ドラッグストアの成長を支える食品売場――コンビニと店舗数・売上を比べる
ドラッグストアが増える背景には、薬だけでなく食品や日用品も買える店として利用の幅を広げていることがあります。経済産業省の統計では、2025年の販売額は前年比5.5%増、年末店舗数は3.6%増。売上増加に最も寄与した商品は食品で、次が調剤医薬品でした。
コンビニも売上を伸ばしていますが、店舗数は2022~2024年に減少し、2025年に増加へ転じました。両者の違いは、売上の大小だけでは分かりません。ドラッグストアでは、食品と調剤の伸びに出店の拡大が重なっていることが重要です。経済産業省の2025年分析
この記事では、全国の商業動態統計を中心に、次の点を確認します。
- 店舗数の増加と販売額の増加は、どの程度違うのか
- ドラッグストアの食品・医薬品は、それぞれどれほど売れているのか
- コンビニとの比較で、集計範囲やサービス売上をどう扱うか
- 売上増からは判断できない、購入数量・利益・地域の買いやすさ
比較するのは全国のチェーン業態で、すべての薬局や小売店ではない
比較の中心は2025年の暦年販売額と12月末店舗数で、年度や月次の数字とは分けて読みます。
使用するのは経済産業省「商業動態統計」と、同省が2026年4月14日に公表した「2025年小売業販売を振り返る」です。通年の比較には、2025年の数値を掲載した月報も使います。
調査の対象地域は全国。ただし、業態ごとに対象企業の条件が異なります。
- ドラッグストア:該当する店舗を50店以上持つ企業、またはドラッグストアの年間販売額が100億円以上の企業
- コンビニ:該当する店舗を500店以上持つ企業
したがって、ここで示す店舗数は、国内にある小規模な薬店や独立店まで網羅した総数ではありません。ドラッグストアと調剤専門薬局も同じ集計対象ではありません。商業動態統計・調査の概要
販売額は、その年に売れた金額です。一方、年末店舗数は12月末の時点で営業している店の数。年間の売上と一時点の店舗数を組み合わせるため、後で計算する「1店当たり」の値は参考値として扱います。
2025年のドラッグストアは2万373店、コンビニは5万6659店
店舗数ではコンビニが約2.8倍ですが、販売額の差は約1.4倍です。
| 2025年・全国 | ドラッグストア | コンビニ |
|---|---|---|
| 年間販売額 | 9兆4129億円 | 13兆3212億円 |
| 販売額の前年比 | 5.5%増 | 3.4%増 |
| 12月末店舗数 | 2万373店 | 5万6659店 |
| 2024年末からの店舗増加数 | 709店 | 671店 |
出典:経済産業省2026年2月分月報のドラッグストア年次表、2026年3月分月報のコンビニ年次表。店舗増加数は掲載値から計算。コンビニの販売額はサービス売上高を含みます。
増えた店舗の実数は近いものの、もとの規模が違います。ドラッグストアの店舗増加率は約3.6%、コンビニは約1.2%。同じ約700店の増加でも、業態全体に占める重みは異なります。
「1店当たり売上」は規模の違いを見る参考値
年間販売額を年末店舗数で割ると、次のようになります。
- ドラッグストア:約4億6200万円
- コンビニ:約2億3500万円
いずれも筆者計算による概算です。ドラッグストアが約2倍になるからといって、経営効率や利益も2倍とは判断できません。
店舗の広さ、品ぞろえ、営業時間、従業員数が違ううえ、年の途中に開店した店も年末店舗数に含まれます。売上を売場面積や労働時間で割った指標とは別物です。
また、これは全国合計を割った平均で、典型的な店舗の売上を示す中央値ではありません。大きな店舗の売上が平均を押し上げる可能性もあります。
食品が売上の34%を占め、「薬を買う店」の範囲を広げている
ドラッグストアの成長を読むうえで、食品は補助的な売場ではなく、最大の商品区分です。
2025年の商品別販売額は、食品が3兆2081億円でした。全体の9兆4129億円で割ると構成比は約34.1%です。
比較すると、調剤医薬品は9781億円、OTC医薬品は1兆401億円。OTCは処方箋なしで購入する一般用医薬品などを指します。二つを合わせても2兆182億円で、全体の約21.4%です。食品の販売額は、この合計を上回っています。
伸び方にも違いがあります。
- 食品:前年比9.1%増
- 調剤医薬品:12.2%増
- OTC医薬品:1.1%増
調剤の増加率は食品より高いものの、食品は売上の土台が大きいため、全体の増加に最も寄与しました。経済産業省「2025年小売業販売を振り返る」資料
食品と調剤では、店を利用する目的が違う
この商品構成から読み取れるのは、ドラッグストアが複数の買い物目的を受け止める業態になっていることです。
食品や日用品は家庭で繰り返し必要になります。調剤は処方箋を受け付ける機能であり、単なる食品販売とは異なります。これらを扱えば、薬や化粧品を買うとき以外にも店を利用する理由が生まれます。
日本チェーンドラッグストア協会も、2024年度の実態調査で、調剤と食品の取り扱い拡大、まとめて買い物できる店への対応、大手企業の積極的な出店などを報告しています。JACDS・2024年度実態調査
ただし、商品別売上だけでは、食品を買った人が薬も買ったのか、食品売場の拡張が来店頻度をどれほど上げたのかは分かりません。利用目的の広がりは成長を説明する手がかりですが、出店の原因を統計だけで確定することはできません。
コンビニとの違いは、売上が伸びる間の店舗網の動きにある
ドラッグストアの販売額は長く増加している一方、コンビニは店舗数が減る年にも販売額を伸ばしています。
経済産業省によると、ドラッグストアの販売額は、前年比が算出できる2015年以降、2025年まで毎年増加しています。食品の販売額も同期間に増加を続けました。
コンビニでは、2025年の店舗数増加は4年ぶりです。直近の年末店舗数を並べると、2023年は5万6112店、2024年は5万5988店、2025年は5万6659店。2024年は店が減っても販売額が増え、2025年は店舗数と1店当たり販売額の両方が増加しました。
ここから、「売上が伸びる業態は店も増え続ける」という見方は成り立ちません。コンビニでは、店舗網を大きく拡張しなくても販売額が増える局面があります。
ただし、店舗数が伸びにくいことだけで全国一律に「飽和した」とは言えません。閉店と出店が同時に進んでいる可能性があり、全国合計では地域ごとの不足や過密が見えないからです。
サービスを含むコンビニの総額は、そのまま商品売上と比べない
金額の比較にも補正が必要です。
2025年のコンビニは、商品販売額が12兆7285億円、サービス売上高が5928億円。ドラッグストアの商品販売額9兆4129億円は、コンビニの商品販売額の約74%に相当します。
総額同士で比べた場合は約71%なので、比較対象をそろえるだけでも比率が変わります。また、同じ「食品」でも、商品構成や買い方まで同じとは限りません。
このため、「ドラッグストアの成長でコンビニの客が奪われた」と断定するのは早計です。確認できるのは、両業態の売上が増え、店舗網の拡大ペースが異なることまで。顧客の移動を確かめるには、来店客数、購買履歴、近隣店舗の開閉店などが必要です。
最新の数字でも増加は続くが、年次と月次は切り分ける
2026年の公表値も増加を示していますが、短い期間の伸び率を長期の傾向と同じ重さでは扱えません。
2026年10月8日時点で確認できる8月分速報について、日本販売士協会は経済産業省の結果を紹介し、販売額の前年同月比をドラッグストア3.1%増、コンビニ0.6%増としています。2025年通年とは比較期間が違うため、この1カ月だけで成長の加速・減速を決めることはできません。日本販売士協会・2026年8月分速報の紹介
業界調査でも拡大は続いています。2026年9月の「週刊粧業」によるJACDS調査の紹介では、2025年度の総店舗数は2万4536店、前年より813店増。売上高は10兆6427億円で、前年比6.1%増でした。週刊粧業・2025年度ドラッグストア実態調査
この店舗数が経済産業省の2万373店より多いのは、同じ年の数字が食い違っているという意味ではありません。調査対象、推計方法、対象期間が異なります。
店舗数や売上の長期推移を作る際は、経済産業省の系列にJACDSの数字を途中から継ぎ足さず、それぞれの調査内で比較する必要があります。
売上増から、購入数量や店の利益までは分からない
ここまでの販売額は名目の金額なので、「買う量が増えた」とは言い換えられません。
食品の値段が上がれば、同じ数量でも売上は増えます。高価格の商品への切り替えでも増えるため、販売額の伸びには数量、価格、商品構成の変化が混ざっています。ドラッグストアの食品販売額9.1%増を、そのまま食品購入量9.1%増と読むのは誤りです。
さらに、全国の業態別売上は、次の点を直接示しません。
- 既存店の好調さ:新店の売上が加わって全体が増えても、以前からある店が同じように伸びたとは限らない
- 利益の増加:販売額が増えても、人件費、賃料、物流費などの増加を吸収できたかは別問題
- 純粋な新規出店数:年末店舗数の差には閉店や調査対象の変化も関わる
- 地域の買いやすさ:全国の店舗数が増えても、人口の少ない地域や徒歩圏で増えたとは限らない
調査系列にも注意が必要です。商業動態統計は2025年1月に母集団を切り替えており、経済産業省は過去系列との不連続と、販売額前年比などを計算する際のリンク係数による調整を説明しています。長期比較では、見えている金額を単純に割るより、公表された増減率と注記を優先します。商業動態統計・確報の注意事項
次に見るべきは、出店数だけでなく食品売場と調剤の利用状況
成長が続くかを判断するには、「店が増えた」「売上が増えた」の先を見る必要があります。
食品と調剤が伸び、店舗も増えるなら、買い物と処方箋の受け付けを担う拠点が広がっている可能性があります。一方、販売額だけが伸びて客数や数量が伸びなければ、値上がりの寄与を確認しなければなりません。出店が続いても既存店売上や利益が弱ければ、店同士の競争が強まっている可能性もあります。
暮らしの面では、店舗数の増加が便利さにつながるかを、次の条件で確かめると実態が見えます。
- 自宅からの距離と、徒歩・公共交通での行きやすさ
- 食品の取り扱い範囲と、必要な商品の価格
- 調剤の有無と、店舗全体とは別の受付時間
- 近隣の閉店も含めた、買い物先の増減
全国の数字が示すのは、ドラッグストアが食品を大きな柱にしながら拡大していることです。その拡大が地域の買い物環境を改善したかは、どこに店ができ、何を買え、いつ利用できるかまで確認して初めて判断できます。
