再配達率は7.6%まで低下 置き配が増えても「効果を断定できない」理由
宅配便の再配達率は、最新の2026年4月調査で7.6%まで下がった。2017年10月の15.5%と比べると、調査対象をそろえた大手3社ベースでも2026年4月は8.8%で、約6.7ポイント低い。
同じ時期に、置き配や宅配ボックスなどを含む非対面配達率は31.0%へ上昇した。多様な受け取り方の普及が再配達削減を後押しした可能性はある。ただし、公表データだけでは「置き配が何ポイント押し下げたか」までは分からない。
この記事で分かること
- 再配達率は2017年の15%台から、2026年4月には7%台へ低下した
- 最新調査では都市部8.5%、地方6.0%と2.5ポイントの差がある
- 非対面配達率は2025年2月の25.6%から2026年4月の31.0%へ上昇した
- 置き配と宅配ボックスの個別効果は、現在の全国集計では切り分けられない
使用データと比較条件
中心に使うのは、国土交通省が年2回実施する「宅配便再配達実態調査」です。
最新値は2026年4月1日から30日までの配達実績を集計したもの。宅配事業者が扱った貨物の配達総数と再配達個数を国土交通省へ任意報告し、地域区分ごとに合算している。
今回参照するデータは次の通りだ。
- 再配達率:2017年10月~2026年4月
- 最新の全国・地域別結果:2026年4月
- 非対面配達率:2025年2月、同年10月、2026年4月
- マンションの宅配ボックス・置き配状況:2023年度マンション総合調査
再配達率は「再配達個数 ÷ 配達総数」で計算される。2026年4月の地域別総計は、宅配に関わる大手6社の合計だ。一方、2017年から続く長期系列は主に大手3社を対象としているため、長期比較では3社ベースの参考値を使う。
地域区分も都道府県別ではない。
- 都市部:東京23区のうち、人口密度と単身世帯割合が高い区
- 都市部近郊:東京都郊外のうち、世帯人口が多い市町村
- 地方:人口密度が低く、世帯人口が多い市町村
区分には2015年国勢調査が使われている。このため、今回の数字を「全都道府県の平均」や「東京都対地方県の比較」と読むことはできない。
再配達率は15%台から7.6%へ下がった
長期的な方向は明確に低下だが、一直線に下がったわけではありません。
大手3社ベースでは、2017年10月の15.5%から2019年10月の15.0%まで、おおむね15%前後で推移していた。2020年4月には8.5%へ急低下したものの、同年10月には11.4%へ戻っている。
その後は小幅な上下を挟みながら低下した。
| 調査時点 | 再配達率 | 対象 |
|---|---|---|
| 2017年10月 | 15.5% | 大手3社 |
| 2019年10月 | 15.0% | 大手3社 |
| 2020年4月 | 8.5% | 大手3社 |
| 2020年10月 | 11.4% | 大手3社 |
| 2023年10月 | 11.1% | 大手3社 |
| 2024年10月 | 10.2% | 大手3社 |
| 2025年10月 | 9.5% | 大手3社 |
| 2026年4月 | 8.8% | 大手3社 |
| 2026年4月 | 7.6% | 大手6社 |
2017年10月と2026年4月を同じ大手3社で比べると、低下幅は6.7ポイント。率の水準では約43%低くなった計算だ。
一方、2026年4月の大手6社ベースでは、配達総数332万2,699個のうち再配達は25万3,128個だった。前回の2025年10月は8.3%だったため、半年で0.7ポイント下がっている。
2020年4月の急低下には、新型コロナウイルス感染拡大期の在宅時間増加という特殊な条件が重なる。その値だけを起点にすると、その後に再配達が増えたように見える。長期傾向を見るには、コロナ禍前を含む複数時点を確認する必要がある。
都市部は地方より2.5ポイント高い
最新調査では、人口密度の高い都市部ほど再配達率が高いという差が残っています。
2026年4月の大手6社ベースを地域区分別に見ると、都市部が8.5%、都市部近郊が7.2%、地方が6.0%だった。
| 地域区分 | 配達総数 | 再配達数 | 再配達率 |
|---|---|---|---|
| 都市部 | 1,180,100個 | 100,873個 | 8.5% |
| 都市部近郊 | 1,989,910個 | 143,119個 | 7.2% |
| 地方 | 152,689個 | 9,136個 | 6.0% |
| 総計 | 3,322,699個 | 253,128個 | 7.6% |
都市部と地方の差は2.5ポイントある。仮にそれぞれ1万個を配達すると、単純計算では都市部の再配達が850個、地方が600個となり、250個の差に相当する。
この差には、調査区分の設定上、単身世帯割合や世帯人数が関係している可能性がある。一人暮らしでは、対面で受け取れる人が不在になれば代わりの家族が対応できない。一方、地方区分は世帯人口が多い地域を選んでいる。
ただし、調査は世帯人数、住宅形態、就業時間、宅配ボックスの有無を同時に統制した分析ではない。したがって、地域差の原因を単身世帯だけに求めることはできない。
非対面配達は31.0%へ上昇した
置き配や宅配ボックスを含む受け取り方は広がっており、再配達率の低下と同じ方向に動いています。
国土交通省が公表する大手3社の非対面配達率は、次のように上昇した。
- 2025年2月:25.6%
- 2025年10月:29.9%
- 2026年4月:31.0%
約14カ月で5.4ポイント増えたことになる。同じ期間に取得された再配達率は、2025年4月の大手3社ベースで9.5%、2025年10月も9.5%、2026年4月は8.8%だった。
ここがポイント: 非対面配達率の上昇と再配達率の低下は同時に確認できる。ただし、同時に動いたことだけでは、置き配や宅配ボックスが低下分のすべてを生んだとは証明できない。
なぜ因果関係を断定できないのか
最大の理由は、公開されている全国集計が、非対面配達を手段別に分けていないことだ。31.0%という数字からは、玄関前への置き配、住宅の宅配ボックス、その他の非対面受け取りがそれぞれ何%なのか分からない。
さらに、再配達を減らし得る手段は非対面配達だけではない。
- 配達前の通知を受け、在宅できる日時へ変更する
- コンビニや営業所など、自宅以外の場所を指定する
- 宅配事業者の会員サービスで受取日時や場所を変更する
- EC事業者側が初回配達の日時指定をしやすくする
2025年9月時点の大手宅配事業者の会員サービス利用率は34.9%だった。こうしたサービスも初回受け取りの成功率を高めるため、置き配だけの効果を分離するには、受取方法別かつ同一条件での詳しいデータが必要になる。
それでも関係を考える根拠はある
仕組みとしては分かりやすい。受取人が留守でも荷物を安全に渡せれば、その荷物は再配達にならない。置き配と宅配ボックスは、対面受け取りで生じる「在宅していなければならない」という条件を外す。
ただし、すべての荷物に使えるわけではない。高額品、冷蔵・冷凍品、本人確認が必要な荷物などでは、対面受け取りが必要になる場合がある。住宅の管理規約や盗難への不安も利用を左右する。
宅配ボックスの普及には住宅差がある
宅配ボックスは広がっているものの、住宅の種類や築年数によって利用できる環境が違います。
2023年度マンション総合調査では、管理組合への調査で「竣工当初から設置」が49.2%、「後から設置」が8.2%だった。合計すると、宅配ボックスが設置されているマンションは57.5%となる。設置台数は平均8.3台だった。
区分所有者への調査では、「すでに設置されている」との回答が60.6%。置き配について「マンション内のルールで許容されており、利用している」と答えた割合は30.6%だった。
一方、管理組合の86.0%は、置き配について「特にルールを決めていない」と回答している。この数字が示すのは、設備の設置だけでなく、共用廊下の使い方や防災上の安全、盗難時の扱いといった運用面が残っていることだ。
別の2023年度住宅市場動向調査では、注文住宅を取得した世帯の宅配ボックス設置率は全国39.0%、三大都市圏41.7%だった。ただし、この調査は注文住宅の取得世帯を対象にした結果であり、賃貸住宅を含む全世帯の普及率ではない。
つまり、マンションの共用設備と戸建て用設備の数字を、そのまま足したり全国平均として扱ったりすることはできない。調査対象が違うからだ。
数字から言えること、言えないこと
確実に言えるのは再配達率の低下であり、個別施策の寄与度はまだ測れません。
データで確認できる事実
- 大手3社ベースの再配達率は、2017年10月の15.5%から2026年4月の8.8%へ低下した
- 大手6社ベースの最新値は7.6%で、2025年10月より0.7ポイント低い
- 2026年4月は都市部8.5%、地方6.0%だった
- 大手3社の非対面配達率は2025年2月の25.6%から2026年4月の31.0%へ上昇した
- 2023年度調査では、宅配ボックス設置済みのマンション管理組合が57.5%だった
現在のデータだけでは言えないこと
- 再配達率の低下のうち、置き配だけが生んだ割合
- 宅配ボックス1台の設置で削減できる再配達件数
- 都市部と地方の差が、住宅設備だけで生じているかどうか
- 都道府県別、市区町村別の正確な再配達率ランキング
- 非対面配達の増加が盗難や誤配に与えた影響
相関を因果関係として扱わないことが重要だ。EC利用、在宅勤務、宅配事業者の通知サービス、住宅設備、消費者の受取行動は同時に変わっている。
2030年度「非対面50%」への残り19ポイント
次の焦点は、非対面配達率を上げるだけでなく、安全性と使える住宅の範囲をどう広げるかです。
政府は2026年3月に閣議決定した総合物流施策大綱で、宅配ボックスや置き配など「多様な受取方法の利用率」を、2025年2月の25.6%から2030年度に50%程度へ高める目標を掲げた。
2026年4月の31.0%を基準にすると、目標まで残り19.0ポイントある。ここから先は、すでに置き配を利用しやすい世帯だけでなく、設備のない戸建て、古い集合住宅、管理ルールが定まっていないマンションにも選択肢を広げる必要がある。
今後、確認したいのは次の3点だ。
- 非対面配達率の上昇が続いたとき、再配達率も同じペースで下がるか
- 置き配、戸建て用ボックス、共用ボックスを分けた利用実績が公表されるか
- 都市部の8.5%と地方の6.0%という差が、住宅形態や世帯構成をそろえても残るか
再配達率はすでに半分近い水準まで下がった。次に必要なのは、置き配を一括りに評価することではない。どの受取方法が、どの住宅と荷物で、安全に初回配達を成功させたのかを測れるデータだ。
