20代の免許保有率は20年で約10ポイント低下――「若者の免許離れ」を数字で確かめる
若い世代が運転免許を持つ割合は、20年前より低くなっています。全国の20~24歳の保有率は2005年の81.4%から2025年の70.5%へ、25~29歳は91.0%から81.1%へ低下しました。
ただし、この数字が示すのは「免許を持つ人の割合」です。車への関心が薄れたのか、取得を先送りしたのか、運転する機会が減ったのかまでは分かりません。
この記事では、警察庁と内閣府の公表資料を使い、全国の2005年末と2025年末を比較します。人数の減少と保有率の低下を分け、年代によって変化の向きが違う点も確認します。
- 20~24歳の保有率は20年間で10.9ポイント低下。
- 25~29歳も9.9ポイント低下しており、20代前半だけの変化ではありません。
- 40~44歳はほぼ横ばい、60代は上昇。全年代が一様に免許から離れているわけではありません。
- 免許保有率から、車の所有や運転頻度、取得しない理由を直接判断することはできません。
使用データ:全国の同じ年齢層を20年隔てて比較する
比較するのは、それぞれの年に同じ年齢層だった人たちの保有率であり、同じ個人の追跡結果ではありません。
2005年は警察庁『平成18年警察白書』の統計4-10、2025年は内閣府『令和8年版交通安全白書』の第1-30図を使います。後者の免許保有者数も警察庁資料に基づいています。2005年の統計表、2025年の図表を掲載した交通安全白書で確認できます。
比較条件は次のとおりです。
- 対象地域: 全国。
- 対象時点: 2005年末、2025年末。
- 指標: 年齢層の人口に占める運転免許保有者の割合。
- 免許の範囲: 普通免許だけでなく、二輪や原付などを含む運転免許全体。仮免許は除きます。
- 人数の扱い: 複数の免許を持つ人を、保有者総数では重複して数えません。
最新の警察庁『運転免許統計』は令和7年版で、2026年6月24日に掲載されています。本記事の確認時点は2026年10月8日です。警察庁の公表ページには、過去年の修正情報も掲載されています。
保有率の基本的な読み方は「免許保有者数÷その年齢層の人口×100」です。免許を持つ若者の人数が減っていても、若者の人口が同じ割合で減っていれば、保有率は変わりません。人数と割合を分けることが、免許離れを検証する出発点になります。
年代別比較:低下は20代、上昇は60代で目立つ
20年間の変化は年代によって逆向きで、20代の低下を全国全体の数字だけで捉えることはできません。
以下は公表された男女合計の保有率です。差は2025年から2005年を引いた値で、単位は「ポイント」。例えば81.4%から70.5%への変化は、10.9ポイントの低下です。
| 年齢層 | 2005年 | 2025年 | 差 |
|---|---|---|---|
| 20~24歳 | 81.4% | 70.5% | −10.9 |
| 25~29歳 | 91.0% | 81.1% | −9.9 |
| 30~34歳 | 94.3% | 86.4% | −7.9 |
| 35~39歳 | 94.5% | 90.0% | −4.5 |
| 40~44歳 | 93.0% | 93.1% | +0.1 |
| 45~49歳 | 90.0% | 93.2% | +3.2 |
| 50~54歳 | 85.2% | 93.5% | +8.3 |
| 55~59歳 | 80.9% | 93.0% | +12.1 |
| 60~64歳 | 70.1% | 91.5% | +21.4 |
| 65~69歳 | 58.9% | 86.1% | +27.2 |
出典:警察庁『平成18年警察白書』統計4-10、内閣府『令和8年版交通安全白書』第1-30図。差は掲載値から計算。人口の基準時点が異なるため、小さな差の解釈には注意が必要です。
20代後半でも、かつての水準には届いていない
2025年の25~29歳は81.1%で、20~24歳の70.5%より10.6ポイント高くなっています。若い年齢層ほど免許を持つ割合が低いことは、現在の年代別比較でも確認できます。
一方、25~29歳を20年前の同じ年齢層と比べると、保有率は9.9ポイント低下しています。20代前半での取得が少ないだけで、20代後半には以前と同じ水準になる、という説明では足りません。 30~34歳にも7.9ポイントの低下が見られます。
ただし、2025年の20代前半と後半は別の集団です。10.6ポイントの差を、そのまま「5年後に取得する人の割合」と読み替えることはできません。
60代の上昇には、世代の入れ替わりがある
60~64歳の保有率は70.1%から91.5%へ上昇しています。しかし、2005年の60代前半と2025年の60代前半は、出生時期が約20年違います。
2005年に40~44歳だった集団は、2025年には60~64歳に当たります。前者の保有率は93.0%、後者は91.5%です。集団への出入りや返納などがあるため厳密な追跡ではありませんが、もともと免許保有率の高かった世代が高齢層に移ったことを考える必要があります。
60代の上昇を「高齢になってから免許を取る人が急増した」と解釈するのは早計です。同じ年齢層の比較と、同じ出生世代に近い集団の比較では、見えるものが違います。
人数と割合:20代前半の減少は人口減だけでは説明できない
20~24歳では、人口が減ると同時に、免許を持つ割合も下がっています。
2005年の公表表では、この年齢層の人口は755万人、免許保有者は約614万4千人でした。2025年は人口622万9千人、免許保有者438万8,849人です。
掲載値から計算すると、20年間の減少幅は次のようになります。
- 年齢層の人口:約17.5%減。
- 免許保有者数:約28.6%減。
免許保有者の減少率のほうが大きいため、若者の人口減少だけでは人数の変化を説明できません。その差が、保有率の低下として現れています。
ここで「約175万人の若者が免許を手放した」と読むのも誤りです。二つの時点では年齢層を構成する人が入れ替わっています。取得、失効、返納、転入・転出などをまとめた年末時点の人数であり、個人の行動を数えた数字ではありません。
全国総数は、若者と違う動きをしている
全年齢の免許保有者数は、2005年の7,879万8,821人から2025年の8,151万369人へ、約271万人増えました。
ただし、警察庁の長期系列では2018年の8,231万4,924人より2025年は少なくなっています。20年前との比較では増加、2018年との比較では減少です。令和7年版運転免許統計には、この年別系列が掲載されています。
全国総数が増えても、20代の保有率が下がることはあります。免許を持つ中高年の人数や、人口全体の年齢構成が変わるからです。若者の免許離れを調べる際に、全国の保有者総数だけを見ると、この変化を見落とします。
「免許離れ」の理由:保有率だけでは決められない
統計は若年層の保有率低下を示していますが、取得しない理由や車への意識は測っていません。
「免許離れ」という言葉には、少なくとも次の別々の行動が含まれます。
- 免許を取得しない。
- 取得する年齢を遅らせる。
- 免許は持つが、車を所有しない。
- 車を使える環境はあるが、日常的には運転しない。
今回の資料で直接確かめられるのは、最初の二つに関係する年齢別の保有状況です。それでも、未取得と取得の先送りを明確に分けることはできません。
教習費用、所得、公共交通の利便性、就職先での必要性などは、背景を調べる際の候補になります。ただし、この年齢別統計にはそれらの条件が含まれていません。費用が原因だと確かめるには、取得時期や所得、未取得理由を組み合わせた調査が必要です。
全国平均から、都市と地方の違いは分からない
全国の20~24歳で70.5%という値は、個々の地域の保有率を表しません。
通勤先まで公共交通で移動できる地域と、勤務時間に合う交通手段が限られる地域では、免許が生活に持つ意味は異なります。これは地域差を検証するための観点であり、今回の全国集計から都市と地方の差の大きさを確認したわけではありません。
地域を比較するなら、都道府県ごとの免許保有者数を総人口で割るだけでは不十分です。高齢化率などの違いを避けるため、同じ年齢層の人口を分母にそろえる必要があります。若者が少ない県の保有者数が少なくても、若者の保有率まで低いとは限りません。
比較の注意点:20年間の差と毎年の低下は別の話
今回の比較で確認できるのは、2005年と2025年の水準差であり、20年間ずっと低下し続けたという事実ではありません。
長期の変化を見るうえでは、次の条件を押さえておく必要があります。
人口と免許の集計時点がそろっていない
2005年の警察白書は、人口について同年12月1日現在の総務省資料から警察庁が算出したと注記しています。
2025年の交通安全白書は、人口について2025年10月1日現在の人口推計確定値を使用しています。免許保有者数は年末です。数値は公表資料の保有率をそのまま採用しており、人口の時点を統一して再計算した系列ではありません。
なお、2025年の図では16~19歳の人口に別の算出方法が使われています。このため、主な比較表は20歳以上に絞りました。人口の更新や丸めもあるので、40~44歳の0.1ポイント差のような小さな変化を強調するのは適切ではありません。
普通免許だけの取得率ではない
原付や二輪などだけを持つ人も、運転免許保有者に含まれます。「免許を持っている割合」と「乗用車を運転できる免許を持っている割合」は同じではありません。
普通免許の種類別人数を長期比較する場合は、過去の普通免許が中型や準中型の区分に移った制度変更にも対応が必要です。普通免許という列だけを取り出すと、実際の保有状況とは違う減少が見えてしまいます。
保有率の低下は、そのまま意欲の低下ではない
分母には、その年齢層に住む人が含まれます。人口の構成や移動が変われば、保有率も変わり得ます。
また、保有率は免許を必要とする度合いや、取得したい気持ちを直接測る指標ではありません。集団の値から、一人ひとりの関心や事情を決めつけることはできません。
次に見るべき数字:20代後半で取得が追いつくか
今後の焦点は、若い時期に低かった保有率が、その世代の加齢とともにどこまで上がるかです。
2005年と2025年の比較では、20代前半だけでなく、後半と30代前半にも低下が見られました。取得の先送りがあるとしても、それだけで長期の差が埋まっているとは確認できません。
次の更新では、三つの動きを分けて追うと、生活との関係が見えやすくなります。
- 同じ年齢層の推移: 20~24歳、25~29歳の保有率がさらに下がるのか、横ばいになるのか。
- 同じ出生世代に近い集団の変化: 現在の20代前半が、後半や30代に入ったときにどこまで取得するのか。
- 地域と生活条件の違い: 免許が通勤や買い物に必要な地域でも低下するのか、公共交通で移動できる地域に偏るのか。
住宅や就職先を考える場面では、全国の平均よりも、勤務時間に使える交通手段や日常の移動距離が重要になります。免許を持たない人が増える地域を把握するには、年齢別保有率と、実際に通勤・通学・買い物を支える交通のデータを重ねる必要があります。
