不登校は10年でどう変わった?小中35.4万人と高校の減少を読む
全国の小中学校の不登校児童生徒は、2024年度に35万3,970人となり、2014年度の約2.9倍に増えました。ただし直近の増加率は2.2%に縮小し、高校では前年度より減少しています。
長期的な増加が特に大きいのは小学校です。一方、在籍者に占める割合は中学校が高く、「増え方」と「現在の割合」では、注目すべき学校段階が異なります。
この記事では、文部科学省の全国調査を使い、2014~2024年度の推移と最新年度の学年差を確認します。2026年10月8日時点で同省の調査結果一覧に掲載されている最新年度は2024年度です。
- 小中合計は10年間で約2.9倍。小学校だけでは約5.3倍。
- 2024年度の割合は、小学校2.30%、中学校6.79%。
- 高校は6万7,782人。長期では増加したものの、直近は減少。
- 学年別人数は、同じ子どもを追跡した結果ではない。
使用データ――「30日以上の欠席」のうち不登校に分類された人数
比較するのは、すべての欠席者ではなく、年度間に30日以上欠席し、その理由が不登校に分類された児童生徒です。
出典は文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」。2024年度結果は2025年10月29日に公表され、本体資料は2026年1月16日に一部修正されています。以下では更新版の数値を使います。調査結果一覧
集計条件は次のとおりです。
- 対象地域:全国。
- 小中学校:国公私立。義務教育学校の前期・後期課程など、資料で小学校・中学校に含める課程も対象。
- 高校:国公私立の全日制・定時制。通信制を含む高校生全体の値ではありません。
- 比較期間:2014~2024年度。暦年ではなく学校年度です。
- 割合:各学校段階の在籍者を母数にした不登校者数。原資料の「1,000人当たり」を百分率に換算します。
不登校は、心理的・情緒的・身体的・社会的な要因や背景によって、登校しない、または登校したくてもできない状態にある者として集計されます。「病気」「経済的理由」に分類された長期欠席者は除かれます。
この区分は統計上の分類です。病気と不登校の背景が個人の生活の中で明確に分かれている、という意味ではありません。また、30日未満の欠席や、欠席日数だけでは捉えにくい学校生活上の困難も、この人数からは分かりません。調査結果本体・定義と集計上の注記
10年間の推移――小学校の増加が際立つ
2014年度から2024年度までに、小学校は約5.3倍、中学校は約2.2倍、高校は約1.3倍になりました。
次の表は、同じ調査系列から節目の年度を抜き出したものです。人数の単位は人で、高校は全日制・定時制の合計です。
| 年度 | 小学校 | 中学校 | 高校 |
|---|---|---|---|
| 2014 | 25,864 | 97,033 | 53,156 |
| 2019 | 53,350 | 127,922 | 50,100 |
| 2020 | 63,350 | 132,777 | 43,051 |
| 2021 | 81,498 | 163,442 | 50,985 |
| 2022 | 105,112 | 193,936 | 60,575 |
| 2023 | 130,370 | 216,112 | 68,770 |
| 2024 | 137,704 | 216,266 | 67,782 |
出典:文部科学省・2024年度調査結果概要、長期欠席・不登校の推移。倍率と以下の差分は掲載値から計算しています。
小学校は、人数の増加と割合の上昇が重なった
小学校の増加数は11万1,840人。中学校は11万9,233人です。人数の増加幅は中学校のほうが大きいものの、小学校は出発点が小さかったため、倍率が大きくなっています。
倍率だけを見ると、この違いを見落とします。支援担当者や学習場所がどれだけ必要かを考える場面では人数が重要で、学校段階をまたいで頻度を比べる場面では割合が必要です。
在籍者1,000人当たりの人数を百分率に換算すると、次のように変わっています。
- 小学校:2014年度0.39% → 2024年度2.30%。
- 中学校:2014年度2.76% → 2024年度6.79%。
- 小中合計:2014年度1.21% → 2024年度3.86%。
小中合計の人数は約2.9倍ですが、割合は約3.2倍です。不登校者の人数だけでなく、在籍者に占める比率も上昇しています。人数の増加を、単に児童生徒全体の規模が大きくなった結果として説明することはできません。
高校は、途中で減少する年度がある
高校は2014年度の5万3,156人から2024年度の6万7,782人へ、1万4,626人増えました。しかし、小中学校のように一貫して増えたわけではありません。2020年度には4万3,051人まで減少し、その後増加、2024年度は再び減少しています。
したがって「小中高校で不登校が増え続けている」と一括りにするのは不正確です。小中学校と高校では、長期の変化も直近の方向も異なります。
直近の変化――小中は増加が鈍り、高校は減少
2024年度は、小中学校の総数が増える一方、増加率は大きく低下しました。
前年度との差を学校段階別に見ると、増加がどこに集中したかが分かります。
- 小学校:7,334人増、5.6%増。
- 中学校:154人増、0.1%増。
- 小中合計:7,488人増、2.2%増。
- 高校:988人減、約1.4%減。
小中合計の増加分の約98%を小学校が占めます。中学校の人数はほぼ横ばいでした。ただし中学校の割合は、前年度の6.71%から6.79%へ上昇しています。人数がほぼ同じでも、母数が変われば割合は動きます。
小中合計の増加率は、2023年度の15.9%から2024年度の2.2%へ低下しました。増加の速度が落ちたことと、人数が減ったことは区別する必要があります。
総数が増えても、新規に計上された人数は減る
小中学校で「前回調査では不登校に計上されていなかった者」は、2023年度の16万5,300人から2024年度の15万3,828人へ減少しました。小学校、中学校のいずれでも減っています。
この「新規」は、生涯で初めて不登校になった人数ではありません。以前に不登校だった子どもが、前年度は該当せず、今回再び該当した場合も含み得る指標です。
総数は、その年度に新たに計上された人数と、前年度から続いて計上された人数の両方から成ります。卒業によって集計対象から外れる人数もあるため、総数の前年差をそのまま「新しく不登校になった人数」と読むことはできません。
ここがポイント: 総数は支援が必要な規模を、新規の人数は前年度からの入り方を示します。増加が鈍った理由を読むには、両方を見る必要があります。
学年差――小中は高学年ほど人数が多い
2024年度の小中学校では、学年が上がるほど不登校の人数が多くなっています。
以下は各学年の人数です。学年別の在籍者数で割った割合ではありません。
- 小1:8,738人
- 小2:14,125人
- 小3:19,460人
- 小4:25,322人
- 小5:31,979人
- 小6:38,080人
- 中1:58,736人
- 中2:77,066人
- 中3:80,464人
出典:文部科学省・2024年度調査結果概要、学年別不登校児童生徒数。
小6と中1の差は「進学で新たに増えた人数」ではない
小6と中1の人数には2万656人の差があります。学校段階の境目で人数が大きく変わるため、進学時の支援を考えるうえで注目すべき数字です。
ただし、2024年度の小6と中1は別の集団です。この差だけでは、同じ子どもが中学校に進んだ結果、何人増えたかは分かりません。
進学に伴う変化を調べるには、前年度の小6と翌年度の中1を比較し、在籍者数、前年度からの継続、新規に計上された人数を確認する必要があります。それでも、進学が不登校の原因だったとまでは断定できません。
すべての学年が前年より増えたわけではない
2024年度は、小1と中2の人数が前年度を下回っています。学校段階の合計が増えていても、その内部の動きは一様ではありません。
また、高学年ほど人数が多いことを、年齢だけの影響と読むのも早計です。前年度から不登校に該当する子どもと、その年度に新たに該当する子どもが同じ学年に含まれています。人数の積み重なりと、新しい変化を分けて見る必要があります。
高校では、学年別集計に含まれない生徒がいる
高校の2024年度人数は、1年生1万6,180人、2年生1万5,302人、3年生1万3,183人、4年生250人です。このほかに、学年別に集計されない単位制の生徒が2万2,867人います。調査結果本体・高校の学年別集計
学年別に集計された部分では1年生が最も多いものの、単位制の人数は高校全体の約3分の1を占めます。1~3年生の数字だけを並べて、高校全体の学年差とすることはできません。
さらに、学年別人数が少なくなることは、そのまま個人の状態の改善を意味しません。進級、転学、退学などによって集計される集団が変わるため、同じ生徒の経過を見る資料とは役割が違います。
読み取れることと限界――人数の変化だけで原因は決まらない
この調査で確かめられるのは、不登校として学校が把握した人数と、その分布の変化です。
小学校で大幅に増え、中学校では高い割合に達している。この事実からは、小学校段階から支援を用意する必要性と、中学校で多くの生徒に対応する必要性の両方が見えます。
一方、時系列の増加だけでは、学校環境、家庭環境、本人の心身の状態、社会の変化がそれぞれどの程度関わったかは決まりません。相談内容の集計も、学校が把握した事実であり、個々の不登校の原因を確定した調査ではありません。
コロナ期は集計条件にも注意する
2020~2022年度の長期欠席調査は、欠席日数と「出席停止・忌引き等の日数」の合計で30日以上登校しなかった児童生徒を対象としています。この期間には、理由区分として「新型コロナウイルスの感染回避」も設けられました。
2019年度までと2023年度以降は、年度間に30日以上欠席した者が対象です。とくに長期欠席全体を比較するときは、調査条件の違いを確認する必要があります。
不登校の増加は2019年度以前から見られます。したがって、コロナ期以降の急増に注目する場合でも、長期の増加すべてを感染症の影響で説明することはできません。
出席扱いと、統計上の人数は別に確認する
資料では、学校外の学習などを校長が出席扱いにし、指導要録の備考欄に記録した日数も、この調査の欠席日数に含めると注記されています。
そのため、不登校として計上されていることだけで「学習していない」「学校と接点がない」とは判断できません。欠席の統計と、学習や支援の状況は別々に読む必要があります。
高校の減少は、通信制を含む変化ではない
今回の高校の値に通信制は含まれません。全日制・定時制で人数が減ったとしても、それだけで高校年代全体の困難が減ったとは判断できません。
学校段階を比較する際は、義務教育の小中学校と、課程や進路の選択がある高校とで、対象範囲が違うことも押さえておきたい点です。
次に見る数字――総数に加え、継続と学びへの接続
今後の変化を判断するには、総数が減るかどうかと、子どもが学習や相談につながっているかを併せて確認する必要があります。
文部科学省は、2024年8月の制度改正を受け、一定の要件の下で自宅や学校外での学習成果を成績評価できることを明確にしました。2024年度調査では、欠席期間中の学習成果を指導要録に反映した小中学生が約8万1千人と報告されています。文部科学省・調査結果を踏まえた対応の通知
これは、登校日数だけでは捉えられない学びを確認する指標です。ただし、反映された人数だけで、学習量や評価の質まで分かるわけではありません。
次の公表では、次の点を見比べると変化を読み取りやすくなります。
- 小学校:総数と割合の上昇が続くか。増加率の縮小が定着するか。
- 中学校:人数の横ばいが続くか。在籍者に占める割合も下がるか。
- 新規と継続:前年度に計上されなかった人数の減少が続くか。
- 学習・相談:欠席中の学習評価や、学校内外の支援につながる人数がどう変わるか。
全国の人数は、地域で必要になる支援の規模を考える出発点です。自治体の公開資料を見る際には、教育支援センターの利用条件や受入状況、欠席中の学習を学校がどう確認するかまで確かめると、数字を具体的な学びの選択肢につなげられます。
