新設住宅は35年で57%減――持ち家・貸家・分譲で異なる減り方
全国の新設住宅着工戸数は、1990年の170万7,109戸から2025年の74万667戸へ、35年間で56.6%減った。ただし、住宅の種類によって減り方は違う。2010年と比べると、2025年の持家は約34%少ない一方、貸家と分譲住宅は当時の戸数を上回っている。
住宅建設全体の縮小と、自分で建てる家・借りる家・購入する分譲住宅の変化は、分けて読む必要がある。総数だけでは、住まいの選択肢がどこで細っているのかを見落とす。
この記事で分かることは、次の3点だ。
- 全国の着工戸数は、1990年・2010年・2015年からどれだけ変わったか。
- 持家・貸家・分譲住宅のうち、減少が大きいのはどれか。
- 着工の減少から、住宅価格や地域の住みやすさまで判断できるか。
使用データ:全国の暦年値で比較する
比較には、国土交通省「建築着工統計調査」の新設住宅着工戸数を使い、各年の1〜12月をそろえた。
総戸数の長期推移は、総務省の統計ダッシュボードで確認できる。利用関係別の比較には国土交通省の年計資料を用いた。
- 対象地域: 全国。地域差の補足には2025年の圏域別集計を使用。
- 対象期間: 総数は1990〜2025年、利用関係別は2010・2015・2025年を比較。
- 単位: 戸。集合住宅は1棟を1戸と数えず、独立して居住できる区画ごとに数える。
- 公表時点: 2025年計は2026年1月30日公表。2026年10月8日時点で、最新の通年の暦年値は2025年。
国土交通省の時系列一覧には、2026年9月30日更新の2026年8月分も掲載されている。ただし、途中までの月次実績を2025年の年間戸数と直接比較しても、年間の増減は分からない。本記事の長期比較は、期間がそろう年計を軸にする。
「持家」は、購入した住宅すべてを指すわけではない
統計上の分類は、建築主が何のために建てるかで決まる。
- 持家: 個人の建築主が自分で住むために建てる住宅。注文住宅などが該当する。
- 貸家: 賃貸する目的で建てる住宅。
- 分譲住宅: 建て売りや分譲の目的で建てる住宅。分譲マンションも含む。
- 給与住宅: 会社や官公署などが社員・職員等を住まわせるために建てる住宅。
例えば、購入者が自宅として使う建売住宅でも、着工時の分類は分譲住宅だ。「持家着工が減った」という数字を、そのまま「家を購入する人が同じ割合で減った」と読むことはできない。用語の定義と利用上の注意を押さえると、比較の意味が変わってくる。
なお、新設住宅には、新築だけでなく、増築・改築によって住宅の戸が新たに造られる工事も含まれる。完成戸数や販売戸数とは異なる指標である。
総戸数:1990年から約97万戸減り、2025年は74万戸
2025年の着工戸数は、1990年の約43%の水準まで下がった。
以下は全国の暦年値で、給与住宅を含む総数である。
| 年 | 新設住宅着工戸数 |
|---|---|
| 1990年 | 1,707,109戸 |
| 2000年 | 1,229,843戸 |
| 2008年 | 1,093,519戸 |
| 2009年 | 788,410戸 |
| 2013年 | 980,025戸 |
| 2015年 | 909,299戸 |
| 2020年 | 815,340戸 |
| 2022年 | 859,529戸 |
| 2024年 | 792,195戸 |
| 2025年 | 740,667戸 |
出典:統計ダッシュボード「新設住宅着工戸数(総戸数)」。以下の増減率は掲載値から計算し、小数第1位に丸めた。
1990年から2025年までの減少数は96万6,442戸。毎年新たに建て始める住宅の規模が、約97万戸小さくなった計算になる。
ただし、一直線に減ったわけではない。2008年から2009年には27.9%減少したが、2013年には98万戸まで戻った。2020年から2022年にも5.4%増えている。長期的な縮小の途中に、回復する期間がある。
直近では、2022年から2025年までに11万8,862戸、13.8%減った。2024年から2025年だけでも5万1,528戸減少している。バブル期との比較で大きく見えるだけでなく、最近の数年間でも着工は減っている。
利用関係別:2015年以降は持家の減少が最も大きい
2015〜2025年の10年間では、持家が29.0%減り、貸家・分譲住宅より減少率が大きかった。
比較条件は全国・暦年・着工戸数で統一した。総数には、表の3区分以外に給与住宅を含む。
| 区分 | 2010年 | 2015年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 持家 | 305,221戸 | 283,366戸 | 201,285戸 |
| 貸家 | 298,014戸 | 378,718戸 | 324,991戸 |
| 分譲住宅 | 201,888戸 | 241,201戸 | 208,169戸 |
| 総数 | 813,126戸 | 909,299戸 | 740,667戸 |
出典:国土交通省の2010年計資料、2015年計資料、2025年計資料。
10年間の減少の約半分は持家
2015年から2025年の変化を、率と戸数の両方で見ると次のようになる。
- 持家:8万2,081戸減、29.0%減。
- 貸家:5万3,727戸減、14.2%減。
- 分譲住宅:3万3,032戸減、13.7%減。
- 総数:16万8,632戸減、18.5%減。
持家の減少数は、総数の減少数の48.7%に相当する。これは減少を区分別に分解した結果であり、原因の割合ではない。それでも、10年間の縮小を説明するうえで、持家を中心に見る必要があることは分かる。
供給全体に占める割合も変わった。持家は2015年の31.2%から2025年の27.2%へ低下し、貸家は41.6%から43.9%へ上昇した。
貸家の割合が上がっても、貸家の戸数が増えたとは限らない。 この10年間では貸家も減っている。持家の減少がより大きかったため、貸家の比重が高まった。
2010年を起点にすると、貸家と分譲住宅は増えている
比較の起点を5年さかのぼると、読み方が変わる。
2010〜2025年では、持家は34.1%減った一方、貸家は9.1%増、分譲住宅は3.1%増となる。総数は8.9%減だ。
2010年は、総数が急減した2009年の翌年である。貸家と分譲住宅は2010年から2015年に増え、その後2025年までに減った。低い水準だった年から測るか、回復後の年から測るかで、増減の符号が変わる。
したがって、「すべての住宅が長期にわたって同じように減った」という説明は正確ではない。持家の落ち込みと、貸家・分譲住宅の回復後の減少を分ける方が、実際の推移に近い。
分譲と地域差:全国平均だけでは供給の変化を説明できない
分譲住宅の減少は、マンションと戸建てで強さが異なり、地域によっては増加もある。
2025年の分譲住宅のうち、マンションは8万9,888戸で前年比12.2%減、一戸建住宅は11万5,935戸で4.3%減だった。マンションの方が、前年からの落ち込みが大きい。
マンションと一戸建住宅の合計は、分譲住宅全体と一致しない。分譲住宅には、それ以外の区分も含まれるためだ。
圏域別にも、2025年の総戸数は首都圏で5.9%減、近畿圏で1.6%減と差がある。分譲マンションに限ると、首都圏は21.0%減だった一方、近畿圏は6.6%増だった。これらは国土交通省の2025年計資料による、各圏域の前年比である。
全国のマンション着工が減った年でも、すべての地域で減ったわけではない。また、集合住宅では大きな事業の着工時期が地域の戸数を動かす。単年の増加を、そのまま継続的な需要拡大と判断するのは早い。
住まいを探す人にとっては、全国の総数より、希望する地域で希望する種類の住宅がどれだけ建てられているかが重要になる。地域比較では、人口や世帯の規模も違うため、戸数の大小だけで供給の充実度を順位づけない方がよい。
背景の読み方:人口だけで着工減を説明しない
着工戸数は、世帯の動きと建築費・所得などの条件が重なって決まるため、今回の数字だけで原因は特定できない。
国土交通省の利用上の注意も、世帯数、人口移動、住宅の老朽化、建築費、地価、所得、住宅金融などを併せて見る必要があるとしている。
建てる人によって、判断する条件が違う
持家では、居住する本人が建築を判断する。建築費と予算の差が広がれば、規模を小さくする、建築を延期する、分譲住宅や中古住宅を検討するといった選択が考えられる。ただし、着工統計だけでは、どの選択に移ったかは分からない。
貸家では、建築主が賃貸後の収入や費用を見込んで判断する。分譲住宅では、事業者が販売価格、販売見込み、土地の仕入れなどを考慮する。自分で住む住宅とは、建て始めるまでの判断が異なる。
この違いから、持家が大きく減る一方で、貸家や分譲住宅の減少が比較的小さくなることはあり得る。今回のデータはその差を示しているが、特定の費用や制度が何戸分の減少を生んだかまでは示していない。
人口減少と住宅需要の減少は、同じ速度とは限らない
住まいの需要を見るには、人口に加えて世帯数が必要になる。世帯が小さくなれば、人口が減っても必要な住戸数が同じ割合で減るとは限らない。
さらに、全国の人口動向と、転入がある地域の住宅需要は一致しない。老朽住宅の建て替えも、人口の増加がなくても発生する。持家の減少を検証するなら、地域別の世帯数・転入転出、建築費、既存住宅の取引を組み合わせる必要がある。
注意点:着工が減っても、家賃や住宅価格の下落は決まらない
着工戸数が示すのは、新たに建て始める住宅の量であり、価格や現在の住宅総数ではない。
誤読を避けるため、次の違いを押さえておきたい。
- 着工と完成: 建て始めた年と完成する年は違う。着工減の影響が募集物件や販売物件に表れる時期にも差がある。
- 新規供給と既存住宅: 着工は一定期間に生じる量。地域に存在する住宅の総数や、利用できる空き家の数とは別である。
- 戸数と広さ: 小さな住戸も大きな住戸も1戸。住みやすさを考えるなら、床面積や間取りも必要になる。
- 年計と年度計: 本記事は1〜12月。4月〜翌3月の年度計と混ぜると、同じ「2025」でも対象期間が変わる。
- 公表値と修正値: 過去の数字が修正される場合がある。国土交通省は、修正後の資料をe-Statの該当ページに掲載すると案内している。
着工が減る背景が需要の弱まりなら、価格に下押し圧力がかかる可能性がある。一方、建築費が上がり、採算が合わず供給を減らしている場合には、戸数減と価格上昇が同時に起こり得る。これは条件付きの見方であり、今回の着工戸数だけではどちらかを判断できない。
空き家がある地域でも、その住宅の場所、広さ、状態が住みたい人の条件に合うとは限らない。新設住宅が減ったことと、住まいが十分に選べることも別の問題だ。
次に見る数字:持家の減少が続くか、地域の選択肢が細るか
今後の確認点は、総数の回復だけでなく、どの住宅がどの地域で増減するかにある。
- 持家: 2025年の20万1,285戸から回復するか。分譲住宅の動きも併せて見て、自分で建てる住宅の減少と購入向け供給全体の変化を分ける。
- 貸家: 戸数と床面積がどう動くか。希望する地域で、世帯人数に合う広さの供給が続くかを確認する。
- 分譲住宅: マンションと一戸建てを分け、単年の変化が数年続くかを見る。
- 地域: 着工に加え、世帯数、転入転出、空室、家賃・販売価格を確認する。
35年間で57%近く減った全国の着工戸数は、住宅建設の規模が大きく変わったことを示す。その中でも、2015年以降の持家の落ち込みは大きい。住まいの選択肢への影響を知るには、次の年計でこの減少が止まるかを確かめ、希望する地域の貸家・分譲住宅の供給と照らし合わせたい。
