給食費の地域差は月1,800円超 全国支援が始まっても「完全無償」とは限らない
学校給食の食材費は、2025年時点で公立小学校が全国平均月5,196円、中学校が6,013円です。都道府県平均の最高額と最低額の差は、小学校で月1,391円、中学校では月1,887円に達します。
2026年4月には、公立小学校を対象とする国の負担軽減が始まりました。ただし、完全給食の支援基準は月5,200円。実際の食材費がこれを上回る地域では、自治体が差額を負担しなければ、保護者負担が残る可能性があります。
この記事で押さえたい点は次の4つです。
- 2025年の全国平均は小学校5,196円、中学校6,013円
- 2023年からの2年間で、平均額は小学校11.6%、中学校11.8%上昇
- 都道府県平均の幅は小学校4,678〜6,069円、中学校5,231〜7,118円
- 2026年度の国の支援は公立小学校が中心で、中学校や基準額超過分は今後の課題
使用したデータと比較条件
中心となる資料は、文部科学省が2026年7月30日に公表した「令和7年度 学校給食実施状況等調査」です。
比較条件は次の通りです。
- 基準日:2025年5月1日
- 対象:完全給食を実施する公立小学校・中学校
- 金額:給食に使う食材費相当額
- 月額の算出:年間所要額を11か月で割った額
- 全国平均:都道府県別の学校数を基にした加重平均
- 地域比較:47都道府県の平均月額と年間実施回数
2025年度調査から算出方法が変更されています。文部科学省は過去分も新方式で再計算しており、この記事では比較可能な2023年の再計算値を使いました。
無償化の広がりについては、2023年9月1日時点の自治体調査と、2026年4月に始まった国の「学校給食費の抜本的な負担軽減」を参照しています。給食費の金額と無償化の実施状況は調査時点が異なるため、同じ年の横並びデータではありません。
給食費は2年間で1割以上上がった
全国平均は、2023年から2025年までの2年間で小中学校とも約12%上昇しました。
| 区分 | 2023年 | 2025年 | 増加額 | 上昇率 |
|---|---|---|---|---|
| 公立小学校 | 4,655円/月 | 5,196円/月 | 541円 | 11.6% |
| 公立中学校 | 5,380円/月 | 6,013円/月 | 633円 | 11.8% |
11か月分として単純換算すると、2025年の食材費相当額は小学校で年5万7,156円、中学校で年6万6,143円です。2023年より、それぞれ年5,951円、6,963円増えた計算になります。
ここで示されるのは、保護者が実際に払った金額ではありません。自治体が公費を投入して値上げを抑えたり、全額を負担したりしている場合があるためです。
それでも食材費そのものの上昇は、自治体の負担軽減策に必要な予算が増えていることを意味します。徴収額を据え置けば、その差額は自治体などが補う必要があります。
都道府県差は小学校で月1,391円、中学校で月1,887円
2025年の都道府県平均を見ると、最高額は小中学校とも新潟県でした。
小学校は新潟県6,069円、愛媛県4,678円
小学校の上位・下位は次の通りです。
- 最高:新潟県 6,069円(月194回ではなく、年間実施回数194回)
- 2番目:福島県 5,959円(年間183回)
- 3番目:富山県 5,862円(年間196回)
- 最低:愛媛県 4,678円(年間189回)
- 2番目に低い:神奈川県 4,682円(年間187回)
- 3番目に低い:滋賀県 4,697円(年間188回)
新潟県と愛媛県の差は月1,391円です。11か月分なら1万5,301円の開きになります。
中学校は新潟県7,118円、三重県5,231円
中学校では地域差がさらに大きくなります。
- 最高:新潟県 7,118円(年間195回)
- 2番目:富山県 6,852円(年間197回)
- 3番目:東京都 6,724円(年間186回)
- 最低:三重県 5,231円(年間185回)
- 2番目に低い:滋賀県 5,267円(年間185回)
- 3番目に低い:愛媛県 5,362円(年間183回)
新潟県と三重県の差は月1,887円、11か月換算で2万757円です。
ただし、この差をそのまま「高い地域」「安い地域」の優劣として読むことはできません。文部科学省も、献立の内容や年間実施回数が違うため単純比較できないと注意しています。
月額だけでなく、次の条件も一緒に見る必要があります。
- 1年間に何回給食を提供するか
- 1食当たりの量や品数
- 地場産品など食材の選び方
- 食材価格の地域差や調達方法
- 自治体がどこまで公費で補っているか
例えば東京都の中学校は月6,724円で全国3番目ですが、年間実施回数は186回です。長野県は月6,613円で東京都より低い一方、年間199回実施しています。月額の順位だけでは、1食当たりの費用や給食内容を判断できません。
自治体独自の無償化は小規模自治体ほど進んでいた
2023年9月時点では、小中学生全員を対象に給食費を無償化していた自治体は547ありました。
何らかの形で無償化を実施していた自治体は722です。財源には自治体の自己財源のほか、地方創生臨時交付金、ふるさと納税、都道府県の補助などが使われていました。
条件を付けない無償化の実施割合は、自治体の財政力指数によって次のように異なります。
- 0.25未満:49.6%
- 0.25以上0.5未満:33.4%
- 0.5以上0.75未満:21.7%
- 0.75以上1未満:15.6%
- 1以上:24.6%
財政力が高い自治体ほど一貫して無償化が多い、という結果ではありません。人口規模で見ると、東京都特別区を除けば、小規模な自治体ほど条件なしの無償化を実施する割合が高い傾向も確認されました。
児童生徒数が少ない自治体は対象人数が限られ、全員分を予算化しやすい面があります。一方、人口の多い都市で同じ制度を実施すれば、必要額も大きくなります。ただし、調査結果だけで実施率の差を人口規模だけの効果と断定することはできません。自治体ごとに財源、政策の優先順位、既存の就学援助などが異なるためです。
ここがポイント: 給食費の地域差は食材費の違いだけではありません。「自治体がいくら負担するか」によって、同じ程度の給食費でも家庭の支払額は変わります。
2026年の全国支援で何が変わったのか
2026年4月から、公立小学校の食材費を対象とする全国的な負担軽減が始まりました。
対象には、公立の義務教育学校前期課程と特別支援学校小学部も含まれます。保護者個人への給付ではなく、国が地方自治体を支援する仕組みなので、保護者の申請は原則不要です。
児童1人当たりの月額基準は次の通りで、年間11か月分が支援されます。
- 完全給食:公立小学校5,200円、特別支援学校小学部6,200円
- 補食給食:公立小学校4,800円、特別支援学校小学部5,800円
- ミルク給食:いずれも1,200円
完全給食の基準額5,200円は、2025年の小学校全国平均5,196円とほぼ同じです。ただし、都道府県平均では47都道府県のうち24道県が5,200円を上回っています。
これは、24道県すべてで必ず保護者負担が残るという意味ではありません。実際の交付や徴収は学校・自治体単位で決まり、自治体が基準額超過分を独自に負担することもできます。
一方、国の制度上は基準額を超える部分を保護者から徴収できます。文部科学省も、この仕組みを「完全な無償化」ではなく「抜本的な負担軽減」と説明しています。
中学校と国私立は全国支援の外にある
2026年度の全国支援は、まず公立小学校段階から始まりました。
現時点で残る主な境界は次の通りです。
- 公立中学校は全国支援の対象外
- 国立・私立の小中学校も対象外
- 小学校でも月5,200円を超える食材費は自動的に全額補われない
- 人件費や施設・設備費は従来通り学校設置者側が担う
- 給食を食べられない児童への対応は自治体によって異なる
2025年の中学校平均は月6,013円で、小学校より817円高くなっています。小学校と同じような全国支援を中学校へ広げる場合、単価の高さに加え、給食の実施形態や自治体の既存制度をどう扱うかが課題になります。
2026年7月、全国知事会は公立中学校への拡充と国私立への対応を検討するよう求めました。文部科学相は、公立小学校で始まった事業を一定期間検証し、中学校については小中の給食実施状況の違いを整理した上で検討する方針を示しています。
数字を読むときの注意点
「給食費」「無償化」「保護者負担」は、同じ数字ではありません。
都道府県平均は自治体ごとの請求額ではない
都道府県別の金額は、その地域にある公立学校を集計した平均です。同じ都道府県内でも、市区町村や学校によって献立、回数、食材費、補助制度が異なります。
転居先や居住地の負担を調べるなら、都道府県順位ではなく、市区町村の当初予算、教育委員会の給食費案内、学校からの通知を確認する必要があります。
2023年と2025年は新方式で比較する
2025年度から全国平均の算出方法が変わりました。旧方式による2023年の小学校平均は4,688円ですが、新方式での再計算値は4,655円です。異なる方式の数字を混ぜると、増加率をわずかに過大または過小評価します。
無償化自治体数は2023年時点
547自治体という数字は2023年9月1日時点です。2026年の全国支援開始後に自治体独自制度がどう変わったかを示す最新の全国集計ではありません。
既存の自治体負担分を、給食の質向上や中学生への支援に振り向けるのか。それとも国の基準額を超える小学生分の補填に充てるのか。自治体ごとの予算配分を追わなければ、全国支援後の実質的な地域差は見えてきません。
これから確認したい3つの数字
給食費をめぐる次の焦点は、制度の名称よりも、家庭が実際にいくら支払い、給食の内容がどう維持されたかです。
- 小学校の実負担額:月5,200円を超える地域で自治体が差額を補ったか
- 中学校への拡充:平均月6,013円の食材費を、誰がどの割合で負担するか
- 給食の質と回数:負担軽減後も品数、栄養、地場産品の使用、年間実施回数が維持されたか
全国平均と支援基準がほぼ同額でも、地域差が消えたわけではありません。次に見るべきなのは、各自治体が公表する2026年度の徴収額と公費負担額、そして2027年度予算で中学校をどう扱うかです。
