住宅は30年で広くなった?全国平均は2013年を境に縮小へ
日本の住宅は、1993年と比べればわずかに広くなっています。しかし、拡大が続いているわけではありません。専用住宅1戸当たりの延べ面積は2013年の92.97㎡を頂点に、2023年には90.86㎡まで縮小しました。
一方、1人当たりの居住室は広がっています。住宅そのものは近年やや小さくなったものの、世帯人員の減少によって、一人ひとりが使える空間は増えた。これが公的統計から見える30年間の結論です。
この記事で分かることは次の4点です。
- 専用住宅の平均延べ面積は1993年の88.38㎡から2023年の90.86㎡へ、30年間で2.48㎡増えた
- ただし2013年の92.97㎡をピークに、直近10年間では2.11㎡縮小した
- 2023年は一戸建が126.32㎡、共同住宅が50.31㎡で、建て方による差が大きい
- 1人当たり居住室の畳数は30年間で10.35畳から14.65畳へ増えた
使用データと比較条件
中心に使うのは、総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」です。
住宅・土地統計調査は5年ごとに行われる標本調査で、住宅数、建て方、所有関係、床面積、居住世帯などを調べます。今回扱う最新値は、2023年10月1日現在の確報集計です。
比較条件は次のようにそろえました。
- 対象地域:全国
- 対象年:1993年から2023年までの5年ごと、計7時点
- 対象住宅:居住世帯のある「専用住宅」
- 主な指標:1住宅当たり延べ面積
- 補助指標:1人当たり居住室の畳数、1住宅当たり居住室数、1室当たり人員
- 建て方:総数、一戸建、共同住宅
「専用住宅」とは、居住だけを目的として建てられた住宅です。店舗や作業場を併設する住宅などを含む集計とは対象が異なります。
また、延べ面積には居住室だけでなく、玄関、台所、トイレ、浴室、廊下なども含まれます。畳数で示される「居住室の広さ」と同じ指標ではありません。
30年間では2.8%拡大、直近10年間では2.3%縮小
長期で見ると拡大、転換点から見ると縮小です。 どの年を起点にするかで答えが変わります。
| 調査年 | 1住宅当たり延べ面積 | 1993年との差 |
|---|---|---|
| 1993年 | 88.38㎡ | 基準 |
| 1998年 | 89.59㎡ | +1.21㎡ |
| 2003年 | 92.49㎡ | +4.11㎡ |
| 2008年 | 92.41㎡ | +4.03㎡ |
| 2013年 | 92.97㎡ | +4.59㎡ |
| 2018年 | 92.06㎡ | +3.68㎡ |
| 2023年 | 90.86㎡ | +2.48㎡ |
1993年から2023年までの増加率は約2.8%です。30年かけて2.48㎡の増加なので、「日本の住宅が一貫して大幅に広くなった」と表現するほどの伸びではありません。
流れは大きく三つに分かれます。
- 1993~2003年:88.38㎡から92.49㎡へ拡大
- 2003~2013年:92㎡台で横ばいながら、2013年に92.97㎡の最高値
- 2013~2023年:90.86㎡まで2.11㎡、約2.3%縮小
2023年だけの一時的な変化でもありません。2018年は92.06㎡で、すでに2013年を下回っていました。最新調査ではそこからさらに1.20㎡小さくなっています。
一戸建も共同住宅も最新調査では縮小
総平均の縮小は、特定の建て方だけで起きた現象ではありません。 一戸建と共同住宅はピークの時期こそ違いますが、どちらも2023年に前回調査を下回りました。
| 建て方 | 1993年 | ピーク | 2023年 | ピークからの変化 |
|---|---|---|---|---|
| 一戸建 | 118.74㎡ | 128.63㎡(2013年) | 126.32㎡ | -2.31㎡ |
| 共同住宅 | 44.17㎡ | 51.14㎡(2018年) | 50.31㎡ | -0.83㎡ |
一戸建は2013年まで拡大、その後は足踏み
一戸建は1993年の118.74㎡から2013年の128.63㎡まで、20年間で9.89㎡広がりました。その後は2018年に126.63㎡、2023年に126.32㎡へ下がっています。
ただし、30年間全体では7.58㎡、約6.4%の拡大です。最近の縮小だけを見て、長期的にも狭くなったと判断するのは正確ではありません。
居住室数は別の動きをしています。一戸建の平均は1993年と2003年には6.08室でしたが、2023年は5.62室です。延べ面積は30年前より広い一方、部屋数は減っています。
これは、床面積の変化がそのまま「部屋が増えた」ことを意味しない例です。居間を広く取る間取りや、廊下、収納、水回りなど居住室以外の構成も延べ面積に反映されます。
共同住宅は30年間で大きく拡大したが、2023年に反転
共同住宅は1993年の44.17㎡から2018年の51.14㎡まで、25年間で6.97㎡広がりました。増加率は約15.8%で、一戸建より大きな伸びです。
2023年は50.31㎡となり、2018年から0.83㎡縮小しました。それでも1993年との比較では6.14㎡、約13.9%広い水準です。
なお、2023年の一戸建と共同住宅の差は76.01㎡あります。この差が大きいため、全国の「総平均」は、各タイプの住宅が広くなったかだけでなく、住宅ストックに占める建て方の構成にも左右されます。
ここがポイント: 全国平均90.86㎡だけでは、住宅の実像はつかめません。一戸建は126.32㎡、共同住宅は50.31㎡であり、どちらに住む世帯が増えるかによって総平均も動きます。
住宅は縮小しても、1人当たりの空間は拡大
生活者の使える広さを見ると、住宅1戸の面積とは逆の動きが現れます。
専用住宅の1人当たり居住室の畳数は、1993年の10.35畳から2023年の14.65畳へ増えました。増加幅は4.30畳、率にして約41.5%です。
同じ期間に、1室当たり人員は0.62人から0.52人へ低下しました。1住宅当たりの居住室数も4.79室から4.26室へ減っています。
この三つを一緒に読むと、次の状態が見えてきます。
- 住宅1戸の延べ面積:30年前よりわずかに広いが、2013年以降は縮小
- 住宅1戸の居住室数:減少
- 1人当たりの居住室:拡大
- 1室を使う人数:減少
背景としてまず確認できるのは、1住宅に住む人数が少なくなっていることです。単身世帯や少人数世帯が増えれば、住宅が小さくなっても、1人当たりの空間は広がり得ます。
ただし、この統計だけで「少人数世帯の増加が延べ面積縮小の原因だ」とは断定できません。土地価格、建築費、住宅の立地、持ち家・借家の比率、新築住宅の構成なども関係し得るからです。住宅・土地統計調査が示すのは同時に起きている変化であり、個々の要因の寄与率ではありません。
地域差は住宅の建て方と切り離せない
広い住宅が多い地域と、共同住宅が多い大都市では、同じ全国平均を基準にできません。
2023年調査について福井県が公表した確報の概要では、居住世帯のある住宅の1住宅当たり延べ面積は135.66㎡で全国2位でした。全国値を大きく上回ります。
一方、東京都のように共同住宅の比率が高い地域では平均面積が小さくなりやすくなります。これは直ちに住宅の質が低いことを意味しません。駅や職場への近さ、世帯人数、住宅価格、持ち家か借家かといった条件が異なるためです。
都道府県を比較するときは、総平均だけでなく少なくとも次を併記する必要があります。
- 一戸建と共同住宅の構成比
- 持ち家と借家の構成比
- 1世帯当たり人員
- 都市部と郊外・農村部の比率
- 延べ面積が「専用住宅」か「居住世帯のある住宅全体」か
特に最後の集計範囲は重要です。全国の長期推移表と都道府県公表資料で対象住宅が違えば、数字をそのまま横に並べることはできません。
年代別の違いは「建築年」だけでは説明できない
古い住宅と新しい住宅の面積差を、そのまま時代による設計思想の変化とは読めません。
住宅・土地統計調査では建築時期別の床面積も確認できますが、現存する住宅だけが集計対象です。古い小規模住宅が取り壊され、比較的大きな住宅が残れば、古い年代の平均値は当時の新築住宅全体より大きく見える可能性があります。
逆に、新しい住宅には都市部の賃貸共同住宅が多く含まれる場合があります。建築費や地価の上昇が面積に影響する可能性はありますが、次の条件を分けなければ検証できません。
- 新築時点の住宅と既存住宅ストック
- 持ち家と借家
- 一戸建と共同住宅
- 全国と大都市圏
- 住宅価格と世帯所得
年代差を調べるなら、住宅ストックを扱う住宅・土地統計調査に加え、国土交通省の建築着工統計で新設住宅1戸当たりの床面積を見る方法があります。ただし、着工統計は「その年に建て始めた住宅」、住宅・土地統計調査は「調査時点で存在し、人が居住する住宅」が中心です。両者は同じ母集団ではありません。
国際比較では面積の定義をそろえる必要がある
国をまたいだ床面積ランキングは、国内の時系列比較より慎重に読むべきです。
国土交通省は住宅経済関連データで、戸当たり・1人当たり住宅床面積の国際比較を「壁芯換算値」で整理しています。壁芯とは壁の中心線を基準に面積を測る方法で、内壁の内側を測る内法面積とは値が異なります。
さらに国によって、次の扱いが一致しないことがあります。
- 廊下や収納を床面積に含むか
- 地下室、屋根裏、車庫を含むか
- 共同住宅の共用部分を配分するか
- 調査対象が全住宅か、居住中の住宅か
- 住宅ストックか、新築住宅か
OECDも住宅のゆとりを比べる際、床面積だけでなく「1人当たり室数」や過密居住率を使っています。ただし、室数の定義も国によって厨房を含む場合があるため、日本の住宅・土地統計調査の居住室数とは完全には一致しません。
したがって、「日本は平均90.86㎡だから他国より広い・狭い」と直接比べるのは適切ではありません。国際差を見るなら、同じ資料内で換算された床面積を使うか、OECDの同一定義による1人当たり室数を見る必要があります。
平均面積だけでは家計負担を測れない
住宅が広いことと、無理なく住めることは別問題です。
延べ面積が同じでも、住宅費の負担は地域、所有関係、取得時期によって変わります。持ち家では住宅ローン、固定資産税、修繕費がかかり、借家では家賃や更新費用が発生します。断熱性能が低い大きな住宅なら、冷暖房費の負担も増えます。
また、全国平均より小さい共同住宅でも、通勤時間を短縮できれば生活上の利点があります。反対に、広い一戸建でも、車がなければ買い物や通院が難しい地域では移動費や時間が必要です。
住宅の広さを生活の豊かさとして評価するなら、面積に加えて次の指標を見るべきです。
- 1人当たりの居住空間
- 住宅費の可処分所得に占める割合
- 断熱・耐震性能
- 通勤、通学、買い物、医療への所要時間
- 世帯人数や年齢に合った間取り
平均面積の縮小は注目すべき変化ですが、それだけで居住水準が悪化したとは判断できません。2023年には1人当たりの居住室が過去30年で最も広くなっているからです。
数字を読むときの注意点
今回の90.86㎡は「日本の全住宅を実測して求めた値」ではありません。 調査設計と定義を押さえる必要があります。
標本調査の推計値である
住宅・土地統計調査は、全国の住宅を抽出して調査し、全体を推計します。小地域や細かな住宅区分ほど標本誤差の影響を受けやすくなります。
空き家を含む平均ではない
長期推移に使った表は、居住世帯のある専用住宅が対象です。空き家を含む「総住宅数」の平均面積として読むことはできません。
「1世帯当たり」と「1住宅当たり」は厳密には違う
通常は1住宅に1世帯が住みますが、同居世帯があるケースなどでは住宅数と世帯数は一致しません。この記事の主要値は、原表に合わせて「1住宅当たり」と表記しています。
平均値は住宅構成の変化でも動く
同じ広さの一戸建と共同住宅が一切変化しなくても、共同住宅の比率が上がれば全体平均は下がります。総平均の変化を、すべての住宅が一様に小型化した結果とは読めません。
2018年以前と2023年の調査環境も確認する
5年ごとの統計なので、年次の細かな変動は分かりません。2019~2022年のどの時点で縮小が進んだのかも、このデータだけでは特定できません。
次に見るべきは「新築の縮小」がストックにどう表れるか
今後の焦点は、2023年の縮小が一時的な動きか、新しい傾向の始まりかです。
確認すべきポイントは三つあります。
- 新設住宅の1戸当たり床面積が今後も縮小するか
- 一戸建・共同住宅、持ち家・借家の構成がどう変わるか
- 面積が小さくなっても、1人当たり空間や住宅性能が維持されるか
次回の住宅・土地統計調査は通常の5年周期なら2028年が節目になります。それまでの間は、毎月・毎年公表される建築着工統計で新設住宅の床面積を追うことができます。
日本の住宅は、30年前との比較では2.48㎡広くなりました。しかし、2013年以降に限れば2.11㎡狭くなっています。「広くなったか、狭くなったか」の答えは、1戸の面積だけでなく、誰が何人で住み、どの建て方を選んでいるかまで見て初めて定まります。
