三世代世帯は37年で3分の1近くに 山形でも同居率が7.6ポイント低下
祖父母・親・子が暮らす三世代世帯は、1986年の575万7千世帯から2023年には205万世帯へ減りました。全世帯に占める割合も15.3%から3.8%へ低下しています。
地域差はなお大きく、2020年国勢調査では山形県が13.92%で全国最高、東京都が最低でした。ただし、同居率の高い山形県でも2010年の21.5%から大きく低下しています。
この記事で分かること
- 三世代世帯は37年間で約64%減った
- 2020年の都道府県差は全国平均4.20%に対し、山形県13.92%、福井県11.49%
- 同居率が高い地域でも減少が続いている
- 「家族のつながりが弱まった」と数字だけで断定できない理由
使用したデータと比較条件
結論から先にいえば、長期推移と地域差は別の統計で確認する必要があります。
全国の長期推移には、厚生労働省の2023年国民生活基礎調査を使用しました。1986年から2023年までの世帯構造を同じ資料内で追えます。
都道府県比較には、総務省統計局の2020年国勢調査を使います。国勢調査は日本に常住する人と世帯を対象に5年ごとに実施され、3世代世帯数を全国・都道府県・市区町村別に集計しています。
比較条件は次の通りです。
- 長期推移:国民生活基礎調査、全国、1986~2023年
- 地域差:2020年国勢調査、全国47都道府県
- 地域の指標:一般世帯総数に占める3世代世帯数の割合
- 基準日:国民生活基礎調査は2023年6月1日、国勢調査は2020年10月1日
国勢調査でいう3世代世帯は、祖父母、父母、世帯主またはその配偶者、子、孫という直系の三つ以上の世代が同居していると判定できる世帯です。それ以外の親族が一緒にいても含まれます。一方、叔父・世帯主・子のような傍系だけの三世代は含まれません。
37年で370万7千世帯減少した
最大の変化は、世帯総数が増える一方で三世代世帯が減り続けたことです。
| 年 | 全世帯数 | 三世代世帯数 | 全世帯に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 1986年 | 3,754万4千世帯 | 575万7千世帯 | 15.3% |
| 1998年 | 4,449万6千世帯 | 512万5千世帯 | 11.5% |
| 2010年 | 4,863万8千世帯 | 383万5千世帯 | 7.9% |
| 2019年 | 5,178万5千世帯 | 262万7千世帯 | 5.1% |
| 2023年 | 5,445万2千世帯 | 205万世帯 | 3.8% |
1986年から2023年までの変化を計算すると、三世代世帯は370万7千世帯、率にして約64.4%減りました。構成割合は11.5ポイント低下し、1986年の約4分の1になっています。
対照的に、単独世帯は同じ期間に682万6千世帯から1,849万5千世帯へ増加。全世帯に占める割合も18.2%から34.0%へ上がりました。2023年には、単独世帯が三世代世帯の約9倍あります。
ここがポイント: 三世代世帯の減少は、世帯全体が減った結果ではありません。世帯総数が約1.45倍に増えるなか、三世代世帯だけは約3分の1まで縮小しました。
子どものいる家庭でも同じ傾向
2023年に児童のいる世帯は983万5千世帯あり、そのうち三世代世帯は110万5千世帯、11.2%でした。
1986年は児童のいる1,736万4千世帯のうち468万8千世帯、27.0%が三世代世帯です。割合は15.8ポイント低下し、世帯数では357万3千世帯減りました。
これは、子どもと暮らす家庭に限っても祖父母との同居が少数派になったことを示します。ただし、祖父母が近所に住む「近居」や、離れて暮らしながら育児を支える関係は、この分類からは分かりません。
2020年の同居率は山形が全国首位
地域差の中心は、東北・北陸などの高率県と大都市圏との開きです。
2020年国勢調査による全国の3世代同居率は4.20%でした。上位10県は次の通りです。
| 順位 | 都道府県 | 3世代同居率 | 全国との差 |
|---|---|---|---|
| 1 | 山形県 | 13.92% | +9.72ポイント |
| 2 | 福井県 | 11.49% | +7.29ポイント |
| 3 | 新潟県 | 10.49% | +6.29ポイント |
| 4 | 秋田県 | 10.29% | +6.09ポイント |
| 5 | 富山県 | 10.08% | +5.88ポイント |
| 6 | 岩手県 | 9.56% | +5.36ポイント |
| 7 | 鳥取県 | 9.42% | +5.22ポイント |
| 8 | 福島県 | 9.33% | +5.13ポイント |
| 9 | 島根県 | 9.15% | +4.95ポイント |
| 10 | 佐賀県 | 9.13% | +4.93ポイント |
首位の山形県は全国平均の約3.3倍、10位の佐賀県でも約2.2倍です。上位には日本海側や東北の県が多いものの、鳥取県、島根県、佐賀県も入り、単純な東西差ではありません。
総務省統計局の地域分析では、2020年に単独世帯の割合が最も低い山形県が3世代世帯の割合では最も高く、単独世帯の割合が最も高い東京都は3世代世帯で最下位でした。三世代同居率は、地域の世帯規模の違いを映す指標でもあります。
県内でも都市と町では差がある
福井県の一般世帯に占める3世代世帯の割合は11.5%ですが、県内市町には大きな幅があります。
- 南越前町:19.6%
- 越前町:18.7%
- 勝山市:18.2%
- 坂井市:14.9%
- 福井市:9.5%
- 敦賀市:4.8%
同じ県の中でも、南越前町と敦賀市には14.8ポイントの差があります。都道府県平均だけでは、住宅の形や人口移動が異なる市町村の実態を捉えきれません。
高率地域でも三世代同居は減っている
地域差は残っていますが、「高い地域は変わっていない」わけではありません。
山形県では、2010年の一般世帯38万7,682世帯のうち3世代世帯が8万3,328世帯を占め、同居率は21.5%でした。2020年は13.92%なので、10年間で7.58ポイント低下した計算です。
2010年の山形県は全国首位で、2020年も首位でした。つまり、順位が同じでも地域の暮らし方は大きく変わっています。 ランキングだけを見ると、この縮小を見落とします。
福井県でも2020年の3世代世帯は3万3,388世帯、一般世帯29万692世帯の11.5%です。市町別では高率の地域が残る一方、単独世帯は県全体で8万6,282世帯、29.7%に達しています。
三世代同居の多い県でも、すでに単独世帯のほうがはるかに多い。この点は「地方では大家族が標準」というイメージを修正します。
数字から読み取れること、読み取れないこと
確実に言えるのは、同じ住居で暮らす直系三世代の世帯が全国で長期的に減り、地域差を残しながら少数化したことです。
世帯の分離が進んだことは確認できる
三世代世帯が減る一方、単独世帯や夫婦のみの世帯は増えました。2023年の構成割合は次のようになっています。
- 単独世帯:34.0%
- 夫婦のみの世帯:24.6%
- 夫婦と未婚の子のみの世帯:24.8%
- ひとり親と未婚の子のみの世帯:6.9%
- 三世代世帯:3.8%
- その他の世帯:6.0%
世帯の中心が一人暮らしや二人暮らしへ移ったことは明瞭です。高齢者がいる家庭でも、三世代世帯の割合は1986年の44.8%から2023年の7.0%へ低下しました。
原因は一つに決められない
統計からは、次の要素が同時に関係している可能性を検討できます。
- 若い世代が進学や就職で都市部へ移る
- 結婚後に親世帯と別の住居を構える
- 単身高齢者や高齢夫婦だけの世帯が増える
- 集合住宅の多い都市部では、多世代向けの住戸を確保しにくい
- 家族による介護・育児だけでなく、保育や介護サービスを利用する選択肢が広がる
ただし、今回の世帯数データだけでは、それぞれが減少の何%を説明するかは分かりません。所得、住宅面積、人口移動、婚姻、介護サービスの利用状況などを地域単位で組み合わせた分析が必要です。
同居の減少は支え合いの減少と同義ではない
国勢調査の世帯は、住居と生計をともにする人の集まりとして把握されます。親子が徒歩圏に住む近居、定期的な送迎や買い物、金銭的援助は3世代世帯に数えられません。
反対に、同じ家に住んでいても、育児・介護・家計をどの程度分担しているかは世帯構成だけでは判断できません。したがって、3世代同居率を「家族関係の強さ」の順位として読むのは不適切です。
比較するときの注意点
最も重要な注意点は、国民生活基礎調査と国勢調査の数値をそのまま接続しないことです。
- 国民生活基礎調査は抽出された世帯から全国値を推計する
- 国勢調査は5年ごとに全世帯を対象として集計する
- 調査時点はそれぞれ6月1日と10月1日で異なる
- 世帯構造の分類・集計対象・不詳の扱いを確認する必要がある
- 2020年の国民生活基礎調査は実施されていない
このため、2023年の全国3.8%と2020年の都道府県別同居率は、同じランキング表に混ぜず、長期推移と地域差を示す別の材料として扱いました。
1995年の国民生活基礎調査は兵庫県、2016年は熊本県を除く数値です。災害の影響で調査対象から外れた地域があるため、その前後の小さな差を精密な変化として読むべきではありません。
国際比較にも注意が要ります。「三世代」「拡大家族」「複合世帯」は国によって定義が異なり、同じ住宅に住む人と同じ家計を営む人の範囲も一致しません。条件をそろえない割合は、今回は比較対象にしていません。
これから見るべきは同居率の先にある生活条件
三世代世帯は1986年から2023年までに約64%減り、全世帯の3.8%になりました。地域差は残るものの、全国首位の山形県でも2010年から2020年に同居率が7.58ポイント低下しています。
次の2025年国勢調査で注目したいのは、単なる順位の入れ替わりだけではありません。
- 高率だった東北・北陸で減少が続いたか
- 市区町村間の差が拡大したか、縮小したか
- 高齢単身世帯の増加と同時に何が起きたか
- 多世代向け住宅、保育、介護、移動支援の需要がどう変わるか
同居する家族が減れば、これまで家庭内で担われていた送迎、見守り、育児、介護を、別居家族や地域サービスが補う場面が増えます。自治体の保育・介護・交通計画を見るときは、人口の増減だけでなく、誰と暮らしているかという世帯構成の変化も確認する必要があります。
