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海外でも男性育休は「当たり前」ではない OECD22カ国の利用者比率と取得日数から見える差

日本と欧州の父親が乳幼児の世話をする様子を描いた国際比較のイメージ。

海外でも男性育休は「当たり前」ではない OECD22カ国の利用者比率と取得日数から見える差

男性が育児休業を取ることは、海外でも一様に「当たり前」になったわけではありません。OECDの比較では、育児関連休業給付の利用者に占める男性の割合は22カ国平均で2013年の19.1%から2023年の26.1%へ上昇しましたが、なお利用者の約4人に1人です。

北欧などでは男女の利用者数が近づいています。ただし、男性が使った休業日数まで見ると、男女均等にはほど遠い。日本を含む各国の実態を比べるには、「取得した人の割合」だけでなく、取得期間、給付水準、父親専用枠を分けて見る必要があります。

この記事で押さえるポイントは次の4点です。

  • OECD22カ国では、育児関連休業給付の利用者に占める男性が10年で19.1%から26.1%へ上昇
  • 北欧などでも、男性が使う休業日数は全体の20~30%程度にとどまる国がある
  • ノルウェーでは父親の90%が利用した一方、ドイツでは利用者に占める男性が26%でも平均取得期間は約4カ月
  • 日本は制度上の取得可能期間が長いが、制度の長さだけでは実際の利用を説明できない
目次

使用データと比較条件

国際比較の中心資料は、OECDが2025年に公表した「Paid leave for fathers」とOECD Family Databaseです。 制度については2024年4月時点、利用状況については原則として2023年または各国の最新年を参照します。

対象となる主な指標は次のとおりです。

  • 公的な育児休業給付・有給育児休業の利用者に占める男性の割合
  • 父親が利用できる有給休業の期間
  • 給付率を100%相当に換算した「全額給付換算週数」
  • 男女それぞれが実際に使った休業日数の構成比

ここで注意したいのは、各国で「育休」と呼ばれる制度の範囲が同じではないことです。出産直後の父親休暇、母親または父親だけが使える専用枠、両親で分けられる育児休業などがあり、OECDの利用者比較には原則として出産休暇や父親休暇が含まれません。

また、「2023年」と表示される比較にも年次差があります。カナダとデンマークは2022年、フィンランドとノルウェーは2021年、アイスランドは2018年、オーストラリアは2017年、フランスは2016年の値です。米国は2016~2020年の平均で、雇用主が提供する制度も含みます。

男性の利用は増えたが、まだ4人に1人

国際的な方向は明確です。父親の利用は増えていますが、男女で半々という状態は例外です。

OECDが比較可能な22カ国を集計した結果、育児関連休業給付の利用者に占める男性の割合は次のように変化しました。

  • 2013年:19.1%
  • 2023年または最新年:26.1%
  • 増加幅:7.0ポイント

10年間で男性の比率は約1.37倍になりました。それでも、平均的には利用者の約74%が女性です。「男性の取得が広がった」という事実と、「育児休業が男女で等しく分担されている」という評価は分けなければなりません。

男女の利用者数が近い国もある

デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデンでは、男性が育児関連休業給付の利用者の約45%を占めます。男女の人数だけを見れば、かなり均衡に近いグループです。

一方、オーストラリアやポーランドでは、男性は利用者のおよそ100人に1人にとどまるとOECDは報告しています。オーストリア、チェコ、ニュージーランドでも男性の利用者比率は5%以下です。

唯一、ルクセンブルクでは男性が利用者の約59%を占め、女性を上回ります。ただし、男性は休業を複数回に分けたり、週1日だけ休んだりする利用が多く、女性はフルタイムで休むケースが中心です。人数の比率だけで負担の分担を判断できない理由が、ここにあります。

「取得者数」と「休んだ日数」は別の指標

男性育休が定着したかを確かめるには、取得率より取得日数のほうが厳しい物差しになります。

OECDによると、男女の利用者がほぼ同数に近いアイスランド、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデンでも、男性が使った休業日数は全体の20~30%程度です。男性が一度でも制度を使えば利用者には数えられますが、女性がより長く休めば日数の差は残ります。

ここがポイント: 「男性の取得率が高い国」と「育児による休業日数を男女で等しく分ける国」は同じではありません。取得者数、平均期間、総取得日数の3つを確認する必要があります。

この違いは家庭と職場の双方に関係します。父親が短期間だけ休み、その後は母親が長期間休む形であれば、復職の遅れや所得の減少、昇進機会への影響は母親側に偏りやすくなります。逆に、父親の取得期間が長くなれば、企業は男性社員についても数カ月単位の不在を前提に業務を組み直す必要があります。

ノルウェー、ドイツ、デンマークで異なる実像

主要国の事例は、制度と利用実態を一つの数字にまとめられないことを示しています。

ノルウェー:90%が利用し、多くが父親枠に合わせる

ノルウェーでは2022年に父親の90%が育児休業を利用し、そのうち70%が父親向けに確保された期間とちょうど同じ長さを取得しました。

この結果から読み取れるのは、他方の親へ譲れない「父親枠」が実際の取得期間の基準になっていることです。ただし、男性が利用した休業日数は全体の38%にとどまり、利用率90%がそのまま日数の折半を意味するわけではありません。

ドイツ:男性は26%でも平均約4カ月

ドイツでは2024年、育児休業の利用者に占める父親の割合は26%でした。人数だけならOECD平均に近い水準ですが、取得した男性の平均期間は約4カ月で、父親向けに確保された期間の約2倍でした。

つまり、取得する男性の裾野は北欧ほど広くなくても、使った人は比較的長く休む傾向があります。「何%が取ったか」だけでは、この特徴は見えません。

デンマーク:専用枠を増やすと取得期間も延びた

デンマークは2022年8月の改革で、父親向けに確保する育児休業を従来の2週から11週へ拡大しました。その後、父親の取得期間は約3週延び、公的部門で12週、民間部門で10週になりました。

一方、両親を合わせた取得期間は約40週で大きく変わらず、両親が同時に休む期間が増えています。父親の取得が増えても、母親の休業が同じだけ短くなるとは限らないという例です。

さらに、デンマークでは労働協約による賃金の上乗せが広く利用されています。同じ11週の権利でも、休業中に実際に受け取れる所得が職種や勤務先で違えば、利用しやすさも変わります。

日本は「制度が短い国」ではない

日本の課題は、父親が休める期間の短さより、長い権利を実際の長期取得につなげることです。

OECDの日本経済審査は、日本では父親が最長1年間の育児休業を取る権利を持ち、OECD諸国でも長い制度だと整理しています。ところが、同資料が比較した2022年の父親の取得率は17%で、母親は80%でした。2021年には、取得した男性の半数超が2週間未満でした。

国内統計ではその後、男性の育児休業取得率が大きく上昇しています。ただし、国際比較に使われるOECDの数値とは調査年、分母、対象者、休業制度の範囲が異なります。国内の最新取得率を、そのまま北欧諸国の「給付利用者に占める男性比率」や「出生100件当たりの受給者数」と横並びにはできません。

比較から見える日本の論点は、次の3つです。

  • 制度上の最長期間ではなく、実際に何日・何カ月使われたか
  • 出産直後だけでなく、母親の復職後にも父親が単独で育児を担う期間があるか
  • 休業給付や企業の上乗せを含め、取得時の手取りがどこまで維持されるか

日本では長い休業を選べるため、制度の入口だけを見れば不利とはいえません。問われるのは、その選択肢を短期取得で終わらせない職場運営と家計条件です。

父親専用枠だけで利用は決まらない

取得を促す制度は重要ですが、所得と職場の条件がそろわなければ利用は伸びにくいままです。

OECDは、父親の取得を妨げる要因を大きく3つに整理しています。

1. 休業中の所得

男女間に賃金差がある家庭では、賃金の高い側が休むほど世帯収入の減少が大きくなります。給付率が低い制度では、家計が父親の取得を断念する可能性があります。

そのため、制度の比較では名目上の週数だけでなく、給付率を考慮した「全額給付換算週数」が重要です。半年取得できても給付が低い制度と、3カ月を高い給付率で取得できる制度では、家計への負担が違います。

2. 他方の親に譲れない専用枠

両親で自由に分けられる休業は柔軟ですが、家庭内の所得差や役割分担があると母親に利用が集中しやすくなります。父親が使わなければ失効する専用枠は、その傾向を変える仕組みです。

OECD諸国で父親向けに確保された育児休業を設ける国は、1995年の7カ国から2020年には34カ国へ増えました。制度設計の中心が「父親も取得できる」から「父親が使う分を確保する」へ移ってきたことを示します。

3. 取得後のキャリア不安

権利があっても、評価や昇進への影響を心配すれば取得は短くなります。管理職や専門職ほど代替要員を見つけにくい職場では、制度外の圧力も残ります。

この問題は個人への取得呼びかけだけでは解消しません。業務の複数担当化、引き継ぎ期間の確保、取得実績の部署別把握など、休める運営に変える必要があります。

国際比較で誤読しやすい4つの点

国別ランキングを作る前に、分母と制度の定義をそろえる必要があります。

父親休暇と育児休業を混ぜない

出産直後の数日から数週間を対象とする父親休暇と、より長い育児休業は別制度の場合があります。短い父親休暇の取得率が高くても、長期の育児分担が進んでいるとは限りません。

利用者は「人」ではなく受給件数に近い場合がある

スウェーデンのように休業を複数回に分けられる国では、男性受給者が出生100件当たり約400人と計上されることがあります。1人が年をまたいだり複数の期間に分けたりするためで、取得率400%という意味ではありません。

比較年が一致していない

OECDの最新比較でも、国によってデータ年は2016年から2023年まで開きがあります。その間に制度改正があれば、同じ年の制度を比べたことにはなりません。

法律上の権利と実際の待遇は違う

国の制度に加え、企業や労働協約が給付を上乗せする場合があります。OECDの制度表は原則として国・連邦レベルを対象とするため、勤務先による実収入の差までは表しません。

結局、海外では当たり前なのか

「父親が育休を取ること」が広く定着した国はありますが、「男女が同じ長さだけ休むこと」は主要国でも当たり前ではありません。

国際比較から確認できる事実は、次のように整理できます。

  • 父親の利用は10年間で広がった
  • 北欧などでは利用者数が男女同程度に近づいた
  • それでも男性の取得日数は女性より短い
  • 専用枠、給付水準、職場慣行が実際の取得期間を左右する
  • 日本は制度上の期間より、短期取得への偏りをどう変えるかが焦点になる

次に見るべき数字は、取得率の更新だけではありません。男性の平均・中央値の取得日数、男女別の総取得日数、所得階層や企業規模による差が継続的に公開されるかどうかです。そこまで分かって初めて、父親の育休が一部の短期利用から日常的な育児分担へ変わったかを判断できます。

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