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求人は減少局面を脱したのか 有効求人倍率1.18倍の地域差と業種差を読む

日本地図と求人統計のグラフを確認する様子。

求人は減少局面を脱したのか 有効求人倍率1.18倍の地域差と業種差を読む

全国の求人は、長期的には減少傾向にあります。ただし、直近の2026年6月だけを見ると、有効求人数は前月比0.9%増、新規求人数は前年同月比3.1%増に転じました。

つまり、「求人が一様に減り続けている」とは言えません。全国平均の有効求人倍率は1.18倍ですが、就業地別では福井県の1.72倍から大阪府の0.96倍まで開きがあり、新規求人も製造業では増え、情報通信業では減っています。

  • 2026年6月の有効求人倍率:1.18倍
  • 2025年度平均:1.20倍で、前年度より0.05ポイント低下
  • 就業地別の最高:福井県1.72倍
  • 就業地別の最低:大阪府0.96倍
  • 新規求人の前年同月比:製造業10.4%増、情報通信業6.4%減
目次

使用データと比較条件

中心に使うのは、厚生労働省が2026年7月31日に公表した「一般職業紹介状況」の2026年6月分です。

この統計は、全国のハローワークに登録された求人と求職を集計しています。民間求人サイトや企業が自社サイトだけで募集する求人は、原則として含みません。

今回の比較条件は次の通りです。

  • 対象時点:2026年6月
  • 対象地域:全国および47都道府県
  • 全国・都道府県比較:季節調整値
  • 業種比較:新規求人数の原数値を前年同月と比較
  • 長期比較:暦年平均または年度平均。両者を混同しないよう区別
  • 求人倍率:求人数を求職者数で割った値

「1.18倍」は、単純化すれば求職者1人に対して1.18件の求人がある状態です。ただし、同じ人が複数地域・複数職種の求人に応募できるため、1人に必ず1.18件の就職先が用意されているという意味ではありません。

全国平均は低下後、直近で小幅に持ち直した

2026年6月の1.18倍は、コロナ禍前より低い一方、前月からは0.01ポイント上昇しました。

年平均・年度平均の動きを並べると、求人市場の大きな流れが見えます。

期間有効求人倍率比較
2019年平均1.60倍コロナ禍前
2020年平均1.18倍前年比0.42ポイント低下
2023年平均1.31倍前年比0.03ポイント上昇
2024年平均1.25倍前年比0.06ポイント低下
2025年平均1.22倍前年比0.03ポイント低下
2025年度平均1.20倍前年度比0.05ポイント低下
2026年6月1.18倍前月比0.01ポイント上昇

2019年平均の1.60倍から2020年平均の1.18倍へ急低下した後、2023年には1.31倍まで回復しました。その後は2024年、2025年と2年連続で下がっています。

ただし、2026年6月は有効求人数が前月比0.9%増え、有効求職者は0.1%減りました。この組み合わせによって倍率が小幅に上昇しています。新規求人も前年同月比3.1%増でした。

したがって、現状は「求人減少が完全に止まった」と判断できる段階ではないものの、直近月には持ち直しの動きが表れたと整理するのが適切です。

地域差は福井1.72倍、大阪0.96倍

全国平均だけでは、地域によって異なる仕事の見つけやすさを捉えきれません。

2026年6月の就業地別有効求人倍率は、最も高い福井県が1.72倍、最も低い大阪府が0.96倍でした。両者の差は0.76ポイントで、福井県の倍率は大阪府の約1.8倍です。

一方、求人を受理したハローワークの所在地で集計する「受理地別」では、最高が東京都の1.70倍、最低が神奈川県の0.84倍でした。

就業地別と受理地別は何が違うのか

就業地別は、実際に働く場所へ求人を振り分けて集計します。受理地別は、企業が求人を申し込んだハローワークの所在地で数えます。

例えば、東京の本社が地方支店の求人をまとめて申し込む場合、受理地と就業地が異なります。地域の雇用機会を比べる目的なら、働く場所を基準にした就業地別が分かりやすい指標です。

ここがポイント: 全国の1.18倍は「平均」にすぎません。転職や移住を考えるときは、希望勤務地の倍率に加え、希望職種の求人が実際にあるかを確認する必要があります。

倍率が高い地域でも就職が簡単とは限らない

人口が減少する地域では、求職者が少ないために倍率が上がる場合があります。また、求人が介護、建設、運輸など特定の仕事に集中していれば、事務職を希望する人には高倍率の恩恵が及びません。

反対に、大都市では求人数が多くても求職者数も多いため、倍率が低くなることがあります。地域の景気や企業数だけでなく、分母となる求職者の動きにも左右される指標です。

業種別では製造業が増え、情報通信業が減った

2026年6月の新規求人は全体で増えましたが、増減の方向は業種ごとに分かれました。

前年同月比で目立った業種は次の通りです。

新規求人が増えた主な業種

  • サービス業(他に分類されないもの):11.5%増
  • 製造業:10.4%増
  • 宿泊業・飲食サービス業:5.4%増

新規求人が減った主な業種

  • 情報通信業:6.4%減
  • 卸売業・小売業:2.6%減
  • 教育・学習支援業:2.2%減

製造業の10.4%増は、全国の新規求人が増えた一因です。一方、情報通信業は6.4%減っており、「デジタル分野だから求人が必ず増える」とは限りません。

ただし、この業種別データが示すのは「企業がどの産業に属するか」です。製造会社が募集する経理職も製造業の求人に含まれます。プログラマー、事務員、介護職といった仕事内容ごとの差を知るには、別表の職業別有効求人倍率を見る必要があります。

仕事による差は全国平均より大きい

企業の業種に加えて職業を見ると、人手不足が特定の仕事に集中していることが分かります。

厚生労働省の2025年版「労働経済の分析」では、2024年平均の職業別有効求人倍率について、全職業が1.14倍だったのに対し、次の職業は大幅に高い水準でした。

  • サービス職業従事者:2.98倍
  • 輸送・機械運転従事者:2.18倍
  • 建設・採掘従事者:5.12倍

建設・採掘は全職業平均の約4.5倍です。求人全体が緩やかに減っていても、社会インフラを支える現場では採用難が続いていることを示します。

もっとも、建設業は縁故採用が比較的多く、ハローワーク統計だけでは採用経路の全体を捉えにくいと厚生労働省も注意を促しています。高倍率をそのまま「実際の人手不足の強さ」とみなすのではなく、募集経路の違いも考慮すべきです。

正社員に限ると倍率は1.00倍

雇用形態を絞ると、求人の余裕は全国平均より小さくなります。

2026年6月の正社員有効求人倍率は1.00倍でした。全数の1.18倍を0.18ポイント下回ります。

この数値を見るときにも注意が必要です。分子は正社員の有効求人数ですが、分母にはパートを除く常用の求職者が使われ、派遣社員や契約社員を希望する人も含まれます。そのため、厚生労働省は厳密な意味での正社員求人倍率より低く算出されると説明しています。

求職者にとっては、次の順で数字を絞ると実情に近づきます。

  1. 希望する都道府県の就業地別倍率を見る
  2. 希望する職業の倍率を確認する
  3. 正社員、パートなど雇用形態を分ける
  4. 賃金、勤務時間、資格要件まで求人票で確認する

倍率が高くても、賃金や勤務条件が希望と合わなければ応募先は増えません。求人件数と「選べる仕事の数」は同じではないのです。

数字を読む際の4つの注意点

有効求人倍率は有用ですが、労働市場全体を単独で表す指標ではありません。

1. ハローワーク経由に限られる

民間求人サービスや企業の直接募集だけで完結する求人は含まれません。ハローワークを利用する割合が業種・職種によって違うため、倍率にも偏りが生じます。

2. 月次と年平均を直接比べすぎない

2026年6月は季節調整済みの単月値、2025年の1.22倍は年平均です。大きな流れを確認するには年平均、直近の変化を見るには月次値というように使い分ける必要があります。

3. 産業別の増減は原数値

2026年6月の業種別新規求人は、前年同月との比較です。全国倍率の前月比とは基準が異なります。10.4%増と0.01ポイント上昇を同列に扱うことはできません。

4. 統計の範囲は途中で変わっている

2021年9月以降は、ハローワークに来所せずオンラインで求職登録した人や、求人へ直接応募した就職件数などが統計に含まれます。長期推移では、この集計範囲の変化に留意が必要です。

次に確認すべきは「持ち直しが続くか」

2026年6月の結果だけで求人減少の終了を宣言することはできません。 前月比の上昇幅は0.01ポイントと小さく、2025年度平均は前年度を下回っているからです。

今後は、次の3点が焦点になります。

  • 有効求人数の前月比増加が数か月続くか
  • 製造業や宿泊・飲食の新規求人増加が一時的な動きに終わらないか
  • 福井と大阪のような地域差が縮小するか、さらに広がるか

求職者が見るべきなのは全国の1本の数字ではありません。希望地域・職業・雇用形態の3条件を重ねたとき、自分が応募できる求人が増えているか。次回以降の公表値でも、そこを追う必要があります。

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