家庭のCO2、最大の排出源は電力 自動車・ガスとの割合を2023年度データで比較
家庭に関係するCO2を燃料別に見ると、最大の排出源は電力の46.0%です。次に大きいのは自家用乗用車のガソリン・軽油で、合わせて26.9%。都市ガスとLPガスは合計13.6%でした。
ただし、地域や住宅によって重点は変わります。寒冷地では暖房用の灯油、自動車への依存度が高い地域ではガソリンの比重が大きく、全国平均だけでは各家庭の削減余地を判断できません。
この記事で分かることは次の4点です。
- 家庭に関係するCO2の燃料別構成
- 電気・ガス・灯油を使う「家庭内」と自動車の違い
- 2017年度から2023年度までの推移
- 住宅や地域によって優先順位が変わる理由
使用データと比較条件
中心に使うのは2023年度の全国データです。異なる集計を混同しないよう、二つの資料を使い分けます。
燃料全体の構成を見るデータ
全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)が、国立環境研究所・温室効果ガスインベントリオフィスのデータを基に整理した「一人当たりの二酸化炭素排出量」を使います。
この集計には、家庭部門だけでなく、家計寄与分の自家用乗用車、生活系ごみに関係する排出、水道の家庭寄与分も含まれます。電力・ガス・自動車を一つの分母で比較できる点が利点です。
世帯別・地域別の違いを見るデータ
環境省の「令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査(確報値)」を使います。調査期間は2023年4月から2024年3月で、全国の世帯を対象に電気、ガス、灯油、自動車用燃料などを調べています。
家庭内の電気・ガス・灯油と、自動車用のガソリン・軽油は別集計です。そのため、以下では同じ表の数値のように無条件で足し合わせず、それぞれの用途を確認します。
なお、この調査は2024年度以降、偶数年度には実施しない隔年方式へ変更されました。2026年8月時点で、2023年度確報値が最新の調査結果です。
電力46.0%、自動車26.9% 燃料別の全体像
一人当たり年間1,764kg-CO2のうち、電力だけで811kgを占めます。 ガソリンは447kgで、単独の燃料として電力に次ぐ大きさです。
| 燃料・排出源 | 一人当たり年間排出量 | 構成比 |
|---|---|---|
| 電力 | 811kg-CO2 | 46.0% |
| ガソリン | 447kg-CO2 | 25.4% |
| 都市ガス | 159kg-CO2 | 9.0% |
| 灯油 | 133kg-CO2 | 7.5% |
| LPガス | 81kg-CO2 | 4.6% |
| 一般廃棄物 | 70kg-CO2 | 3.9% |
| 水道 | 35kg-CO2 | 2.0% |
| 軽油 | 27kg-CO2 | 1.5% |
| 合計 | 1,764kg-CO2 | 100.0% |
電力は家庭で消費する時点ではCO2を直接出しません。しかし、火力発電など発電段階の排出が、使用した電力量に応じて家庭側へ配分されます。このため、家電の数だけでなく、発電に使われる電源や電力の排出係数も数値を左右します。
ガスは都市ガスとLPガスを合わせて240kg、13.6%です。ガソリン・軽油の合計474kgはその約2倍に達します。日常的に車を使う世帯では、給湯や調理のガスだけに注目するより、走行距離や車種を含めて考える必要があります。
用途で見ると「家電」と「車」が二大排出源
燃料ではなく生活上の用途に組み替えると、優先順位がさらに分かりやすくなります。
- 動力・照明ほか:535kg、30.3%
- 自家用乗用車:474kg、26.9%
- 暖房:275kg、15.6%
- 給湯:227kg、12.9%
- 厨房:95kg、5.4%
- 一般廃棄物:70kg、3.9%
- 冷房:52kg、3.0%
- 水道:35kg、2.0%
「動力・照明ほか」には、照明、冷蔵庫、テレビ、掃除機など、暖房・冷房・給湯・厨房に分類されない電力利用が含まれます。特定の家電一つが30.3%を占めるわけではなく、複数の機器を合計した区分です。
一方、自家用乗用車は一つの用途で26.9%に達します。車をよく使う世帯では、移動の見直しが家庭内の節電と並ぶ大きな検討対象になります。
ここがポイント: 全国平均では電力が最大ですが、行動単位で見ると「照明・家電など」と「自家用車」が二大排出源です。請求書だけでなく、給油量や年間走行距離も一緒に確認する必要があります。
家の中だけなら、電気が67.6%を占める
環境省の世帯調査で、電気・都市ガス・LPガス・灯油に限ると、2023年度の排出量は全国平均で1世帯当たり2.47トンでした。
| エネルギー | 世帯当たり年間排出量 | 構成比 |
|---|---|---|
| 電気 | 1.67トン | 67.6% |
| 都市ガス | 0.36トン | 14.6% |
| 灯油 | 0.30トン | 12.1% |
| LPガス | 0.14トン | 5.7% |
| 合計 | 2.47トン | 100.0% |
同じ調査で、自動車用燃料による排出量は1世帯当たり全国平均1.03トンです。内訳はガソリン0.98トン、軽油0.05トンでした。
家庭内エネルギーの合計と比べると、自動車分は約42%に相当します。ただし、自動車を使わない世帯も含む平均であり、全世帯の29%近くは自動車用燃料からの排出が0トンです。保有世帯だけを取り出した平均ではありません。
2017年度から家庭内の排出量は22.8%減少
家庭内で使う電気・ガス・灯油の合計は、2017年度の3.20トンから2023年度の2.47トンへ、1世帯当たり0.73トン減りました。減少率は22.8%です。
| 年度 | 電気 | 都市ガス | LPガス | 灯油 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2017 | 2.16 | 0.43 | 0.18 | 0.43 | 3.20 |
| 2018 | 1.95 | 0.40 | 0.17 | 0.37 | 2.90 |
| 2019 | 1.80 | 0.40 | 0.16 | 0.36 | 2.72 |
| 2020 | 1.88 | 0.44 | 0.17 | 0.39 | 2.88 |
| 2021 | 1.82 | 0.42 | 0.16 | 0.35 | 2.74 |
| 2022 | 1.74 | 0.38 | 0.15 | 0.32 | 2.59 |
| 2023 | 1.67 | 0.36 | 0.14 | 0.30 | 2.47 |
単位:t-CO2/世帯・年
同期間のエネルギー消費量は33.21GJから27.80GJへ16.3%減りました。CO2排出量の減少率のほうが大きいため、使用量の減少だけで全てを説明することはできません。電気の排出係数の変化なども排出量に影響します。
また、2020年度には排出量が2.88トンへ一時的に増えています。気温、在宅時間、世帯構成など複数の条件が動くため、一直線の減少と捉えるのは適切ではありません。
地域差は電気よりも暖房と自動車で大きくなる
全国平均から最も外れやすいのは、寒冷地の暖房と、車への依存度が高い地域の移動です。
北海道では灯油が家庭内排出の41.8%
家庭内エネルギーの構成を見ると、北海道は電気48.1%、灯油41.8%です。全国平均の灯油12.1%とは大きく異なります。用途別でも暖房が1世帯当たり1.68トン、家庭内排出の41.9%を占めました。
沖縄は反対に、家庭内排出の85.9%が電気です。用途別では冷房が15.1%、照明・家電製品等が65.3%を占めます。同じ「電気が多い」という結果でも、冷房需要や電力の排出係数など、背景を分けて読む必要があります。
自動車は北陸と関東甲信・近畿で2倍以上の差
自動車用燃料による1世帯当たり年間排出量は、北陸が1.63トンで最も多く、関東甲信と近畿は各0.74トンでした。北陸は両地域の約2.2倍です。
主な地域の値は次の通りです。
- 北陸:1.63トン
- 東北:1.55トン
- 四国:1.41トン
- 東海:1.38トン
- 中国:1.31トン
- 北海道:1.29トン
- 全国:1.03トン
- 関東甲信・近畿:各0.74トン
関東甲信では40.6%、近畿では38.4%の世帯が、自動車用燃料からの排出0トンに分類されています。北陸は10.8%、東北は11.1%です。公共交通の利用環境、世帯当たりの車の使用台数や頻度が地域差に関係すると環境省は説明しています。
ただし、この地方別平均だけから公共交通が唯一の原因だとは断定できません。世帯人数、年齢構成、都市規模、通勤距離なども同時に異なるためです。
戸建ては集合住宅の約1.8倍
住宅の建て方でも差があります。家庭内の電気・ガス・灯油による排出量は、戸建てが1世帯当たり3.09トン、集合住宅が1.74トンでした。
戸建ては集合住宅の約1.8倍です。特に暖房による排出量は約3倍、給湯は約1.7倍となっています。
この差を建物性能だけに結び付けるのは早計です。環境省は、戸建て世帯のほうが世帯人数が多く、住宅が広いことなども影響するとしています。それでも、断熱、暖房方式、給湯設備を確認する意味が大きいことはデータから読み取れます。
数字から言えること、言えないこと
このデータが示すのは、家庭の排出削減策に全国一律の正解がないということです。
データから言えること
- 全国全体では電力が最大の排出源である
- 用途別では照明・家電などと自家用車の比重が大きい
- 家庭内エネルギーの排出量は2017年度から2023年度までに22.8%減った
- 寒冷地では灯油と暖房、地方部では自動車の比重が高くなりやすい
- 戸建てと集合住宅では世帯当たり排出量に大きな差がある
このデータだけでは言えないこと
- 電力の排出減少が全て各世帯の節電によるとは言えない
- 地域差を気候や公共交通だけで説明することはできない
- 世帯当たりの値だけでは、一人当たりの効率を比較できない
- CO2排出量が多い世帯ほど、必ず光熱費も同じ割合で高いとは限らない
電気、ガス、灯油では単位も価格体系も異なり、電力の排出係数も年度や契約先によって変わります。CO2、使用量、料金は同じ指標ではありません。
自宅では何から確認すべきか
最初に見るべき数字は、全国平均ではなく自宅の使用実績です。電気・ガスの請求明細、灯油の購入量、車の給油記録を同じ12か月で並べると、削減対象を絞りやすくなります。
確認の順番は、生活条件によって変えられます。
- 車の走行距離が長い:燃費、移動回数、同乗、公共交通へ置き換えられる区間を確認
- オール電化や家電が多い:電力使用量の月別推移と待機・常時稼働機器を確認
- 寒冷地の戸建て:断熱、設定温度、暖房機器、灯油使用量を優先
- ガス給湯の使用量が多い:入浴回数だけでなく、湯量や給湯温度も確認
次に公表される2025年度調査では、2023年度から家庭内エネルギーと自動車の排出量がどう変わったかが注目点になります。とりわけ、電力の排出係数が変わった影響と、世帯が実際に使うエネルギー量の変化を分けて見ることが欠かせません。
