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スーパーの売上は伸びている――店舗数の増加と「買う量」を分けて読む

食品売場とレジが並ぶ日本のスーパーマーケットの店内。

スーパーの売上は伸びている――店舗数の増加と「買う量」を分けて読む

全国のスーパーは、一律に減っているわけではありません。経済産業省の分析では、2025年は店舗数と1店舗当たり販売額がともに増え、年間販売額は16兆8,026億円、前年比4.7%増となりました。

ただし、売上が増えたことから、買い物客や購入量まで増えたとは判断できません。長期推移を見ると、店舗が増えても販売額がほとんど伸びない時期があり、最近の売上には商品価格の変化も含まれます。

この記事では、全国の商業動態統計を中心に、2000年代から2025年までの変化を読みます。押さえたい点は次の3つです。

  • 2000年代には、店舗数が増えても販売額が横ばいに近い時期があった。
  • 2025年は店舗数と1店舗当たり販売額がともに増加した。
  • 統計上の「スーパー」は大型店が対象で、近所の小型食品スーパーをすべて数えたものではない。
目次

使用データ――「スーパー」の範囲をそろえる

この分析が対象とするのは、主に商業動態統計で把握する大型のスーパーです。

経済産業省の調査概要では、スーパーを次の条件に該当する事業所と定義しています。

  • 売場面積が1,500平方メートル以上。
  • 売場面積の50%以上でセルフサービス方式を採用。
  • 同調査の家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンターとして調査する対象事業所は除外。

したがって、食品だけを扱う店に限定した統計ではありません。衣料品や家庭用品を販売する総合スーパーも含む一方、面積条件に届かない小型店は含まれません。

年間販売額と年末店舗数は別の指標

販売額は1月から12月までの年間合計を使います。店舗数について具体的な最新値を示す際は、2025年12月の店舗数を使います。年間に営業した店舗の延べ数ではありません。

主な資料と時点は次のとおりです。

  • 最近の年間動向:経済産業省「2025年小売業販売を振り返る」。2026年4月公表。
  • 長期の販売額:商業動態統計の年次値。過去年次の数値は、同統計を整理した公開資料も補助的に使用。
  • 2000年代の店舗数:日本政策投資銀行の2009年6月資料に掲載された、商業販売統計を出典とする指数。
  • 最近の店舗数:関東経済産業局の2025年12月資料に掲載された全国値。

2026年10月8日時点の確認に基づき、通年比較の終点は2025年としています。2026年の途中までの月次値を、2025年の年間合計と直接比較することはしません。商業動態統計は年間補正などで数値が改定されるため、古い速報資料と更新後の年次値は区別します。

店舗が増えても、売上が伸びなかった2000年代

2000年代のスーパーは、店を増やす一方で、1店舗当たりの販売額が下がる動きを示しました。

日本政策投資銀行の2009年6月資料は、経済産業省「商業販売統計」をもとに、店舗数や販売額を2000年=100の指数で比較しています。

指標2000年2008年
スーパーの店舗数100126
1店舗当たり売上高10081
既存店売上高10079

※いずれも2000年=100。店舗数の実数ではなく、同資料の指数を掲載。

店舗数は約26%増えたのに、1店舗当たり売上高は約19%低下しています。既存店売上高の指数も79へ下がりました。

同統計の年次販売額では、2000年が12兆6,224億円、2008年が12兆8,724億円です。公表額同士の単純比較では約2.0%増にとどまります。過去年次の金額は、商業動態統計を整理した年次一覧で確認できます。

店舗数の拡大と、販売額の拡大は同じ速さで進まなかったのです。新しい店で売上を得ても、既存店の売上が弱ければ、全国合計はあまり伸びません。

「店が増えた」は「各店が好調」と同じではない

この違いは、地域の買い物環境を考える際にも重要です。

出店で選択肢が増えることと、その地域の各店舗が十分な売上を確保できることは別です。ただし、全国の指数から、特定地域で競争が激化したことや、競争が売上低下の原因だったことまでは断定できません。

確認できるのは、店の数が増えた時期にも、1店舗当たりの売上は下がっていたという事実です。

2010年代と2025年――増加の中身は時期で違う

店舗数はその後も販売額の増加を支えましたが、2025年には1店舗当たり販売額も増えています。

経済産業省の2018年の要因分解では、スーパーの販売額は2012年から2016年まで5年連続で増え、その主な要因を事業所数の増加としています。

一方、2025年の年間分析では、店舗数と1店舗当たり販売額の両方が増加しました。年間販売額は16兆8,026億円で、前年比4.7%増です。

つまり、長期の変化を「出店で伸びた」とひとまとめにはできません。

  • 2000年代:店舗数は増えたが、1店舗当たり売上高は低下。
  • 2012〜2016年:経済産業省の分析では、主に店舗数の増加が販売額を押し上げた。
  • 2025年:店舗数と1店舗当たり販売額がともに増加。

2025年末は全国6,058店

関東経済産業局の2025年12月資料に掲載された全国のスーパー店舗数は、6,058店です。同じ資料の関東経済産業局管内は2,529店で、全国の約41.7%に当たります。割合は掲載値から計算しました。

ただし、この「管内」は東京都だけでも首都圏だけでもありません。人口や面積をそろえた比較でもないため、店舗数が多いことから買い物の便利さを順位付けすることはできません。

また、これらの店舗数を、全国の食品スーパー全体の店舗数と読み替えることもできません。小型店を含む別の調査では、対象範囲が変わります。

販売額の増加を「買う量の増加」と読めない理由

販売額は、商品の数量と価格の両方で動くため、売上だけでは消費量を測れません。

たとえば同じ商品を同じ数だけ買っても、価格が上がれば販売額は増えます。これは統計の読み方を説明する例であり、2025年の増加分をすべて値上げで説明するものではありません。

既存店の売上でも価格の影響は残る

全店ベースの販売額には、新しい店や閉店した店の変化が含まれます。既存店ベースでは、前年と比較できる店舗に範囲をそろえることで、店舗の入れ替わりによる影響を抑えます。

しかし、既存店の売上にも次の変化は残ります。

  • 商品価格の上昇・下落。
  • 来店客数の増減。
  • 1回の買い物で買う数量の変化。
  • 安い商品から高い商品への切り替え、またはその逆。

そのため、既存店売上が増えても、来店客数や購入点数が増えたとは限りません。消費量まで分析するには、客数、購入点数、商品別価格などを追加して確かめる必要があります。

売上の増加は利益の増加とも違う

店舗の経営を見る場合にも注意が必要です。

販売額には、人件費、仕入れ費、電気代、物流費を差し引いた結果は表れません。売上が伸びる一方で費用も増えれば、利益が伸びない場合があります。

商業動態統計から分かるのは販売活動の規模です。個別企業の採算や閉店判断まで説明するには、決算資料など別の情報が必要になります。

長期比較では、統計の見直しを増減から分ける

公表金額の差には、実際の販売動向に加え、調査対象の変更が含まれる場合があります。

経済産業省の時系列データの注意書きでは、対象変更などでリンク係数が発生した場合、調整後の伸び率を公表すると説明しています。このため、掲載金額が前年より大きくても、公表前年比がマイナスになる場合があります。

長期比較では、次の使い分けが必要です。

  • 販売額の水準:その年の統計に掲載された金額を確認する。
  • 前年比:対象変更などを調整した、経済産業省の公表値を優先する。
  • 店舗数の差:出店・閉店だけでなく、調査対象の見直しがないか確認する。

2000年と2025年の公表販売額を単純に割ると約33.1%増です。しかし、これは同じ店舗群を25年間追跡した成長率ではありません。対象の見直しをまたいだ金額の比較として扱う必要があります。

また、スーパーの面積条件は1991年7月に変更されています。さらに古い時期まで遡る場合は、現在の定義と同じ範囲が続いていたと考えないことが大切です。

年間販売額を年末店舗数で割る際の注意

2025年の年間販売額を年末の6,058店で割ると、約27.7億円になります。ただし、これは年間販売額を年末時点の店舗数で割った参考値です。

年の途中に開店・閉店した店舗の営業期間はそろっていません。大型総合スーパーと食品中心の店舗では規模も異なるため、この数字を「普通のスーパー1店の年間売上」とするのは適切ではありません。

平均が上がっても、多くの店が同じように伸びたとは限りません。典型的な店舗の姿を知るには、売場面積別の分布や中央値などが必要です。

近所の買い物環境を見るなら、全国の増加だけでは足りない

全国で店舗が増えていても、自宅から使いやすい店が増えたかどうかは別に確かめる必要があります。

人口の多い地区で新店が増え、別の地区で閉店が起これば、全国合計は増加していても、後者の住民は買い物に遠くまで出かけることになります。これは地域別に確認すべき可能性であり、全国統計だけで実際に起きたと判断することはできません。

自治体や地域単位で見る場合は、店舗の所在地と、次の情報を組み合わせると問いが具体的になります。

  • 徒歩で利用できる店がどこに残っているか。
  • バス路線や停留所から店舗へ移動できるか。
  • 高齢者が多い地区と閉店した場所が重なっているか。
  • 小型スーパー、食品店、移動販売などが大型店を補っているか。

全国のデータから得られる答えは、「スーパーは一貫して減っている」というものではありません。店舗が増えても売上が伸びにくかった時期を経て、2025年は店舗数と1店舗当たり販売額がともに増えました。

次に見るべきなのは、その売上増加に購入量の増加が伴っているか、そして増えた店舗が住民の使いやすい場所にあるかです。売上の規模、店の数、店までの距離を分けることで、スーパーの変化を暮らしの変化として読み取れます。

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