世帯主75歳以上が4分の1に――住宅と消費を変える「世帯の高齢化」
世帯主が75歳以上の世帯は、2020年の22.2%から2025年の25.3%へ増えた。総務省統計局が労働力調査をもとに整理した資料では、約4世帯に1世帯に当たる。ただし、2025年の値は1〜11月の平均だ。
住宅や消費を考えるうえで重要なのは、高齢の世帯主が増えることと、1世帯の人数や支出額が変わることを一緒に見ることだ。世帯数が増えても、同じ広さの住宅や同じ量の商品への需要が増えるとは限らない。
この記事では、全国の世帯主の年齢構成、2020〜2050年の世帯数の見通し、2025年の年代別家計を照らし合わせる。
- 世帯主75歳以上の割合は、2020年から2025年に3.1ポイント上昇した。
- 将来推計では、世帯主85歳以上の世帯数が2020年から2050年に約1.8倍になる。
- 年代別の消費支出には、年齢だけでなく世帯人数や持ち家の割合の違いも表れる。
使用データは、現在の構成・将来の世帯数・家計を分けて読む
3種類の資料は、それぞれ答えられる問いが違う。
今回の対象地域は全国。2026年10月8日時点で確認できる公表資料から、比較期間をそろえやすい年次データと将来推計を用いた。
- 現在の年齢構成:総務省統計局「世帯構成の変化について」。2026年1月15日の消費統計研究会資料で、労働力調査をもとに2020年と2025年を比較。2025年は1〜11月平均。
- 将来の世帯数:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」、2024年推計。2020年国勢調査を基準に2050年まで推計し、全国推計は2024年4月12日公表、報告書は2025年4月1日公開。
- 年代別の支出と住まい:総務省統計局「家計調査」2025年平均結果。二人以上の世帯について、世帯主の年齢階級ごとの月平均消費支出、平均世帯人員、持家率を比較。
世帯主の年齢は、世帯員全員の年齢を表すものではない。75歳の世帯主と現役世代の子が同居する世帯も含まれる。また、将来推計の「一般世帯」は、施設等の世帯とは区別される。
したがって、ここで扱う数字を「高齢者の人数」や「介護を必要とする世帯数」と読み替えることはできない。
75歳以上の割合が上がり、65〜74歳は下がった
最近の変化は、高齢層全体の拡大に加え、その内部で年齢が上がっていることだ。
統計局の資料に示された世帯主の年齢構成は、次のように変わった。いずれも各年の世帯全体に占める割合で、2025年は1〜11月平均である。
- 65〜69歳:2020年8.8% → 2025年7.5%
- 70〜74歳:2020年10.0% → 2025年8.4%
- 75歳以上:2020年22.2% → 2025年25.3%
表示された割合を足すと、65歳以上は41.0%から41.2%へほぼ横ばい。一方、75歳以上は3.1ポイント上昇している。「65歳以上が何割か」だけでは、この5年間の変化を十分に捉えられない。
人数の多い世代が上の年齢階級へ移れば、隣り合う階級の割合は逆方向に動く。65〜74歳の割合が下がったからといって、世帯の高齢化が止まったわけではない。
同じ資料では、単身世帯の割合も35.8%から39.3%へ上昇した。ただし、年齢構成と世帯人数を別々に示した数字なので、単身世帯の増加分をすべて高齢世帯の増加と結び付けることはできない。総務省統計局「世帯構成の変化について」
将来は「65歳以上の増加」より、75歳・85歳以上の増加が大きい
将来推計では、高齢世帯のなかでも年齢の高い層ほど世帯数の増加率が大きい。
社人研の2024年全国推計から、世帯主の年齢別に2020年と2050年を比べる。単位は万世帯で、小数第1位に丸めた。
| 世帯主の年齢 | 2020年・基準値 | 2050年・推計値 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 65歳以上 | 2,097.3 | 2,404.1 | 約14.6%増 |
| 75歳以上 | 1,066.6 | 1,491.3 | 約39.8%増 |
| 85歳以上 | 304.7 | 538.2 | 約76.6%増 |
出典:社人研・全国推計の概要、表4。増減率は掲載値から計算。75歳以上は65歳以上の内数、85歳以上は75歳以上の内数であり、3行を足してはいけない。
増える時期も一様ではない。世帯主65歳以上の世帯数は2045年にピークを迎える見通しだが、75歳以上は2030年ごろに一度増加が落ち着き、その後再び増える。大きな世代がどの年齢階級に入るかで、必要な住宅やサービスを検討する時期も変わる。
なお、この表の将来値は予測条件に基づく推計であり、実測値ではない。2020年の基準値も、国勢調査の家族類型不詳・年齢不詳を配分している。社人研・2024年全国推計の概要
消費支出の年代差は、人数をそろえると見え方が変わる
70歳以上の世帯は世帯単位では支出が少ないが、その差を年齢だけで説明できない。
2025年の家計調査では、二人以上の世帯の消費支出は次の水準だった。金額は1世帯当たり1か月の名目平均で、単身世帯を含まない。
| 世帯主の年齢 | 月平均消費支出 | 平均世帯人員 |
|---|---|---|
| 40歳未満 | 299,100円 | 3.50人 |
| 40〜49歳 | 348,607円 | 3.73人 |
| 50〜59歳 | 367,643円 | 3.12人 |
| 60〜69歳 | 327,405円 | 2.52人 |
| 70歳以上 | 264,332円 | 2.34人 |
出典:総務省統計局・家計調査2025年平均結果、表Ⅰ−1−2。
世帯当たりでは約10万円差、単純な1人当たりでは差が縮む
50〜59歳と70歳以上の月平均支出の差は103,311円。70歳以上は約28.1%低い。しかし、平均世帯人員も3.12人と2.34人で異なる。
支出を平均世帯人員で単純に割ると、50〜59歳は約11.8万円、70歳以上は約11.3万円となる。これは正式な生活水準の指標ではないが、世帯単位の差の相当部分に人数の違いが関わることを示す。
光熱費や家電などには共同で使える部分があるため、人数で割れば条件が完全にそろうわけでもない。それでも、「高齢になると消費が約3割落ちる」と個人の変化に置き換えるより、人数を確認するほうが実態に近づく。
同じ世帯が年を取った結果ではない
年代別の表は、2025年に存在する異なる世帯を比較したものだ。今の50代世帯が70代になったとき、必ず同じ支出額になることを示してはいない。
将来の消費を考えるには、各年代の世帯数と支出額の両方が必要になる。所得、就業、物価、世帯人数が変われば、年代別の平均支出も変わる。現在の平均額に将来の世帯数を掛けるだけでは、正確な需要予測にはならない。家計調査2025年平均結果の概要
住宅では、戸数と「住み続けられる条件」を別々に見る
世帯主の高齢化が住宅に投げかける問いは、何戸必要かに加え、既存住宅で暮らしを続けられるかという点だ。
家計調査の同じ表では、二人以上の世帯の持家率は40歳未満で65.4%、70歳以上で95.1%。この調査対象では、高齢層の多くが持ち家に住む。
ただし、この95.1%を高齢世帯全体の持家率として使ってはいけない。単身の借家世帯は比較対象から外れているからだ。
持ち家でも、住宅費がなくなるわけではない
高齢層の持家率が高ければ、年齢別の家賃支出を比べても住居条件はそろわない。家計調査の消費支出には住宅購入費や住宅ローン元本返済が含まれず、持ち家に住むことで得られる住居サービスを家賃相当額として加える扱いもしていない。
そのため、消費支出の「住居」が小さいことと、住宅に関する負担が軽いことは同じではない。修繕、設備更新、固定資産税、管理費などは、支出項目と発生時期を分けて見る必要がある。
需要の変化を確かめるには、住宅の状態を重ねる
世帯主85歳以上が増える見通しからは、階段、浴室、室内の移動、買い物先への距離などを確認する重要性が高まると考えられる。ただし、世帯主の年齢だけでは、改修が必要な住宅の戸数や住み替えの希望は分からない。
地域の住宅計画に落とし込むなら、次の情報を重ねたい。
- 年代別世帯数に、持ち家・借家と単身・複数人の区分を加える。
- 住宅の建築時期、設備、階数などから、住み続ける際の制約を確認する。
- 通院先や店舗までの距離に、利用できる交通手段を組み合わせる。
高齢世帯が増える地域でも、住宅改修につながるのか、住み替えにつながるのかは、住宅の状態と立地によって分かれる。世帯数だけから新築需要や空き家の増加を断定することはできない。
平均値を読むときは、対象と年齢区分の違いを確認する
統計をつなぐ前に、同じ「高齢世帯」を数えているかを確かめる必要がある。
特に間違えやすいのは、次の3点だ。
- 世帯主が65歳以上:世帯主の年齢による区分。若い同居人がいる場合も含む。
- 65歳以上の人がいる世帯:世帯主が若くても、高齢の親などが同居していれば含む。
- 高齢者世帯:国民生活基礎調査では、65歳以上の人のみ、またはそれに18歳未満の未婚者が加わる世帯。
最新の2025年国民生活基礎調査では、65歳以上の人がいる世帯は2,761.4万世帯で全世帯の50.2%、高齢者世帯は1,754.6万世帯で31.9%だった。公表は2026年7月15日。同じ調査年でも、定義を変えるだけで割合は大きく変わる。厚生労働省・2025年国民生活基礎調査の統計表
また、冒頭の年齢構成は労働力調査由来、将来推計は国勢調査由来だ。両者を一本の連続した時系列として接続しない。家計表の70歳以上と、世帯構成の75歳以上も一致しない。
支出額は平均であり、中央値ではない。住宅の所有、資産、就業状況が異なる世帯を含むため、平均的な数字を個々の家計の目安にそのまま当てはめることにも限界がある。
次に見るべきは、高齢世帯の「数・人数・住まい」の組み合わせ
地域の暮らしを捉えるには、高齢者の割合から一歩進み、どんな世帯が何世帯あるかを見ることが必要だ。
消費では、少人数化によって世帯当たりの支出が下がる面と、世帯が分かれることで設備やサービスをそれぞれ必要とする面がある。住宅では、住み続けるための修繕と、住み替えの受け皿を分けて検討することになる。
今後の確認点は、次の3つに絞れる。
- 年齢別の実測世帯数:推計どおりに75歳・85歳以上の世帯が増えているか。
- 人数別の家計:単身世帯も含めたとき、支出額や費目の構成がどう変わるか。
- 住まい別の地域差:持ち家の修繕が課題なのか、借家への入居や移動手段が課題なのか。
75歳以上の世帯主が4分の1を占める段階では、住宅や店舗の需要を「人口が増えた・減った」だけで判断するには情報が足りない。まず世帯主の年齢に世帯人数と住宅の所有関係を重ねる。その組み合わせが、地域で何を整えるべきかを具体化する出発点になる。
