要介護・要支援の認定者は24年で3.3倍 高齢者人口だけでは説明できない増加
要介護・要支援の認定者数は、介護保険が始まった2000年4月末の218万人から、2024年4月末には710万人へ増えました。24年間で492万人増、約3.3倍です。
同じ期間に65歳以上の第1号被保険者は2,165万人から3,591万人へ約1.7倍になりました。認定者の増加が高齢者人口の増加を大きく上回った背景を考えるうえで、重要なのは高齢者全体の人数だけではありません。認定率が急上昇する85歳以上の厚みを見る必要があります。
この記事で押さえる点は次の4つです。
- 認定者数は2000年から2024年までに約3.3倍になった
- 65歳以上の被保険者数の伸びは約1.7倍だった
- 2023年度の認定割合は65~74歳の4.4%に対し、85歳以上では59.1%だった
- 認定者数、認定率、介護サービス利用者数は別の指標である
使用データと比較条件
長期的な増加は月末時点、年齢別の認定割合は2023年度の年報で確認します。 比較する時点や対象が異なるため、数値を一つの系列として混ぜないことが大切です。
主に使用したのは、厚生労働省の「介護保険事業状況報告」を基にした資料と、内閣府の「令和8年版高齢社会白書」です。
- 長期比較:2000年4月末と2024年4月末
- 対象地域:全国
- 認定者:要支援または要介護の認定を受けた人
- 高齢者人口との比較:65歳以上の第1号被保険者数
- 年齢別比較:2023年度末の第1号被保険者
- 単位:長期比較は万人、年齢別データは千人・%
介護保険では、原則として65歳以上が「第1号被保険者」です。40~64歳の「第2号被保険者」も、特定疾病が原因の場合には認定対象となります。そのため、すべての認定者を65歳以上人口だけで割った値は、厳密な第1号被保険者の認定率にはなりません。
認定者は218万人から710万人へ増加
認定者数の伸びは、65歳以上の被保険者数の伸びの約2倍です。 制度開始後の変化を同じ4月末時点で比べると、差は明瞭です。
| 指標 | 2000年4月末 | 2024年4月末 | 増加数 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 65歳以上の第1号被保険者 | 2,165万人 | 3,591万人 | 1,426万人 | 約1.7倍 |
| 要介護・要支援認定者 | 218万人 | 710万人 | 492万人 | 約3.3倍 |
| 介護サービス利用者 | 149万人 | 529万人 | 380万人 | 約3.6倍 |
認定者は約225%増えた一方、第1号被保険者は約66%増でした。つまり、「高齢者が増えたから認定者も同じ割合で増えた」という説明では足りません。
ただし、この比較だけで健康状態の悪化を断定することもできません。24年間には、人口の年齢構成だけでなく、制度の定着、申請行動、認定区分、介護サービスの供給など複数の変化が含まれるからです。
直近10年でも100万人を超える増加
第1号被保険者に限った年度末の集計では、2014年度の591.8万人から2023年度の695.2万人へ増えました。増加数は103.4万人、率にすると約17.5%です。
一方、増え方は一直線ではありません。2020年度以降も総数は増えていますが、要介護度ごとの動きには違いがあります。2023年度の内訳は、要介護1が144.3万人で最も多く、要支援1が100.8万人、要支援2が97.6万人、要介護2が116.4万人でした。
制度改正の影響もあるため、2000年から現在までの要介護度別人数を単純につなぐのは適切ではありません。特に2006年度には要支援区分が再編されています。長期比較では総数、近年の分析では同じ定義の期間を見るのが安全です。
増加の鍵は「65歳以上」ではなく年齢構成
認定割合は年齢が上がるほど急激に高くなり、85歳以上では約6割に達します。 高齢者人口が同じ人数だけ増えても、どの年齢層が増えたかで介護需要は大きく変わります。
2023年度の第1号被保険者について、要支援と要介護を合計すると次のようになります。
| 年齢層 | 要支援 | 要介護 | 合計認定割合 | 認定者数 |
|---|---|---|---|---|
| 65~74歳 | 1.4% | 3.0% | 4.4% | 68.1万人 |
| 75~84歳 | 6.1% | 11.4% | 17.5% | 237.9万人 |
| 85歳以上 | 14.3% | 44.8% | 59.1% | 389.3万人 |
65~74歳では認定を受けている人は約23人に1人です。75~84歳では約6人に1人、85歳以上では約1.7人に1人まで上がります。
85歳以上の認定者数は389.3万人で、第1号被保険者の認定者695.2万人の約56%を占めます。年齢別人口そのものは65~74歳や75~84歳より少なくても、認定割合が高いため、認定者全体に占める比重が大きくなるのです。
ここがポイント: 介護需要を読むときは「65歳以上が何人いるか」だけでなく、「85歳以上が何人いるか」を確認する必要があります。
年代差は要支援より要介護で広がる
65~74歳と85歳以上を比べると、要支援の割合は1.4%から14.3%へ約10倍になります。要介護は3.0%から44.8%へ約15倍です。
年齢が上がるほど、見守りや一部支援にとどまらず、日常生活で継続的な介護が必要と認定される人の割合が大きくなっています。家族が直面するのは認定手続きだけではありません。訪問介護、通所介護、短期入所、施設入所など、本人の状態と生活環境に合わせたサービス選択が必要になります。
高齢者人口の増加だけで説明できない理由
認定者の増加には、人口の高齢化と制度上・社会上の変化が重なっています。 公開データから直接確認できる事実と、追加検証が必要な解釈を分けて見ます。
データから確認できること
まず、数字として確認できるのは次の3点です。
- 65歳以上の第1号被保険者は24年間で約1.7倍になった
- 要介護・要支援認定者は同じ期間に約3.3倍になった
- 認定割合は65~74歳より85歳以上で大幅に高い
この組み合わせから、年齢構成の高齢化が認定者増加と強く関係していることは読み取れます。65歳以上人口の中で、認定率の高い年齢層の比重が増えれば、全体の認定者数は押し上げられます。
このデータだけでは断定できないこと
一方、認定者が増えた理由を「高齢者の健康が悪化したから」と一本化することはできません。
考慮すべき要素には、次のようなものがあります。
- 介護保険制度が生活者や医療・福祉の現場に定着した
- 本人や家族が認定を申請し、サービスにつながる経路が広がった
- 市区町村ごとに申請率やサービス供給体制が異なる
- 2006年度などの制度改正で認定区分が変わった
- 高齢者の健康状態や世帯構成、家族介護力が変化した
これらの寄与を分けるには、年齢調整した認定率、市区町村別データ、世帯構成、疾病、サービス供給量などを組み合わせる必要があります。全国の総数だけでは、各要因の大きさまでは測れません。
認定者数とサービス利用者数は一致しない
認定を受けても、全員が同じ月に介護サービスを利用するわけではありません。 2024年4月末の認定者は710万人ですが、厚生労働省資料のサービス利用者は529万人です。
同資料では、利用者の内訳は次の通りです。
- 在宅サービス:427万人
- 施設サービス:102万人
- 合計:529万人
2000年4月末からの伸びは、在宅サービスが97万人から427万人へ約4.4倍、施設サービスが52万人から102万人へ2.0倍でした。在宅サービスの利用増が全体を大きく押し上げています。
ただし、ここでいう利用者数には集計上の定義があります。認定の有効期間中でも利用しない月があり、家族介護や自費サービスを選ぶ場合もあります。認定者数をそのまま施設の必要定員や実利用者数と読み替えることはできません。
生活者と自治体に何が起きるか
今後の負担を左右するのは、高齢者総数よりも85歳以上人口と要介護度の分布です。 同じ認定者1人でも、必要な支援の内容と時間は要介護度によって異なります。
生活者にとっては、認定者数の増加が次の場面に結び付きます。
- 本人・家族による市区町村への要介護認定申請
- ケアマネジャーを通じたケアプラン作成
- 訪問介護やデイサービスの空き状況の確認
- 住宅改修や福祉用具の選択
- 家族の就労と介護時間の調整
- 施設入所を選ぶ場合の待機期間や費用の確認
自治体側では、認定調査や審査会だけでなく、介護サービスの提供量、介護人材、保険料、給付費を同時に見通す必要があります。認定者の総数が同じでも、要支援中心の地域と要介護3~5の比重が高い地域では必要な資源が変わります。
数字を読む際の注意点
時点、対象、定義をそろえなければ、介護認定の増減を誤読します。 とくにランキングや自治体比較では、単純な人数より認定率の条件確認が欠かせません。
1. 総数と第1号被保険者を混ぜない
長期比較の認定者総数には、第2号被保険者が含まれます。65歳以上人口との関係を厳密に測る場合は、第1号被保険者の認定者数と第1号被保険者数を対応させます。
2. 年度末と月末を区別する
2000年4月末と2024年4月末の比較は月報ベースです。一方、年齢別の数値は2023年度の年報に基づきます。集計時点が違うため、細かな差まで直接比較する用途には向きません。
3. 人数と認定率を分ける
人口の多い自治体は認定者数も多くなりやすいため、地域の状態を比べるなら第1号被保険者に占める認定者の割合を見る必要があります。それでも年齢構成が違うため、本格的な比較では年齢調整が必要です。
4. 認定は健康状態だけで決まる指標ではない
要介護認定は、心身の状態に関する調査と主治医意見書などを基に行われます。病名の有無だけを数える統計ではありません。また、支援が必要でも申請していない人は認定者数に入りません。
5. 制度改正をまたぐ区分別比較に注意する
要支援区分の再編などがあるため、個別の要介護度を24年間そのまま比較すると、実態の変化と制度上の変化が混ざります。総数の長期推移と、同一定義下の短期推移を使い分けるべきです。
次に見るべきは85歳以上人口と地域別の年齢調整率
要介護・要支援認定者は24年間で約3.3倍に増え、高齢者人口の伸びを大きく上回りました。年齢別では、2023年度に85歳以上の59.1%が要支援または要介護の認定を受けています。
今後の介護需要を追う際は、次の数字をセットで確認するのが実用的です。
- 85歳以上人口の実数と将来推計
- 第1号被保険者の年齢別認定率
- 要介護3~5の人数と構成比
- 在宅・施設サービスの利用者数
- 市区町村別の年齢調整済み認定率
- 介護職員数や施設定員などの供給量
認定者数が増えたという全国値だけでは、地域で必要になるサービスは決まりません。次の焦点は、85歳以上人口がどこで増え、その地域が在宅介護と施設介護をどれだけ供給できるかです。
