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車通勤は全国で48.2%、東京は鉄道48.0% 国勢調査で見る地域別の通勤手段

鉄道、自動車、自転車、徒歩で移動する日本の通勤者を地域別に描いたイメージ。

車通勤は全国で48.2%、東京は鉄道48.0% 国勢調査で見る地域別の通勤手段

日本の通勤・通学は、この20年で全国一律に鉄道へ移ったわけではありません。2020年国勢調査では、自家用車だけを使う人が全国の48.2%を占め、2000年の44.3%から3.9ポイント上昇しました。

一方、2020年の東京都では鉄道・電車だけが48.0%、山形県では自家用車だけが80.6%です。全国平均だけでは見えないほど、移動手段は地域によって分かれています。

この記事で分かることは次の4点です。

  • 全国では自家用車だけの割合が2000年から上昇した
  • 2020年は山形県の車利用率と東京都の鉄道利用率が突出している
  • 自転車は大阪府、徒歩は長崎県と北海道で高い
  • 2020年値には新型コロナ禍という特殊条件がある
目次

使用データと比較条件

比較の中心は、国勢調査が10年ごとに集計する「利用交通手段」です。

総務省統計局の2000年、2010年、2020年国勢調査を使い、15歳以上の自宅外通勤者・通学者が「ふだん」利用する手段を見ます。基準日は各年の10月1日です。

今回の主な比較条件は以下の通りです。

  • 対象年:2000年、2010年、2020年
  • 対象地域:全国および47都道府県
  • 地域区分:本人の常住地
  • 対象者:15歳以上の自宅外通勤者・通学者
  • 主な指標:「自家用車だけ」「鉄道・電車だけ」「自転車だけ」「徒歩だけ」の構成比

国勢調査では、鉄道とバス、鉄道と自転車など、複数の手段を使う人を別に集計しています。このため「鉄道・電車だけ」は、駅まで自転車やバスを使う人を含みません。

また、2010年の公表概要ではオートバイと自転車を合わせた区分が使われています。自転車の長期推移については、区分をそろえずに単純比較しないことが重要です。

全国では車と鉄道の割合がともに上昇

2000年から2020年にかけて増えたのは、自家用車だけでなく鉄道・電車だけの割合です。

全国の構成比を並べると、次のようになります。

利用交通手段2000年2010年2020年2000年からの変化
自家用車だけ44.3%46.5%48.2%+3.9ポイント
鉄道・電車だけ14.0%16.1%17.6%+3.6ポイント
徒歩だけ7.5%7.1%6.8%-0.7ポイント

車と鉄道が同時に増えている点が重要です。これは、全国の通勤手段が一つの方向へ収れんしたのではなく、地域ごとに異なる交通環境への依存が強まった結果として読む必要があります。

車は2000年代以前から増えてきた

自家用車だけの割合は、2000年時点ですでに44.3%でした。1990年の37.2%から、2000年までの10年間だけで7.1ポイント上昇しています。

その後も上昇は続きましたが、増加幅は小さくなっています。

  • 1990年から2000年:+7.1ポイント
  • 2000年から2010年:+2.2ポイント
  • 2010年から2020年:+1.7ポイント

つまり、車通勤の拡大は2020年に突然起きた変化ではありません。郊外化や道路整備、職場・住宅・商業施設の立地などが積み重なった長期的な動きです。ただし、国勢調査だけで各要因の寄与を分けることはできません。

鉄道利用も20年で3.6ポイント上昇

鉄道・電車だけは、2000年の14.0%から2020年には17.6%へ上がりました。人数では2020年に約961万人です。

ただし、2020年は新型コロナウイルス感染症の流行中でした。在宅勤務の増加や通勤頻度の変化が回答に影響した可能性があります。2010年からの増加だけを見て、都市部で鉄道通勤が一貫して拡大したと断定するのは早計です。

ここがポイント: 全国では車と鉄道の両方が増えました。しかし同じ地域で一様に増えたとは限らず、車中心の地域と鉄道中心の地域への分化が数字を押し上げています。

車通勤は山形県80.6%、東京都8.8%

2020年の自家用車だけの割合は、最高の山形県と最低の東京都で71.8ポイントの差があります。

上位は東北、北陸、北関東の県が中心です。

  • 山形県:80.6%
  • 秋田県:79.6%
  • 富山県:79.5%
  • 福井県:78.1%
  • 福島県:77.4%
  • 群馬県:77.1%
  • 島根県:76.7%

一方、低い地域は大都市圏に集中します。

  • 東京都:8.8%
  • 神奈川県:19.0%
  • 大阪府:19.3%

2010年にも山形県は77.6%で全国最高、東京都は9.4%で最低でした。10年間で山形県は3.0ポイント上昇し、東京都は0.6ポイント低下しています。地域差は一時的なものではなく、少なくとも2回の大規模調査で続いています。

車の割合が高い県では、鉄道駅やバス停までの距離だけでなく、目的地が中心市街地に集まっているか、勤務先に駐車場があるかといった条件が通勤手段を左右します。公共交通の路線が存在しても、自宅と職場を結ぶ時間帯や経路が合わなければ車を選びやすくなります。

生活者にとっては、車両代、燃料代、保険料、駐車場代が「通勤に必要な固定費」になりやすいということです。燃料価格が上がったときの家計への影響も、車通勤が8.8%の東京都と80.6%の山形県では同じではありません。

鉄道は東京48.0%、神奈川35.8%

鉄道・電車だけの利用率は、路線密度の高い首都圏と京阪神で際立っています。

2020年の上位3都府県は次の通りです。

  • 東京都:48.0%
  • 神奈川県:35.8%
  • 大阪府:30.9%

2010年は東京都44.5%、神奈川県33.1%、大阪府28.6%でした。いずれも2020年の方が高くなっています。

ただし、この数字は「鉄道を少しでも使う人」の割合ではありません。駅までバスや自転車で移動する人は複数手段の区分に入り、鉄道・電車だけから外れます。鉄道利用の裾野を調べる場合は、鉄道を含む組み合わせも加える必要があります。

埼玉・千葉と東京では同じ都市圏でも違う

2010年時点で鉄道・電車だけの割合は、東京都44.5%に対し、埼玉県25.4%、千葉県27.7%でした。東京へ通勤する人が多い県でも、駅まで別の手段を使う人や県内を車で移動する人がいるため、東京都と同じ構成にはなりません。

ここから読み取れるのは「首都圏なら鉄道中心」という単純な区分ではなく、駅への近さや郊外部の広がりまで含めた差です。都道府県平均は、その県内にある中心都市、郊外住宅地、農山村の違いを一つにまとめている点にも注意が必要です。

自転車は大阪、徒歩は長崎・北海道で高い

車と鉄道以外の手段にも、地形や都市のまとまり方を映した大きな地域差があります。

2020年に「自転車だけ」の割合が高かった上位は、次の3府県です。

  • 大阪府:21.1%
  • 京都府:15.5%
  • 愛媛県:14.5%

大阪府は鉄道・電車だけでも30.9%と全国3位です。鉄道と自転車のどちらか一方に偏るのではなく、移動距離や目的地に応じて複数の選択肢が使われていることが分かります。

一方、自転車だけが低いのは長崎県2.5%、沖縄県2.9%などです。長崎県では徒歩だけが11.5%、乗合バスだけが10.1%で、ともに全国上位でした。坂の多さだけを原因と断定することはできませんが、地形や市街地の形、バス網が手段の組み合わせと関係している可能性があります。

徒歩だけは長崎県と北海道がともに11.5%で最も高く、沖縄県が9.6%で続きます。徒歩率が高いからといって、必ずしも「歩きやすい都市」とは限りません。職場と住居の近さ、学校への通学、人口構成なども含んだ数字だからです。

数字から言えること、言えないこと

国勢調査が示すのは手段の分布であり、なぜその手段を選んだかという因果関係ではありません。

言えること

  • 2020年も全国では自家用車だけが最大の通勤・通学手段だった
  • 自家用車だけの全国割合は2000年から2020年まで上昇した
  • 車中心の県と鉄道中心の都府県には数十ポイントの差がある
  • 自転車、徒歩、バスの比重も都道府県によって大きく異なる

このデータだけでは言えないこと

  • 所得、燃料価格、運賃のどれが手段選択を変えたか
  • 自転車レーン整備が自転車通勤を何ポイント増やしたか
  • テレワークによって鉄道利用者が何人減ったか
  • 各手段を選んだ人の満足度や、他の手段へ切り替えられるか

地域の人口密度や所得、交通サービスとの関係を検証するには、国勢調査に加えて、駅・バス停の分布、運行本数、自動車保有、道路網、地形、従業地の立地などを市区町村単位で重ねる必要があります。

国際比較にも同じ注意が要ります。徒歩を独立区分にするか、複数手段をどのように数えるか、通学者を含めるかは国によって異なります。定義の異なる割合を横に並べても、交通環境の優劣は判断できません。

2020年調査を読む際の注意点

最新の交通手段データは2020年ですが、平常時の基準値として扱うには注意が必要です。

調査日はコロナ禍の2020年10月1日

国勢調査は「ふだん」の状況を尋ねますが、2020年10月は在宅勤務、休業、オンライン授業などが広がっていた時期です。調査票には、仕事を主に自宅でしている人について「自宅」が従業地になる場合もあります。

そのため、2010年と2020年の差には、長期的な交通環境の変化だけでなく、一時的な働き方の変化が混ざっている可能性があります。

「だけ」と「利用した」は別の指標

自家用車だけが48.2%だからといって、自家用車を利用した人すべてが48.2%という意味ではありません。鉄道と自家用車を組み合わせた人などを加えると、利用者の範囲は広がります。

ランキングを見るときは、次のどちらなのかを必ず確認する必要があります。

  • 一つの手段だけを使った人の割合
  • 複数手段を含め、その手段を一度でも使った人の割合

通勤者と通学者を合わせた数字

今回の全国・都道府県比較には通学者も含まれます。学生が多い地域では鉄道、自転車、徒歩の割合に影響する可能性があり、働く人だけの「通勤手段」と完全には一致しません。

次に見るべきは2025年調査との接続

次の焦点は、コロナ禍を経た通勤手段が平常化後にどこへ落ち着くかです。

国勢調査の利用交通手段は10年ごとの大規模調査で把握される項目であり、2025年調査では同じ詳細項目が原則として中心になりません。したがって、全国一律の同条件比較をすぐ更新できるとは限りません。

当面の注目点は3つあります。

  • 東京都の鉄道・電車だけ48.0%が、コロナ禍特有の値だったのか
  • 山形県などで8割前後に達した車依存がさらに続くのか
  • 自転車利用の増減を、市区町村別の道路整備や人口構成と結び付けて説明できるか

通勤費や燃料費の負担、公共交通の維持、脱炭素施策を考えるとき、全国平均だけを前提にすると地域の実態を外します。まず確認すべき数字は、自分の住む都道府県の順位よりも、同じ県内で車や鉄道以外の選択肢を持てる市区町村がどこにあるかです。

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