ホームセンターは衰退している?4兆円市場の横ばいとDIY用品の減少を読む
ホームセンターは、店舗が減り続ける市場ではありません。日本DIY・ホームセンター協会の推計では、2025年の店舗数は5,080店に増えた一方、年間総売上高は4兆130億円で、2019年とほぼ同じ水準です。
ただし、売上全体が横ばいでも、DIY用品まで安定しているとは限りません。経済産業省の2025年データでは「DIY用具・素材」の販売額は前年比0.8%減。店舗網の拡大、販売額の停滞、商品ごとの需要の違いを分けると、市場の姿が見えてきます。
この記事で分かることは、次の3点です。
- 長期の売上と店舗数から見る、市場の成長と停滞の境目
- ホームセンター全体の売上を、そのままDIY需要と読めない理由
- 物価や調査範囲を踏まえ、増減を判断する際の注意点
使用データ――長期推計と商品別統計は役割が違う
市場の長期的な規模は協会推計で、商品ごとの動きは経済産業省の統計で確認します。
対象地域は全国。長期比較は2000~2025年の主要年、商品別比較は2025年の年間値を中心に扱います。販売額は物価変動を取り除いていない名目額です。資料の確認日は2026年10月8日です。
協会推計は市場全体の長期像を見る
日本DIY・ホームセンター協会は、年間総売上高とホームセンター数の推計を公表しています。確認時点で掲載されていた最新年は2025年です。
同じ掲載系列を使うことで、出店が続いた時期と、売上の伸びが鈍った時期を比べられます。ただし、これは推計値であり、掲載ページには各年の推計方法や更新日が詳しく示されていません。細かな増減を、厳密な市場の確定値として扱うことは避けます。
商業動態統計は商品構成を読む
経済産業省の商業動態統計の調査概要では、ホームセンターの調査対象は、該当する事業所を10店舗以上持つ企業、またはホームセンターの年間販売額が200億円以上の企業です。
全国の小規模店を一店ずつ数えた全数調査ではありません。そのため、協会推計と店舗数や販売額が異なっても、直ちに矛盾とはいえません。
年間比較には、2026年4月公表の「2025年小売業販売を振り返る」を使います。月次統計は2026年8月分速報まで公表されていますが、月ごとの動きと年間の市場規模は分けて読みます。
長期推移――売上の急拡大は止まったが、店舗は増えている
協会推計では、2000年以降の売上の伸びは店舗数の伸びを大きく下回っています。
| 年 | 年間総売上高 | 店舗数 |
|---|---|---|
| 2000年 | 3兆7,500億円 | 3,730店 |
| 2010年 | 3兆8,450億円 | 4,180店 |
| 2019年 | 3兆9,890億円 | 4,810店 |
| 2020年 | 4兆2,680億円 | 4,860店 |
| 2023年 | 3兆9,750億円 | 4,970店 |
| 2024年 | 4兆180億円 | 5,020店 |
| 2025年 | 4兆130億円 | 5,080店 |
出典:日本DIY・ホームセンター協会「年間総売上高とホームセンター数の推移(推計値)」。金額・店舗数は掲載値です。
2000年と2025年を比べると、売上は約7.0%増、店舗数は約36.2%増です。売上が一貫して縮小したわけではありませんが、出店とともに市場が大きく伸びる状態でもありません。
2020年のピークと、2019年の水準を分ける
2025年の売上は2020年より約6.0%少ない一方、2019年より約0.6%多くなっています。2020年を基準にすれば縮小、2019年を基準にすればほぼ横ばいです。
ここから言えるのは、2020年の高い売上が、そのまま新しい平常水準にはならなかったということです。この系列だけで、増減の原因を在宅時間やDIYへの関心に特定することはできません。
単純平均では、一店に配分される売上が小さくなる
年間総売上高を店舗数で割ると、協会系列では2000年の約10.1億円から、2025年の約7.9億円へ低下します。約21%の減少です。これは掲載値から算出した単純平均です。
ただし、同じ店の売上が21%減ったという意味ではありません。店の広さ、出店時期、扱う商品の違いを調整しておらず、既存店売上でもありません。
それでも、店舗数の増加に売上が追いついていない点は重要です。新しい店が増えることと、各店が販売額を伸ばしやすくなることは、別の問題になっています。
商品別販売額――DIY用品は全体の約23%にとどまる
ホームセンターの売上全体は、DIYをする人が使った金額そのものではありません。
経済産業省の2025年年間分析では、ホームセンター販売額は3兆3,917億円、前年比0.2%減でした。店舗数は4,563店、前年比0.7%増です。こちらでも、店が増える一方で販売額はほぼ横ばいという組み合わせになっています。
主な商品区分を見ると、増減の方向はそろっていません。
| 商品区分 | 2025年販売額 | 前年比 |
|---|---|---|
| DIY用具・素材 | 7,679億円 | 0.8%減 |
| 家庭用品・日用品 | 7,396億円 | 0.5%増 |
| 園芸・エクステリア | 5,245億円 | 0.7%増 |
| ペット・ペット用品 | 2,937億円 | 2.4%減 |
| インテリア | 1,836億円 | 6.9%減 |
出典:経済産業省「2025年小売業販売を振り返る」。全国・年間・名目販売額。主要区分の抜粋です。
DIY用具・素材は全体の約22.6%です。家庭用品・日用品も約21.8%を占めます。店全体の売上には、工作や補修だけでなく、日常的な買い物が大きく含まれています。
DIYと園芸を合わせても、売上全体には届かない
DIY用具・素材と園芸・エクステリアを合わせると、販売額は1兆2,924億円、全体の約38.1%です。この合算も、DIY需要の正確な総額ではありません。
園芸には植物を育てる買い物が含まれ、DIY用具・素材でも家庭の趣味と仕事用の購入を区別できません。反対に、ホームセンター以外の店や通販で購入したDIY用品は、この業態の販売額からは読み取れません。
つまり、DIY用品の減少は確認できますが、それを「自分で修理や工作をする人が減った」と言い換えるには、購入者や使用目的のデータが必要です。
全体の小幅減少の裏で、商品需要は分かれている
家庭用品・日用品と園芸・エクステリアは増加し、DIY用具・素材やインテリアは減少しています。全体の0.2%減という数字だけでは、この違いが隠れます。
利用者の側から見れば、ホームセンターは補修材を買う場所であると同時に、日用品や園芸用品を買う場所でもあります。どの売場が伸びたかを確認しないと、暮らしの変化を読み違えます。
最近の動き――毎年縮む市場と決めつけることもできない
年間の増減は反転しており、減少だけが続いているわけではありません。
経済産業省の2024年の分析では、ホームセンター販売額は2021年から3年連続で減少した後、2024年に前年比1.7%増へ転じました。店舗数も1.2%増でした。その翌年の2025年は、販売額が再び小幅な減少になっています。
さらに、2026年8月の販売額は前年同月比1.3%増でした。これは経済産業省速報を紹介した日本販売士協会の公表記事で確認できます。速報は後日修正される場合があります。
一か月の増加は、長期的な成長への転換を意味しません。一方で、直近の販売額が一律に減り続けている、という説明も正確ではありません。年間値で停滞を捉えつつ、月次では増減の広がりを見る必要があります。
注意点――金額の停滞から「買う量」の減少幅は分からない
販売額、購入数量、DIYの実施人数は、それぞれ違う指標です。
特に次の点で、数字の読み方が変わります。
- 物価: 同じ数量でも単価が上がれば販売額は増えます。今回の数字は名目額で、実際に買われた量の変化を直接示しません。
- 商品構成: 高価な工具と安価な消耗品では、一件の購入額が違います。売上の変化には、商品や品質の組み合わせも影響します。
- 店舗構成: 小型店と大型店を一店として数えるため、店舗数だけでは売場面積や品ぞろえの変化が分かりません。
- 地域: 全国で店舗が増えても、すべての市町村で買い物が便利になったとは限りません。出店場所や閉店場所の確認が必要です。
また、経済産業省は2025年1月分から調査対象を見直しています。前年同月比などには、比較の段差を調整するリンク係数が使われます。過去の公表額をそのまま割って出した増減率と、公式の前年比が一致しない場合があるため、前年比は公表値を使うのが基本です。
協会の4兆円規模と経済産業省の3兆円台の販売額を、一本の時系列につなぐこともできません。市場全体の推計と、一定条件の企業を対象にした統計は、比較範囲が異なります。
暮らしへの含意――店の数より、必要な商品を買えるかを見る
生活への影響を判断するには、全国の店数に加えて、身近な店舗の場所と売場の中身を確認する必要があります。
今回のデータが示す中心的な変化は、出店が続いても、市場全体の名目売上は大きく伸びていないことです。DIY用品の販売額にも弱さがあります。ただし、それだけで工具や補修材を買いにくくなったとは判断できません。
今後の統計では、次の3点が判断材料になります。
- DIY用具・素材の販売額が、複数月・年間で増加へ転じるか
- 売上の回復が日用品だけでなく、補修や園芸に関わる区分にも広がるか
- 店舗の増加が、売場面積や地域ごとの買い物環境の改善を伴っているか
家の小さな補修や庭の手入れに必要なのは、全国の市場規模だけではありません。必要な材料を、行ける範囲の店で買えることです。市場の横ばいと、地域の買い物環境の変化をつなぐには、次に店舗所在地と取扱商品のデータを見る必要があります。
