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住居費は所得の何割?ギリシャ36%、ドイツ25%から読む国際比較

欧州の集合住宅と家計の支出を表すノートや硬貨のイラスト。

住居費は所得の何割?ギリシャ36%、ドイツ25%から読む国際比較

所得に占める住居費の割合は、欧州でも大きく違います。Eurostatの2024年比較では、EU平均が19%なのに対し、ギリシャは36%、デンマークは26%、ドイツとスウェーデンは25%でした。

ただし、全世帯の平均と、賃貸世帯が払う家賃の負担は別の数字です。「住宅費が重い国」を見極めるには、国名だけでなく、所得層と住まいの所有形態までそろえる必要があります。

この記事で分かることは、次の3点です。

  • 同じ年・同じ指標で比べた欧州各国の住居費負担
  • 全体平均と賃貸世帯の中央値で見え方が変わる理由
  • 日本や米国を含めた比較で注意したい、所得と費用の定義の違い
目次

比較の土台は2024年、最新の補足は2025年

国別の水準比較には2024年のEurostat資料を使い、負担が特に重い人の割合は2025年の公表値で補足します。

EurostatはEUの統計機関です。主にEU-SILCという所得・生活状況調査をもとに、住宅費と所得の関係を公表しています。ここでは全国値を比較し、首都だけの家賃や、住宅購入価格のランキングとは区別します。

使用する資料と比較条件は次のとおりです。確認時点は2026年10月8日です。

  • Eurostat「Housing in Europe — 2025 edition」:対象年は2024年。EU各国の住居費が可処分所得に占める割合を比較します。数値は同資料の丸めた表示値です。
  • Eurostat「Key figures on European living conditions — 2026 edition」:対象年は2025年。所得の40%を超える住居費負担がある世帯に暮らす人の割合を確認します。
  • OECD Affordable Housing Database「HC1.2」:確認した解説資料の最終更新日は2025年10月3日。2024年または国別の最新利用可能年を使い、賃貸・住宅ローン別の負担を示しています。

可処分所得は、税などを差し引いた後に使える所得です。住居費を支払った後の残額を指す言葉ではありません。

なお、2025年の補足指標を2024年の平均値と混ぜて順位付けはしません。年次と指標を分けたまま読むことが、この比較の前提です。

全体平均ではギリシャ36%、ドイツとスウェーデン25%

2024年のEU比較では、ギリシャの住居費負担が最も高く、EU平均を17ポイント上回ります。

以下は全加盟国の順位表ではなく、負担が高い国と低い国、EU平均を抜き出した比較です。

国・地域住居費/可処分所得EU平均との差
ギリシャ36%+17ポイント
デンマーク26%+7ポイント
ドイツ25%+6ポイント
スウェーデン25%+6ポイント
EU平均19%基準
キプロス11%−8ポイント

出典はEurostatの住宅統計・2025年版です。差は掲載値から計算しています。

36%は、所得100に対して住居費が36という関係です。19%なら19。金額が同じでなくても、所得のうち住まいに回る部分の大きさを比較できます。

ただし、この平均値から「ギリシャのすべての家庭が36%を払っている」とは読めません。家賃を払う世帯、住宅ローンを返済する世帯、返済を終えた持ち家世帯が混在しているためです。

同じ国でも所得層によって負担は変わる

同じEurostat資料では、所得が各国の中央値の60%未満にある層の住居費負担は、EU平均で37%でした。それ以外の層は16%です。

中央値は、所得の低い順に並べたときの真ん中の値です。「中央値の60%未満」は各国の所得水準を基準にした区分なので、どの国でも同じ金額以下の人を集めた比較ではありません。

ここで見たいのは、全体平均19%の内側に大きな差があることです。国全体の平均が低くても、所得の少ない世帯には重い負担が残り得ます。

賃貸世帯だけを見ると、フィンランドの家賃負担が高い

賃貸世帯の家賃負担を中央値で比べると、全体平均とは異なる国が上位に現れます。

OECDのHC1.2資料では、家賃が所得に占める割合の中央値は、フィンランド31%、ノルウェー29%、スウェーデン・デンマーク・アイスランド28%でした。これらの比較対象年は2024年です。

この指標は民間賃貸と補助付き賃貸を含み、家賃に絞っています。光熱費などを含む住居費全体の割合とは別です。

平均と中央値は、答える問いが違う

全体平均は、その国の住居費負担を広く把握する入口になります。一方、賃貸世帯の中央値は、借りて住む世帯の負担分布の中央を示します。

たとえば中央値31%なら、負担率の低い側と高い側を分ける位置が、おおむね31%にあるという意味です。平均家賃の金額を平均所得で割った値とは異なります。

このため、ギリシャ36%とフィンランド31%を並べて「ギリシャの賃貸世帯の方が5ポイント重い」とは言えません。前者は全体平均、後者は賃貸世帯の中央値で、対象も費用の範囲も違います。

持ち家と賃貸の比較にも条件がある

OECDの家賃・住宅ローンに絞った比較では、ローンを返し終えた持ち家世帯は対象から外れます。家賃もローン返済もない世帯を含めると、別の問いになるからです。

ただし、返済後も維持修繕や税、光熱費は発生します。「ローン負担がない」と「住まいにお金がかからない」は同じ意味ではありません。

所得の40%を超える負担は、2025年もギリシャとデンマークで多い

最新の2025年値でも、重い住居費負担を抱える人の割合は国によって大きく違います。

Eurostatの2026年版資料では、住居費が可処分所得の40%を超える世帯に暮らす人の割合は、次のとおりでした。

  • EU全体:7.7%
  • ギリシャ:26.4%
  • デンマーク:23.4%
  • キプロス:2.4%

この指標では、住居費と所得の双方から住宅手当を差し引いて計算します。分母は人口です。「世帯の26.4%」でも「所得の26.4%」でもありません。Eurostat「Key figures on European living conditions — 2026 edition」

平均負担率は負担の水準を示し、40%超の割合は重い負担がどの程度広がっているかを示します。両方を見ると、平均だけでは見えない家計の偏りを確認できます。

都市の方が重いとは限らない

2025年のEU全体では、40%超の負担がある世帯に暮らす人は都市部で9.6%、農村部で5.6%でした。差は4.0ポイントです。

ただし、ブルガリアとクロアチアでは農村部の方が高くなっています。都市は家賃が高そうだという印象だけで、負担率の方向まで決めることはできません。

住居費負担は費用と所得の比率です。費用が低い地域でも、所得がそれ以上に低ければ割合は高くなります。この計算上の関係と、各地域で実際に何が起きたかという原因の検証は分けて考える必要があります。

長期推移では、家賃の上昇だけで家計の悪化を判断できない

住宅価格や家賃の値上がりと、家計が払えなくなることは、別々の指標で確認する必要があります。

Eurostatの2025年版によると、EUでは2010年から2024年に住宅価格が53%、家賃が25%上昇しました。一方、住宅ローン・家賃・公共料金の滞納がある世帯に暮らす人の割合は、12%から9%へ低下しています。

これは「負担が軽くなった」と断定する材料ではありません。価格の推移は所得との比率を直接示さず、滞納率も支出を切り詰めて支払いを続けている世帯までは捉えないからです。

より賃貸世帯に対象を絞ると、別の変化も見えます。OECDの2026年の住宅政策報告では、民間賃貸に住み、所得の40%超を家賃に使う借家人の割合は、OECD平均で2012年の12.8%から2023年の17.9%へ上昇しました。差は5.1ポイントです。OECD「Tackling the affordability gap through increased supply of affordable and social housing」

EU全体の滞納率と、OECDの民間賃貸の負担率では、地域、対象、期間、費用の範囲が違います。数値の方向が異なっていても矛盾ではありません。住まいを持つ人まで含めた状況と、借りる人の状況を分けて見る理由がここにあります。

日本・米国を同じ順位表に入れるときの注意点

OECDに掲載されていても、すべての国が同じ年・同じ所得定義でそろっているわけではありません。

HC1.2資料では、米国は2023年、英国とカナダは2022年、オーストラリアは2021年のデータを使っています。日本は2023年の日本家計パネル調査ですが、世帯単位ではなく回答者単位という制約があります。

さらに米国では、データの制約から可処分所得ではなく税引き前の所得を使用しています。同じ費用でも分母が違えば負担率は変わります。したがって、欧州の可処分所得ベースの数字と、そのまま厳密な順位を付けるのは適切ではありません。

この比較で確認すべき項目は、次の4つです。

  • 対象年:金利や家賃が変化した前後を混ぜていないか
  • 所得:税引き前か、税引き後か。住宅手当をどう扱うか
  • 費用:家賃だけか、光熱費や税・修繕費まで含むか。ローン元本を含むか
  • 対象者:全世帯か、賃貸世帯か。集計単位は世帯か、人か

特にローン元本は、毎月の現金支出を考えるうえでは重要ですが、資産の取得に充てる部分でもあります。生活費としての負担と、資産形成を伴う支出をどう扱うかで、指標の意味が変わります。

国の平均を、暮らしの判断につなげるには

海外で借りて暮らす人がまず確認したいのは、国全体の平均より、自分に近い所得層・地域・賃貸区分の数字です。

国際比較は、負担が大きい国や集団を探す入口にはなります。しかし、国の平均から、特定の都市で新しく契約する家賃や、一人暮らしの予算までは決まりません。すでに住んでいる世帯の統計と、新規契約で提示される費用を区別する必要があります。

今後の推移を読むときも、負担率だけでは原因を特定できません。

  • 負担率が下がった場合:住居費が下がったのか、所得が伸びたのかを確認する
  • 全体平均が安定している場合:低所得層や賃貸世帯でも安定しているかを確認する
  • 滞納率が下がった場合:40%超の負担率も下がっているかを確認する

ギリシャ36%、EU平均19%という差は明確です。その先で見るべきなのは、誰の所得に対して、どの住居費が重いのか。次の公表値でも、全体平均と賃貸世帯、低所得層の数字を並べて追うことが、生活の変化を読み違えないための具体的な手順になります。

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