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ZEH普及率は戸建て全体で30.5%――注文住宅と建売住宅に残る差

屋根に太陽光パネルを備えた戸建て住宅が並ぶ街並み。

ZEH普及率は戸建て全体で30.5%――注文住宅と建売住宅に残る差

新築戸建てのZEH化率は、2024年度に30.5%となりました。ただし、注文住宅は42.6%、建売住宅は8.6%で、普及の進み方には大きな差があります。省エネ住宅を探すときは、全国平均だけでなく、自分が選ぶ住宅の種類と「ZEH」の中身を確認する必要があります。

ここでいう普及率は、登録事業者が報告したZEHシリーズの供給戸数を、全国の住宅着工戸数と比較した指標です。既存住宅を含む日本の住宅全体の割合ではありません。

この記事で押さえる点は、次の3つです。

  • 新築戸建て全体のZEH化率は、2023年度の27.6%から2024年度の30.5%へ上昇した。
  • 注文住宅と建売住宅では普及率が異なり、登録事業者だけを分母にしても数字は変わる。
  • 「ZEH水準」と「年間のエネルギー収支が実質ゼロ」は同じ意味ではない。
目次

使用データは2024年度の全国実績、公開は2025年12月

公表年と実績年を分けて読むことが、比較の出発点です。

中心に使うのは、環境共創イニシアチブ(SII)が2025年12月22日に公開した「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業 調査発表会2025」の結果です。2026年10月8日時点で、SIIの公開データ一覧に掲載されている最新の年次調査資料は2025年版でした。

比較条件は次のとおりです。

  • 対象地域:全国
  • 中心となる実績期間:2024年度
  • 対象住宅:新築戸建ての注文住宅と建売住宅
  • 分子:ZEHビルダー/プランナーの実績報告によるZEHシリーズ供給戸数
  • 分母:全国の住宅着工統計に基づく対象住宅の戸数
  • 集計時点:2025年版の紹介記事では、2025年10月末時点の値を使用

登録事業者の実績報告と住宅着工統計を組み合わせた数字であり、全国の全住宅を同じ調査票で調べた結果ではありません。登録外の事業者による供給や、供給実績と着工の計上時期にも注意が必要です。出典と公表日はSIIの公開データ一覧で確認できます。

戸建て全体では3割に到達、供給戸数も増えた

普及率の上昇に加え、報告されたZEHシリーズの戸数自体も増えています。

公表値を並べると、変化が分かります。

指標・全国2023年度2024年度
ZEHシリーズ供給戸数97,065戸104,886戸
新築戸建て全体のZEH化率27.6%30.5%
注文戸建てのZEH化率40.2%42.6%
建売戸建てのZEH化率7.0%8.6%

出典:SII・調査発表会2024の紹介、SII・調査発表会2025の紹介。各年版の公表値を掲載しています。

供給戸数の差は7,821戸で、増加率は約8.1%です。戸建て全体のZEH化率は2.9ポイント上昇しました。「割合が上がった」だけでなく、「報告された供給戸数も増えた」という二つの変化を確認できます。

ただし、注文住宅の前年値には小さなずれがあります。2024年版は2023年度を40.2%と掲載する一方、2025年版は2024年度の42.6%について「前年より2.3ポイント上昇」と説明しています。表の表示値の差は2.4ポイントです。更新や丸め方の詳細をこの紹介記事だけでは確認できないため、小数点以下の差を過度に解釈せず、前年の4割程度から上昇したと読むのが適切です。

注文住宅42.6%、建売8.6%――平均だけでは見えない差

住宅の購入方法を分けると、ZEHがどこまで選択肢になっているかが変わります。

注文住宅では4割を超えたが、事業者差もある

2024年度の注文戸建てのZEH化率は42.6%でした。全国ベースでは過半数に達していません。

一方、2023年度のハウスメーカー単体の注文住宅では72.0%でした。資源エネルギー庁が紹介する2020年の同区分の値は約56%です。対象をハウスメーカーの注文住宅に絞ると、数年の間に普及が進んだことが分かります。資源エネルギー庁のZEH情報にも、2020年の実績が掲載されています。

この高い数字を、そのまま全国の注文住宅に当てはめることはできません。施工を依頼する会社によってZEHの供給割合が違うためです。購入者にとっては「業界で何割か」以上に、その会社が提示する標準仕様に断熱・省エネ設備・太陽光発電のどこまでが含まれるかが重要になります。

建売住宅は伸びているが、依然として1割未満

建売戸建てのZEH化率は、2022年度の4.6%、2023年度の7.0%、2024年度の8.6%と上昇しています。2年間で4.0ポイントの上昇です。

それでも2024年度の注文住宅との差は34.0ポイントあります。完成済み、または仕様が決まった建売住宅を比較する人にとって、ZEHシリーズは全国集計上まだ少数です。

なぜ建売で低いのか。この実績表だけでは、価格、土地条件、設備費、販売戦略のどれが差を生んだかは分かりません。注文住宅では設備を個別に選べる一方、建売では販売時点の仕様が選択を左右するという違いはありますが、それだけで普及率の差を説明し切ることはできません。

「30.5%」と「52.0%」は、分母が違う

同じ年度のZEH化率でも、対象を登録事業者に限定すると高くなります。

SIIの2025年版では、ZEHビルダー/プランナーが報告した建築総数の内訳で見ると、2024年度のZEH化率は52.0%でした。前年の45.5%から6.5ポイント上昇しています。

二つの数字が答える問いは異なります。

  • 30.5%:全国の新築戸建て着工に対して、登録事業者が報告したZEHシリーズ供給はどの程度か。
  • 52.0%:登録事業者が報告した建築総数の中で、ZEHシリーズはどの程度か。

ZEHの普及に取り組む登録事業者の住宅だけを分母にすれば、全国を分母にした値とは違ってきます。「半数を超えた」という説明を見たら、登録事業者内の割合なのか、全国の割合なのかを確かめたいところです。

また、全国平均が今後上がる場合も、注文住宅と建売住宅のそれぞれでZEH化が進んだのか、両者の着工構成が変わったのかを分ける必要があります。合計の率だけでは、変化の内訳まで分かりません。

ZEHシリーズとZEH水準は、同じ範囲ではない

普及率を生活に結びつけるには、集計に含まれる性能区分を知る必要があります。

ZEHは、高断熱化と省エネ設備で必要なエネルギーを減らし、太陽光発電などでエネルギーをつくる住宅です。ただし、今回の集計は厳密な『ZEH』だけを数えたものではありません。

戸建てのZEHシリーズには、主に次の区分があります。

  • 『ZEH』:省エネと創エネを合わせ、設計上の年間一次エネルギー消費量を正味で100%以上削減する。
  • Nearly ZEH:正味で75%以上100%未満の削減を目指す。
  • ZEH Oriented:都市部狭小地や多雪地域などの条件に対応し、創エネを必須とせず、断熱・省エネ性能を確保する。

一次エネルギーとは、電気やガスなどを共通の尺度で評価するためのエネルギー量です。単純な電気使用量や請求額とは異なります。区分の背景は資源エネルギー庁のZEHロードマップ資料に示されています。

さらに、住宅広告や補助制度で使われる「ZEH水準住宅」も区別が必要です。国土交通省の2026年の制度では、断熱等性能等級5以上と、再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量の20%以上削減などを要件としています。太陽光発電を含めて年間収支をゼロにするという意味ではありません。ZEH水準住宅の性能要件を確認すると、この違いが明確になります。

ここがポイント: ZEHシリーズが30.5%という数字は、新築戸建ての30.5%で実際の光熱費がゼロになったことを示しません。ZEH水準への適合、創エネを含む設計上の収支、入居後の請求額は、それぞれ別に確認する項目です。

このため、残りの69.5%をすべて「省エネ性能が低い住宅」とみなすこともできません。ZEHシリーズとして報告されていなくても、断熱や設備で一定の省エネ性能を持つ住宅は含まれ得ます。

2025年の義務化は、この2024年度データにはまだ表れない

省エネ基準への適合義務化と、ZEH普及率の上昇は時期を分けて考える必要があります。

国土交通省によると、2025年4月以降に着工する住宅などでは省エネ基準への適合が義務化されています。また、遅くとも2030年までに、基準をZEH・ZEB水準の省エネ性能へ引き上げる予定です。国土交通省の制度案内に、その段階が整理されています。

今回の中心データは2024年度、つまり2025年3月までの実績です。30.5%への上昇を「2025年4月の義務化の効果」と断定することはできません。

そもそも、省エネ基準への適合とZEHシリーズへの該当は同じ条件ではありません。今後の検証では、少なくとも次を分けて見る必要があります。

  • 基準適合によって、新築住宅の断熱・設備性能の最低水準がどう変わったか。
  • その上で、ZEH水準に達する住宅がどれだけ増えたか。
  • 太陽光発電などを備え、ZEHシリーズとして報告される住宅がどれだけ増えたか。

ZEH化率だけで、新築住宅の省エネ化のすべてを測ることはできません。

家選びでは、普及率より先に性能と費用の条件をそろえる

個別の住宅を比較するときは、名称だけでなく、評価書と見積もりの前提を確認することが実用的です。

国土交通省の省エネ性能ラベルでは、エネルギー消費性能、断熱性能、ZEH水準の達成状況などを確認できます。第三者評価のBELSと、売主・貸主による自己評価の違いも示されています。省エネ性能ラベルの見方は、物件同士の比較に使える入口です。

確認したい項目は、次のように整理できます。

  • 断熱:どの等級を満たし、どの書類で確認できるか。
  • 省エネ:太陽光発電を除いた削減率はいくつか。
  • 創エネ:太陽光発電の有無と容量、試算する発電量の条件は何か。
  • 費用:設備の初期費用、維持・更新費用、買電額と売電収入をどう見積もるか。

年間のエネルギー収支が実質ゼロでも、夜間などに買う電気の料金までゼロになるとは限りません。発電する時間と使う時間、買電単価と売電単価が異なるためです。ラベルの目安光熱費も、各家庭の実際の請求額を保証する数字ではありません。

次の年次データで見たいのは、建売住宅の8.6%がどこまで伸びるか、注文住宅との差が縮まるか、そして普及率と供給戸数がともに増えるかです。省エネ基準の義務化後も、この三つを追えば、住宅の省エネ化がどの購入層まで届いているかを具体的に確かめられます。

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