20代の果物摂取は1日44.3g 供給量も1975年度から26%減った
日本で果物を食べる量は、長期的に減っています。農林水産省の食料需給表では、1人1年当たりの果実供給量が1975年度の42.5kgから2023年度の31.3kgへ減少しました。減少幅は11.2kg、率にすると約26%です。
ただし、より大きな問題は世代差です。2023年の国民健康・栄養調査で20代の果実類摂取量は1日44.3g。70代の142.4gの3分の1にも届かず、国が掲げる1日200gの目標に対しては約22%にとどまります。
この記事で押さえるポイントは次の4つです。
- 果実の年間供給量は1975年度から2023年度までに約26%減った
- 2023年の摂取量は20~40代が1日50g前後、70代は142.4gだった
- 家計の購入量でも、1988年から2008年にかけて生鮮果物が3割以上減った
- 「供給量」「摂取量」「購入量」は対象と定義が異なり、そのまま同列には扱えない
今回使う3つの公的データ
果物離れを確かめるには、供給、実際の摂取、家庭での購入を分けて見る必要があります。
本記事では、次の資料を使用します。
- 食料需給表:農林水産省。国内に供給された果実を人口で割った「1人1年当たり供給純食料」を確認
- 2023年国民健康・栄養調査:厚生労働省。栄養摂取状況調査に基づく、年齢階級別の1人1日当たり果実類摂取量を確認
- 家計調査:総務省統計局。二人以上の世帯が購入した生鮮果物の数量を確認
対象地域はいずれも全国です。食料需給表は年度、国民健康・栄養調査と家計調査は暦年で集計されており、期間の区切りも同じではありません。
また、食料需給表の「供給純食料」は、家庭で実際に口にした量ではありません。国内消費仕向量から飼料用、種子用、加工用、減耗量などを差し引き、可食部を考慮して人口で割った供給側の指標です。
一方、国民健康・栄養調査は食べた量、家計調査は家庭が買った量を捉えます。外食、加工品、廃棄、自家生産、贈答などの扱いが異なるため、3つの数字が一致しないのは当然です。
果実供給量は48年間で11.2kg減少
長期系列で確認できる減少幅は、1人1年当たり11.2kgです。
農林水産省の2023年度食料需給表によると、果実の1人1年当たり供給純食料は次のように推移しました。
| 年度 | 果実供給量 (1人1年当たり) | 1975年度比 |
|---|---|---|
| 1975年度 | 42.5kg | 基準 |
| 1985年度 | 38.2kg | -10.1% |
| 1995年度 | 42.2kg | -0.7% |
| 2005年度 | 43.1kg | +1.4% |
| 2014年度 | 35.9kg | -15.5% |
| 2019年度 | 33.9kg | -20.2% |
| 2022年度 | 33.3kg | -21.6% |
| 2023年度(概算) | 31.3kg | -26.4% |
単純に右肩下がりだったわけではありません。1985年度に38.2kgまで低下した後、2005年度には43.1kgまで戻っています。そこから再び減少し、2023年度は比較表の中で最も少ない31.3kgとなりました。
2005年度から2023年度に限ると、減少量は11.8kg、減少率は約27%です。近年の低下は、数年だけの変動ではなく、約20年にわたる動きとして表れています。
1日当たりに直すと約86g
2023年度の31.3kgを365日で単純に割ると、1日当たり約85.8gです。ただし、これは供給量を日数で割った参考値であり、各人の摂取量ではありません。
国民全員が毎日約86gずつ食べた、という意味ではない点に注意が必要です。実際の食べ方には、年齢や性別による大きな差があります。
20~40代は1日50gに届かない
2023年の最大の特徴は、働き盛りの世代と高齢層の間に約3倍の差があることです。
厚生労働省の2023年国民健康・栄養調査では、1歳以上の果実類摂取量は全体平均で1日88.4g、20歳以上では92.9gでした。年齢階級別に見ると、20代から40代が特に少なくなっています。
| 年齢階級 | 果実類摂取量 (1人1日当たり) | 200gに対する割合 |
|---|---|---|
| 15~19歳 | 62.2g | 31.1% |
| 20~29歳 | 44.3g | 22.2% |
| 30~39歳 | 49.5g | 24.8% |
| 40~49歳 | 49.0g | 24.5% |
| 50~59歳 | 67.0g | 33.5% |
| 60~69歳 | 99.4g | 49.7% |
| 70~79歳 | 142.4g | 71.2% |
| 80歳以上 | 155.4g | 77.7% |
20代の44.3gに対し、70代は142.4gで約3.2倍、80歳以上は155.4gで約3.5倍です。60代になると99.4gへ増え、70代ではさらに42.9g多くなります。
世代の境目ははっきりしています。20~40代はいずれも50g未満ですが、60代はほぼ100g、70代は140gを超えました。
ここがポイント: 果物摂取の少なさは全年代に均等に広がっているのではありません。2023年の平均を押し下げている中心は、1日50g前後にとどまる20~40代です。
男女差より年齢差が大きい
20歳以上の平均は男性82.7g、女性101.9gで、女性が19.2g多くなっています。しかし、同じ性別の中でも年齢による差はさらに大きくなります。
男性では40代が39.1g、80歳以上が148.4g。女性では20代が47.7g、80歳以上が160.6gでした。男女の違いだけを見ても、若い世代の少なさは説明できません。
目標200gとの距離はどれくらいか
20歳以上の平均92.9gでは、目標まで毎日107.1g足りません。
2024年度から始まった「健康日本21(第三次)」では、20歳以上の果物摂取量について1日200gが目標になりました。2023年の実績を基準にすると、平均摂取量は目標の46.5%です。
年代別の不足量は次のようになります。
- 20代:155.7g不足
- 30代:150.5g不足
- 40代:151.0g不足
- 50代:133.0g不足
- 60代:100.6g不足
- 70代:57.6g不足
- 80歳以上:44.6g不足
ここでいう200gは集団の健康づくりに用いる目標値です。個人が特定の日に200g未満だったことだけで、健康状態を判定する数値ではありません。
それでも、20~40代の平均が目標の4分の1前後という差は小さくありません。若い世代では「もう少し増やす」という程度ではなく、日常の食事や間食に果物が入る頻度そのものを考える必要がある水準です。
家庭が買う量も減っていた
家計調査でも、生鮮果物の購入減少が確認されています。
総務省統計局が二人以上の世帯を対象に1988年と2008年を比較した資料では、2008年の生鮮果物の年間購入数量は1988年の7割弱でした。20年間で3割以上減った計算です。
品目別では、バナナを除くすべての生鮮果物で購入数量が減少しました。バナナは季節を問わず購入される一方、なしやかきでは、支出が特定の旬の月に集中する度合いが弱まっていました。
この結果は、食料需給表に表れた長期的な減少と方向が一致します。ただし、家計調査の数字には次の制約があります。
- 対象は二人以上の世帯で、単身世帯を含まない
- 購入後に家庭で廃棄された量も購入数量に含まれる
- 外食や中食に含まれる果物を数量として直接捉えられない
- 世帯人数や世帯主年齢の変化が、1世帯当たりの数量に影響する
- 1988年の結果は農林漁家世帯を除いており、2008年と対象範囲が完全には同じでない
したがって、「家庭の購入量が3割以上減ったから、個人の摂取量も同じ割合で減った」とは言えません。確認できるのは、二人以上の世帯が家庭向けに買う生鮮果物の量が大きく縮小したという事実です。
年齢差の背景をどう読むか
統計が示すのは世代差の存在であり、その原因までは特定していません。
20~40代の摂取量が少ない背景として、価格、所得、調理や皮むきの手間、保存期間、食事を取る場所、単身世帯の多さなど、複数の要因が考えられます。しかし、今回使った3つの統計だけでは、それぞれの寄与を切り分けられません。
高齢世帯の支出には贈答も含まれる
2008年の家計調査では、世帯主が60代または70歳以上の世帯で、生鮮果物への年間支出の約2割が世帯外への贈答用でした。
このため、世帯主年齢別の購入金額をそのまま「家庭内で食べた量」と解釈すると、高齢世帯の消費を過大に見る可能性があります。一方、国民健康・栄養調査の摂取量でも高齢層が多いため、年齢差のすべてが贈答で生じているわけではありません。
高齢化だけでは供給減を説明できない
日本では高齢者の割合が上昇しています。今回の摂取量データでは高齢層ほど果物を多く食べるため、人口構成の変化だけを考えれば、1人当たりの平均を押し上げる方向に働くはずです。
それにもかかわらず、果実の供給量は2005年度以降に減っています。これは、人口の高齢化だけでは長期的な果物離れを説明できないことを示します。ただし、世代ごとの食習慣が過去からどう変化したかを確かめるには、同じ定義による複数年の年齢別データが必要です。
「果物離れ」を誤読しないための注意点
異なる統計を一本の連続したグラフのように扱わないことが重要です。
供給量は摂取量ではない
食料需給表は、国内にどれだけ食料が供給されたかを見るマクロ統計です。流通や家庭内での廃棄、個人差を直接示しません。
果実類の範囲は日常語の「果物」と一致しない
国民健康・栄養調査の食品群では、いちご、すいか、メロンなども果実類に含まれます。植物学上の分類や小売店の売り場区分とは異なるため、数値を比較するときは統計上の定義を優先する必要があります。
調査対象者数による振れがある
2023年国民健康・栄養調査の栄養摂取状況の解析対象者は5,305人、うち20歳以上は4,472人でした。20代は309人です。年齢別の値は全国民を全数調査した結果ではなく、標本調査による平均値です。
食料需給表には系列上の切れ目がある
食料需給表は、可食部や栄養量の算定に使う日本食品標準成分表が複数回改訂されています。農林水産省は、改訂をまたぐ一部の年度間では数値が接続しないと注意を促しています。
長期の方向を把握する用途には使えますが、隣り合う年度の小さな差をすべて実際の消費行動の変化とみなすべきではありません。
次に見るべきは「若い世代が買わない理由」
今後の焦点は、20~40代の1日50g未満という水準が続くのか、そして購入を妨げる要因が何かです。
今回のデータから確実に言えることは、次の3点です。
- 果実の1人当たり供給量は1975年度の42.5kgから2023年度の31.3kgへ約26%減った
- 2023年の摂取量は20~40代が1日50g未満で、70代の3分の1前後だった
- 二人以上の世帯の生鮮果物購入量は、1988年から2008年までに3割以上減っていた
一方、価格上昇、所得、単身化、手間、保存性のどれが強く影響したかは、この数字だけでは決められません。次に必要なのは、年齢別の摂取量とともに、単身世帯を含む購入金額・数量、果物の価格、所得階級を同じ期間で追うことです。
スーパーで果物が高くなったという印象だけでも、若者の好みが変わったという説明だけでも足りません。20~40代の摂取量が50gを超える方向へ動くか。今後の国民健康・栄養調査で、まず確認したい変化です。
