二輪車の減少は50ccが中心――保有は40年で44%減、販売は45年で85%減
日本の二輪車保有台数は、1985年の1,818万台から2025年の1,021万台へ、約44%減りました。ただし、減少を担ったのは主に50cc以下の原付第一種で、51cc以上の保有台数は同じ期間に増えています。
新車の販売台数は、1980年の236万台から2025年の36万台へ約85%減少しました。「新しく売れる台数が減ったこと」と「国内に残る車両が減ったこと」は、分けて読む必要があります。
この記事では、全国の排気量別データから、次の3点を確認します。
- 保有台数の減少は、どの排気量帯に集中したのか。
- 販売台数の長期減少と、近年の持ち直しはどう違うのか。
- 台数から生活の変化を読むとき、何を断定できないのか。
使用データ:保有は時点の台数、販売は1年間の台数
比較するのは、日本国内にある車両の数と、国内市場へ新しく供給された車両の数です。
主な資料は、日本自動車工業会の『日本の自動車工業2026』の二輪車販売・保有統計です。2026年10月8日時点で確認した2026年版を使い、販売は2025年の暦年値、保有は2025年の年度末付近の値を最新の比較点とします。
資料の作成主体は日本自動車工業会ですが、保有台数の元資料は国土交通省と総務省。販売台数は全国軽自動車協会連合会と日本自動車工業会の集計です。
排気量の区分をそろえる
長期比較では、資料に掲載された次の4区分を使います。
- 原付第一種:50cc以下
- 原付第二種:51〜125cc
- 軽二輪車:126〜250cc
- 小型二輪車:251cc以上
本文の「51cc以上」は、後ろの3区分を合計したものです。「原付」には第一種と第二種があるため、原付全体と50cc以下を同じ意味では使いません。
「販売」には出荷ベースの数字も含まれる
原付第一種・第二種の販売台数は、国内の末端販売店向け出荷台数です。購入者への引き渡しをそのまま数えた数字ではありません。軽二輪車・小型二輪車は輸入車を含みます。
保有台数にも時点の違いがあります。表の名称は「各年3月末現在」ですが、原付第一種・第二種は2006年から4月1日現在の課税対象台数です。長期の方向を見るには使えますが、完全に同じ方法・同じ日の観測が続いているわけではありません。
以下の増減率は掲載台数から計算し、小数第1位に丸めています。1980年や1985年は比較の起点であり、全期間のピークと断定するものではありません。
保有の長期減少:総数の裏で、50cc以下と51cc以上が逆に動いた
1985年から2025年までの保有台数を見ると、50cc以下の減少を、51cc以上の増加が一部補っています。
全国の保有台数を、読みやすいよう万台単位に丸めると次のようになります。
| 年 | 50cc以下 | 51cc以上 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1985年 | 1,460.9万台 | 357.1万台 | 1,818.0万台 |
| 2000年 | 964.3万台 | 433.0万台 | 1,397.4万台 |
| 2010年 | 744.9万台 | 502.9万台 | 1,247.7万台 |
| 2020年 | 485.3万台 | 549.5万台 | 1,034.8万台 |
| 2025年 | 403.4万台 | 618.1万台 | 1,021.5万台 |
出典:『日本の自動車工業2026』11ページ。全国、各年の保有時点は前節の注記のとおり。丸めにより内訳と合計が一致しない場合があります。
50cc以下は約1,058万台減った
原付第一種は、1985年の14,609,399台から2025年の4,033,728台へ減少しました。差は10,575,671台、減少率は72.4%です。
一方、51cc以上は3,571,010台から6,180,925台へ、73.1%増加しました。この約261万台の増加を差し引くと、二輪車全体の減少は約797万台、43.8%になります。
つまり、二輪車全体の純減より、50cc以下だけの減少のほうが大きいのです。「バイクが一様に減った」と捉えると、この違いが見えなくなります。
51cc以上も、すべて同じ増え方ではない
1985年と2025年を比較すると、内訳には差があります。
- 原付第二種:1,747,957台から2,100,173台へ、20.2%増。
- 軽二輪車:1,047,426台から2,132,245台へ、103.6%増。
- 小型二輪車:775,627台から1,948,507台へ、151.2%増。
ただし、起点を変えると評価も変わります。原付第二種の1980年の保有は2,281,006台で、2025年はそれを7.9%下回ります。1985年との比較で増加しているからといって、さらに前から一貫して増え続けたわけではありません。
総数でも同様です。1980年の11,965,547台と2025年を比べれば、減少率は14.6%。1985年との比較では43.8%です。長期減少を説明する際は、「いつから」を省けません。
販売の長期減少:1980年比で85%減でも、近年は36万〜42万台
新車市場は1980年代に比べて大幅に縮小しましたが、直近の動きは長期減少とは別に見る必要があります。
全国の年間販売台数は次のとおりです。原付は販売店向け出荷、軽二輪・小型二輪は輸入車を含むという比較条件は共通です。
| 暦年 | 50cc以下 | 51cc以上 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1980年 | 1,978,426台 | 378,318台 | 2,356,744台 |
| 2000年 | 558,459台 | 261,966台 | 820,425台 |
| 2010年 | 231,247台 | 192,121台 | 423,368台 |
| 2020年 | 122,416台 | 243,508台 | 365,924台 |
| 2021年 | 127,736台 | 288,156台 | 415,892台 |
| 2023年 | 92,824台 | 312,392台 | 405,216台 |
| 2024年 | 110,126台 | 257,834台 | 367,960台 |
| 2025年 | 107,454台 | 254,536台 | 361,990台 |
出典:『日本の自動車工業2026』10ページ。
1980年から2025年の減少率は、全体で84.6%、50cc以下で94.6%、51cc以上で32.7%です。販売でも縮小の中心は50cc以下ですが、保有とは違い、51cc以上の販売も1980年を下回っています。
2025年は「全部の区分が減った年」ではない
2025年の総販売は前年から5,970台減り、1.6%減でした。排気量別では、軽二輪車だけが増えています。
- 原付第一種:107,454台、前年比2.4%減。
- 原付第二種:108,287台、同3.9%減。
- 軽二輪車:61,990台、同8.4%増。
- 小型二輪車:84,259台、同4.3%減。
また、2025年の総販売は2020年より1.1%少ない一方、51cc以上に限ると4.5%多い水準です。2021年の持ち直しからは後退しましたが、どの排気量帯を見るかによって、回復の残り方が違います。
2024年には50cc以下の販売が増えていました。それでも、同区分の保有台数は減少しています。1年間の新車供給が増えただけでは、国内に残る車両全体の減少が止まるとは限りません。
販売が減っても、保有が増えるのはなぜか
保有台数は過去に販売された車両の積み重ねなので、その年の販売と同じ方向に動くとは限りません。
新車が加わっても、廃車や登録抹消などで抜ける車両がそれ以上なら保有は減ります。逆に、新車販売が前年より少なくても、抜ける車両が少なければ保有は増えます。
中古車の国内売買は、原則として持ち主を変える動きです。それだけで全国の車両数が1台増えるわけではありません。さらに、販売と保有は集計期間や範囲が違うため、年間販売から保有の前年差を引いて「廃車台数」を求めることもできません。
直近の保有は、減少と増加がほぼ打ち消し合う
2024年から2025年の保有変化を分けると、動きがはっきりします。
- 50cc以下:143,057台減。
- 51cc以上:81,406台増。
- 全体:61,651台減、前年比0.6%減。
総数だけなら小幅減です。しかし、その内側では約14万台の減少と約8万台の増加が同時に起きています。
50cc以下が全保有に占める割合も、1985年の約80.4%から2025年の39.5%へ低下しました。国内の二輪車を代表する排気量構成は、40年前と大きく変わっています。
ここから「50cc利用者がそのまま125ccへ乗り換えた」とは言えません。個人を追跡した統計ではないためです。確認できるのは、車両の集計上、50cc以下の比重が下がり、他の区分の比重が上がったことです。
台数から分からないこと:利用頻度、地域差、減少の原因
保有台数は車両が何台あるかを示しますが、誰が、どこで、どれだけ乗るかまでは示しません。
通勤や買い物の足として毎日使う1台と、休日に使う1台は、保有統計では同じ1台です。複数台を持つ人もいるため、保有台数を利用者数と読み替えることもできません。
特に、次の点は追加のデータが必要です。
- 利用の減少:走行距離、利用日数、移動目的を調べる必要がある。
- 地域の違い:全国値では、都市部と地方の増減を分けられない。
- 人口との関係:総台数だけでは、人口当たりの普及が増えたか減ったかは判断できない。
- 減少の原因:人口構成、車両価格、代替交通手段などを、台数の変化とは別に検証する必要がある。
したがって、この結果だけで「若者のバイク離れが原因」「電動アシスト自転車に置き換わった」と断定はできません。長期の台数減少は確認できますが、その理由を一つに絞る根拠はありません。
2026年以降は「第一種=50cc以下」に注意
今後の比較では、統計区分にも注意が必要です。日本自動車工業会の二輪車出荷統計は、2026年1月分から原付第一種に、総排気量125cc以下かつ最高出力4.0kW以下の「新基準原付」を含むと明記しています。
そのため、2026年以降の第一種の数字を、過去の50cc以下と無条件に接続すると誤読します。第一種が増えても、それが従来の50cc車の増加を意味するとは限りません。
今回の販売比較を2025年までとしたのは、通年値をそろえるためです。次の年を追加するときは、名称だけでなく集計対象の注記も確認する必要があります。
生活の足を見るなら、総数より排気量別の増減を追う
次に見るべきなのは、50cc以下の減少を、どの車両や交通手段が補っているかです。
全国の保有が約1,021万台残っている以上、新車市場の縮小だけで、既存車両の整備や駐輪の需要まで同じ割合で減ったとは判断できません。一方で、車両の構成が変われば、地域の販売店や駐輪施設が受け止める車両も変わります。その具体的な需要を知るには、地域別保有や利用目的を重ねる必要があります。
統計を更新するときの確認点は、次の3つです。
- 第一種の減少と、第二種・軽二輪・小型二輪の増加を別々に追う。
- 新車販売の変化と、国内に残る保有台数の変化を混同しない。
- 新基準原付を含む年は、排気量と統計区分の対応を確認する。
「二輪車が減った」の中身は、50cc以下の大幅減と、それ以外の保有増です。地域の移動手段が細ったのか、車両が変わったのかを判断するには、この内訳を出発点にする必要があります。
