日本のフリーランスは257万人 「増えたように見えるのに自営業は減少」の理由
日本でフリーランスとして働く人は、総務省「2022年就業構造基本調査」で257万4,000人です。このうち本業にする人は209万4,000人、副業だけで関わる人は48万人でした。
ただし、昔から集計されてきた「自営業主」は長期的に減っています。フリーランスが身近になったという実感と、自営業の減少は矛盾しません。両者は対象範囲も、働き方の中身も異なるからです。
この記事で押さえる要点は次の4つです。
- 2022年のフリーランスは257万4,000人。有業者の3.8%に当たる
- 本業のフリーランスは209万4,000人で、最も人数が多い年代は45~49歳
- 自営業主は1995年の784万人から2021年の523万人へ約3分の1減った
- 地域差や国際差は、人数よりも「誰を自営業に含めるか」を確認して読む必要がある
使用データと「フリーランス」の定義
フリーランスの人数を直接把握できる最新の大規模な公的統計は、2022年就業構造基本調査です。
今回、主に使うデータは次の3種類です。
- 総務省「2022年就業構造基本調査」:フリーランスの人数、年代、産業、都道府県
- 総務省「労働力調査」長期時系列表:自営業主と家族従業者の推移
- OECDの自営業率:国際比較に使う定義と比較条件
就業構造基本調査は、全国約54万世帯の15歳以上約108万人を対象にした標本調査です。2022年調査では初めてフリーランスの状況が集計されました。
同調査がいうフリーランスとは、実店舗がなく、従業員を雇っていない自営業主または一人社長で、その仕事から収入を得る人です。
この定義から、次のような人は同じ「個人で働く人」でも集計から外れる場合があります。
- 店舗を構えて営業する個人商店主
- 従業員を雇う個人事業主
- 農林漁業の自営業者
- 仕事を受けていても、調査上の条件に該当しない人
逆に、一人で法人を経営する「一人社長」は含まれます。開業届を出した人の数や確定申告をした人の数とも一致しません。
ここがポイント: 「フリーランスは何人か」という問いには、定義を示さない一つの数字では答えられません。2022年の公的統計では、本業と副業を合わせて257万4,000人、本業に限れば209万4,000人です。
257万人の内訳 本業は209万人、副業のみは48万人
2022年の有業者6,706万人のうち、フリーランスに該当した人は3.8%でした。
内訳を整理すると、働き方の違いが見えてきます。
- 本業のみ:202万9,000人
- 本業と副業の両方:6万4,000人
- 副業のみ:48万人
- 合計:257万4,000人
本業にしている人は、本業のみと本業・副業の両方を合わせた209万4,000人です。有業者全体に占める割合は3.1%。およそ32人に1人となります。
なお、内閣官房が2020年の実態調査を基に示した「約462万人」という推計も広く知られています。しかし、これは就業構造基本調査とは調査方法や母集団が異なります。257万人と462万人の差を、2年間での急減と解釈することはできません。
人数の最多は45~49歳、割合は高齢層ほど上昇
本業がフリーランスの人数が最も多いのは45~49歳の24万5,000人です。50~54歳も24万4,000人で、ほぼ同じ規模でした。
一方、有業者に占める割合は年齢が上がるほど高くなります。
- 25~29歳:7万7,000人、1.4%
- 35~39歳:17万1,000人、2.8%
- 45~49歳:24万5,000人、3.0%
- 60~64歳:19万9,000人、3.7%
- 65~69歳:20万8,000人、5.4%
- 70~74歳:20万2,000人、6.5%
- 75歳以上:17万7,000人、8.0%
ここでは「人数」と「割合」を分けて読む必要があります。75歳以上はフリーランスの人数が最多なのではなく、その年代で働いている人の中に占める比率が高いのです。
高齢層の割合が高い背景には、会社員としての雇用を離れた後も、受託仕事や一人で営む事業を続ける人が含まれる可能性があります。ただし、この年齢別集計だけでは、退職後の独立や所得事情が原因だとは断定できません。
自営業主は1995年から約3分の1減った
フリーランスという言葉が普及する一方、自営業主全体は長期的に縮小しています。
総務省「労働力調査」の年平均値では、自営業主は1995年の784万人から2021年の523万人へ減少しました。26年間で261万人、率にすると約33%の減少です。
同じ期間に、家族従業者も397万人から139万人へ減りました。家族経営の商店や事業所で働く人が減り、雇用者として働く人の比重が高まった長期的な変化が数字に表れています。
主な年を抜き出すと、次のようになります。
- 1995年:自営業主784万人、家族従業者397万人
- 2000年:自営業主731万人、家族従業者340万人
- 2005年:自営業主650万人、家族従業者282万人
- 2010年:自営業主582万人、家族従業者190万人
- 2015年:自営業主546万人、家族従業者162万人
- 2021年:自営業主523万人、家族従業者139万人
単位はいずれも年平均の推計値です。2021年の自営業主523万人は、2022年の本業フリーランス209万4,000人よりかなり多くなっています。
理由は明確です。自営業主には、店舗を持つ事業者、従業員を雇う事業主、農林漁業従事者なども含まれます。フリーランスはその一部であり、さらに一人社長を含むという違いがあります。
「新しい個人就業」が増えても総数は増えるとは限らない
自営業の中身も一枚岩ではありません。
従来型の家族経営や店舗型事業が減る一方、情報通信、デザイン、コンサルティングなど、実店舗を持たず仕事を受託する働き方が広がれば、「フリーランスを見かける機会」は増えます。それでも、減った自営業者の人数のほうが多ければ、自営業主全体は減少します。
つまり、統計から確認できるのは次の二つです。
- 自営業主と家族従業者は長期的に減少した
- 2022年時点で、実店舗も雇人もないフリーランスが257万4,000人いた
一方、「近年フリーランスそのものが急増した」とは、2022年に初めて同じ定義で集計されたため、この調査だけでは判断できません。次回以降、同じ設問と定義が維持されて初めて増減を比較しやすくなります。
建設業が50万人、専門・技術サービスは比率13.5%
人数では建設業、産業内の割合では学術研究・専門・技術サービス業が目立ちます。
本業がフリーランスの産業別人数は、建設業が49万7,000人で最多でした。次いで学術研究・専門・技術サービス業が36万7,000人、サービス業(他に分類されないもの)が18万2,000人です。
主な産業を比較すると、規模と集中度の違いが分かります。
- 建設業:49万7,000人、同産業の有業者の10.7%
- 学術研究・専門・技術サービス業:36万7,000人、13.5%
- サービス業(他に分類されないもの):18万2,000人、4.0%
- 卸売業・小売業:17万5,000人、1.8%
- 不動産業・物品賃貸業:16万4,000人、10.7%
- 製造業:16万2,000人、1.5%
- 情報通信業:15万3,000人、5.2%
- 教育・学習支援業:12万5,000人、3.7%
専門職やITだけを思い浮かべると、実態を狭く捉えてしまいます。建設業の一人親方などが大きな集団を形成しているためです。
一方、学術研究・専門・技術サービス業には、専門知識や技能を使って個別に仕事を受ける働き方が多く、産業内のフリーランス比率が13.5%と最も高くなっています。人数の多さと、その産業での一般性は別の指標です。
都道府県別では東京4.2%、神奈川・京都3.6%
地域比較では実数よりも、有業者に占める割合を見るほうが地域の特徴をつかみやすくなります。
2022年に本業がフリーランスだった人の割合は、東京都が4.2%で全国最高でした。神奈川県と京都府が3.6%、埼玉県・大阪府が3.5%で続きます。全国平均は3.1%です。
主要地域の実数と割合は次の通りです。
- 東京都:35万1,000人、4.2%
- 神奈川県:18万5,000人、3.6%
- 大阪府:16万3,000人、3.5%
- 埼玉県:13万7,000人、3.5%
- 愛知県:12万3,000人、3.0%
- 京都府:4万9,000人、3.6%
- 全国:209万4,000人、3.1%
東京は人数でも割合でも最大です。ただし、この結果だけで「都市に住めばフリーランスになりやすい」とは言えません。
都市部には専門・技術サービス、情報通信、不動産などの仕事が集まりやすく、産業構成が地域差に影響している可能性があります。在宅で遠隔地の仕事を受ける人もいるため、居住地と顧客・発注者の所在地が一致するとも限りません。
また、都道府県別の値は標本調査による推計です。数値の小さい県同士を0.1ポイント単位で厳密に順位付けするより、全国平均との差や上位地域のまとまりを見るほうが適切です。
国際比較で「日本は多いか」を判断しにくい理由
国際比較では、日本の257万人をそのまま他国のフリーランス推計と並べられません。
OECDの「自営業率」は、自ら事業を営む人だけでなく、雇用主、協同組合の構成員、無給の家族従業者も含め、就業者に占める割合を測ります。一方、日本の就業構造基本調査によるフリーランスは、実店舗がなく、雇人もいないことが条件です。
違いをまとめると、次のようになります。
- 日本のフリーランス統計:実店舗なし、雇人なし。一人社長を含む
- 労働力調査の自営業主:店舗型や雇人のある事業主なども含む
- OECDの自営業率:雇用主や無給家族従業者を含み、法人で働く会社役員は雇用者として扱う
このため、国際比較をするならOECDの同一指標で国をそろえる必要があります。日本の257万人と、別の国が独自調査で公表した「ギグワーカー」や「独立請負人」の人数を比べても、働き方の範囲がそろいません。
国によって税制、法人化のしやすさ、農業就業者の比率、家族従業者の扱いも異なります。自営業率が高いことを、起業の活発さや働き方の自由度だけで評価するのは危険です。
年齢の高さは「若者中心」という印象を覆す
公的統計が示すフリーランス像は、若いデジタル職だけではありません。
人数の中心は40代後半から50代前半で、有業者に占める割合は65歳以降に大きく上がります。産業別では建設業が最多です。この組み合わせは、フリーランスという言葉から連想されやすい若手のIT技術者やクリエーターだけでは全体を説明できないことを示します。
生活面で重要なのは、会社員と異なり、仕事の受注、報酬回収、休業時の備えを自分で管理する場面が多いことです。高齢層では年金との組み合わせ、現役世代では育児・介護との両立、副業層では勤務先の規則や労働時間管理など、同じフリーランスでも直面する問題が変わります。
2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法は、発注事業者に取引条件の書面・メールなどによる明示を求め、報酬支払期日の設定や禁止行為、ハラスメント対策などを定めました。
ただし、法律の対象となる「特定受託事業者」と、統計上のフリーランスは完全に同じではありません。また、契約書に業務委託と書かれていても、指揮命令や勤務実態によっては労働基準法上の労働者に当たる場合があります。
数字を読むときの5つの注意点
フリーランス統計は、人数より先に定義と調査年を確認するのが鉄則です。
1. 257万人と462万人を時系列にしない
2022年就業構造基本調査の257万4,000人と、2020年の政府実態調査を基にした約462万人は、調査方法と対象範囲が違います。差額を減少人数として扱えません。
2. 開業届の件数は就業者数ではない
開業届は事業開始の手続きです。廃業、休業、複数事業、法人化などがあるため、届出件数をその時点で働く人数とみなすことはできません。
3. 自営業主とフリーランスを同義にしない
自営業主はフリーランスより広い概念です。一方、フリーランス統計には一人社長が含まれます。単純な包含関係にもなりません。
4. 本業と副業を分ける
257万4,000人には副業のみの48万人が含まれます。フリーランスで生計を立てる人を見たい場合は、本業の209万4,000人を使うほうが目的に合います。
5. 2022年は増減比較の出発点
就業構造基本調査でフリーランスを直接把握したのは2022年が初めてです。同じ定義による長期推移はまだ作れません。自営業主の長期減少と、フリーランスの増減は分けて扱う必要があります。
次に見るべき数字
今後の焦点は、同じ定義でフリーランスが増減したか、そして法律施行後に取引環境がどう変わったかです。
確認したい指標は4つあります。
- 次回の就業構造基本調査で、本業209万4,000人と副業48万人がどう動くか
- 東京4.2%などの地域差が、産業構成を調整しても残るか
- 45歳以上に厚い年齢構成が維持されるか、若年層の比率が上がるか
- 取引条件の明示、報酬支払い、ハラスメント対策を巡る指導や相談がどう推移するか
現時点で言えるのは、フリーランスが就業者の多数派になったわけではないこと、そして個人で働く人を一つの型では説明できないことです。次の公的統計を見るときも、まず「本業か副業か」「自営業主か一人社長か」「店舗や雇人を含むか」を確認する必要があります。
