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健康寿命は20年で約3年延びた 2022年の都道府県差と「平均寿命までの期間」

日本地図と公園を歩く高齢者を組み合わせた健康寿命のイメージ。

健康寿命は20年で約3年延びた 2022年の都道府県差と「平均寿命までの期間」

日本の健康寿命は2001年から2022年までに、男性で3.17年、女性で2.80年延びました。ただし、直近の2019年から2022年に限ると男性は0.11年短く、女性は0.07年長くなっただけで、いずれも統計的に有意な変化ではありません。

2022年の都道府県別では、静岡県が男性73.75年、女性76.68年でともに最長でした。最短の岩手県との差は男性2.82年、女性2.40年です。

  • 2022年の全国値:男性72.57年、女性75.45年
  • 2001年からの延び:男性3.17年、女性2.80年
  • 平均寿命との差:男性8.49年、女性11.63年
  • 都道府県の最長と最短の差:男性2.82年、女性2.40年

ここで重要なのは、健康寿命の順位だけを見るのではなく、平均寿命との差に当たる「日常生活に制限のある期間」をどこまで短くできたかを見ることです。

目次

使用したデータと比較条件

今回の中心データは、厚生労働省が2024年12月に公表した「健康寿命の令和4年値」です。

健康寿命は、ここでは「日常生活に制限のない期間の平均」を指します。2022年の国民生活基礎調査にある「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問への回答などを使い、死亡情報と組み合わせて算出されています。

比較条件は次の通りです。

  • 健康寿命の対象年:2001~2022年。都道府県比較は2022年
  • 平均寿命との差:同じ2022年の全国値同士で比較
  • 対象地域:全国および47都道府県
  • 男女区分:男性、女性を別々に比較
  • 都道府県別平均寿命:最新公表値は2020年であり、2022年の健康寿命と年次が一致しない

この年次の違いは大切です。全国については2022年の平均寿命と健康寿命をそろえて差を計算できますが、都道府県別では平均寿命が5年ごとの作成となるため、2022年同士の厳密な差は出せません。

2022年の健康寿命は男性72.57年、女性75.45年

直近の全国値は、長期的には改善しているものの、2019年からほぼ横ばいです。

年男性の健康寿命女性の健康寿命
2001年69.40年72.65年
2010年70.42年73.62年
2016年72.14年74.79年
2019年72.68年75.38年
2022年72.57年75.45年
2001年からの変化+3.17年+2.80年

2001年と2022年を比べると、男女とも健康寿命は明確に延びています。一方、2019年から2022年の変化は男性がマイナス0.11年、女性がプラス0.07年でした。

厚生労働省は、どちらの変化にも統計的な有意差はなかったとしています。小数点以下の増減だけを見て「男性の健康状態が悪化した」「女性は改善した」と結論づけることはできません。

2010~2019年の延伸ペースからは下振れした

もう一つ見逃せないのが、従来の傾向との違いです。

厚生労働省の検討資料によると、2010年から2019年までは47都道府県すべてで健康寿命が延びました。ところが、2019年から2022年は短くなった都道府県がやや多く、2010~2019年の推移から予測した値と比べても、2022年の実績はほとんどの都道府県で短くなりました。

ただし、この結果だけで新型コロナウイルス感染症が原因だったとは断定できません。調査への回答状況、人口構成、死亡状況など複数の要素が指標に関わるため、次回以降の値を含めて確認する必要があります。

都道府県別では静岡県が男女とも最長

2022年の健康寿命は静岡県が男女とも全国1位で、岩手県が男女とも47位でした。

男性の上位・下位

  • 1位 静岡県:73.75年
  • 2位 石川県:73.60年
  • 3位 山梨県:73.47年
  • 全国:72.57年
  • 46位 高知県:71.19年
  • 47位 岩手県:70.93年

男性の最長と最短の差は2.82年です。静岡県は全国値を1.18年上回り、岩手県は1.64年下回りました。

女性の上位・下位

  • 1位 静岡県:76.68年
  • 2位 山口県:76.43年
  • 3位 岐阜県:76.20年
  • 全国:75.45年
  • 46位 沖縄県:74.33年
  • 47位 岩手県:74.28年

女性の最長と最短の差は2.40年です。静岡県は全国値より1.23年長く、岩手県は1.17年短くなっています。

ここがポイント: 健康寿命の地域差は男女とも2年以上あります。ただし、順位は推計値の小さな差で入れ替わるため、「何位か」だけでなく、全国値との差や複数年の推移を見る必要があります。

上位県は男女で完全には一致しない

静岡県は男女とも1位ですが、その次に続く県は異なります。男性では石川県と山梨県、女性では山口県と岐阜県が上位です。

この違いは、健康寿命を一つの地域特性だけで説明できないことを示します。喫煙、飲酒、食生活、運動、就業、所得、医療へのアクセスなどは候補となる要素ですが、順位表だけでは各要素の寄与を判定できません。

平均寿命との差は男性8.49年、女性11.63年

2022年の全国平均寿命は男性81.05年、女性87.09年でした。健康寿命との差は、男性8.49年、女性11.63年です。

性別平均寿命健康寿命両者の差
男性81.05年72.57年8.49年
女性87.09年75.45年11.63年

この差は、特定の人がその年数だけ寝たきりになるという意味ではありません。集団の死亡状況と、日常生活への制限の有無から計算した平均的な期間です。

それでも生活者にとって無関係な数字ではありません。健康上の制限が生じれば、通院や介護サービスの利用だけでなく、買い物、移動、家事、仕事、地域活動などにも影響します。平均寿命だけが延び、健康寿命が追いつかなければ、本人や家族が支援を必要とする期間は短くなりません。

2001年より差は縮んだ

2001年は、平均寿命が男性78.07年、女性84.93年、健康寿命が男性69.40年、女性72.65年でした。公表値から計算すると、その差は男性8.67年、女性12.28年です。

2022年までの変化を整理すると、次のようになります。

  • 男性:8.67年から8.49年へ、約0.18年縮小
  • 女性:12.28年から11.63年へ、約0.65年縮小

健康寿命は平均寿命を上回るペースで延びてきました。特に女性では差の縮小が比較的大きいものの、2022年時点でも11年を超えています。

都道府県別の「平均寿命との差」は参考値として見る

都道府県別に平均寿命と健康寿命の差を比べるときは、年次がそろわない点を避けて通れません。

厚生労働省の都道府県別生命表は5年ごとに作成され、最新は2020年です。一方、最新の都道府県別健康寿命は2022年。両者を単純に引けば計算自体はできますが、同じ時点の「不健康な期間」にはなりません。

たとえば静岡県の2020年平均寿命は男性81.59年、女性87.48年です。ここから2022年健康寿命を機械的に引くと、男性7.84年、女性10.80年になります。

しかし、この値には2年のずれがあります。全国の2022年同士で求めた8.49年、11.63年とは条件が異なるため、同列のランキングにはできません。

都道府県を評価するなら、次の三つを分けて確認するのが安全です。

  1. 2022年の健康寿命そのもの
  2. 各都道府県の2019年から2022年への変化
  3. 年次をそろえて算出された公的な不健康期間と地域格差指標

地域差は縮小したのか

長期的には縮小方向ですが、一直線ではありません。

厚生労働省は、最長県と最短県だけでなく、「上位4分の1の平均と下位4分の1の平均の差」や、47都道府県全体のばらつきを表す地域格差指標を使って検討しています。極端な1県だけで全体像が左右されるのを避けるためです。

分析結果は次の通りです。

  • 2010~2016年:男女とも地域格差は縮小傾向
  • 2016~2019年:男女とも拡大傾向
  • 2019~2022年:男性はおおむね同程度、女性は縮小傾向
  • 女性は2019年の外れ値を除くと、2010~2022年を通じて縮小傾向

つまり、2022年に最長県と最短県の差が2年以上あっても、それだけで格差が拡大中とはいえません。全都道府県の分布を見ると、男性は横ばい、女性は縮小方向でした。

数字の背景として確認したい要素

健康寿命の地域差を説明するには、順位表とは別のデータを重ねる必要があります。

生活習慣

運動、食事、喫煙、飲酒、睡眠は健康状態と関係します。ただし、県全体の平均値と健康寿命が同時に高いからといって、その習慣が順位を直接決めたとは限りません。

確認するなら、国民健康・栄養調査や都道府県の健康増進計画にある次の指標が候補になります。

  • 喫煙率と多量飲酒者の割合
  • 野菜・食塩摂取量
  • 運動習慣のある人の割合
  • 健診・がん検診の受診率
  • 高血圧、糖尿病などの状況

所得、就業、移動環境

健康づくりを個人の努力だけに還元することもできません。勤務時間が長く健診を受けにくい、公共交通が乏しく通院しづらい、身近な場所を徒歩で移動しにくいといった地域環境も、日々の行動に関わります。

所得、職業構成、高齢化率、医療資源、公共交通などを合わせて見れば仮説は立てられます。ただし、都道府県単位の相関だけで個人への因果関係を推定するのは危険です。

人口構成と調査回答

健康寿命は単なる病気の有無ではなく、日常生活への影響についての回答を使う指標です。回答者が「制限」と捉える程度や調査への回答状況も推計に影響します。

また、都道府県値は全国値より対象者数が少なく、偶然の変動が大きくなります。0.1年程度の差で順位が違っても、実質的な地域差が明確とは限りません。

国際比較には同じ定義の指標が必要

日本の「日常生活に制限のない期間の平均」を、海外の健康寿命ランキングとそのまま比べることはできません。

世界保健機関(WHO)が示す健康寿命は、病気や障害の重さを調整して算出する指標です。日本の厚生労働省が国民生活基礎調査から算出する指標とは、質問、対象範囲、計算方法が異なります。

国際差を確認するときは、WHOなど同一機関が同じ方法で推計した値に統一する必要があります。国内の都道府県ランキングと国際ランキングをつないで、「静岡県は世界のどの国に相当する」といった比較をするのは適切ではありません。

健康寿命データを読むときの注意点

この統計で分かるのは、集団として日常生活に制限なく過ごせる期間の推計です。個人の寿命や将来の要介護期間を予測する数字ではありません。

特に誤読しやすい点を整理します。

  • 順位と有意差は別:順位が違っても、推計誤差を考えると明確な差とは限らない
  • 健康寿命と介護認定は別:日常生活への影響についての回答を使い、要介護認定だけで判定していない
  • 都道府県内にも差がある:一つの県の値で市区町村や個人の状況まで説明できない
  • 年次の違う統計を混ぜない:2022年健康寿命と2020年都道府県別平均寿命の差は参考計算にとどまる
  • 単年変化で原因を決めない:感染症、人口構成、生活習慣、調査回答などを追加検証する必要がある

次に見るべきは「順位」より不健康期間の変化

2022年の健康寿命は、2001年より男性で3.17年、女性で2.80年長くなりました。長期的な延伸は確かです。一方、2019年からは実質的に横ばいで、これまでの延伸ペースから下振れした都道府県も多くありました。

今後確認したいポイントは明確です。

  • 次回値で2019~2022年の停滞が一時的だったか
  • 平均寿命の延びを健康寿命が再び上回るか
  • 男性で横ばいだった都道府県格差が縮小へ向かうか
  • 都道府県内の市区町村差や所得・就業環境を含めた分析が進むか

長生きする年数ではなく、自立して生活できる年数がどれだけ増えたか。 次の公表では、健康寿命の前年差だけでなく、平均寿命との差と地域格差が同時に縮んでいるかを見る必要があります。

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