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自販機は10年で112万台減った――「撤去」と統計の変更を分けて読む

歩道沿いの飲料自動販売機と奥にあるコインロッカー。

自販機は10年で112万台減った――「撤去」と統計の変更を分けて読む

全国の自動販売機・自動サービス機は、2015年末の500万1,700台から2025年末の388万1,700台へ、112万台、22.4%減りました。ただし、この差をすべて「街から撤去された台数」と読むことはできません。2017年に統計の対象機種が見直されているためです。

その変更後の2017年末から2025年末でも、台数は約39万台、9.1%減っています。減少は続いていますが、飲料を売る機械と、駐車場の精算機やコインロッカーでは動きが異なります。

  • 10年間の集計値は22.4%減。ただし途中に分類変更がある。
  • 分類変更後の2017〜2025年では9.1%減。
  • 2025年末の総数には、自動サービス機129万6,500台も含まれる。
  • 台数の構成比と、販売金額の構成比は別の指標。最新資料だけで売上の長期変化までは追えない。
目次

使用データ――「自販機」の範囲をそろえることが出発点

比較には、日本自動販売システム機械工業会が公表する全国の年末普及台数を使います。

中心となる資料は「自動販売機普及台数 2025年版」です。対象時点は2025年12月末。2026年10月8日時点で、同工業会の公開ページに掲載されている最新年次を確認しました。公表日は、同資料の公表を伝えたSOMPOインスティチュート・プラスの2026年3月16日付記事から確認できます。工業会の掲載ページ自体には更新日の明示がありません。

この資料は政府統計ではなく、業界団体が公表する統計です。「普及台数」は年末に存在する機械の規模を示し、その年に製造・出荷された台数とは異なります。

集計は大きく二つに分かれます。

  • 自動販売機:飲料、食品、たばこ、乗車券・食券、日用品雑貨などを扱う機械。
  • 自動サービス機:両替機、駐車場・ホテル・病院などの自動精算機、コインロッカーや各種貸出機など。

つまり、総数388万台は、道路沿いや施設内で飲み物を買う機械だけを数えた数字ではありません。比較期間は主に2015〜2025年とし、分類変更の影響を避けて見るため、2017年以降も別に計算します。

10年で22.4%減――ただし2017年の段差に注意

長期の集計値は大きく下がっていますが、減少率を計算するだけでは撤去の規模を判断できません。

2025年版に掲載された年別台数から、主な年を抜き出すと次のようになります。すべて全国の年末値で、自動サービス機を含みます。

年普及台数
2015年5,001,700台
2016年4,941,400台
2017年4,271,400台
2020年4,045,800台
2025年3,881,700台

出典:日本自動販売システム機械工業会「自動販売機普及台数 2025年版」。以下の増減率は掲載値から計算し、小数第1位に丸めています。

2016〜2017年の67万台減は、そのまま撤去数にはならない

2016年から2017年への差は67万台、13.6%減です。資料はこの年の減少について、「日用品雑貨自動販売機」の統計機種の再考によると注記しています。

ここには、数える対象を見直した影響が入っています。資料の注記だけでは、対象変更による減少と、実際の設置・撤去による増減を分離できません。

したがって、2015〜2025年の112万台減を使って「10年間で112万台が撤去された」と断定するのは不適切です。分類変更をまたぐ前後の数字を同じ条件に直した系列がなければ、実物の増減だけは取り出せません。

分類変更後も39万台減っている

一方、2017〜2025年の差は38万9,700台、9.1%減です。少なくとも、長期減少を分類変更だけで説明することもできません。

期間を区切ると、2017〜2020年は22万5,600台減、2020〜2025年は16万4,100台減。2024〜2025年の直近1年間は2万8,600台、0.7%減でした。

これらは各期間の差であり、撤去台数の累計ではありません。新設と撤去の両方が起きた結果、年末に残る台数が少なくなったことを示します。

ここがポイント: 「集計値が減った」「機械が撤去された」「新設が減った」は別の話です。年末台数だけでは、新設と撤去の内訳までは分かりません。

何を売る機械が残っているのか――飲料とサービスで約9割

現在の総数は、飲料自販機と自動サービス機に集中しています。

2025年末の機種別データでは、飲料が217万8,800台、自動サービス機が129万6,500台です。総数に対する割合は、それぞれ56.1%と33.4%。二つで89.5%を占めます。

残る機種は次の規模です。

  • 日用品雑貨:20万4,500台。
  • 食品:8万1,100台。
  • 券類:6万3,700台。
  • たばこ:5万7,100台。

この内訳から分かるのは、日常的に目にする飲料販売に加え、荷物の保管や料金精算など、サービスを提供する機械が大きな部分を占めていることです。

飲料の中でも減り方は違う

飲料を一括りにすると、変化の差が見えません。

2025年の清涼飲料用の缶・ボトル機は197万5,200台で、前年比99.9%、ほぼ横ばいでした。一方、紙パックの乳飲料機は前年比90.6%、カップ式のコーヒー・ココア機は90.3%です。

この数字が示すのは、飲料自販機が一様に縮小しているわけではないということです。ただし、機種別の台数から利用者の年齢や設置施設、商品の販売本数までは分かりません。

物販が減っても、精算を担う機械は増える

自動販売機だけの合計は258万5,200台で前年比98.9%。対して、自動サービス機は前年比100.0%でした。後者の中では、駐車場・ホテル・病院などの自動精算機が前年比100.4%となっています。

総数の減少を「無人で商品やサービスを提供する仕組みが衰退した」と広げることはできません。商品を買う場面と、施設の料金を支払う場面では、必要とされる機械も違います。

販売構成の長期変化――台数の割合と売上の割合を混ぜない

長期比較では、何を売る機械が多いかと、何が大きな販売金額を生むかを分けて読む必要があります。

国立科学博物館が2007年に公表した「飲料自動販売機技術発展の系統化調査」は、工業会の2006年版資料を基に、当時の台数と自販金額の構成を整理しています。

2006年は、たばこが台数の約1割、金額の約3割

同報告の概数では、2006年末の台数構成は飲料48%、たばこ10%、自動サービス23%でした。一方、自販金額の構成は飲料40%、たばこ28%、券類25%です。

たばこは、機械の台数に占める割合より、販売金額に占める割合が大きかったことになります。機械を1台ずつ同じ重みで数える指標と、売れた金額で測る指標では、市場の見え方が変わります。

2025年の台数構成では、たばこは1.5%まで小さくなっています。飲料は56.1%、自動サービス機は33.4%です。ただし、2006年と2025年の間には分類変更があるため、構成比の差を厳密に同条件の変化として扱うことはできません。

飲料の比率上昇は、台数増加を意味しない

2006年の総数は同報告の概数で552万台。飲料の構成比48%を掛けると、約265万台となります。2025年の飲料は約218万台なので、概数同士では約47万台少ない計算です。

つまり、飲料の比率が48%から56.1%へ高くなっていても、飲料の台数自体が増えたわけではありません。ほかの機種が減ったり、集計対象が変わったりすると、分母が小さくなり、割合は上がります。

この計算は丸められた数値を使う参考比較です。細かな減少率を出すより、「割合が上がる」と「数が増える」は違うと押さえるために使うのが適切です。

最新年の販売金額は、この資料では追えない

2025年版には、普及台数と機種別構成は載っていますが、年間自販金額の表はありません。2006年の金額構成と、2025年の台数構成をつないで「飲料の売上シェアが何ポイント増えた」と計算することはできません。

また、販売金額が仮に増えていても、販売本数が増えたとは限りません。商品単価の上昇が金額を押し上げるからです。長期の売上を検証するには、同じ対象範囲の販売金額に加え、価格や数量の系列が必要になります。

なぜ減るのか――採算の説明と、統計で確認できる事実を分ける

設置台数の減少には採算の見直しが関わると工業会は説明していますが、全国集計だけで原因別の寄与は測れません。

2025年版の概況は、飲料について原材料・エネルギー・輸送費の上昇、値上げに伴う購買頻度の低下を挙げ、新台導入の抑制や設置場所の集約が進んだとの見方を示しています。これは工業会による背景説明であり、費用の上昇が何台の減少を生んだかを推計した結果ではありません。

運営側にとっては、機械を置くだけでなく、補充、集金、点検を続ける必要があります。採算を考える際は、販売金額とともに、それらにかかる費用を見ることになります。

利用者が見るのは別の点です。同じ地域で機械が2台から1台になっても、近くで買えるなら不便は小さいかもしれません。反対に、唯一の機械がなくなれば、次の購入場所までの距離が変わります。これは全国の減少率から直接測れるものではなく、設置地点のデータで確認すべき問題です。

食品自販機も、一括して成長分野と扱うのは早計です。2025年の食品全体は前年比99.9%でした。工業会は冷凍食品を中心とした新規設置需要が一巡したと説明していますが、公開表は冷凍食品、アイスクリーム、菓子などの合計です。冷凍食品だけの増減は、この表からは取り出せません。

全国平均の限界――近所の便利さは台数だけでは測れない

全国の年末台数は市場の規模を見るには役立ちますが、地域ごとの買いやすさを示す指標ではありません。

今回の公開資料には、都道府県別や市区町村別の設置台数がありません。「人口が減った地域ほど撤去が多い」「都市部には十分残っている」といった地域差は、この資料だけでは検証できません。

さらに、台数だけでは次の違いも分かりません。

  • 屋外で終日使える機械か、施設の開館中だけ使える機械か。
  • 1か所に複数台あるのか、離れた地点に1台ずつあるのか。
  • 年末に普及台数として数えられていても、利用時に稼働・補充されているか。
  • 現金やキャッシュレスなど、どの支払い手段に対応しているか。

総数を人口で割った「1人当たり台数」も、こうした条件を解決しません。駅利用者や来訪者が多い場所では、居住人口だけを母数にすると、利用の実態を捉えにくくなります。

平均販売額にも同じ注意が必要です。総販売額を総台数で割るなら、売上と台数の対象機種を一致させる必要があります。さらに、平均値だけでは、よく売れる機械とほとんど売れない機械の差や、典型的な1台の売上を示す中央値は分かりません。

次に見るべき変化――減った台数より「何が、どこで」を確かめる

今後の変化を読むには、総数の減少率と、機種・設置地点ごとの動きを組み合わせる必要があります。

次回の年次資料では、次の三点が具体的な確認ポイントになります。

  • 缶・ボトル飲料機の横ばいが続くか。 台数が維持されても、販売本数や採算が維持されたとは限らないため、販売データも必要です。
  • 物販と自動サービス機の動きがさらに分かれるか。 精算などの機械が増えれば、総数だけでは商品を買う場所の減少が見えにくくなります。
  • 地域別の設置情報を確認できるか。 最寄りの購入場所までの距離や利用時間が分かれば、生活上の不便を全国平均より具体的に測れます。

10年間の集計値は112万台減。分類変更後でも約39万台減っています。その先にある生活の変化を知るには、飲み物を買える場所が減ったのか、精算の手間を省く機械が増えたのかを、別々に確かめる必要があります。

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