女性管理職は増えたが、一様ではない――企業規模・業種で読む2009〜2025年度
女性管理職の割合は長期的に上がっている。厚生労働省の雇用均等基本調査では、部長相当職に占める女性は2009年度の4.5%から2025年度の9.2%へ、課長相当職では6.1%から13.2%へ増えた。
ただし、全国平均だけでは変化をつかみきれない。2015年度と2025年度を比べると、大企業では上昇が目立つ一方、小規模企業や一部の業種では、役員を含む管理職全体の女性比率が横ばい、あるいは低下している。
この記事では、全国の長期推移を確認したうえで、同じ調査の企業規模別・業種別データを10年間隔で比較する。
- 部長・課長の女性比率は、2009年度から2025年度にかけて約2倍になった。
- 大企業は女性管理職がいる企業の割合が高いが、管理職全体に占める女性の割合は低い。
- 業種別の水準と増減は異なる。「全国で増えた」を、すべての職場に当てはめることはできない。
使用データ:全国の民営企業を、役職と分母をそろえて比べる
比較の軸は、厚生労働省「雇用均等基本調査」の企業調査でそろえる。
2026年10月8日時点の最新公表値は、2026年7月31日に発表された2025年度調査だ。管理職の状況は、原則として2025年10月1日現在を表す。公表年と、実際に職場を調べた年には時間差がある。報道発表資料
調査条件は次のとおり。
- 対象地域: 全国。
- 対象企業: 常用労働者10人以上の民営企業。製造業、情報通信業、医療・福祉など16大産業が対象。
- 調査方法: 産業・規模別に企業を抽出する標本調査。2025年度は6,000企業を対象に、3,077企業が有効回答した。有効回答率は51.3%。
- 比較期間: 全国の役職別推移は2009〜2025年度、企業規模別・業種別比較は2015年度と2025年度。
官公庁や常用労働者10人未満の企業を含む、すべての職場の数字ではない。また、企業規模は各店舗や支店の人数ではなく、企業の常用労働者数で区分している。調査概要
「女性管理職比率」は、何を分母にするかで変わる
本稿でいう女性比率は、該当する役職者の総数に占める女性の割合だ。女性従業員のうち何%が管理職になったか、という昇進率ではない。
規模別・業種別比較では「課長相当職以上(役員を含む)」を使う。課長だけの数字とは区別が必要で、係長も含まない。
調査上の管理職等には、部下を指揮・監督する役職に加えて、専任職やスタッフ管理職なども含まれる。会社ごとの肩書だけで比較せず、統計の区分を確認したい。用語の解説・利用上の注意
長期推移:課長は13.2%、部長は9.2%まで上がった
2009年度以降、女性の割合は部長・課長・係長のいずれでも上昇したが、上位の役職ほど水準は低い。
以下は、常用労働者10人以上の企業について、各役職者に占める女性の割合を抜き出したものだ。単位は%。
| 年度 | 部長相当職 | 課長相当職 | 係長相当職 |
|---|---|---|---|
| 2009 | 4.5 | 6.1 | 12.2 |
| 2015 | 5.8 | 8.4 | 14.7 |
| 2019 | 6.9 | 10.9 | 17.1 |
| 2024 | 8.7 | 12.3 | 21.1 |
| 2025 | 9.2 | 13.2 | 20.9 |
2009年度から2025年度の増加幅を計算すると、部長は4.7ポイント、課長は7.1ポイント、係長は8.7ポイントとなる。部長と課長は約2倍に増えたものの、最新値でも女性は部長の約11人に1人、課長の約8人に1人にとどまる。
一方、毎年そろって増えているわけではない。2025年度の係長は前年から0.2ポイント低下した。長期の上昇と、直近1年の動きは分けて読む必要がある。
ここで見えるのは、各役職の男女構成の違いだ。係長20.9%と部長9.2%の差を、そのまま「女性係長が部長になる確率」とは読めない。役職ごとに年齢、勤続年数、所属企業などが異なる集団だからだ。
企業規模別:大企業は伸びたが、最新の比率は小規模企業が高い
企業規模別では、大企業の上昇幅と小規模企業の高い水準が同時に見える。
比較する指標は、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合。両年度とも役員を含む。増減幅は、2025年度から2015年度を引いたポイント差であり、人数の増減ではない。
| 常用労働者数 | 2015年度 | 2025年度 | 増減幅 |
|---|---|---|---|
| 5,000人以上 | 5.4% | 9.3% | +3.9ポイント |
| 1,000〜4,999人 | 4.2% | 10.4% | +6.2ポイント |
| 300〜999人 | 4.8% | 9.8% | +5.0ポイント |
| 100〜299人 | 6.4% | 10.5% | +4.1ポイント |
| 30〜99人 | 13.7% | 15.1% | +1.4ポイント |
| 10〜29人 | 22.7% | 22.2% | −0.5ポイント |
出典:2015年度企業調査・第2表、2025年度企業調査・第9表。増減幅は両表から計算。
1,000〜4,999人の企業では、女性比率が4.2%から10.4%へ上がった。300〜999人でも5.0ポイント上昇している。それでも最新の水準は、10〜29人の22.2%を下回る。
ただし、10〜29人では全体の比率が0.5ポイント下がった一方、課長単独では17.4%から18.9%へ、部長単独では11.2%から16.7%へ上がった。役員を含む合計と、個別の役職は同じ動きをするとは限らない。
「女性管理職がいる企業」と「女性管理職の割合」は別の話
大企業で女性管理職を見かけやすいことと、男女構成が均等に近いことは両立しない場合がある。
2025年度の5,000人以上の企業では、女性の課長相当職がいる企業は94.8%に達する。しかし、その規模の課長相当職に占める女性は10.5%だ。
管理職の人数が多い会社では、女性が1人以上いるという条件を満たしても、管理職全体では男性が多数を占めうる。「女性管理職あり」という説明だけでは、職場の男女構成までは分からない。
ここがポイント: 女性管理職が「いるか」を知る数字と、管理職の「何割を占めるか」を知る数字は、分母が違う。就職先や勤務先を見るときは、後者も確認したい。
業種別:高い業種がさらに伸びるとは限らない
業種別では、女性比率の水準と10年間の増減を分けると、全国平均に隠れた違いが見える。
以下は16大産業のうち、異なる動きが見られる8業種を抜き出した比較だ。指標は企業規模別と同じく、課長相当職以上、役員を含む女性比率である。全業種を並べたランキングではない。
| 業種 | 2015年度 | 2025年度 | 増減幅 |
|---|---|---|---|
| 医療、福祉 | 46.7% | 53.6% | +6.9ポイント |
| 教育、学習支援業 | 21.1% | 21.3% | +0.2ポイント |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 28.0% | 20.1% | −7.9ポイント |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 25.1% | 19.1% | −6.0ポイント |
| 金融業、保険業 | 7.5% | 15.0% | +7.5ポイント |
| 情報通信業 | 8.7% | 14.7% | +6.0ポイント |
| 製造業 | 7.7% | 9.7% | +2.0ポイント |
| 運輸業、郵便業 | 11.0% | 9.4% | −1.6ポイント |
出典:2015年度企業調査・第2表、2025年度企業調査・第9表。増減幅は両表から計算。
医療・福祉は2025年度に53.6%と、女性が半数を超えている。金融・保険は15.0%で、医療・福祉との水準差は大きいものの、2015年度の7.5%から倍になった。
反対に、宿泊・飲食サービスと生活関連サービス・娯楽は、全国平均を上回る水準にあるが、10年前より低い。「比率が高い業種」と「比率が上がった業種」は一致しない。
比率の低下だけで、女性が減ったとは言えない
比率は女性管理職数を管理職総数で割った値だ。女性管理職の人数が変わらなくても、男性管理職が増えれば低下する。女性の人数が増えても、総数の増加がそれを上回れば、比率は下がる。
さらに、この比較は同じ企業を追跡した結果ではない。業種の中で企業規模や事業内容の構成が変わることもある。表だけから「その業種で女性の登用が後退した」と原因まで断定することはできない。
読み取れること:全国平均の改善と、自分の職場の改善は分けて見る
女性管理職の長期的な増加は確認できるが、採用・配置・昇進のどこが変わったかは、この比率だけでは決まらない。
管理職の男女構成は、現在の昇進だけでなく、過去の採用や離職、経験を積める仕事への配置、管理職の退職などの積み重ねで変わる。これらは背景を検証するための観点であり、今回の表がそれぞれの寄与を測ったわけではない。
比較するときは、立場によって知りたい数字も異なる。
- 就職・転職を考える人: 同じ業種・近い企業規模の値を基準に、勤務先候補の役職別比率と複数年の変化を見る。
- 勤務先の人事担当者: 女性従業員の構成、昇進候補者、新たな昇進者を確認し、候補者が少ないのか、選考段階で差があるのかを分ける。
- 地域の雇用を調べる人: 医療・福祉や製造業など、地域に多い業種を確認する。全国の業種別比率を、その地域の実測値として扱わない。
女性従業員が少ない会社と多い会社では、同じ管理職比率でも背景が違う。ただし、従業員構成で説明できるとしても、そこで比較を止める必要はない。採用や配置の段階から差が生じている可能性も、別のデータで調べる対象になる。
注意点:小さな前年差や異なる統計を、一本の線につながない
長期比較を信頼できるものにするには、対象範囲と数字の作り方を保つ必要がある。
2009年度に対象範囲が広がった
企業調査は2009年度から常用労働者10人以上を対象としている。それ以前の30人以上の結果と、現在の10人以上の結果をそのままつなぐと、小規模企業を加えた影響が混ざる。
本稿の全国推移を2009年度から始めたのは、この対象範囲をそろえるためだ。なお、2011年度は岩手・宮城・福島の3県を除く結果であり、途中年を追加して比較する場合は注意が必要になる。
推計値には標本の揺れがある
雇用均等基本調査は、回答企業の情報から全体を推計する標本調査だ。年度ごとの小さな差には、実際の変化に加えて標本の揺れも含まれうる。
公表表には、分母となる標本数が少ない数値を示す「*」がある。「0.0」も厳密なゼロではなく、表示単位に満たない場合がある。細かな順位差や1年だけの増減を読む際には、元表の注記を確認したい。利用上の注意
別の調査との数字の違いは、まず定義を確認する
女性管理職を扱う数字でも、役員を含むか、係長を含むか、企業単位か事業所単位かで値は変わる。比率、人数、企業割合、昇進者割合もそれぞれ別の指標だ。
異なる調査の最新値を継ぎ足して、一本の長期推移にしないことが大切になる。同じ調査でも、役職と企業規模の条件をそろえて初めて比較できる。
次に見る数字:上位役職まで増加が続くか
今後の確認点は、女性管理職の増加が、業種や企業規模をまたいで部長などの上位役職まで広がるかどうかだ。
全国では課長の女性比率が13.2%まで上がった。しかし、部長は9.2%で、業種別にも10年前より低い分野が残る。平均の改善だけを追うと、この違いを見落とす。
次回以降の公表では、次の点をそろえて見たい。
- 大企業で、課長の増加に続いて部長の比率も上がるか。
- 比率が低下した業種で、複数年を通じても同じ方向が続くか。
- 役員を含む合計と、部長・課長それぞれの動きが一致するか。
- 個別企業の公表値で、比率と併せて人数や対象範囲を確認できるか。
勤務先の数字を読むときも、まず「どの役職を、誰を分母にして数えたか」を確かめる。そのうえで同業・同規模の企業群と比較すれば、全国平均の上昇が自分の職場にも届いているかを、より具体的に判断できる。
