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EV充電器の地域差を台数だけで判断できない理由 10都府県で「EV・PHEV1,000台当たり」を比較

日本各地のEV充電環境の違いを表現した充電ステーション。

EV充電器の地域差を台数だけで判断できない理由 10都府県で「EV・PHEV1,000台当たり」を比較

EV充電器が足りているかを都道府県別に見るなら、設置口数の多さだけでは判断できません。EV・PHEVの累計補助実績が多い10都府県を比べると、ゼンリンが把握する充電口数はEV・PHEV1,000台当たり約32.5〜77.3口と、2倍を超える開きがあります。

比較対象では、東京都が1口当たり30.7台で最も多く、千葉県は12.9台でした。ただし、この比率は混雑や不足を直接示すものではありません。自宅充電の可否、急速充電器の出力、設置場所、稼働率まで見なければ、利用者が感じる「足りなさ」は分からないからです。

この記事で分かること

  • 充電口数が最も多いのは愛知県で2,706口
  • EV・PHEV1,000台当たりでは、千葉県や岐阜県が比較的多い
  • 東京都は充電口数2位でも、車両側の規模を加味すると余裕が小さい
  • 国の約6.8万口とゼンリンの4万892口は、集計範囲が異なるため単純比較できない
目次

使用データと比較条件

今回の結論は、異なる時点と定義のデータを組み合わせた「需給の目安」です。実際の同時充電能力や混雑率を測ったものではありません。

使用したデータは次の通りです。

  • 充電器側:ゼンリンが2026年6月時点で把握した都道府県別EV充電スタンドデータ
  • 車両側:次世代自動車振興センターの2009〜2024年度EV・PHEV補助金交付実績を基に整理された都道府県別累計台数
  • 対象地域:EV・PHEV累計台数が多い上位10都府県
  • 比較指標:充電口数 ÷ EV・PHEV累計台数、およびEV・PHEV累計台数 ÷ 充電口数

ここでいう「EV・PHEV台数」は、現在の保有台数ではなく補助金の累計交付台数です。廃車や転出、補助金を使わなかった車両を反映しないため、現存する車両数とは一致しません。

また、充電口数は「施設数」ではありません。1か所に4口あれば4口と数えます。利用者が同時に充電できる能力を見るには、施設数より口数のほうが適していますが、出力や故障・休止の状況までは表せません。

10都府県の充電口数とEV・PHEV台数

比較すると、充電器の総数と車両数に対する密度では順位が大きく変わります。

都府県充電口数
2026年6月
EV・PHEV累計
2009〜2024年度
1口当たり
車両数
1,000台当たり
充電口数
東京都2,356口72,402台30.7台32.5口
神奈川県1,739口41,015台23.6台42.4口
福岡県1,234口26,829台21.7台46.0口
愛知県2,706口53,897台19.9台50.2口
大阪府1,689口31,855台18.9台53.0口
埼玉県1,658口29,766台18.0台55.7口
兵庫県1,538口24,664台16.0台62.4口
静岡県1,443口20,745台14.4台69.6口
岐阜県1,096口14,583台13.3台75.2口
千葉県1,899口24,579台12.9台77.3口

※1口当たり車両数と1,000台当たり充電口数は、掲載値から独自に計算。小数第2位を四捨五入しています。

総数トップの愛知県は、密度では中位

愛知県の2,706口は全国最多です。東京都の2,356口、千葉県の1,899口が続きます。

しかし、愛知県にはEV・PHEVの累計補助実績も5万3,897台あります。車両規模を加味すると1口当たり19.9台で、比較した10都府県の中央付近です。

つまり、充電口数が全国最多だから余裕も最大、とは限りません。車両の普及規模とセットで見る必要があります。

東京都は2,356口あっても、車両側の規模が大きい

東京都のEV・PHEV累計補助実績は7万2,402台で、10都府県中最多です。充電口数も全国2位ですが、1口当たりでは30.7台。1,000台当たりに直すと32.5口にとどまります。

東京都では集合住宅に住む世帯が多く、戸建て住宅の駐車場に専用充電器を設置する場合とは条件が異なります。そのため、公共・共用設備の数字だけでなく、マンション駐車場で日常的に充電できるかが重要です。

東京都は集合住宅への充電設備について、2030年までに6万口、2035年までに12万口という目標を掲げています。2024年度実績は7,236口でした。これは都内で、移動途中の急速充電だけでなく、駐車中に充電する「基礎充電」の拡充が重視されていることを示します。

千葉県と岐阜県は車両数に対する口数が多い

千葉県は1,000台当たり77.3口、岐阜県は75.2口でした。東京都の約2.3倍です。

ただし、この差をそのまま「千葉県や岐阜県のほうが便利」と読むのは早計です。面積が広い地域では、充電器が多くても走行経路から離れていれば使いにくくなります。反対に、都市部では口数が少なく見えても、短い距離に設備が集中している可能性があります。

地域全体の比率は、県境を越える長距離移動や、山間部に残る空白地域も捉えられません。

ここがポイント: 都道府県別の「1口当たりEV・PHEV台数」は需給を考える入口になる。ただし、利用者の不便を判断するには、充電器の位置、出力、稼働状況、自宅充電環境を重ねる必要がある。

全国では増加しているが、2030年目標までは距離がある

国全体では充電インフラが再び増加局面に入っています。

経済産業省によると、2024年度末の充電器は約6.8万口で、内訳は急速充電器が約1.2万口、普通充電器が約5.6万口です。2023年度末からは約2.8万口増えました。

一方、政府の2030年目標は30万口で、公共用急速充電器3万口を含みます。約6.8万口を起点に単純計算すると、目標までは約23.2万口。達成には現在の約4.4倍まで増やす必要があります。

ただし、30万口は単なる本数競争ではありません。経済産業省の指針では、高速道路で90kW以上を基本とし、150kW級も設置するなど、急速充電器の高出力化を進める方針です。

同じ1口でも、3kWの普通充電器と150kWの急速充電器では役割が違います。

  • 自宅や集合住宅:夜間など、長時間駐車中に充電する
  • 商業・宿泊施設:滞在時間を利用して充電する
  • 高速道路や道の駅:移動途中に短時間で電力を補う

必要なのは、利用場面に合う設備です。低出力の普通充電器を増やしても高速道路の待ち時間は解消せず、急速充電器だけを増やしても集合住宅の日常充電は便利になりません。

「全国4万892口」と「約6.8万口」が両立する理由

充電器の統計には、集計範囲の違いがあります。ここを無視すると、増減や達成率を誤読します。

ゼンリンが2026年6月時点で掲載する全国のEV充電スタンドデータは4万892口で、急速1万1,478口、普通2万9,414口です。一方、経済産業省は2024年度末を約6.8万口と推計しています。

約2.7万口の差があるからといって、どちらかが誤りとは限りません。経済産業省の値は、ゼンリンと充電事業者のデータを基にした推計で、集合住宅などの基礎充電も含む、より広い整備状況を示しています。ゼンリンの掲載値は同社が整備する充電スタンドデータの口数です。

したがって、この記事の都道府県比較はゼンリンの同一データ内で条件をそろえています。国の30万口目標に対する進捗を測る際には、経済産業省の約6.8万口を使うべきです。

数字から言えること、まだ言えないこと

今回の比較から確認できるのは、充電口数とEV・PHEV累計補助実績の地域的なバランスです。

言えること

  • EV・PHEVの累計台数が多い地域ほど、充電口数も必ず比例して多いわけではない
  • 上位10都府県では、1,000台当たりの充電口数に2倍超の差がある
  • 東京都は絶対数で充電口数が多い一方、車両側の規模を加味すると比率が低い
  • 全国の充電インフラは増えているが、2030年の30万口目標には大幅な追加整備が必要

このデータだけでは言えないこと

  • 充電待ちが何分発生しているか
  • 何台の充電器が故障・休止中か
  • 急速充電器が何kWで実際に給電しているか
  • 自宅や勤務先で充電できるEV利用者の割合
  • 県内のどの道路・市区町村に空白が残っているか
  • 県外車や観光客、物流車両による需要

特に注意したいのが分母です。補助金交付台数は販売や導入の流れを捉えやすい反面、現時点の保有台数そのものではありません。今回の「1口当たり台数」は厳密な稼働率ではなく、同じ条件で地域差を見るための参考指標です。

充電器が「足りる」かを判断する4つの視点

最終的には、口数に加えて次の4点を確認する必要があります。

1. 基礎充電を確保できるか

EVは、ガソリン車のように残量が減ってから給油所へ行く使い方だけを前提にしていません。自宅や勤務先で駐車中に充電できれば、公共の急速充電器に依存する頻度は下がります。

戸建てと集合住宅の比率が異なる地域を、公共充電器の本数だけで比較するのは不十分です。

2. 長距離移動の経路上にあるか

高速道路、幹線道路、道の駅などでは、総数より配置が重要です。県内に十分な口数があっても、主要経路に空白があれば利用者は迂回や待機を迫られます。

3. 出力と同時充電能力が十分か

急速充電器は出力が高いほど、一般に短時間で多くの電力を補給できます。また、1施設に複数口あれば、1台の利用中にほかの車が長時間待つリスクを下げられます。

今後は「何口あるか」に加え、90kW以上の設備がどこに何口あるかを見る必要があります。

4. 設置後も使い続けられるか

充電器は設置して終わりではありません。保守、更新、通信、電力契約などの費用が継続します。故障した設備が長期間使えなければ、統計上は1口でも実質的な供給力はゼロです。

次に見るべきは市区町村・道路単位の「空白」

都道府県比較で見えたのは、東京都のように車両数に対する口数が少ない地域と、千葉県や岐阜県のように相対的に多い地域があることです。しかし、県平均だけでは利用者が実際に困る場所を特定できません。

今後の判断材料として重要なのは、次のデータです。

  • 市区町村別の急速・普通充電口数
  • 主要道路から充電器までの距離
  • 90kW以上の急速充電口数
  • 時間帯別の利用率と待ち時間
  • 故障・休止を除いた実稼働率
  • 戸建て・集合住宅別の基礎充電整備率

充電器不足の実態は、県全体の本数より「必要な場所と時間に使えるか」に表れます。 次の焦点は口数ランキングではなく、集合住宅、主要道路、山間部に残る充電空白を、市区町村や道路区間の単位で可視化できるかです。

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