母子世帯は2005年を境に減少へ 国勢調査で追う25年間の変化
日本の母子世帯は、1995年の52万9,631世帯から2005年の74万9,048世帯まで急増した後、横ばいを経て減少に転じました。2020年は64万6,809世帯で、2015年からの5年間だけで14.3%減っています。
父子世帯は同じ期間を通じて母子世帯の約1割前後にとどまり、2005年の9万2,285世帯をピークに、2020年は7万4,481世帯まで減少しました。
「ひとり親世帯が一貫して増え続けている」とは、国勢調査の数字からは言えません。 ただし、世帯数の減少が、そのまま生活上の困難の縮小を意味するわけでもありません。
この記事で押さえる点は次の4つです。
- 母子世帯は1995~2005年に約22万世帯増え、その後は減少した
- 父子世帯は母子世帯より少なく、2005年以降の減少が続く
- 2020年の母子世帯では、子ども1人の世帯が54.8%を占める
- 国勢調査と全国ひとり親世帯等調査では定義が異なり、数字を直接つなげられない
使用データと比較条件
長期推移の軸には、総務省「国勢調査」の時系列表を使います。 比較対象は1995年から2020年までの全国値で、各年10月1日時点です。
国勢調査における母子世帯・父子世帯は、次の条件をすべて満たす一般世帯です。
- 未婚、死別または離別の母または父がいる
- 未婚の20歳未満の子どもと暮らしている
- 親と子以外の世帯員がいない
祖父母、親族、パートナーなどが同居する家庭は、この狭い定義の母子・父子世帯には入りません。成人した子どもと暮らす場合も対象外になることがあります。
一方、生活実態や就業、収入を見るために、こども家庭庁の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」も補助的に参照します。こちらは親族などとの同居世帯を含むため、国勢調査より対象が広くなります。
1995~2020年の推移
母子世帯は2005年まで増え、その後15年間で約10万世帯減りました。 父子世帯も2005年がピークですが、母子世帯ほど大きな増加局面はありません。
| 調査年 | 母子世帯 | 父子世帯 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1995年 | 529,631世帯 | 88,081世帯 | 617,712世帯 |
| 2000年 | 625,904世帯 | 87,373世帯 | 713,277世帯 |
| 2005年 | 749,048世帯 | 92,285世帯 | 841,333世帯 |
| 2010年 | 755,972世帯 | 88,689世帯 | 844,661世帯 |
| 2015年 | 754,724世帯 | 84,003世帯 | 838,727世帯 |
| 2020年 | 646,809世帯 | 74,481世帯 | 721,290世帯 |
※総務省「国勢調査」。親と未婚の20歳未満の子どものみから成る一般世帯。増減率は表の実数から計算。
母子世帯は10年間で41.4%増えた後、減少へ
1995年から2005年までに、母子世帯は21万9,417世帯増えました。増加率は41.4%です。その後は動きが変わります。
- 2005~2010年:0.9%増
- 2010~2015年:0.2%減
- 2015~2020年:14.3%減
1995年と2020年を比べれば、母子世帯は11万7,178世帯、率にして22.1%増えています。しかし、この25年間を一本の上昇線として捉えると、2005年以降の変化を見落とします。
父子世帯は2005年のピークから19.3%減
父子世帯は1995年の8万8,081世帯から2005年に9万2,285世帯へ増え、その後は減少しました。2020年までの15年間で1万7,804世帯、19.3%の減少です。
1995年と2020年を比べても15.4%減っています。母子世帯とは、長期の方向も異なります。
2020年は約9割が母子世帯
2020年の母子・父子世帯を合計すると72万1,290世帯です。このうち母子世帯は89.7%、父子世帯は10.3%でした。
この偏りは支援制度を考えるうえで重要です。母子家庭への支援需要が量的に大きい一方、父子家庭は対象者が少ないため、相談先や当事者同士の情報に接しにくい可能性があります。世帯数の大小だけで、必要な支援の重さを判断することはできません。
2020年の世帯構成から見える違い
母子世帯と父子世帯では、子どもの人数と年齢構成にも差があります。 その違いは、保育、放課後の居場所、進学費用など、必要になる支援の場面を左右します。
| 2020年の構成 | 母子世帯 | 父子世帯 |
|---|---|---|
| 子ども1人 | 354,344世帯(54.8%) | 43,457世帯(58.3%) |
| 子ども2人 | 220,498世帯(34.1%) | 24,269世帯(32.6%) |
| 子ども3人以上 | 71,967世帯(11.1%) | 6,755世帯(9.1%) |
| 最年少の子が6歳未満 | 109,700世帯(17.0%) | 5,632世帯(7.6%) |
| 最年少の子が15~19歳 | 196,875世帯(30.4%) | 31,585世帯(42.4%) |
母子世帯では、最年少の子どもが6歳未満の割合が父子世帯より9.4ポイント高くなっています。保育時間と就労時間の調整が必要になりやすい家庭が、相対的に多い構成です。
父子世帯では、最年少の子どもが15~19歳の割合が高くなっています。日常的な保育の必要性は小さくなっても、高校や大学などへの進学費用が重なる年代です。
ただし、これは個々の家庭の負担を直接測った数字ではありません。子どもの年齢構成から、必要になりやすい支援の種類を読み取ったものです。
なぜ減ったのかを世帯数だけで断定できない
2020年の減少には複数の要因が重なり得るため、国勢調査だけで原因を一つに絞れません。 少なくとも、離婚件数だけを見て説明するのは不十分です。
考えるべき要素には、次のようなものがあります。
- 子どもの総数そのものが減っている
- 未成年の子どもがいる離婚件数が変化している
- 子どもの成長により、20歳未満という集計条件から外れる
- 祖父母や親族との同居によって、狭義の母子・父子世帯から外れる
- 再婚やパートナーとの同居で世帯類型が変わる
- 国勢調査で世帯の家族類型を判定できない「不詳」が増減する
こども家庭庁の資料によると、2022年の離婚件数は17万9,099件で、2003年以降はおおむね減少傾向です。このうち未成年の子どもがいる離婚は9万4,565件でした。ただし、2022年4月に民法上の成年年齢が18歳へ変わったため、この統計の「未成年」の範囲も途中で変わっています。
ここがポイント: 母子・父子世帯の数が減っても、「ひとりで子どもを育てる家庭が同じ割合で減った」とは限りません。同居の有無や子どもの年齢で、統計上の区分が変わるからです。
別の調査では母子119.5万、父子14.9万となる理由
統計によって世帯数が大きく違う最大の理由は、同居者を含むかどうかです。 数字の食い違いではなく、測っている範囲の違いです。
令和3年度全国ひとり親世帯等調査は、親族などと同居する家庭を含め、全国値を次のように推計しています。
- 母子世帯:119.5万世帯
- 父子世帯:14.9万世帯
同じ調査を基にしたこども家庭庁資料では、親子のみで構成される世帯は母子約77万世帯、父子約8万世帯と整理されています。同居世帯を含めると、母子は約120万世帯、父子は約15万世帯になります。
この差は生活面でも意味を持ちます。同居親族がいれば、家事や送迎を分担できる場合があります。一方で、同居していても家計が一体とは限らず、住居費や介護など別の負担を抱えることもあります。「同居者あり」をそのまま「支援あり」と読み替えることはできません。
なお、令和3年度調査は回答を全国値へ復元した推計値です。前回の平成28年度調査は実数値で、熊本県を除いています。119.5万世帯と前回の123.2万世帯を並べて、3.7万世帯減ったと単純に結論づけるのは適切ではありません。
世帯数が減っても所得面の課題は残る
量の減少と、1世帯当たりの経済状況は別の問題です。 令和3年度全国ひとり親世帯等調査では、就業率が高くても、母子世帯と父子世帯の収入には大きな差があります。
- 就業率:母子世帯86.3%、父子世帯88.1%
- 親本人の平均年間収入:母272万円、父518万円
- 親本人の平均年間就労収入:母236万円、父496万円
- 同居親族を含む世帯全員の平均年間収入:母子世帯373万円、父子世帯606万円
収入は2020年の1年間を対象としています。平均値なので、世帯間のばらつきや所得分布までは示しません。それでも、母子世帯では86.3%が働いている一方、母本人の平均就労収入は236万円です。
就業の有無だけではなく、雇用形態、労働時間、子どもの年齢、養育費、公的給付、住居費まで合わせて見なければ、家計の余裕は判断できません。
地域比較と国際比較で注意したいこと
地域差を見るなら世帯数ではなく、同じ条件の世帯を分母にした割合が必要です。 東京都や大阪府の母子世帯数が多くても、人口や一般世帯が多いことの影響を受けます。
都道府県や市区町村を比べる際には、目的に応じて分母をそろえます。
- 地域全体での支援需要を見る:一般世帯に占める母子・父子世帯の割合
- 子育て世帯内の構成を見る:子どものいる世帯に占める割合
- 行政サービスの規模を考える:実数と割合を併記
- 年次変化を見る:同じ定義、同じ地域境界、同じ分母で比較
国際比較はさらに慎重さが必要です。各国統計では、子どもの年齢上限、同居する成人の扱い、婚姻していないパートナーの扱いが一致しません。日本の「未婚の20歳未満の子どもと親だけ」という国勢調査の数字を、海外の「ひとり親と暮らす18歳未満の子どもの割合」などと直接比べることはできません。
国際差を読む場合は、世帯数そのものより、定義を確認したうえで「子どものうち何%がひとり親と暮らすか」など共通化された指標を使う必要があります。
数字を読むときの4つの注意点
最も大きな誤読は、異なる定義の数字を一本の推移としてつなぐことです。 次の点を確認すれば、多くの混乱を避けられます。
1. 「ひとり親と子の世帯」と「母子・父子世帯」は違う
国勢調査の「ひとり親と子供から成る世帯」には、子どもの年齢を限定しない集計があります。2020年には500万2,541世帯でしたが、これは本記事で扱った72万1,290世帯よりはるかに広い区分です。
2. 親族との同居を含むか確認する
国勢調査の狭義の数は親子だけの世帯です。全国ひとり親世帯等調査は、祖父母などとの同居世帯も含みます。
3. 実数の減少と割合の低下を分ける
子どものいる世帯全体が減れば、母子・父子世帯の実数も減りやすくなります。世帯数だけでなく、比較対象となる世帯に占める割合も必要です。
4. 2020年は特殊な調査環境だった
2020年国勢調査は新型コロナウイルス感染症の影響下で実施されました。統計局は調査方法を変更しており、家族類型の「不詳」も含め、前回との比較では集計条件を確認する必要があります。
次に見るべきは「何世帯あるか」の先
母子世帯は2005年まで増え、2010~2015年にはほぼ横ばいとなり、2020年に大きく減りました。父子世帯は2005年以降、緩やかな減少が続いています。ここまでは国勢調査から確認できる事実です。
次の焦点は、世帯数の増減だけではありません。
- 2025年国勢調査で2020年の減少が続くか
- 子どものいる世帯に占める割合も下がっているか
- 親族との同居を含めると変化の方向がどう変わるか
- 母子世帯の就労収入と物価・住居費の差がどう動くか
- 子どもの年齢に応じた保育、教育、進学支援へつながっているか
世帯数が減ったという事実だけでは、支援需要が減ったとは判断できません。 次回の統計では、実数、割合、所得、同居状況を同じ定義で組み合わせて見ることが欠かせません。
