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成人肥満率は世界で16%へ 米国42%・日本5.5%が示す国際差

世界各地域の成人肥満率の差をデータで表したイメージ。

成人肥満率は世界で16%へ 米国42%・日本5.5%が示す国際差

世界の成人肥満率は、1990年から2022年までに2倍超へ上昇しました。2022年には18歳以上の16%、約8億9000万人がBMI30以上に該当します。

ただし、国ごとの差は非常に大きいままです。WHOの年齢調整値で見ると、米国は42.0%、日本は5.5%。同じ基準でも約7.6倍の開きがあります。

この記事で押さえるポイントは次の4つです。

  • 世界の成人肥満率は1990年の約6%台から2022年の16%へ上昇した
  • 主要国では米国が突出し、日本やフランスは相対的に低い
  • 高所得国の一部では上昇が鈍化する一方、低・中所得国では増加が加速している
  • BMI、年齢調整、実測・自己申告の違いを無視した単純な国別順位には注意が必要
目次

使用データと比較条件

国際比較では、年齢構成をそろえた同じ指標を見ることが出発点です。

主に使用するのは、WHOのGlobal Health Observatoryと、NCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)が公表した推計です。

比較条件は次の通りです。

  • 指標:BMIが30kg/m²以上の成人の割合
  • 対象:原則として18歳以上。NCD-RisC論文の詳細分析は20歳以上
  • 比較年:2022年
  • 国別比較:WHOの年齢調整推計値
  • 長期推移:1990~2022年のNCD-RisC推計
  • 調査規模:200の国・地域、3663件の人口代表調査、延べ2億2200万人

「年齢調整」とは、各国の高齢者や若年者の割合が同じだったと仮定して比べる方法です。肥満率は年齢によって変わるため、高齢化の進んだ国が人口構成だけで高く見えるのを防ぎます。

一方、年齢調整値は「その国で実際に暮らす成人の何%か」をそのまま表す粗率とは異なります。医療需要や対象人数を考える場合には粗率、国際比較には年齢調整値が適しています。

世界では成人の6人に1人が肥満に該当

2022年の世界全体では、成人の約6人に1人がBMI30以上でした。

WHOによると、18歳以上の成人25億人が過体重で、そのうち8億9000万人超が肥満に該当しました。成人全体に占める割合は16%です。過体重まで広げると43%に達します。

NCD-RisCが男女別に年齢調整した推計では、変化がさらに具体的に見えます。

  • 女性:1990年8.8% → 2022年18.5%
  • 男性:1990年4.8% → 2022年14.0%
  • 女性の増加幅:9.7ポイント
  • 男性の増加幅:9.2ポイント

女性は2倍を超え、男性は約2.9倍になりました。男性のほうが出発点は低かったものの、相対的な増え方は大きかったことになります。

人数で見ると、2022年に肥満だった成人は約8億7900万人と推計されています。1990年の約1億9500万人から、32年間で約4.5倍です。人口増加の影響があるため、人数の倍率は割合の上昇より大きくなります。

ここがポイント: 世界の肥満増加は「人口が増えたから」だけではありません。年齢構成をそろえた有病率そのものが、女性で8.8%から18.5%、男性で4.8%から14.0%へ上昇しています。

米国42%、日本5.5% 主要国で大きな開き

主要国を同じWHO指標で比べると、米国と日本の差が際立ちます。

以下は、2022年の成人肥満率を年齢調整した推計値です。小数点以下の表示方法や更新時期に差があるため、各国間の細かな順位より水準差を見るのが適切です。

国成人肥満率日本との差
米国42.0%+36.5ポイント
英国約28.7%約+23.2ポイント
ドイツ約24.2%約+18.7ポイント
フランス約10.9%約+5.4ポイント
日本5.5%基準

米国は成人の4割を超える

米国の42.0%は、5人に2人を超える水準です。WHOが示す推計区間は39.3~44.7%で、推計上の不確実性を考慮しても日本との差は縮まりません。

ただし、米国が世界最高という意味ではありません。太平洋島しょ国の一部ではさらに高く、NCD-RisCの2022年推計では、米領サモアの女性は81.7%、男性は70.6%でした。

ここで重要なのは順位ではなく、医療や生活環境への波及です。肥満率が4割を超える人口では、糖尿病や循環器疾患への対応だけでなく、継続的な体重管理を担うプライマリケア、薬物療法へのアクセス、学校や職場の食環境まで広い対策が必要になります。

欧州も一枚岩ではない

英国とドイツは2割を超える一方、フランスは1割前後です。同じ欧州の高所得国でも差があり、「所得が高い国ほど必ず肥満率が高い」という単純な関係にはなっていません。

食料価格、加工食品の利用、徒歩や公共交通で移動できる都市構造、労働時間、学校給食、食文化など、複数の条件が重なります。ただし、この表だけでは、どの条件が国別格差を生んだかまでは確定できません。

日本は低いが、別の栄養課題もある

日本の5.5%は主要高所得国の中で低い水準です。しかし、「日本の体重問題は小さい」とは言い切れません。

NCD-RisCの分析では、日本は女性の低体重率が肥満率を上回る数少ない国の一つでした。肥満だけを下げればよいのではなく、低体重と肥満が同時に存在する「栄養不良の二重負担」を見る必要があります。

また、日本の国内統計ではBMI25以上を「肥満」と呼ぶことが一般的です。WHOの国際比較で使うBMI30以上とは基準が違うため、日本国内の「肥満者割合」と今回の5.5%を直接比べてはいけません。

1990年から何が変わったのか

最大の変化は、肥満が一部の豊かな国に限られた問題ではなくなったことです。

1990年には、成人の低体重率が肥満率を上回る国が、女性で65か国、男性で89か国ありました。2022年には女性16か国、男性39か国まで減っています。

反対に、2022年には肥満率が低体重率を上回る国が、女性で177か国、男性で145か国に達しました。世界の多くの地域で、栄養政策の重点が「不足への対応」だけでは足りなくなっています。

高所得国では上昇が鈍化した国もある

NCD-RisCが1980~2024年の4050件、延べ2億3200万人の実測データを再分析し、2026年に『Nature』で公表した研究では、工業化された国の多くで肥満率の上昇速度が鈍化、または横ばいに近づいたと報告されました。

これは問題が解消したという意味ではありません。米国のように、非常に高い水準で増加が鈍った国もあるからです。「増加が止まったか」と「負担が小さいか」は別の問いです。

低・中所得国では増加が加速

同じ研究が示したもう一つの変化は、肥満率の上昇が開発途上国側で速まっていることです。

都市化や所得上昇だけで説明するのは不十分ですが、次の変化は体重を取り巻く環境を変えます。

  • 安価で保存しやすい加工食品の流通拡大
  • 自動車やオートバイによる移動の増加
  • 座って行う仕事や画面を見る時間の増加
  • 新鮮な食品を買える場所と所得の地域差
  • 高カロリー食品の広告や販売促進

これらは個人の選択に影響しますが、各要因の寄与は国や地域によって違います。国別肥満率の上昇と同時に起きたからといって、一つの要因だけを原因と断定することはできません。

年代差と男女差は国によって変わる

世界平均だけでは、どの層で対策が必要かは分かりません。

成人の肥満率は、多くの国で若年層より中高年層が高くなる傾向があります。ただし、年齢別のピークや男女差は一定ではありません。

2022年の世界平均では、年齢調整肥満率は女性18.5%、男性14.0%で、女性が4.5ポイント高くなりました。一方、高所得国や東アジアの一部では男性が女性を上回る場合があります。

この違いを見る際には、次の条件を分ける必要があります。

  • 妊娠中の女性を集計から除外しているか
  • 年齢階級が同じか
  • 身長・体重を測定したか、本人が申告したか
  • 都市部と農村部を同じ比率で含むか
  • 男女別の就業、所得、移動手段にどのような差があるか

国全体の平均値は入口にすぎません。保健政策や地域サービスを考えるなら、男女別・年代別に分けたデータが必要です。

肥満率の背景をどう読むか

国際差は個人の意思だけでは説明できず、所得だけでも説明できません。

WHOは肥満を、遺伝、神経生物学、食行動、健康的な食事へのアクセス、市場の力、生活環境が複雑に作用する慢性的で再発し得る疾患と位置付けています。

食品価格と所得

所得が増えると食料不足は減りますが、同時に高カロリー食品の購入機会も増えます。一方、低所得世帯では価格の安い食品に選択が偏りやすく、新鮮な野菜や果物を継続して買いにくいことがあります。

したがって、肥満率と所得の関係は直線ではありません。国の経済発展段階、地域内の所得格差、食品の相対価格を併せて見る必要があります。

都市と交通

徒歩や自転車で日常の用事を済ませられるか、公共交通まで歩く機会があるかは、特別な運動をしなくても日々の活動量を左右します。

ただし、都市居住者ほど必ず肥満率が低いわけではありません。都市では座位中心の仕事や加工食品へのアクセスが増える一方、農村部でも移動の機械化や食品流通の変化が進んでいます。

制度と医療

食品表示、学校給食、子ども向け広告、砂糖入り飲料への課税、体重管理を支える医療制度は、住民が選べる行動の範囲を変えます。

効果を評価するときは、制度導入の前後だけでなく、対象外の商品への置き換え、所得層別の反応、数年後の体重変化まで追う必要があります。肥満率は短期間で大きく変わる指標ではないためです。

国際ランキングを読むときの5つの注意点

小数点以下の順位より、定義と推計区間を確認するほうが重要です。

1.BMI25とBMI30を混同しない

WHOではBMI25以上30未満が過体重、30以上が肥満です。日本の国内統計で使われる「BMI25以上の肥満」と定義が異なります。

2.粗率と年齢調整値を混ぜない

人口の実態を示す粗率と、国際比較向けの年齢調整値は目的が違います。同じ国・同じ年でも数値が一致しないことがあります。

3.実測値と自己申告値を区別する

自己申告では身長を高め、体重を低めに答える傾向があり、肥満率が低く算出される可能性があります。NCD-RisCの主要分析は、身長と体重を測定した人口代表調査を統合しています。

4.推計値には幅がある

米国の42.0%には39.3~44.7%、日本の5.5%には4.6~6.5%という推計区間があります。差が小さい国同士を厳密に順位付けするのは適切ではありません。

5.BMIだけで健康状態は決まらない

BMIは身長と体重から計算する集団向けの指標で、筋肉量や脂肪の分布を直接測りません。同じBMIでも腹囲や代謝指標、疾病リスクは異なります。

次に見るべきデータ

今後の焦点は、世界平均の上昇より「どの国・年代で加速または停滞しているか」です。

2026年のNCD-RisC研究は、高所得国の一部で上昇が鈍る一方、低・中所得国で増加が加速する分岐を示しました。次の更新では、以下を確認する必要があります。

  • 高水準で横ばいになった国が、その後減少へ転じるか
  • 低・中所得国の若年成人で増加速度がさらに上がるか
  • 男女差と都市・農村差がどのように変わるか
  • 食品政策や医療アクセスの違いが長期推移に表れるか
  • 肥満減少と引き換えに低体重が増えていないか

日本の5.5%という低さも、米国の42.0%という高さも、それだけでは政策の成否を判定できません。肥満、過体重、低体重を同じ資料で追い、年代・男女・地域に分けることが、次の変化を見落とさないための実用的な見方です。

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