日本人の血圧は24年で約8〜12mmHg低下 年代別データで見えた改善と残る高齢者リスク
日本人の血圧は長期的に下がっています。厚生労働省の全国調査を同じ年代で比べると、2000年から2024年にかけて、収縮期血圧の平均値は男女の30歳以上の各年代で約8〜12mmHg低下しました。
ただし、「高血圧の問題がほぼ解消した」という意味ではありません。2024年もⅠ〜Ⅲ度高血圧に分類された人は、60代で31.5%、70歳以上で37.4%に上ります。
この記事で分かること
- 2000年と2024年の年代別血圧を比べると、どの年代でどれだけ下がったか
- 最新調査で高血圧に該当する人が多い年代
- 「平均血圧の低下」と「高血圧の人の減少」を分けて見る必要がある理由
- 測定機器や集計方法の違いなど、長期比較で注意すべき点
使用したデータと比較条件
中心に使うのは、厚生労働省が実施した2000年の循環器疾患基礎調査と、2024年の国民健康・栄養調査です。
比較条件は次の通りです。
- 対象地域:全国
- 比較年:2000年、2024年
- 対象年代:30〜39歳、40〜49歳、50〜59歳、60〜69歳、70歳以上
- 指標:収縮期血圧、いわゆる「上の血圧」の平均値
- 測定値:原則2回測定した値の平均
- 対象者:降圧薬を使用している人を含む
- 単位:mmHg
2000年調査では5,618人、2024年調査では20歳以上8,312人の測定結果が集計されています。年代を固定して比較するため、人口全体の高齢化による影響を受けにくい見方です。
一方、完全に同一条件ではありません。2000年と2024年では調査設計や測定機器、全国値の補正方法が異なるため、ここでは小数点以下の差ではなく、年代を通じて見える大きな方向を読み取ります。
収縮期血圧は全年代で低下した
24年間の変化は、男女とも30歳以上の全ての年代で低下でした。特に女性の40〜60代では10mmHgを超える下げ幅です。
| 性別・年代 | 2000年 | 2024年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 男性30〜39歳 | 123.7 | 115.4 | -8.3 |
| 男性40〜49歳 | 130.3 | 122.4 | -7.9 |
| 男性50〜59歳 | 137.5 | 129.3 | -8.2 |
| 男性60〜69歳 | 142.0 | 131.7 | -10.3 |
| 男性70歳以上 | 146.2 | 135.3 | -10.9 |
| 女性30〜39歳 | 113.5 | 105.7 | -7.8 |
| 女性40〜49歳 | 123.4 | 112.4 | -11.0 |
| 女性50〜59歳 | 132.5 | 120.1 | -12.4 |
| 女性60〜69歳 | 140.3 | 129.0 | -11.3 |
| 女性70歳以上 | 144.7 | 134.4 | -10.3 |
※収縮期血圧の平均値、単位はmmHg。2000年、2024年とも降圧薬使用者を含み、原則2回の測定値を平均。出典は2000年循環器疾患基礎調査と2024年国民健康・栄養調査報告。
高齢層ほど下げ幅が大きい
男性では30〜50代の低下が7.9〜8.3mmHgだったのに対し、60代と70歳以上では10mmHgを超えました。女性も40歳以上の各年代で10mmHg以上下がっています。
2000年調査の時点でも、厚生労働省は1980年、1990年、2000年を比較し、男女の全ての年代で収縮期血圧が低下傾向にあると報告していました。2024年の値を並べると、その改善がさらに先へ進んだ形です。
ただし、この表だけで低下の原因は特定できません。降圧治療の普及、健診による早期発見、喫煙や食生活の変化など、複数の要因が同時に関係する可能性があります。
2024年も血圧は年代とともに上がる
長期的には改善していても、最新の横断面では年齢差が明瞭です。
2024年の男女計で見ると、収縮期血圧の平均値は次のように上昇します。
- 20〜29歳:108.0mmHg
- 30〜39歳:109.4mmHg
- 40〜49歳:116.2mmHg
- 50〜59歳:123.9mmHg
- 60〜69歳:130.3mmHg
- 70歳以上:134.8mmHg
20代と70歳以上の差は26.8mmHgです。平均値だけで個人の診断はできませんが、年代が上がるほど高い血圧帯に属する人が増える様子は、分布データにも表れています。
Ⅰ〜Ⅲ度高血圧は60代で約3割、70歳以上で約4割
2024年調査は、日本高血圧学会の分類に沿って測定時の血圧を区分しています。Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度高血圧を合計すると、年代別の割合は次の通りです。
| 年代 | Ⅰ度 | Ⅱ度 | Ⅲ度 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 20〜29歳 | 1.8% | 0.1% | 0.0% | 1.9% |
| 30〜39歳 | 4.0% | 0.9% | 0.1% | 5.0% |
| 40〜49歳 | 10.2% | 2.0% | 0.7% | 12.9% |
| 50〜59歳 | 16.2% | 4.9% | 0.3% | 21.4% |
| 60〜69歳 | 23.7% | 6.9% | 0.9% | 31.5% |
| 70歳以上 | 29.2% | 7.3% | 0.9% | 37.4% |
※降圧薬使用者を含む。合計は掲載値を単純合算したもの。端数処理の影響がある。これは調査時の測定値による区分であり、医療機関での診断人数を示すものではない。
ここがポイント: 日本人の血圧は長期的に下がった。しかし、高齢層では2024年も測定時にⅠ〜Ⅲ度高血圧へ分類される人が3〜4割いる。「改善した」と「問題が小さい」は同じではない。
「高血圧の人は減った」と言い切れるのか
測定時に140/90mmHg以上となる人は減少方向ですが、治療中の人まで含む医学的な有病率とは分ける必要があります。
2000年調査では、2回の測定値の平均により高血圧へ区分された割合は男性46.7%、女性35.8%でした。2024年調査でⅠ〜Ⅲ度高血圧を合計すると、男性31.7%、女性21.9%です。
数値上はそれぞれ次の低下になります。
- 男性:46.7%から31.7%へ、15.0ポイント低下
- 女性:35.8%から21.9%へ、13.9ポイント低下
140/90mmHg以上を基準とする点では方向を比較できます。ただし、2024年の分類は現在の日本高血圧学会基準に基づき、全国補正値で集計されています。2000年とは測定機器なども異なるため、この差を精密な有病率の変化として扱うべきではありません。
薬で血圧が下がっている人は「測定時高血圧」に入らない
ここが最も誤読しやすい点です。
降圧薬を服用し、調査時の血圧が基準未満に管理されていれば、その人は測定値によるⅠ〜Ⅲ度高血圧には入りません。しかし、医療上は高血圧の治療を続けている場合があります。
したがって、今回のデータから確実に言えるのは次の範囲です。
- 年代別の平均血圧は2000年より低い
- 調査時に140/90mmHg以上となった割合も減少方向にある
- 治療によって管理されている人を含む「高血圧有病者」が同じ割合で減ったとは限らない
「高血圧の人が何人いるか」を調べたい場合は、測定値だけでなく、降圧薬の使用状況を含む定義で集計した資料を見る必要があります。
男女差は若年・中年で大きく、高齢になると縮まる
2024年の平均血圧は全ての年代で男性が女性を上回りますが、70歳以上では差が小さくなります。
収縮期血圧の男女差は、30代で9.7mmHg、40代で10.0mmHg、50代で9.2mmHgです。一方、60代では2.7mmHg、70歳以上では0.9mmHgまで縮まります。
Ⅰ〜Ⅲ度高血圧の合計でも、若年・中年では男性の割合が高くなっています。
- 30代:男性7.6%、女性3.3%
- 40代:男性22.2%、女性7.3%
- 50代:男性30.5%、女性15.2%
- 60代:男性36.3%、女性27.2%
- 70歳以上:男性40.1%、女性35.1%
50代では男性が女性の約2倍です。ところが年代が上がるにつれて差は狭まり、70歳以上では男女とも高い水準になります。
この横断データだけで、加齢そのものや男女差の原因を切り分けることはできません。各年代には異なる出生世代が含まれ、服薬率や生活習慣も異なるからです。それでも、健診や家庭血圧の確認を中高年男性だけの課題とせず、高齢女性を含めて考える必要があることは読み取れます。
平均血圧が下がった背景をどう読むか
データは改善を示しますが、どの対策が何mmHg下げたかまでは示していません。
高血圧は心疾患や脳血管疾患の重要な危険因子です。厚生労働省の健康情報サイトは、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足などを関連要因として挙げています。また、カリウムにはナトリウムの排出を促す働きがあると説明しています。
長期低下の背景として検討すべき要素には、次のようなものがあります。
- 健診や家庭用血圧計による発見機会の増加
- 降圧治療の普及と継続
- 食塩摂取量や食生活の変化
- 喫煙、飲酒、運動、体格の変化
- 調査対象となった各世代の生活環境の違い
ただし、これらは候補です。全国調査の2時点比較だけでは、それぞれの寄与を分離できません。
さらに、体格の変化が血圧改善を打ち消す可能性もあります。血圧だけを見て生活習慣病全体が改善したと結論づけず、BMI、血糖、脂質、食塩摂取量などを併せて確認する必要があります。
長期比較で注意したい5つの限界
24年間の方向は明瞭でも、数値をそのまま一本の連続系列として扱うには注意が必要です。
1.測定機器が同じではない
2000年調査は水銀血圧計を使用しました。2024年調査は水銀を使わない血圧計を使用しています。機器変更の影響と実際の血圧変化を完全には切り分けられません。
2.全国補正の扱いが異なる
2024年の平均値と割合は、地域ブロックや世帯員数を考慮した全国補正値です。2000年の表は調査対象者の集計値であり、同じ補正方法ではありません。
3.同じ人を24年間追跡した調査ではない
それぞれの年に抽出された人を比べる横断調査です。「2000年に50代だった人の血圧が、2024年にこれだけ下がった」という追跡結果ではありません。
4.平均値は分布の端を隠す
平均が下がっても、非常に高い血圧の人がいなくなったとは限りません。2024年にもⅡ度・Ⅲ度高血圧に分類された人が存在します。平均値と区分別割合の両方を見る理由はここにあります。
5.診察室血圧と家庭血圧は一致しないことがある
全国調査の測定値は、その場で得られた血圧です。医療機関では、診察室だけ高くなる白衣高血圧や、診察室では正常でも家庭で高くなる仮面高血圧も考慮して判断されます。この記事の数値を個人の診断基準として使うことはできません。
次に見るべきは「治療しているか」より「管理できているか」
今後の注目点は、高血圧と診断された人の数だけでなく、治療によって目標範囲へ管理できている人の割合です。
平均血圧が下がったことは、公衆衛生上の重要な改善です。一方で、2024年の70歳以上では正常血圧に分類された人が15.2%にとどまり、30.6%は「高値血圧」、37.4%はⅠ〜Ⅲ度高血圧でした。
データを見る際は、次の3点を分けると実態をつかみやすくなります。
- 高血圧に該当する人がどれだけいるか
- そのうち診断を受け、治療している人がどれだけいるか
- 治療中の人の血圧が管理できているか
日本人の血圧は確かに下がりました。次に問われるのは、改善から取り残されている年代や未治療・管理不十分の層を、最新データでどこまで具体的に捉えられるかです。
