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貯蓄は60歳代が最多、40歳未満の約2.9倍――年代別データで見る資産の偏り

家計の貯蓄額の違いを表す硬貨と電卓。

貯蓄は60歳代が最多、40歳未満の約2.9倍――年代別データで見る資産の偏り

二人以上の世帯では、世帯主が60歳代の平均貯蓄額は2,843万円で、40歳未満の994万円の約2.9倍です。高年齢の世帯ほど多くの貯蓄を持つ傾向は確認できます。ただし、この数字だけで「日本の金融資産の何割を高齢者が持つか」や「高齢者の多くが豊かか」までは分かりません。

大切なのは、1世帯当たりの保有額、年代全体の保有総額、同じ年代の中でのばらつきを分けることです。ここでは総務省統計局の家計調査を使い、年代別の金額と資産の中身、2020年から2025年までの変化を読み解きます。

  • 平均貯蓄額は60歳代が最多。70歳以上も若い世帯を上回る。
  • 全年代で、普通預金などの通貨性預貯金が最大の項目となっている。
  • 2020年との比較では、40歳未満の増加率が60歳代を上回る。
  • 単身世帯を含まないため、日本の家計全体への一般化には限界がある。
目次

使用データは2025年の全国・二人以上の世帯

比較するのは個人の資産ではなく、世帯主の年齢で区分した世帯の平均貯蓄額です。

使用する資料は、総務省統計局の「家計調査・貯蓄・負債編」。2026年10月8日時点で確認できる最新の年平均結果は2025年分で、2026年5月19日に公表され、年報は同年9月4日に掲載されています。四半期結果もありますが、この記事では年平均に条件をそろえます。調査結果の公表ページ

比較条件は次のとおりです。

  • 対象地域: 全国
  • 対象世帯: 二人以上の世帯。勤労者世帯だけに限定しない
  • 年代区分: 世帯主が40歳未満、40歳代、50歳代、60歳代、70歳以上
  • 金額: 1世帯当たりの平均値、単位は万円
  • 期間: 2025年平均を中心に、2020年平均と比較

「貯蓄」は銀行預金だけを意味しません。預貯金に加え、有価証券、生命保険など、社内預金などの金融機関外の貯蓄を含む指標です。住宅や土地の価格を含む資産総額とは区別する必要があります。家計調査年報・2025年

世帯主が70歳以上でも、同居する家族全員が70歳以上とは限りません。以下の「年代別」は、すべて世帯主の年齢による分類です。

60歳代の貯蓄額は多いが、年齢とともに増え続けるわけではない

2025年の平均貯蓄額は60歳代で最も高く、70歳以上ではそれより低くなっています。

世帯主の年齢平均貯蓄額40歳未満との倍率
40歳未満994万円1.00倍
40歳代1,381万円1.39倍
50歳代1,756万円1.77倍
60歳代2,843万円2.86倍
70歳以上2,471万円2.49倍

出典:総務省統計局「家計調査」2025年平均結果。倍率は公表された平均額から計算し、小数第2位に丸めたものです。結果概要・表Ⅲ-1-1

60歳代と40歳未満との差は1,849万円あります。高年齢の世帯に貯蓄が厚いという見方には、明確な根拠があります。

一方、70歳以上の平均は60歳代より372万円少なくなっています。これをそのまま「60歳代から70歳代になる間に372万円を取り崩す」と読むことはできません。比較しているのは、2025年に存在する別々の世帯集団だからです。

同じ世帯の加齢に伴う変化を知るには、世帯を継続して追うデータが必要です。退職金、相続、生活費への取り崩しなどは年齢差を説明する候補ですが、この表だけで各要因の寄与は確定できません。

「高齢者が何割を持つか」は別の計算になる

1世帯当たりの平均額が高くても、その年代の世帯数が少なければ、年代全体の保有総額は小さくなります。逆に、平均額が同じでも世帯数が多い年代の総額は大きくなります。

年代別の保有総額を求める基本的な考え方は、次の計算です。

年代別の保有総額=その年代の平均保有額×その年代の世帯数

したがって、全国での保有割合を検証するには、金額と世帯数の対象範囲をそろえ、単身世帯も含めなければなりません。二人以上の世帯の平均額だけから、日本の家計金融資産全体に占める高齢者の割合を出すことはできません。

資産の中身は、全年代で普通預金などが最大

年代差を理解するには、貯蓄の総額に加えて、どの種類の資産を持つかを見る必要があります。

統計局の年代別グラフでは、すべての年齢階級で、普通預金などの「通貨性預貯金」が最も多くなっています。また、有価証券の平均保有額は60歳代が最多です。高年齢の世帯の貯蓄が多い理由を、定期預金だけに求めることはできません。家計簿からみたファミリーライフ・第4章

資産の種類は、家計の使い勝手にも関わります。

  • 通貨性預貯金: 普通預金など。日々の支払いや急な出費に使いやすい。
  • 定期性預貯金: 定期預金など。満期や中途解約の条件を確認する必要がある。
  • 有価証券: 株式、債券、投資信託など。保有額は価格変動の影響を受ける。
  • 生命保険など: 預金とは異なる形で計上され、普通預金のように全額をすぐ使えるとは限らない。

ここで注意したいのが、保有「額」と構成「比」は違うという点です。

例えば、有価証券の金額が大きい年代でも、貯蓄総額も大きければ、構成比が同じ程度にとどまる場合があります。また、年代全体の有価証券保有額が多いことは、その年代の誰もが有価証券を持っていることを意味しません。保有者の割合や、保有している世帯に限った金額は別の指標です。

この区別は、退職後の生活資金を考える際にも役立ちます。同じ貯蓄総額でも、すぐ使える預金が多い世帯と、価格が変動する資産や保険が多い世帯では、支出に備える方法が異なります。

2020年から見ると、若い世帯の増加率も高い

高年齢の世帯の保有額は大きいものの、2020年から2025年の伸び率は40歳未満の方が高くなっています。

世帯主の年齢2020年2025年増減率
40歳未満708万円994万円+40.4%
40歳代1,081万円1,381万円+27.8%
50歳代1,703万円1,756万円+3.1%
60歳代2,384万円2,843万円+19.3%
70歳以上2,259万円2,471万円+9.4%

出典:総務省統計局「家計調査」結果概要・表Ⅲ-1-1。増減率は公表額から計算した名目値で、小数第1位に丸めています。

60歳代と40歳未満の倍率は、2020年の約3.37倍から2025年の約2.86倍へ低下しました。ただし、金額差は1,676万円から1,849万円へ拡大しています。

つまり、倍率では差が縮まり、金額では差が広がったことになります。「格差が拡大したか」という問いは、何を測るかによって答えが変わります。

増加率の比較にも落とし穴があります。出発点の金額が小さい年代は、同じ金額が増えても増加率が高くなります。若い世帯の伸び率だけを見て、資産の偏りが解消したと判断することはできません。

さらに、この5年間の数字は物価調整をしていません。貯蓄額が増えても、それで購入できる商品やサービスが同じ割合で増えるとは限らない点にも注意が必要です。

平均が高くても、その年代の多数派が豊かとは限らない

年代別平均は集団間の差を示しますが、個々の世帯の余裕を表す基準にはなりません。

2025年の二人以上の世帯全体では、平均貯蓄額は2,059万円です。一方、貯蓄ゼロの世帯を含む中央値は1,167万円、ゼロを除く貯蓄保有世帯の中央値は1,264万円でした。平均を下回る世帯は約3分の2に上ります。統計局による平均・中央値の解説

多額の貯蓄を持つ一部の世帯が平均を押し上げるため、「平均に届かない世帯は少数派」とは言えません。

ただし、ここで示した中央値は全年代を合わせたものです。60歳代の平均2,843万円に、全年代の中央値1,167万円を並べても、60歳代の中でのばらつきは測れません。年代内の違いを調べるには、同じ年代の中央値や貯蓄額別の世帯分布を確認する必要があります。

貯蓄の多さと、家計全体の資産は分けて考える

貯蓄額には負債が差し引かれていません。その一方で、住宅や土地の資産価値も含まれていません。

そのため、貯蓄額だけでは持ち家のある世帯と賃貸住宅に住む世帯の資産全体を比較できません。負債を引いた「純貯蓄」を使う場合も、それは不動産まで含めた純資産とは異なります。

生活上の余裕を検討するなら、資産の残高に加え、毎月の収入、住居費、返済額、必要な支出を見る必要があります。年齢が同じというだけで、これらの条件がそろうわけではありません。

次に見るべきは、単身世帯と年代内の分布

高年齢の世帯に貯蓄が多いことは確認できますが、日本全体の集中度を確かめるには対象を広げる必要があります。

今回の数字から、自分や家族の資産を確認するときに持ち帰れるのは、全国平均への到達を目標にすることではなく、比較条件をそろえる視点です。

  • 年代別の集中度を知りたい場合: 単身世帯を含む平均額と世帯数をそろえる。
  • 同年代の一般的な水準を知りたい場合: 平均に加え、同じ年代の中央値と分布を見る。
  • 生活費への備えを知りたい場合: 総額だけでなく、すぐ使える資産と今後の支出を確認する。
  • 資産差の変化を知りたい場合: 倍率、金額差、物価調整後の金額を区別する。

次の検証で欠かせないのは、高齢の単身世帯を含めることです。二人以上の世帯で確認できた高い平均額が、単身世帯にも当てはまるのか。そこを確かめて初めて、「高齢者に資産が偏る」という見方の範囲と例外が見えてきます。

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