正社員との賃金比率は67.4%に改善、それでも月額差は拡大――2025年の年齢・男女別比較
正社員と非正規の賃金差は、比率で見ると2025年に縮まった一方、金額では広がりました。一般労働者の月額賃金は正社員35万8,800円、正社員以外24万1,700円で、後者の前者に対する比率は2024年の66.9%から67.4%へ上昇しています。
しかし、月額差は11万5,500円から11万7,100円へ拡大しました。さらに年齢・性別で分けると、全体の改善と逆に差が広がった層もあります。厚生労働省の2025年結果と2024年結果を使い、「縮まった」の中身を確かめます。
この記事で押さえる点は次の3つです。
- 長期的には正社員以外の賃金比率が上昇しているが、毎年改善しているわけではない。
- 若い層より50歳代で雇用形態間の差が大きく、男性の中年層では前年より比率が低下した。
- 女性は雇用形態間の比率が男性より高くても、賃金水準そのものは低い。
使用データは「一般労働者の6月の給与」
比較するのは年収や手取りではなく、全国の一般労働者の所定内給与額です。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の2025年結果は、2026年3月24日に公表されました。2026年10月8日時点で確認できる最新の年次結果です。2025年6月分の賃金を同年7月に調査しています。結果の概況・公表資料
比較条件を整理すると、次のようになります。
- 対象地域:全国。ただし調査範囲は一部島しょ部を除く。
- 集計範囲:概況は常用労働者10人以上の民営事業所。調査全体には、それより小さい事業所や公営事業所も含まれるが、この記事の数値とは範囲が異なる。
- 対象労働者:短時間労働者に該当しない「一般労働者」。
- 賃金の定義:6月の所定内給与額の平均。税・社会保険料の控除前で、残業代などの超過労働給与と賞与は含まない。
- 比較方法:正社員・正職員の賃金を100として、正社員・正職員以外の賃金を比べる。
調査概要と用語の定義は、厚生労働省の説明および主な用語の定義に基づきます。
ここで特に大切なのは、「一般労働者」と「正社員」が同義ではないことです。通常の所定労働時間・日数で働く正社員以外の人も、一般労働者に含まれます。
以下では読みやすさのため「正社員」「正社員以外」と略記します。後者は事業所が正社員・正職員として扱わない人の区分で、短時間のパートを含む非正規雇用全体の平均ではありません。
比率は改善しても、毎月の金額差は広がる
2025年は正社員以外の賃金の伸び率が高かったものの、増加額は正社員の方が大きくなりました。
| 年 | 正社員 | 正社員以外 | 月額差 | 賃金比率 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年 | 348,600円 | 233,100円 | 115,500円 | 66.9% |
| 2025年 | 358,800円 | 241,700円 | 117,100円 | 67.4% |
対象は男女計・年齢計の一般労働者。月額差は公表値から筆者計算、比率は公表値です。出典:2024年の雇用形態別結果、2025年の雇用形態別結果。
仕組みは単純です。
- 正社員は月額1万200円増えた。
- 正社員以外は月額8,600円増えた。
- 両者の増加額の差で、月額差は1,600円広がった。
賃金が低い側は、増加額が小さくても伸び率が高くなることがあります。比率は「相手にどれだけ近づいたか」を示し、金額差は「毎月何円違うか」を示すため、二つの結論は矛盾しません。
なお67.4%は、「格差が67.4%ある」という意味ではありません。正社員以外の賃金が正社員の67.4%で、正社員を基準とする不足分は32.6%です。
家計への意味を考える場合には、比率だけでなく金額差も必要です。ただし、この月額差をそのまま年収差や手取り差に置き換えることはできません。賞与、残業、控除、年間の就業期間が別にあるためです。
長期では接近したが、改善は一直線ではない
長い期間で見ると賃金比率は上昇していますが、直近数年は67%前後で上下しています。
厚生労働省の雇用形態別賃金の長期推移表と各年の概況から、男女計の比率を並べると次のようになります。
- 2010年:63.6%
- 2015年:63.9%
- 2020年:66.3%
- 2021年:67.0%
- 2022年:67.5%
- 2023年:67.4%
- 2024年:66.9%
- 2025年:67.4%
2025年は前年から改善しましたが、2023年と同じ比率で、2022年をわずかに下回ります。「最新年で改善した」と「改善が継続している」は別の判断です。2023年の値は2024年概況の前年値で確認できます。
長期比較には集計上の境目もあります。2020年から有効回答率を考慮した推計方法へ変更されており、長期推移表には同じ方法で再集計した2019年の参考値も掲載されています。
したがって、2010年代と2020年代の差を、労働条件の改善だけで説明するのは適切ではありません。近年の動きを確かめるなら、まず2020年以降を一つの区間として読む方が比較しやすくなります。
年齢別では、50歳代の差が大きい
同じ2025年でも、若い層と中年層では正社員以外の賃金比率が大きく違います。
以下は男女計の比較です。金額は月額の所定内給与、比率は各年齢層の正社員を100とした値です。
| 年齢 | 正社員 | 正社員以外 | 賃金比率 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 247,500円 | 203,500円 | 82.2% |
| 25〜29歳 | 285,000円 | 227,900円 | 80.0% |
| 30〜34歳 | 321,100円 | 233,800円 | 72.8% |
| 35〜39歳 | 352,600円 | 230,300円 | 65.3% |
| 40〜44歳 | 379,000円 | 230,600円 | 60.8% |
| 45〜49歳 | 395,600円 | 233,400円 | 59.0% |
| 50〜54歳 | 412,700円 | 229,700円 | 55.7% |
| 55〜59歳 | 424,200円 | 232,500円 | 54.8% |
| 60〜64歳 | 366,200円 | 279,900円 | 76.4% |
| 65〜69歳 | 327,700円 | 249,400円 | 76.1% |
差が開くのは、正社員側の賃金が高くなるため
25〜29歳から55〜59歳にかけて、正社員の平均賃金は28万5,000円から42万4,200円へ高くなります。一方、正社員以外は22万7,900円と23万2,500円で、大きな違いがありません。
このため55〜59歳では、月額差が19万1,700円になります。若い層の比率だけを見て、雇用形態間の差が小さいと判断すると、中年層の状況を見落とします。
ただし、これは別々の年齢層を同じ年に比べた結果です。今の25歳の人が55歳になったとき、同じ賃金になるという予測ではありません。職種、役職、勤続年数、働く企業の違いも含まれています。
60歳代で比率が上がる理由も一つではない
55〜59歳から60〜64歳へ比べると、正社員の平均賃金は下がり、正社員以外の平均賃金は上がります。その両方が、比率の上昇に寄与しています。
ここでも「年齢が上がれば非正規の待遇が改善する」とは読めません。年齢層ごとに働く人の構成が違うためです。賃金比率が上がったときには、低い側の賃金が上がったのか、高い側が下がったのかを分けて見る必要があります。
女性は雇用形態間の比率が高くても、給与水準は低い
女性の雇用形態間格差が男性より小さいことと、女性の賃金が高いことは同じではありません。
2025年の年齢計では、次の違いがあります。
- 男性:正社員38万7,400円、正社員以外26万8,100円。比率69.2%、月額差11万9,300円。
- 女性:正社員30万4,900円、正社員以外21万8,400円。比率71.6%、月額差8万6,500円。
女性の比率は男性より高いものの、正社員、正社員以外のいずれも女性の平均賃金が低くなっています。2025年の雇用形態・性別集計
ここには比較の分母の違いがあります。女性の71.6%は女性正社員の賃金を基準にした値で、男性正社員との比較ではありません。「女性の雇用形態間の差は小さい」という一文だけでは、男女間の賃金差を説明できないのです。
全体が改善しても、男性の中年層は逆に動いた
年齢と性別を同時に分けると、前年からの変化にも違いが見えます。
| 対象 | 2024年の比率 | 2025年の比率 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 男性40〜44歳 | 62.4% | 61.8% | 0.6ポイント低下 |
| 男性45〜49歳 | 62.4% | 61.2% | 1.2ポイント低下 |
| 男性50〜54歳 | 57.1% | 56.6% | 0.5ポイント低下 |
| 男性55〜59歳 | 57.7% | 56.9% | 0.8ポイント低下 |
| 女性55〜59歳 | 63.9% | 64.2% | 0.3ポイント上昇 |
出典:2025年概況、第6-1表の前年比較。変化幅は筆者計算。比率が低下した場合は、正社員との相対的な差が広がったことを意味します。
全体の比率は、男性・女性それぞれの比率を単純平均したものではありません。雇用形態ごとに男女や年齢層の人数構成が違うため、総平均の改善が各層の改善を保証するわけではありません。
この結果だけから、個々の労働者の賃下げや、特定の制度の効果を断定することもできません。確認できるのは、各層の平均賃金の関係がどう変わったかです。
平均差だけでは、原因も個人の待遇も判定できない
公表平均は社会全体の違いを捉える一方、同じ仕事内容に対する給与差を直接測ったものではありません。
正社員と正社員以外では、年齢、勤続年数、職種、役職、産業、企業規模などの構成が異なります。同じ年齢・性別に絞っても、これらの条件まではそろいません。
そのため、平均差のすべてを雇用形態そのものの効果と説明することはできません。逆に、構成が違うという理由だけで、実際の待遇差の検討が不要になるわけでもありません。仕事内容や責任、配置の変更範囲などを、企業内でさらに確かめる必要があります。
統計を読む際には、次の限界も押さえたいところです。
- 平均と中央値は違う。この記事は平均値の比較であり、典型的な一人の給与額や、給与分布の中央を示していない。
- 月額と時給は違う。一般労働者でも所定労働時間は完全には同じではなく、月額差がそのまま時間当たりの差になるわけではない。
- 名目賃金と購買力は違う。給与が増えても物価上昇を差し引いた生活上の改善は別に確認する必要がある。同じ物価指数で双方を調整すれば比率は変わらないが、実質的な金額差は変わる。
- 毎年同じ人を追跡しているわけではない。平均の変化には、賃金改定と働く人の構成の変化が混在する。
集計対象には、一般労働者について実労働日数18日以上、1日当たり所定内実労働時間5時間以上、所定内給与額5万円以上などの条件があります。全労働者を無条件に集計した値ではありません。厚生労働省「利用上の注意」
また、賞与を加えて比較する際には年次にも注意が必要です。2025年調査の賞与等は原則として2024年1〜12月分で、6月の月額給与とは対象期間がずれています。月額給与と賞与を足した数字を、説明なしに「2025年の実際の年収」と扱うことはできません。
次に見るべきは、比率・金額・同じ属性の三つ
賃金差の改善を確かめるには、全体の比率に加えて、月額差と年齢・性別ごとの動きを追う必要があります。
今後の結果は、少なくとも次の三つに分かれます。
- 比率も金額差も改善する:正社員以外の給与が、率でも増加額でも正社員を上回る場合。
- 比率だけ改善する:2025年の全体のように、正社員以外の伸び率は高いが、増加額は正社員より小さい場合。
- 全体だけ改善する:年齢・男女構成などの変化を含め、総平均は接近しても一部の層で差が広がる場合。
求人や勤務先の給与を比べる際も、全国平均との距離だけでは判断しにくくなります。同じ職種・地域・所定労働時間をそろえ、基本給、手当、賞与、昇給条件を分けて見ることで、自分の条件と統計の違いを確かめられます。
2025年の67.4%は、相対的な接近を示す数値です。ただし、月額差は11万7,100円に広がり、男性の40〜50歳代では比率が低下しました。次の年次結果で確かめたいのは、全体の数字が上がるかだけでなく、差が大きい中年層でも、正社員以外の給与が金額で追いつき始めるかです。
