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短時間労働者の時給は2025年にどこまで上がった?全国推移と東海4県の差を読む

短時間労働者がスマートフォンで時給データを確認するイメージ。

短時間労働者の時給は2025年にどこまで上がった?全国推移と東海4県の差を読む

パート・アルバイトに近い働き方を示す「短時間労働者」の1時間当たり所定内給与額は、2025年に全国の男性で1,769円、女性で1,418円となりました。前年からの上昇率は男性が4.1%、女性が2.2%です。

ただし、全国の消費者物価は同じ年に3.2%上昇しました。名目時給は上がったものの、女性の伸びは物価上昇率を下回ったというのが、生活実感を考えるうえで重要なポイントです。

この記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の2025年結果を中心に、全国推移と東海4県の地域差、主要業種の違いを確認します。

  • 全国の2025年時給:男性1,769円、女性1,418円
  • 2024年比:男性70円増、女性31円増
  • 2021年比:男性138円増、女性128円増
  • 東海4県の女性では、愛知県1,407円が最も高く、静岡県1,309円が最も低い
  • 業種別では医療・福祉が高い一方、宿泊・飲食サービス業は低い傾向がみられる
目次

使用データと比較条件

中心に見る指標は、2025年6月分の「1時間当たり所定内給与額」です。 求人広告の募集時給や最低賃金とは異なり、実際に事業所で働く短時間労働者について集計されています。

使用した資料は次のとおりです。

  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
  • e-Stat掲載の短時間労働者・都道府県別結果表
  • 岐阜労働局「岐阜県における賃金の動き」
  • 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年平均」

対象年は全国推移が2015~2025年、前年との比較が2024~2025年です。地域・業種比較は2025年の岐阜県、静岡県、愛知県、三重県を扱います。

「短時間労働者」は雇用形態ではない

統計上の短時間労働者とは、同じ事業所の一般労働者より1日の所定労働時間が短い人、または1日の所定労働時間が同じでも週の所定労働日数が少ない人です。

そのため、呼び名が「パート」「アルバイト」であっても必ず全員が含まれるとは限らず、逆に別の雇用区分でも労働時間の条件によって対象になる場合があります。この記事では、日常的な表現としてパート・アルバイトに触れつつ、数値は統計上の短時間労働者として扱います。

時給に含まれるもの

1時間当たり所定内給与額には、基本給のほか、職務手当、通勤手当、家族手当などが含まれます。一方、時間外・深夜・休日労働に対する超過労働給与は含まれません。年間賞与も別項目です。

つまり、給与明細の総支給額を総労働時間で割った数字とは一致しません。

全国の時給は1年で男性70円、女性31円上昇

2025年の上昇幅は、男性のほうが女性より大きくなりました。 男女別に前年と比べると、動きの差が明確です。

性別2024年2025年増加額増加率
男性1,699円1,769円70円4.1%
女性1,387円1,418円31円2.2%

増加率は公表値から計算し、小数第2位を四捨五入しています。

1日5時間、月20日働くケースに単純換算すると、時給上昇による所定内給与の増加は男性で月7,000円、女性で月3,100円です。ただし、実際の勤務日数、労働時間、手当、税・社会保険料によって手取りの変化は異なります。

2021年からは男女とも約1割上昇

2020年以前と以後では集計対象に変更があるため、条件が比較的そろう2021年を起点にすると、2025年までの変化は次のようになります。

性別2021年2025年4年間の増加額増加率
男性1,631円1,769円138円8.5%
女性1,290円1,418円128円9.9%

女性は2021年の1,290円から2022年に1,270円へいったん低下した後、2023年1,312円、2024年1,387円、2025年1,418円と上昇しました。一直線に増えたわけではありません。

男性も2021年1,631円、2022年1,624円、2023年1,657円、2024年1,699円、2025年1,769円という推移です。男女とも、直近2年の上昇が4年間の増加を押し上げています。

ここがポイント: 2025年の短時間労働者の時給は男女とも上昇しました。ただし、全国一律に同じ幅で上がったわけではなく、性別、地域、業種によって水準も伸び方も違います。

物価を考えると「31円増」の見え方が変わる

時給の上昇だけでは、買える商品やサービスが増えたかどうかまでは判断できません。 2025年平均の全国消費者物価指数は、総合で前年比3.2%上昇しました。

これに対し、短時間労働者の時給上昇率は男性4.1%、女性2.2%です。単純に比較すると、男性は物価上昇率を約0.9ポイント上回り、女性は約1.0ポイント下回ります。

ただし、これは同じ個人の実質賃金を厳密に計算したものではありません。賃金構造基本統計調査は労働者構成の変化を含む平均値であり、消費者物価指数は全国の標準的な消費構成を使った指数です。

それでも、家計への影響を見る目安にはなります。

  • 男性:時給の伸びが総合物価の伸びを上回った
  • 女性:時給は上がったが、総合物価の伸びには届かなかった
  • 食料や住居など、各世帯が多く支出する項目によって実感は変わる
  • 労働時間を減らした場合、時給が上がっても月収が増えるとは限らない

「時給が上がった」という事実と、「生活が楽になった」という評価は分けて考える必要があります。

東海4県では女性の時給に98円の差

2025年の東海4県を女性短時間労働者で比べると、愛知県が最も高く、静岡県が最も低い結果でした。 同じ地方圏の隣接県でも、100円近い差があります。

地域女性の1時間当たり所定内給与額4県最高との差
愛知県1,407円―
三重県1,362円45円
岐阜県1,319円88円
静岡県1,309円98円

1日5時間、月20日働くと仮定すると、愛知県と静岡県の98円差は月9,800円、年間では11万7,600円に相当します。勤務条件をそろえた機械的な換算ですが、時給差の大きさを具体的に捉えられます。

地域差を最低賃金だけで説明してはいけない

都道府県別の平均時給は、地域別最低賃金の影響を受けます。しかし、最低賃金の差だけで平均時給の差が決まるわけではありません。

平均を動かす主な条件には、次のようなものがあります。

  • 製造業、医療・福祉、小売、飲食などの産業構成
  • 専門職と販売・接客職の比率
  • 大企業と中小企業の構成
  • 労働者の年齢、勤続年数、経験年数
  • 通勤手当など所定内給与に含まれる手当
  • 人手不足の強さや求人競争

愛知県の平均が高いから、県内のすべてのパート求人が他県より高いとは言えません。地域平均との差よりも、実際に働く業種と職種の違いが大きくなるケースもあります。

業種で見ると医療・福祉と飲食の差が大きい

地域内でも、どの業種で働くかによって時給水準は大きく変わります。 東海4県の女性短時間労働者について、比較しやすい主要業種を抜き出しました。

地域製造業卸売・小売宿泊・飲食医療・福祉
岐阜県1,221円1,161円1,178円1,739円
静岡県1,189円1,229円1,186円1,468円
愛知県1,307円1,276円1,219円1,743円
三重県1,245円1,230円1,201円1,601円

単位はすべて1時間当たり所定内給与額です。

宿泊・飲食は4県とも1,200円前後

宿泊業・飲食サービス業は、岐阜県1,178円、静岡県1,186円、愛知県1,219円、三重県1,201円でした。4県の幅は41円と比較的小さい一方、各県の産業計を下回っています。

飲食店や宿泊施設では最低賃金に近い求人も多く、内閣府資料が引用する特別集計では、2023年時点で宿泊・飲食サービス業の短時間労働者の41.5%が最低賃金近傍に位置していました。最低賃金の引き上げが平均時給へ波及しやすい業種だと読み取れます。

医療・福祉は高いが、職種構成に注意

医療・福祉は岐阜県1,739円、静岡県1,468円、愛知県1,743円、三重県1,601円でした。宿泊・飲食との差は岐阜県561円、愛知県524円に達します。

ただし、この産業には看護師などの資格職から介護、保育、事務、補助業務まで幅広い職種が含まれます。産業平均が高いことを理由に、すべての医療・福祉職の時給が高いと受け取るのは誤りです。

また、岐阜県と愛知県の医療・福祉が近い一方、静岡県は低くなっています。これは賃金水準だけでなく、調査対象になった職種や年齢、事業所規模の構成差が影響した可能性があります。公表表だけでは、それぞれの寄与を分離できません。

長期推移を読むときの最大の注意点

2019年から2020年に見える急上昇を、そのまま賃上げとみなしてはいけません。 この間には集計方法の変更があります。

男性の全国時給は2019年の1,207円から2020年に1,658円へ、女性は1,127円から1,323円へ大きく上昇しています。しかし、2020年以前は医師や教員など一部の職種に該当し、時給が3,000円を超える短時間労働者を集計から除外していました。2020年からは職種や賃金による除外をせず、短時間労働者全体を集計しています。

このため、2015年と2025年を単純計算すると男性は56.1%、女性は37.4%上昇しますが、その全てを実際の賃上げとして解釈できません。長期比較では、少なくとも次の2期間を分けて見る必要があります。

  • 2015~2019年:旧条件内での推移
  • 2021~2025年:変更後の条件が定着した期間の推移

2020年は制度上の接続点として扱い、前後を一本の折れ線で結んでも、増加率の評価には使わないのが安全です。

このデータから言えること、言えないこと

確実に言えるのは、2025年の平均時給が上がり、上昇幅に性別・地域・業種の差があったことです。 一方、平均値だけでは個々の労働者がどれだけ賃上げされたかまでは分かりません。

データから確認できる事実

  • 全国の短時間労働者の時給は男女とも2024年から上昇した
  • 男性の前年比上昇率は女性より高かった
  • 東海4県の女性では愛知県が最も高かった
  • 4県すべてで宿泊・飲食の時給は産業計を下回った
  • 医療・福祉と宿泊・飲食の間には大きな差があった

このデータだけでは断定できないこと

  • 最低賃金の引き上げが平均時給を何円押し上げたか
  • 人手不足が業種別時給へ与えた正味の効果
  • 同じ人が前年から実際に何円昇給したか
  • 時給上昇によって各世帯の手取りや購買力が増えたか
  • 県別格差のうち、企業規模や職種構成が占める割合

賃金構造基本統計調査は毎年同じ人を追跡する調査ではありません。平均時給の変化には、賃上げだけでなく、高賃金職種の人数が増えた、年齢構成が変わったといった要因も含まれます。

求人や家計を見るときに確認したい3つの数字

生活者にとって大切なのは、平均時給だけでなく、働ける時間と手取りまで一緒に見ることです。 求人を比べるときは、次の3段階に分けると判断しやすくなります。

  1. 表示時給
    基本時給に加え、資格手当、時間帯加算、交通費が別か込みかを確認します。

  2. 月の所定内給与
    時給に実際の勤務時間を掛けます。シフトが少なければ、高時給でも月収は伸びません。

  3. 手取りと生活費
    社会保険料や税、通勤費、保育費などを差し引きます。地域の家賃や物価も結果を左右します。

今後の注目点は、2026年の平均時給が最低賃金引き上げ後にどこまで伸びるか、そしてその伸びが物価を上回るかです。とりわけ宿泊・飲食や小売など最低賃金近傍の労働者が多い業種では、時給だけでなく、勤務時間を掛けた月収の変化まで追う必要があります。

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