親と暮らす未婚者は増えているのか――若年層の最新値と年代別比較で読む
親と暮らす未婚者が、どの年代でも一様に増えているわけではありません。2025年の出生動向基本調査では、18~34歳の未婚者の親との同居割合は男性66.6%、女性68.3%。男性は前回から横ばいで、女性は2015年以降、低下が続いています。
一方、国勢調査の2010年と2015年の比較では、35歳以上の未婚者で同居割合が上昇しました。若年層の最近の動きと、中年以降の過去の変化を分けることが、この問いを読み解く出発点です。
この記事で分かることは、次の3点です。
- 最新の若年未婚者の同居割合と、男女の違い
- 年代によって異なる同居割合の変化
- 人数・割合・家計上の依存を混同しないための見方
使用データ――最新の若年層と過去の年代差を分けて比べる
比較する年齢や調査が違うため、二つの統計を一本の連続したグラフとして扱うことはできません。
最新の状況には、国立社会保障・人口問題研究所が2026年9月11日に公表した「第17回出生動向基本調査」を使います。調査時点は2025年6月30日。全国1,000調査区の18歳以上55歳未満の独身者などを対象とした標本調査で、独身者調査の有効票数は6,756票、有効回収率は42.7%です。この記事で使う親との同居の集計は、そのうち18~34歳の未婚者を対象としています。調査概要
年代差の比較には、総務省統計局「平成27年国勢調査 世帯構造等基本集計」の表Ⅱ-2を使います。同じ表に掲載された2010年と2015年の全国値を、男女別・5歳階級別に比較します。
ここでいう未婚は、結婚したことがない人です。離別・死別を含む「現在、配偶者がいない人」全体とは違います。また、同居は両親または父母のいずれかと暮らしている状態であり、親から仕送りを受ける別居者は同居者に入りません。
なお、2025年国勢調査の人口等基本集計も2026年9月29日更新のデータとして公開されています。以下の2010~2015年比較は、年代ごとの変化を確認するための過去比較であり、現在の中高年層の水準を示すものではありません。e-Statの関連統計一覧
最新の若年層――約3人に2人が同居、女性は低下が続く
2025年の18~34歳では親との同居が多数派ですが、増加が続いているとは読めません。
出生動向基本調査の図表10-12で確認できる最新値は、次のとおりです。
- 男性:66.6%。2021年の前回調査から横ばい
- 女性:68.3%。2015年以降低下
- 男女差:女性が1.7ポイント高い
同居割合が高いことと、その割合が上がっていることは別です。約3人に2人という水準だけを見て「実家暮らしが増加」と表現すると、女性の低下という重要な変化を取り落とします。
また、18~34歳には学生も就業者も含まれます。18歳と34歳では進学や就職の段階が違うため、この全体値を「社会人の約3人に2人が親と暮らす」と言い換えることもできません。
同資料では、正規の職員や派遣・嘱託等で男女とも同居割合が低下し、パート・アルバイト、自営業主等、学生、無職・家事では、それらより同居割合が高い傾向が示されています。ただし、職業別の差だけでは、収入が同居を決めたのか、進学・勤務地・家族事情が関係したのかまでは分かりません。
年代別の過去比較――25~34歳は低下、40~44歳は上昇
2010~2015年の国勢調査では、同じ未婚者でも年代によって変化の向きが違いました。
以下は、各年齢階級の未婚者に占める、親と同居している人の割合です。同居の判定ができない人を除いた値で、単位は%です。
| 年齢 | 男性 2010→2015年 | 女性 2010→2015年 |
|---|---|---|
| 20~24歳 | 66.4→67.4 | 72.2→72.8 |
| 25~29歳 | 61.7→60.9 | 68.1→67.1 |
| 30~34歳 | 62.1→61.9 | 66.0→64.7 |
| 35~39歳 | 60.9→62.6 | 63.0→63.2 |
| 40~44歳 | 57.6→60.8 | 58.4→60.6 |
| 45~49歳 | 53.6→56.3 | 53.3→55.7 |
| 50~54歳 | 46.5→49.7 | 45.8→49.2 |
出典:総務省統計局「平成27年国勢調査 世帯構造等基本集計 結果の概要」表Ⅱ-2
上昇幅が目立つのは40代以降
40~44歳では、男性が3.2ポイント、女性が2.2ポイント上昇しました。50~54歳でも男性は3.2ポイント、女性は3.4ポイント上昇しています。
対して25~29歳、30~34歳は男女とも低下しました。「若者が親元を離れなくなった」という一つの説明では、この違いを捉えられません。
年齢が高いほど低いことにも注意
2015年の男性では、20~24歳の67.4%に対し、50~54歳は49.7%でした。しかし、この差を「年齢を重ねると約18ポイントの人が独立する」と読むのは誤りです。
同じ人を追跡した結果ではなく、その年の異なる年齢集団を比べています。生まれた世代の違いに加え、結婚した人が未婚者の集計から外れることや、親の死亡によって同居できなくなることも、年齢別の値に関係します。
人数と割合――同居率が上がっても人数は減る
同居者の増減を判断するには、割合と人数を必ず一緒に見る必要があります。
国勢調査の35~39歳男性では、親と同居する未婚者の割合は2010年の60.9%から2015年の62.6%へ上昇しました。一方、同居者数は表の千人単位で104万8千人から88万6千人へ減っています。
なぜ逆向きになるのでしょうか。この年齢階級の未婚男性総数自体が、172万1千人から141万6千人へ減ったためです。同居する割合が高くなっても、その割合を掛ける対象人数が小さくなれば、同居者数は減ります。
反対に、40~44歳男性では、同居割合が57.6%から60.8%へ上がり、同居者数も70万9千人から86万6千人へ増えました。同じ35~44歳の中でも、前半と後半で人数の動きが異なります。数値はいずれも前掲の国勢調査表Ⅱ-2によります。
ここがポイント: 「未婚者のうち親と暮らす割合」「同年代の全人口に占める親同居未婚者の割合」「親同居未婚者の人数」は、それぞれ別の指標です。
同年代の全人口を分母にした割合には、未婚者がどれほどいるかも関係します。未婚者の中の同居割合が変わらなくても、未婚者の割合が上がれば、地域の同年代人口に占める親同居未婚者の割合は上がり得ます。
家族構造の変化を読むときは、「増えた」という言葉の直前に、何を数えたのかを置く必要があります。
家族の変化――同居だけでは支える側が分からない
親と同じ家に住んでいるという情報だけでは、誰が誰を支えているかは判断できません。
家計を考えるなら、家賃や食費を親が負担しているのか、成人した子が生活費を入れているのかで意味が変わります。親の生活支援や介護を子が担っている場合も、同じ「親との同居」に含まれます。
これは同居率から確認された内訳ではなく、同居の数字を解釈する際に区別すべき条件です。住む場所が同じことを、そのまま経済的な依存や無職と結び付けることはできません。
住宅費の説明には追加データが必要
「家賃が高くなったため同居が増えた」という説明は分かりやすいものの、ここで示した統計だけでは検証できません。家賃、本人の可処分所得、勤務地、実家の位置、転居理由を同じ条件で比べる必要があります。
例えば地域比較では、実家から通える仕事が多い地域と、就職のために転居する人が多い地域を分けて考えます。同居率の高低だけを並べたランキングでは、住宅事情と人口移動の違いが混ざってしまいます。
成人した子の同居は住宅需要にも関係する
未婚者が増えても、その全員が一人暮らしを始めるとは限りません。同居が続けば、人数の増加がそのまま単身世帯数や単身向け住宅の需要増になるわけではありません。
逆に別居が進めば、同じ人口でも世帯数が増える場合があります。住宅や地域のサービスを考える際は、未婚者数に加えて、実際にいくつの世帯に分かれて暮らしているかを見る必要があります。
比較の限界――最新値と過去の表を直接つなげない
今回のデータは、若年層の最新の方向と、過去の年代差を示しますが、成人全体の長期増加を一つの率で確定するものではありません。
読み違いを避けるため、次の条件を確認してください。
- 年齢範囲:最新の出生動向基本調査の同居割合は18~34歳。国勢調査の表は5歳階級別で、対象が一致しません。
- 調査方法:出生動向基本調査は回答者を集計する標本調査、国勢調査は全数調査です。回収状況や不詳の扱いも違います。
- 時点:2025年6月の状況と、2010年・2015年10月の状況を扱っています。過去の上昇を現在まで延長できません。
- 分母:国勢調査の掲載同居率は同居判定不能を除いて算出されています。表の未婚者総数で単純に割ると、掲載値と一致しない場合があります。
- 人と世帯:兄弟姉妹が同じ親と暮らしていれば、同居者は複数人でも世帯は一つです。
2025年国勢調査には原数値と不詳補完値があり、2020年についても遡及集計された不詳補完値が公開されています。次の比較では、同じ種類の値、同じ対象範囲、同じ分母をそろえることが欠かせません。古い概要表と新しい補完値をそのまま並べると、実際の変化に集計条件の違いが重なるおそれがあります。
次に見る数字――中高年層の人数と家計の担い手
今後の確認点は、若年層の同居割合が高いことそのものより、年代別の変化と生活の中身です。
若年層では、最新調査で男性が横ばい、女性が低下しました。過去の国勢調査では40代以降で同居割合が上昇しましたが、その後も同じ方向だったかは、新しい年代別集計で確認する必要があります。
見るべき数字は三つあります。
- 同じ年齢・性別の未婚者に占める同居割合が、2020年から2025年にどう変わったか
- 同居割合の変化と、同居者の人数の増減が一致しているか
- 同居世帯で、生活費や家事・介護を誰が担っているか
親と暮らす成人を一括りにすると、住居費を分担する世帯と、家計や介護の負担が一人に集中する世帯の違いが見えなくなります。必要なのは、同じ住所にいる人数を数えた先で、暮らしを維持する収入と役割を確かめることです。
