レジ袋は3年で37.5%減 有料化後の数字と「プラごみ全体」の現実
2020年7月に全国で始まったレジ袋有料化の後、レジ袋の国内流通量は2019年の約20万トンから2022年の約12.5万トンへ、約7.5万トン減少しました。減少率に直すと37.5%です。
店頭でも変化は明確です。2023年度の辞退率はコンビニで74.6%、スーパーで77.0%に達しました。ただし、レジ袋が大きく減ったことと、日本のプラスチック消費全体が同じ割合で減ったことは同義ではありません。
この記事で押さえるポイントは次の4つです。
- レジ袋の国内流通量は2019年から2022年に37.5%減った
- コンビニの辞退率は23.4%から74.6%へ上昇した
- スーパーの辞退率は46.1%から77.0%へ上昇した
- 2023年の国内プラスチック消費量は843万トンあり、レジ袋削減だけでは全体像を説明できない
使用データと比較条件
有料化の直接的な効果は、重量・枚数・辞退率という異なる指標を分けて読む必要があります。
中心に使うのは、環境省の「レジ袋有料化の概要・効果」です。同資料には、業界団体や包装資材市場の資料を基にした次のデータがまとめられています。
- 対象地域:全国
- 制度開始:2020年7月1日
- 国内流通量:2019年と2022年を比較
- コンビニの辞退率:2019〜2023年度
- スーパーの辞退率:2019〜2023年度
- ドラッグストアの使用枚数:2019年と2020年を比較
プラスチック全体との関係には、環境省「令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」が掲載する2023年値を使います。同白書の基礎データは、プラスチック循環利用協会のマテリアルフロー推計です。
ここでいう「辞退率」は、買い物客がレジ袋を受け取らなかった割合です。「国内流通量」は重量、「使用枚数」は枚数なので、同じ表の中で単純に足したり、減少率を直接比較したりはできません。
レジ袋の国内流通量は約7.5万トン減った
有料化前後を重量で比べると、確認できる減少率は37.5%です。
環境省資料が示す国内流通量は、次のように変わりました。
| 指標 | 有料化前 | 有料化後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| レジ袋の国内流通量 | 2019年:約20万トン | 2022年:約12.5万トン | 約7.5万トン減(37.5%減) |
計算は「7.5万トン÷20万トン」です。2022年の流通量は、2019年の約62.5%まで縮小したことになります。
この数字は、店頭で袋を受け取らない行動が一時的な反応ではなく、包装資材の流通量にまで表れたことを示します。一方、2019年と2022年の2時点比較であり、その間には新型コロナウイルス感染症による消費・物流の変化もありました。7.5万トンの全量を有料化だけの効果と断定することはできません。
ドラッグストアでは約28億枚減
ドラッグストアの使用枚数は、2019年の約33億枚から2020年の約5億枚へ減りました。差は約28億枚、率にすると約84.8%減です。
ただし、2020年値は7月以降の前年同月比を使った推計です。年間の実測値同士を比べた数字ではないため、37.5%という国内流通量の減少率とは条件が異なります。
ここがポイント: 重量ベースでは2019年から2022年に37.5%減、ドラッグストアの推計枚数では約84.8%減。どちらも大幅な減少を示しますが、対象業態・期間・単位が違うため、同じ物差しでは比較できません。
コンビニで最も大きく変わった
辞退率の上昇幅は、もともと袋を受け取る人が多かったコンビニのほうが大きくなりました。
| 年度 | コンビニ | スーパー |
|---|---|---|
| 2019年度 | 23.4% | 46.1% |
| 2020年度 | 74.6% | 47.4% |
| 2021年度 | 73.8% | 76.5% |
| 2022年度 | 73.4% | 77.1% |
| 2023年度 | 74.6% | 77.0% |
コンビニは51.2ポイント上昇
コンビニの辞退率は2019年度の23.4%から、2020年度に74.6%へ急上昇しました。2023年度も74.6%で、制度開始後の水準が維持されています。
逆に「袋を受け取った割合」で見ると、76.6%から25.4%へ低下しました。来店客数や購入点数をそろえた袋の枚数ではありませんが、レジで袋を受け取る行動が大きく変わったことは読み取れます。
スーパーは2021年度に段差がある
スーパーでは、2019年度の46.1%から2023年度の77.0%へ、30.9ポイント上昇しています。環境省資料に記された有料化前データとの比較では29.1ポイント増です。
注意したいのは、2020年度が47.4%にとどまり、2021年度に76.5%へ上がっている点です。資料も、データの集計時期の違いによって効果が表れた年度が業界ごとに異なると注記しています。
制度の効き方が1年遅れたと結論づけるのではなく、年度値の対象期間がそろっていないために段差がずれたと読むのが安全です。
なぜ数円の有料化で行動が変わったのか
大きかったのは家計負担そのものより、袋を受け取るたびに選択が必要になったことです。
レジ袋1枚の価格が数円なら、1回の支出は小さいものです。それでも無料配布から有料販売へ変わると、買い物客は会計のたびに「袋を買うか」「手持ちのバッグを使うか」を決めます。
制度開始前の環境省調査でも、有料化企業19社の平均辞退率は76.5%でした。これに対し、現金値引きは41.2%、ポイント還元は40.9%、無料配布は28.9%でした。対象企業や店舗条件が同一ではないため厳密な実験比較ではありませんが、無料で受け取る状態を変えることの強さがうかがえます。
生活者にとっての変化は、次のように整理できます。
- マイバッグを持参する習慣がつく
- バッグがないときは、商品を手持ちのかばんへ入れる
- 必要なときだけレジ袋を購入する
- 購入した袋を家庭で再利用する
最後の「再利用」は統計を読むうえで重要です。店頭での配布量が減っても、家庭がごみ袋などに使う袋を別の商品として購入すれば、プラスチック消費の一部は置き換わります。今回の流通量・辞退率データだけでは、その代替購入まで追跡できません。
レジ袋が減っても、プラスチック全体への効果は限定的
レジ袋対策は成功した一方、それだけでプラスチック問題全体が解決したとはいえません。
2023年の日本では、プラスチックの国内消費量が843万トン、廃プラスチック総排出量が769万トンと推計されています。廃プラスチックの内訳は、一般系387万トン、産業系382万トンです。
2019年のレジ袋国内流通量約20万トンを、2023年の国内プラスチック消費量843万トンと機械的に比べると約2.4%です。ただし、年次も統計の定義も異なるため、これは規模感をつかむ参考値にすぎません。
さらに、2022年までに減ったレジ袋約7.5万トンは、2023年の国内消費量の約0.9%に相当する規模です。ここから分かるのは、次の二つです。
- レジ袋という特定品目では、目に見える削減が起きた
- 食品容器、包装フィルム、日用品、建材、工業用途まで含むプラスチック全体では、追加策が必要
レジ袋は、消費者が毎日の会計で直接選べる品目です。削減効果を出しやすい一方、プラスチック用途の一部分にすぎないという限界もあります。
「有効利用率89%」をリサイクル率と読まない
プラスチック全体を見るときは、再生利用と熱回収を区別する必要があります。
2023年の廃プラスチック総排出量769万トンに対し、有効利用率は約89%と推計されています。しかし、この「有効利用」には、材料として再利用するマテリアルリサイクルだけでなく、焼却時に発電や熱利用を行うエネルギー回収も含まれます。
プラスチック循環利用協会の2023年マテリアルフローでは、再生利用は171万トンです。総排出量769万トンに対して約22%に当たります。一方、単純焼却は約8%、埋立処理は約3%です。
したがって、89%を「89%が新しいプラスチック製品へ戻った」と読むのは誤りです。レジ袋の使用抑制は、廃棄後の処理方法を改善する施策ではなく、最初から使う量を減らすリデュースに位置づけるべきです。
データから言えること、言えないこと
制度後の減少は明確ですが、因果関係と環境負荷の大きさには未計測の部分が残ります。
言えること
- レジ袋の国内流通量は2019年から2022年に約7.5万トン減った
- コンビニとスーパーの辞退率は、有料化前より大幅に高い
- 2023年度まで高い辞退率が続き、制度開始直後だけの変化ではなかった
- ドラッグストアでも、制度開始年に使用枚数の大幅減が推計された
このデータだけでは言えないこと
- 7.5万トンの減少がすべて有料化だけによるものか
- マイバッグの製造・洗浄・廃棄まで含めた環境負荷がどれだけ減ったか
- 家庭用ポリ袋などへの代替購入が何トンあったか
- 海洋プラスチックごみや温室効果ガスが実際にどれだけ減ったか
- 都道府県ごとの削減率にどの程度の差があるか
全国一律の制度だったため、現在の公表資料は業態別の比較が中心です。都道府県ランキングを作るには、地域別に同じ定義と期間で集めた流通量または使用枚数が必要ですが、今回参照した資料にはそろっていません。
対象外の袋があることにも注意
「すべてのレジ袋が有料」ではなく、環境性能や厚さの条件を満たす袋には対象外があります。
有料化の対象は、商品を持ち運ぶための、持ち手が付いたプラスチック製買物袋です。一方、次の袋は制度上の有料化対象外です。
- 厚さ50マイクロメートル以上で、繰り返し使用できる袋
- 海洋生分解性プラスチックの配合率が100%の袋
- バイオマスプラスチックの配合率が25%以上の袋
紙袋や布袋、持ち手のない食品用ロール袋も、この制度が対象とするプラスチック製買物袋とは別です。そのため、レジ周辺で提供される袋をすべて数えた統計と、制度対象のレジ袋だけを数えた統計は一致しません。
また、対象外の素材へ切り替わった場合、従来型レジ袋の量は減りますが、包装全体の重量やライフサイクル全体の環境負荷が必ず同じ割合で減るわけではありません。
次に見るべきは「袋の先」の削減
次の評価軸は、レジ袋の高い辞退率を維持しながら、ほかの使い捨てプラスチックをどこまで減らせるかです。
2023年度の辞退率はコンビニ、スーパーとも7割台で安定しています。今後は辞退率の数ポイントの上下だけでなく、より大きなプラスチックの流れを見る必要があります。
注目したい数字は次の通りです。
- レジ袋の国内流通量が2022年以降も減少・横ばいを維持するか
- 容器包装や使い捨て製品の市場投入量が減るか
- 代替品を含む包装全体の重量がどう変わるか
- 廃プラスチック769万トンのうち、再生利用171万トンの比率が高まるか
- 熱回収を含む「有効利用率」と、材料として循環する割合を分けて示せるか
レジ袋有料化は、受け取る行動を変え、流通量を37.5%減らしました。次に問われるのは、その成功を、食品容器や包装材など使用量の大きい分野へどう広げるかです。
