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雪の日は本当に減った?札幌・新潟など30地点の64年データが示す地域差

積雪量の異なる日本の二つの都市景観を対比した冬の風景。

雪の日は本当に減った?札幌・新潟など30地点の64年データが示す地域差

雪の変化は、全国一律に「降る日が減った」とは言えません。気象庁が長期間の比較に使う日本海側30地点では、年最深積雪は北・東・西日本のすべてで減少していますが、日降雪量20cm以上の日数は東日本・西日本で減少する一方、札幌や青森を含む北日本では明確な長期傾向が確認されていません。

とくに新潟・富山・福井などを含む東日本日本海側では、20cm以上降った日は、1962〜1971寒候年の年平均約3.9日から2016〜2025寒候年の約1.9日へ減りました。およそ半分です。ただし、これは「大雪がもう起きない」という意味ではありません。

この記事で分かること

  • 1962〜2025寒候年に、積雪とまとまった降雪がどう変化したか
  • 札幌・青森と新潟・富山・福井で傾向が異なる理由
  • 「雪日数」「降雪量」「最深積雪」を分けて見る必要性
  • 平均的な雪の減少と、突発的な大雪が両立する仕組み
目次

使用データと比較条件

長期比較の中心は、観測条件をそろえやすい日本海側30地点のデータです。 気象庁「日本の気候変動2025」と「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」を基に、1962〜2025寒候年を確認します。

対象となる30地点

気象庁は、雪が比較的多く、積雪・降雪データの均質性が長期間保たれている地点を選んでいます。

  • 北日本日本海側・12地点:稚内、留萌、旭川、札幌、岩見沢、寿都、江差、倶知安、若松、青森、秋田、山形
  • 東日本日本海側・7地点:輪島、相川、新潟、富山、高田、福井、敦賀
  • 西日本日本海側・11地点:西郷、松江、米子、鳥取、豊岡、彦根、下関、福岡、大分、長崎、熊本

札幌、青森、新潟、富山、福井などの主要都市が含まれる一方、都市だけを抜き出した集計ではありません。地域全体の長期変化を安定して捉えるための地点構成です。

太平洋側は、南岸低気圧の進路や気温のわずかな違いで雨と雪が入れ替わりやすく、もともと降雪頻度が低い地点も多いため、同じ方法による長期評価の対象外です。

「1年」は前年8月から当年7月まで

雪の統計では、暦年ではなく寒候年を使います。たとえば2025寒候年は、2024年8月から2025年7月までです。冬を年末で分断せず、一続きの季節として集計できます。

今回見る指標は次の3つです。

  • 年最深積雪:その寒候年に観測した積雪の最大の深さ
  • 日降雪量20cm以上の日数:1日に20cm以上の新たな降雪を観測した日数
  • 日降雪量50cm以上の日数:より強い降雪があった日数

一般にいう「雪の日」は、雪やみぞれを観測した雪日数を指す場合もあります。しかし、雪が舞った日と、除雪や交通に影響しやすいまとまった降雪の日では生活上の意味が違います。そこで本稿では、長期比較が公開されている20cm・50cm以上の日数を中心に扱います。

最深積雪は3地域すべてで減少

冬のピーク時に地面へ積もっていた雪の深さは、日本海側の全地域で長期的に小さくなっています。

年最深積雪は地点ごとの差が非常に大きいため、気象庁は各地点の実測値を単純平均していません。各地点の1991〜2020年平均を100とした比率を求め、それを地域内で平均しています。

1962〜2024寒候年の10年当たりの変化率は次の通りです。

地域10年当たりの変化率主な都市・地点
北日本日本海側3.5%減札幌、青森、秋田、山形など
東日本日本海側12.2%減新潟、富山、福井など
西日本日本海側17.4%減鳥取、彦根、福岡など

いずれも信頼水準95%で統計的に有意です。減少率は北日本より東・西日本で大きく、緯度の低い地域ほど雪の減少が目立つ形になっています。

ただし、この割合を「札幌の積雪が10年で3.5%減った」「新潟では12.2%減った」と読み替えることはできません。表の数値は、複数地点の平年比を平均した地域指標だからです。

1980年代初めを境に大きく低下

推移には一本調子ではない特徴があります。全地域で1980年代初めに大きな山があり、1990年代初めにかけて急速に低下しました。その後、東日本と西日本では、1980年以前より少ない状態が続いています。

西日本日本海側では、1980年代半ばまで平年値の300%を超える年がありました。しかし、2000年代以降は300%に達した年がありません。年ごとの上下は大きいものの、極端に積雪の多かった時代との違いが表れています。

「20cm以上降った日」は東・西日本で減少

まとまった雪が降る回数の減少は、東日本と西日本で明瞭ですが、北日本では同じ結論になりません。 ここが地域差を見るうえで最も重要です。

新潟・富山・福井を含む東日本では約半分に

東日本日本海側7地点では、日降雪量20cm以上の日数に統計的に有意な減少傾向があります。

  • 1962〜1971寒候年:1地点当たり年平均 約3.9日
  • 2016〜2025寒候年:1地点当たり年平均 約1.9日
  • 変化:最初の10年間の 約0.5倍

10年当たりでは約0.4日減っています。64年間の長期傾向に当てはめれば、まとまった降雪の日が2日余り減った規模です。

日降雪量50cm以上の日数にも減少傾向があります。20cm以上より発生回数が少ないため年ごとの振れは大きいものの、東日本では強い降雪の頻度にも変化が現れています。

北日本では明確な減少を確認できない

札幌、青森、秋田などを含む北日本日本海側では、年最深積雪は減少している一方、日降雪量20cm以上の日数に統計的に有意な変化傾向は確認されていません。

これは矛盾ではありません。最深積雪は、降った量だけでなく、気温、融雪、雨への変化、雪が締まる過程にも左右されます。まとまった降雪の回数が明確に減らなくても、積もった雪が早く解ければ、冬の最大積雪は小さくなり得ます。

ここがポイント: 「最大積雪が減った」と「大雪の日が減った」は別の指標です。札幌など北日本では前者に減少傾向がある一方、20cm以上降る日については明確な長期傾向が確認されていません。

西日本では雪になる温度条件が外れやすい

西日本日本海側でも、日降雪量20cm以上の日数は減少しています。気温が比較的高い地域では、わずかな昇温でも降水が雪ではなく雨になる場面が増えやすく、積雪が維持される期間も短くなります。

ただし、観測データだけから個々の年の減少原因を一つに決めることはできません。冬型の気圧配置、寒気の流入、海面水温、低気圧の経路といった自然変動も、毎年の降雪量を大きく動かします。

雪が減っても大雪災害はなくならない

平均的な積雪の減少と、短時間に集中する大雪は同時に起こり得ます。 長期平均が下がったことを、そのまま防災リスクの消滅と受け取るのは危険です。

気象庁は、2018年1月・2月や2020年12月など、近年も社会的影響の大きい大雪が発生したと整理しています。一部の事例では、地球温暖化の影響によって降雪量が増えたことを示す研究もあります。

背景にあるのは、雪を決める条件が一つではないことです。

  • 気温が上がれば、雪が雨へ変わりやすくなる
  • 一方、気温が氷点下に保たれる場所では、暖かい空気が含む多くの水蒸気が強い降雪につながる場合がある
  • 冬型の気圧配置や寒気の位置により、限られた地域へ雪雲が集中することがある
  • 平均降雪量が減っても、交通網が止まるほどの一度の大雪は残る

将来予測でも、年間の降雪・積雪量は全国的に減る方向が示されています。その一方、本州山間部などの一部では、極端な大雪時の降雪量が増える可能性があります。

つまり、除雪や交通対策を「年間の雪が減ったから縮小する」と単純に判断するのは難しいということです。平常時の作業量は減っても、短期間の集中除雪に必要な車両、人員、通行規制の体制は維持しなければならない場合があります。

都市ごとの数字を読むときの注意点

都市間のランキングを作る前に、観測方法、地点移転、指標の定義を確認する必要があります。 雪の統計は、同じ「日数」でも中身が異なります。

雪日数と降雪日数は同じではない

気象庁の平年値表にある「雪日数」は、大気現象として雪、しゅう雪、ふぶき、みぞれなどを観測した日数です。積雪が残った日数でも、一定量以上積もった日数でもありません。

そのため、雪日数が多くても降雪量が多いとは限らず、反対に、雪日数が少ない年でも一度の強い降雪で最深積雪が大きくなることがあります。

生活への影響を見るなら、目的に応じて指標を選びます。

  • 雪が舞う季節の長さを見る:雪日数、初雪・終雪
  • 除雪負担を見る:日降雪量、一定量以上の日数
  • 道路や建物への影響を見る:最深積雪、積雪日数
  • 集中的な大雪を見る:20cm・50cm以上の日数、短時間の降雪量

目視から自動観測への変更がある

雪やみぞれなどの大気現象は、かつて観測者が目視で判定していました。現在は多くの地点で自動観測へ移行しています。札幌、仙台、新潟などでも2024年3月に観測方法の変更があり、前後の雪日数をそのまま一本の均質な系列として比較できるとは限りません。

一方、今回の地域分析は、積雪・降雪量の均質性が長期間続く地点を選び、量的な指標を使っています。「雪を観測したか」という現象日数より、長期比較に適した設計です。

都市部では観測地点の周辺環境も変わる

都市化による気温上昇、建物の増加、地表面の変化は、雪の積もり方や解け方に影響する可能性があります。観測所の移転も長期系列を断つ要因です。

したがって、「人口が増えた都市ほど雪が減った」といった因果関係を、今回の地域平均だけから導くことはできません。都市別に検証する場合は、観測所履歴とデータの品質情報を併せて確認する必要があります。

データから言えること、言えないこと

確実に言えるのは、雪の減り方に大きな地域差があり、指標によって結論も変わることです。

データが示している事実

  • 1962年以降、年最深積雪の平年比は北・東・西日本の日本海側すべてで減少している
  • 減少率は北日本より東日本・西日本で大きい
  • 東日本・西日本では日降雪量20cm以上の日数が減少している
  • 東日本では20cm以上の日数が、最初の10年間の約3.9日から最近10年間の約1.9日へ減った
  • 北日本では20cm以上の日数に明確な長期変化傾向が確認されていない

このデータだけでは言えないこと

  • 日本全国のすべての都市で雪の日が減った
  • 札幌や新潟など、個別都市の変化率が地域平均と同じ
  • 降雪の減少がすべて気温上昇だけで起きた
  • 今後、大雪や交通障害が減り続ける
  • ある一冬の多雪・少雪が長期傾向を反映している

積雪と降雪は年々の変動が大きく、観測期間も気温の統計ほど長くありません。気象庁も、より極端な大雪については長期傾向を適切に評価するため、さらなるデータの蓄積が必要だとしています。

生活と地域運営で見るべき次の数字

雪国で重要になるのは、年間総量だけでなく「いつ、どれほど集中して降るか」です。 平均値の減少だけを見ていると、実際の負担を見誤ります。

今後は次の指標を組み合わせて追う必要があります。

  • 24時間・72時間の降雪量と、その発生頻度
  • 積雪が続いた日数と融雪の時期
  • 除雪費、除雪車の稼働時間、道路通行止めの件数
  • 鉄道の運休や航空便の欠航など交通への影響
  • 屋根雪処理や空き家管理に必要な人員
  • 山間部の積雪量と春以降の水資源

札幌や青森では、まとまった降雪の日数が明確に減っていなくても、最深積雪の地域平均は低下しています。新潟、富山、福井を含む東日本では、最深積雪に加えて20cm以上降る日も減りました。同じ雪国でも、備えるべき変化は同じではありません。

次に確認すべき分岐点は、平年の除雪需要が縮小する速度と、突発的な大雪へ対応するための能力をどう両立させるかです。自治体の除雪費や交通障害のオープンデータを気象観測と重ねれば、「雪が減ったか」から一歩進み、暮らしの負担が実際にどう変わったかを検証できます。

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