ネット通販世帯は56.9%、食品ECは4.52% 数字で見るネットスーパーの現在地
ネットショッピングを使う世帯は、2025年に月平均で56.9%まで増えました。二人以上の世帯がネットで支払う「食料」は月5,823円で、ネット支出全体の21.6%を占める最大項目です。
ただし、食品・飲料・酒類のEC化率は2024年時点で4.52%です。ネットで食品を買う行動は広がったものの、食品購入の主役は今も実店舗——これが公的データから見える現在地です。
この記事で押さえる数字は次の4つです。
- ネットショッピング利用世帯:2025年は56.9%
- ネット経由の食料支出:1世帯当たり月5,823円
- 食品・飲料・酒類のEC市場:2024年は3兆1,163億円
- 同分野のEC化率:2019年の2.89%から2024年の4.52%へ上昇
使用データと比較条件
結論を正しく読むには、「利用世帯の割合」「世帯の支出額」「市場のEC化率」を分ける必要があります。
主に使うのは、総務省統計局の「家計消費状況調査」と経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」です。
家計消費状況調査
2025年平均の公表値を使い、全国の二人以上の世帯を対象にします。主な指標は次のとおりです。
- ネットショッピング利用世帯の割合:その月にネットで商品やサービスを購入した世帯の割合
- ネットショッピング支出額:利用しなかった世帯も含む1世帯当たり月平均額
- 食料:食料品、飲料、出前の合計
ここでいう食料品は、飲料と出前を除く食用品です。ネットスーパーだけでなく、通販サイト、メーカー直販なども含まれます。
電子商取引に関する市場調査
2024年の国内BtoC-ECを対象に、「食品、飲料、酒類」の市場規模とEC化率を確認します。EC化率とは、その分野の商取引総額に占めるECの割合です。
したがって、56.9%と4.52%は矛盾しません。前者は「月内に何らかのネット購入をした世帯」、後者は「食品・飲料・酒類の取引金額のうちECが占める割合」です。
ネット通販を使う世帯は10年でほぼ倍増
ネットショッピングは、一部の世帯だけが使う買い方ではなくなりました。
二人以上の世帯における月平均の利用割合は、2015年の27.6%から2025年の56.9%へ上昇しています。10年間の増加幅は29.3ポイントで、割合は約2.1倍です。
- 2015年:27.6%
- 2018年:39.2%
- 2019年:42.8%
- 2020年:48.8%
- 2021年:52.7%
- 2023年:53.5%
- 2024年:55.3%
- 2025年:56.9%
2020年には前年から6.0ポイント上がり、その後も50%を下回る水準には戻っていません。コロナ禍と同時期に大きく伸びた事実は確認できますが、その後の上昇を感染症だけで説明することはできません。配送網、品ぞろえ、決済手段、スマートフォン利用など、複数の条件が重なっています。
2025年のネットショッピング支出総額は、1世帯当たり月2万6,928円。利用世帯に限ると月4万7,300円で、いずれも調査開始以来の最多でした。
ネットで最も多く支払われているのは「食料」
ネット通販の支出構成を見ると、食料はすでに中心的な品目です。
2025年の二人以上の世帯では、ネット経由の食料支出が月5,823円となり、前年の5,225円から11.4%増えました。ネットショッピング支出全体の21.6%を占め、旅行関係費の20.9%を上回っています。
内訳は次のとおりです。
- 食料品:4,080円、前年比12.5%増
- 飲料:1,016円、同10.8%増
- 出前:728円、同6.6%増
- 合計:5,823円、同11.4%増
伸びの中心は、出前ではなく食料品そのものです。 食料支出の増加額598円のうち、454円を食料品が占めました。
一方、この11.4%は名目額の増加です。2025年の消費者物価指数は総合で前年比3.2%上昇しており、購入数量の増加だけを表す数字ではありません。オンラインへの移行、購入頻度、単価、品ぞろえの変化を切り分けるには、さらに細かなデータが必要です。
年代差は「若いほど多い」だけではない
金額は40代前後で多い一方、伸び率では70歳以上が首位でした。
2025年のネット経由の食料支出を世帯主の年齢別に見ると、40~49歳が月7,971円で最も多く、40歳未満の7,960円がほぼ並びます。
- 40歳未満:7,960円、前年比2.3%増
- 40~49歳:7,971円、同13.2%増
- 50~59歳:6,581円、同11.5%増
- 60~69歳:5,898円、同12.5%増
- 70歳以上:3,941円、同15.9%増
70歳以上の金額は40代の半分ほどですが、前年からの伸び率は最大です。高齢層でもオンライン食品購入に向かう支出が増えていることは確認できます。
ただし、この表は個人の年齢別利用率ではなく、世帯主の年齢で分類した世帯当たり支出額です。同居する家族が注文した場合も、その世帯主の年齢階級に集計されます。
40歳未満では出前の位置づけが違う
40歳未満の食料支出は、食料品5,238円、飲料1,118円、出前1,603円でした。出前が飲料を上回るのは、この年齢階級だけです。
70歳以上では、食料品2,933円、飲料617円、出前390円となっています。合計額だけを見ると見落としますが、若い世帯ほど飲食店からの宅配が大きく、高齢世帯ほど食料品に支出が集中する違いがあります。
市場は5年で1.7倍、それでもEC化率は4.52%
食品ECは急拡大しましたが、販売全体に占める比率はまだ低い水準です。
経済産業省によると、「食品、飲料、酒類」のBtoC-EC市場は2019年の1兆8,233億円から、2024年には3兆1,163億円へ増えました。5年間で70.9%増、約1.7倍です。
同じ期間にEC化率は次のように上がりました。
- 2019年:2.89%
- 2020年:3.31%
- 2023年:4.29%
- 2024年:4.52%
2024年の市場規模は前年から6.36%増え、EC化率も0.23ポイント上昇しました。それでも、物販系BtoC-EC全体のEC化率9.78%の半分以下です。
ここがポイント: ネット通販を使う世帯は過半数に達しましたが、食品の購入金額全体で見るとECは4.52%です。「利用経験の広がり」と「日常の買い物の置き換わり」は別の段階にあります。
食品のEC化が相対的に低い理由
統計だけで個々の理由を確定することはできません。ただし、食品は購入頻度が高く、鮮度や消費期限を確認する必要があり、温度管理や短時間配送も求められます。
また、店舗では少量でもその場で持ち帰れます。ECでは最低注文額、送料、配送枠などが利用判断に加わります。こうした条件は、書籍や家電のように保管・配送しやすい商品とは異なります。
食品市場そのものの分母が大きいことも重要です。EC市場が3兆円を超えていても、食品・飲料・酒類の取引全体から見れば4.52%にとどまります。市場規模だけを見て「食品の大半がネットに移った」と読むのは誤りです。
地域差を読むときは食品以外の支出を混ぜない
公表資料から地域差は確認できますが、ネットスーパーの普及率を都道府県別に直接並べることはできません。
内閣府が家計消費状況調査を基に整理した2024年冬号の地域課題分析レポートでは、消費支出に占めるEC支出の割合は関東が最も高く、近畿が続きました。東北、北陸、中国は7%未満です。
ただし、このEC支出には食品だけでなく、旅行、衣類、家電、チケットなども含まれます。関東の比率が高いからといって、関東のネットスーパー利用率が同じ順序で高いとは断定できません。
地域比較で本当に必要なのは、次の条件をそろえたデータです。
- 食料品に限定した利用世帯の割合
- 都道府県または都市圏別の同一指標
- 配送対象人口や配送枠を含むサービス供給状況
- 世帯人数、年齢、所得を調整した比較
現行の公表表は地方・都市階級別の支出を調べられますが、サンプル誤差や世帯構成の違いがあります。少額の順位差をそのまま地域の利便性ランキングにするのは避けるべきです。
海外の数字とは調査単位が違う
国際比較では、似た名称の指標をそのまま並べないことが重要です。
Eurostatによると、EUでは2024年にインターネット利用者の77%が過去12か月以内に商品・サービスをオンライン購入しました。また、飲食店やファストフードなどからの料理宅配をオンライン購入した人は21%でした。
日本の56.9%は「二人以上の世帯」「1か月当たり」、EUの77%は「インターネット利用者」「過去12か月」の数字です。21%も生鮮食品や日用品を扱うネットスーパーではなく、料理宅配の分類です。
このため、数値の大小から日本の普及が遅い、または進んでいるとは判断できません。国際比較には、対象者、期間、食品の定義を統一した個人ベースの統計が必要です。
数字から言えること、言えないこと
現時点で最も確かな結論は、食品ECが「利用の定着」と「販売額に占める低さ」を同時に抱えていることです。
データから言えること
- 月内にネット通販を使う二人以上世帯は56.9%に達した
- ネット支出では食料が最大項目となった
- 食料支出は全年齢階級で前年を上回った
- 食品・飲料・酒類のEC市場は2019年から2024年に約1.7倍へ拡大した
- それでも食品分野のEC化率は4.52%にとどまる
このデータだけでは言えないこと
- 何%の人がネットスーパーを利用したか
- ネット購入によって食料の購入量が増えたか
- 価格上昇と購入数量がそれぞれ何割寄与したか
- どの都道府県でネットスーパーが最も普及しているか
- 高齢者本人が注文したのか、同居家族が注文したのか
次に見るべきは「利用率」より購入頻度
普及の次の段階を測るには、利用経験の有無だけでは足りません。
今後の注目点は、食品EC化率が上がり続けるか、そして月1回の補助的な購入が週単位の日常利用へ変わるかです。確認したい指標は次の3つです。
- 食品に限定した利用世帯率と購入頻度
- 物価の影響を除いた実質支出または購入数量
- 都市部と配送網の薄い地域を同じ条件で比べた利用状況
2025年は、ネットでの食料支出が全年齢階級で増えました。次に問うべきなのは「使ったことがあるか」ではなく、日々の食料調達の何回に1回をネットが担うのかです。その数字が見えるとき、ネットスーパーが実店舗を補う存在から生活インフラへ移ったかを判断できます。
