介護職員212.6万人で足踏み――離職率が下がっても人手不足が続く理由
介護の人材確保は、増える需要に追いついたとは判断できません。全国の介護職員数は2024年に約212.6万人でほぼ横ばいとなり、介護関係職種の有効求人倍率は2025年度も3.98倍でした。
一方、訪問介護員と介護職員を合わせた離職率は、2007年度の21.6%から2025年度の12.4%へ低下しています。辞める人の割合が下がっても、必要な人数を確保できるとは限らない。人数、求人、採用・離職を分けて見ると、この違いが浮かび上がります。
この記事で分かることは、次の3点です。
- 職員数の増加がどこで止まり、需要の指標とどう離れてきたか
- 求人倍率が高い状態と、離職率の低下が両立する理由
- 全国の人数だけでは分からない、事業所や訪問介護の不足
使用データ:人数・求人・離職は、それぞれ別のものを測っている
全国の供給と需要を読むには、対象年と集計範囲をそろえて確認する必要があります。
本稿は2026年10月8日時点で確認できる資料を使い、人数は2024年、求人は最新の通年度である2025年度、採用・離職は2025年度調査を中心に比較します。
- 介護職員数:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」を基にした集計。最新は2024年10月1日時点で、2025年12月19日公表。常勤・非常勤を含む実人員数で、労働時間をそろえた常勤換算人数ではありません。
- 有効求人倍率:厚生労働省「職業安定業務統計」。2026年版厚生労働白書に掲載された2018〜2025年度の全国値を使用します。パートタイムを含む常用の原数値で、新規学卒者とその求人を除きます。
- 採用率・離職率・不足感:介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」。2025年10月に実施され、2026年7月29日公表。事業所調査の回答は8,955事業所、回収率は53.1%です。
- 将来の必要数:厚生労働省が2024年7月12日に公表した、第9期介護保険事業計画に基づく都道府県の推計。実際に働いている人数とは区別します。
とくに求人統計の「介護関係職種」は、職員数の集計と対象が一致しません。求人倍率を212.6万人に掛けて、不足人数を求めることはできません。
人数の推移:長期には増えたが、直近は212.6万人で停滞
介護職員は制度開始時より大幅に増えましたが、2022年以降は増加が続いていません。
厚生労働省の系列では、2000年の54.9万人から2022年の215.4万人へ増加。その後、2023年に212.6万人へ減り、2024年も同じ丸め値になりました。厚生労働省「介護職員数の推移」
| 年 | 介護職員数 |
|---|---|
| 2019年 | 210.6万人 |
| 2020年 | 211.9万人 |
| 2021年 | 214.9万人 |
| 2022年 | 215.4万人 |
| 2023年 | 212.6万人 |
| 2024年 | 212.6万人 |
各年10月1日時点、常勤・非常勤を含む実人員数。万人単位の値は公表資料の丸め値です。
2024年の細かな数字は2,126,227人。前年より487人増えましたが、増加率は約0.02%にとどまります。減少はいったん止まったものの、人数が増える軌道に戻ったと評価するには小さい変化です。2024年分の公表資料
支援を必要とする側は増えている
同じ推移資料に載る要介護・要支援認定者数は、2019年度の667万人から2024年度の720万人へ増加しました。約53万人、約7.9%の増加です。対して職員数は、2019年から2024年で約2万人、約1%の増加にとどまります。
認定者全員が同じ量のサービスを利用するわけではありません。それでも、支援を必要とする人の増加に対し、職員数の伸びが小さいことは確認できます。
ここから「職員1人が何人を介護している」とは計算できません。要介護度、利用回数、施設への入所か自宅への訪問かによって、必要な時間と人数が違うためです。
求人の推移:倍率が少し下がっても、採用難は続いている
2025年度の介護関係職種の求人倍率は、全職業の約3.6倍でした。
2026年版厚生労働白書によると、全国の有効求人倍率は次のように推移しています。厚生労働白書・第1章
| 年度 | 介護関係職種 | 全職業 |
|---|---|---|
| 2018年度 | 3.95倍 | 1.46倍 |
| 2019年度 | 4.23倍 | 1.41倍 |
| 2021年度 | 3.62倍 | 1.05倍 |
| 2023年度 | 4.07倍 | 1.17倍 |
| 2024年度 | 4.08倍 | 1.14倍 |
| 2025年度 | 3.98倍 | 1.10倍 |
全国、パートタイムを含む常用、原数値。月次値ではなく年度値の比較です。
3.98倍は、ハローワークで把握する有効求職者1人に対し、有効求人がおよそ4人分あることを意味します。介護を希望する人の側には選択肢が多く、事業所の側には採用の競争がある状態です。
ただし、倍率の低下だけで「人手不足が改善した」とは判断できません。求人が減っても、求職者が増えても倍率は下がります。募集を控えた事業所があれば、必要な人材を確保できていなくても倍率は低下し得ます。
この指標は民間の求人サイトや人材紹介をすべて集計したものでもありません。採用難の強さを読む材料であって、全国の欠員数そのものではないのです。
離職の推移:定着は改善しても、採用の伸びは小さい
離職率の低下は確認できますが、近年は採用率も以前より低い水準にあります。
介護労働実態調査の訪問介護員・介護職員の2職種計では、離職率は2007年度の21.6%から2025年度の12.4%へ、9.2ポイント下がりました。2025年度は前年と同じです。
採用率と並べると、定着の改善だけでは人数が十分に増えない理由が見えてきます。令和7年度介護労働実態調査・結果の概要
| 調査年度 | 採用率 | 離職率 |
|---|---|---|
| 2019年度 | 18.2% | 15.4% |
| 2023年度 | 16.9% | 13.1% |
| 2024年度 | 14.3% | 12.4% |
| 2025年度 | 14.6% | 12.4% |
全国の回答事業所における2職種計。各調査で把握する1年間の採用・離職の率です。
2025年度の採用率は0.3ポイント上昇しました。しかし、2019年度より3.6ポイント低い水準です。辞める人の割合が小さくなる一方、採用する割合も小さくなっています。
採用率が離職率を上回っても、全国の増加率にはならない
2025年度の差は14.6%−12.4%=2.2ポイントです。この差を使って「全国の介護職員が2.2%増えた」と読むのは誤りです。
全国の職員数は施設・事業所調査による推計、採用・離職の率は別のアンケートへの回答に基づきます。さらに、最新の職員数は2024年、採用・離職は2025年度調査で、時点も違います。
事業所を辞めた人が、別の介護事業所へ移る場合もあります。転職先では採用、前の勤務先では離職になりますが、介護分野全体から人が減ったとは限りません。
ここがポイント: 人材不足を判断するには、「辞めにくくなったか」と「必要なサービスを担う人数が増えたか」を両方確認する必要があります。
不足の現れ方:全国平均より、職種と事業所の違いが重要
人数が横ばいでも、すべての事業所が同じように不足しているわけではありません。
2025年度調査で、従業員が「大いに不足」「不足」「やや不足」と答えた事業所の合計は65.8%。前年度の65.2%から0.6ポイント上昇しました。
職種別では、訪問介護員の不足感が82.9%と高くなっています。全国の総人数が維持されても、自宅へ訪問する担い手の確保が十分かどうかは別に確認しなければなりません。
不足感は事業所の回答であり、「必要な職員の65.8%が欠けている」という意味ではありません。また、職種別の割合は、その職種について回答した事業所を対象とするため、事業所全体の値と同じ母数ではありません。
離職率の平均にもばらつきがある
同調査では、2職種計の離職率が10%未満の事業所は54.3%でした。全体の12.4%という値から、どの職場でも同程度の離職が起きているとは言えません。
採用できても早く辞める事業所と、職員が定着していても追加採用が難しい事業所では、必要な対策が違います。
- 前者では、教育、勤務の組み方、職場での相談対応など、離職につながる条件の確認が必要になる
- 後者では、応募者を増やす条件と、既存職員が担える業務量の確認が必要になる
全国平均は問題の大きさを示しますが、地域のサービスを維持する方法までは決めてくれません。
将来の必要数:240万人は、確定した不足人数ではない
2026年度に約240万人という数字は、介護サービスの見込み量から推計した必要数です。
厚生労働省が公表した第9期介護保険事業計画に基づく集計では、2022年度の約215万人に対し、2026年度は約240万人、2040年度は約272万人が必要とされています。介護人材確保に向けた取組
よく見かける「2026年度に25万人」「2040年度に57万人」という数字は、この2022年度からの必要数の増加分です。将来の採用、離職、働く時間の変化を織り込んだ確定的な欠員数ではありません。
2024年の約212.6万人と2026年度の必要数約240万人の間には、単純計算で約27.4万人の開きがあります。ただし、比較する時点が違います。この開きを、2026年度に実際に生じた不足人数として扱うことはできません。
それでも、必要数を増やす計画に対し、実際の人数がほぼ横ばいという距離は大きいものです。次の職員数の公表で増加が確認できるかが、重要な判断材料になります。
数字を読む注意点:人数が同じでも、提供できる介護は同じではない
実人員数だけでは、現場で使える時間やサービスの質までは分かりません。
まず、短時間勤務の人も常勤の人も人数として数えます。人数が増えていても総労働時間が減る場合があり、逆もあります。供給力を見るには、常勤換算や勤務時間を合わせて確認する必要があります。
長期比較には、統計の変更もあります。
- 職員数は2009〜2017年に厚生労働省による全数推計が使われ、2018年から調査の推計方法が変更された
- 介護予防・日常生活支援総合事業の職員は、時期によって集計上の扱いが異なる
- 求人倍率は2023年度前後で職業分類の扱いが変わっており、細かな増減には注意が必要
- 不足感の前年差には、回答した事業所の構成の違いも影響し得る
こうした点を踏まえると、長期には人材を増やしてきたこと、直近は人数が停滞していること、求人倍率が高いことは読み取れます。一方、停滞の原因を賃金や高齢化の一つだけに絞ることは、ここで示した統計だけではできません。
生活への接点:見るべきなのは、必要な時間に介護を受けられるか
利用者や家族にとって重要なのは、全国の人数よりも、地域で必要なサービスを利用できることです。
人材確保が難しければ、事業所が受け入れ人数や訪問枠を増やせない可能性があります。ただし、本稿の統計は、利用を断られた人数や待機期間を直接測っていません。人数の停滞から、全国一律にサービスが縮小したとは断定できません。
今後の改善を確かめるには、次の数字を組み合わせたいところです。
- 人数と勤務時間:次の職員数が増えるか。常勤換算でも増えているか
- 採用と定着:採用率の回復が続き、離職率の低さも維持されるか
- 職種別の不足:訪問介護員の不足感が下がるか
- 利用できるサービス:自治体の計画や事業所情報で、訪問枠や受け入れ体制が維持されているか
離職率の低下は前進です。その前進が、働く人数と地域の提供体制の改善につながるか。次に確認すべきなのは、全国の212.6万人が増えることに加え、必要な曜日・時間帯に介護を届けられる担い手が増えるかどうかです。
