は25.3ポイント上昇し、灯油は17.4ポイント低下した。これは公表された構成比の差を計算したものだ。「電気の割合が25.3%増えた」という意味ではなく、全体に占める比率の差である。

一方、ガスは合計で見ると現在も約3割を占める。ただし内訳は変わった。都市ガスの比率は1973年度より高く、LPガスは低い。ガス全体の比率が近くても、同じ燃料構成が続いているわけではない。

灯油の減少は、さらに前の石炭からの転換に続く変化

1965年度には、石炭が35.3%を占めていた。1973年度には6.1%まで低下し、その間に灯油が15.1%から31.3%へ増えた。白書は、石炭が主に灯油へ代替されたと説明している。

つまり、家庭のエネルギーは一度に電気へ移ったのではない。石炭の比重が下がって灯油が増え、その後、長い時間をかけて電気の比重が高まった。この順序を押さえると、現在の構成を固定したものとして捉えずに済む。

使用量の変化――電気の比率が上がっても、消費全体は増えていない

近年の家庭では、電気が中心になる動きと、総エネルギー消費が減る動きが同時に進んでいる。

2024年度の確報では、家庭部門の最終エネルギー消費は1,697PJで、前年度比は横ばい。2013年度の2,045PJと比べると17.0%少ない。電気の構成比だけを見て「家庭が使うエネルギーは増え続けている」と読むのは誤りだ。

構成比は、次の関係で決まる。

電気の構成比=電気のエネルギー消費量÷家庭全体のエネルギー消費量

電気の使用量が変わらなくても、灯油やガスが減れば電気の割合は上がる。電気自体が減っていても、ほかの燃料がそれ以上に減れば同じことが起きる。

2024年度は電気が前年度比0.7%増、都市ガスが1.5%増となった一方、LPガスは4.3%減、灯油は2.0%減だった。全体が横ばいでも、内訳まで止まっていたわけではない。最新年度の数値と長期推移は、確報本文で確認できる。

全国総量・1世帯当たり・1人当たりで答えが変わる

「家庭の使用量は減ったか」という問いには、分母も必要になる。

2024年度は、全国総量が横ばいだったのに対し、1世帯当たりは27.7GJで前年度比0.8%減、1人当たりは13.7GJで0.5%増だった。

この違いは矛盾ではない。全国総量を世帯数で割るか、人口で割るかによって、示すものが変わるためだ。

  • 全国総量:家庭部門全体が必要とするエネルギーの大きさを見る。
  • 1世帯当たり:世帯数の増減を除いて、平均的な世帯単位の消費を見る。
  • 1人当たり:人口の増減を除いて、人数単位の消費を見る。

世帯が小さくなっても、冷蔵庫や照明などを人数に比例して減らせるとは限らない。世帯単位の減少を、そのまま個人の使用量の減少や省エネ行動の成果に置き換えることはできない。

背景を読む――機器の変化だけでなく、効率・人数・気温が重なる

構成比の変化は暮らしの道具が変わった結果を含むが、どの要因が何割を説明するかまでは、この表だけでは分からない。

資源エネルギー庁は、長期的な電気の比率上昇の背景として家電製品の普及などを挙げている。一方、近年の消費量には、機器の効率向上、世帯人員、エネルギー価格、省エネ行動、気温が関わる。白書の家庭部門の解説も、短期的には気候の影響が大きいと説明する。

ここで注意したいのは、家庭で必要とするサービスと、投入するエネルギー量は同じものではないことだ。暖房や給湯の機器が変われば、同じ室温や湯量を得るために必要なエネルギー量も変わる。したがって、灯油の減少分を、そのまま同じ量の電気が置き換えたと計算することはできない。

ガスの合計だけでは、都市ガスとLPガスの違いが消える

都市ガスの比率が高まったことも、すべての家庭でガス使用量が増えたことを意味しない。

資源エネルギー庁の都市ガス消費の解説では、家庭用の需要家当たり消費量は高効率給湯器などの普及に伴って減少傾向にある一方、需要家数の増加などが販売量の減少を補ってきたとされる。

「契約する家庭が増えること」と「契約する家庭がそれぞれ多く使うこと」は別だ。都市ガスとLPガスを一括した数字だけでは、この違いも見えにくくなる。

1年の増減を、そのまま長期の方向にしない

2024年度の確報は、前年より冬季が寒かったことによる暖房・給湯需要の増加と、機器効率の改善や価格上昇などによる減少が相殺したと説明している。

ここから「省エネが止まった」とも「寒さだけで全体が決まった」とも結論できない。長期の変化を見るときは数年の推移を、当年の増減を見るときは気温や価格を合わせて確認する必要がある。

誤読を防ぐ――光熱費・地域差・環境負荷は別のデータで確かめる

全国の構成比で分かるのは、家庭部門全体が何をどれだけ使ったかであり、個々の家庭の負担や条件ではない。

電気53.5%は、光熱費の53.5%ではない

この数字は支出額ではなく、エネルギー量の比率だ。電気、都市ガス、LPガス、灯油では単価が異なり、電気やガスには基本料金もある。

そのため、エネルギー消費が減っても、単価が上がれば請求額は増える。家計への影響を知りたい場合は、使用量と料金を分けて見る必要がある。

また、電気53.5%は「53.5%の家庭が電気を使う」という意味でも、「53.5%が電気だけで暮らす」という意味でもない。利用世帯の割合を調べるには別の集計が必要だ。

全国平均を、住んでいる地域の標準にしない

全国の値には、寒冷地と温暖な地域、都市ガスを利用できる場所と利用できない場所、集合住宅と戸建てが含まれる。

今回の全国統計だけでは、どの地域の灯油消費がどの程度減ったのかは判断できない。地域差を見る場合は、地域別の燃料消費量に加えて、世帯人数、住宅の種類、気温などの条件をそろえる必要がある。

個別の家庭で灯油の割合が全国より高くても、その数字だけで無駄が多いとはいえない。暖房が必要な期間や設備の条件が違うからだ。

電気の比率上昇だけで、CO2の増減は決まらない

家庭で電気を使うことと、その電気が何からつくられるかは別の段階の話だ。

家庭の構成比は、電気を石炭火力、ガス火力、水力などに分けた「電源構成」ではない。環境負荷を比較するには、燃料の使用量に加え、機器の効率や電気の排出係数を確認する必要がある。

半世紀の比較には、統計の作り方の違いもある

白書の長期比較には、総合エネルギー統計で1990年度以降に数値の算出方法が変更されたという注記がある。また、最新確報では過年度の統計表も改訂されている。

この記事の長期表は、古い年度を白書、最新年度を2024年度確報から取った比較だ。電気が中心になり、灯油の比率が低下したという大きな変化を読むために使い、細かな年次変化は同じ公表時点の時系列表で確認したい。

日々の光熱費を見るなら、まず使用量と単価を分ける

家庭のエネルギーが電気中心になった今、請求額だけでなく、何にどれだけ使ったかを見ることが大切になる。

今回の全国データから持ち帰れるのは、電気の構成比上昇、灯油の低下、ガス内部の変化という3点だ。一方、自宅の料金が増えた理由は、それだけでは分からない。

家計や地域の変化を確かめる際は、次の順で見ると整理しやすい。

  • 前年の同じ月と比べて、電気のkWh、ガスの使用量、灯油のリットルが増えたか。
  • 使用量が同じでも、単価や基本料金が変わっていないか。
  • 暖房・給湯設備や世帯人数、在宅時間が変わっていないか。
  • 地域を比較するなら、冬の寒さや住宅条件が近いか。

次の年度に電気の比率がさらに上がっても、最初に確認したいのはその理由だ。電気の使用量が増えたのか、灯油やガスが減ったのか。構成比の横に実際の消費量を置くことが、暮らしの変化と請求額の変化を取り違えないための出発点になる。

参照リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次