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大学進学の「吸引力」は9都府県に集中 東京7.8万人の流入超過が示す地域差

大学進学で地方から都市へ移動する若者と日本地図のイメージ。

大学進学の「吸引力」は9都府県に集中 東京7.8万人の流入超過が示す地域差

大学進学に伴う若者の移動は、全国へ均等に広がっていません。2024年度は、大学所在地と出身高校所在地の差し引きで流入超過となったのが9都府県、流出超過が38道県でした。

最大の流入超過は東京都の約7.8万人。京都府が約1.9万人、大阪府が約1.1万人で続きます。一方、茨城県は約1.0万人、静岡県は約0.9万人、埼玉県は約0.8万人の流出超過でした。

この記事で押さえるポイントは次の4つです。

  • 大学進学時の流入超過は9都府県に限られる
  • 東京の約7.8万人は、京都・大阪を大きく上回る
  • 地元の18歳人口に対して大学の定員が多い地域ほど、県内進学と流入が起きやすい
  • 「流出」は転居者数ではなく、出身高校と進学先大学の所在地を比べた指標である
目次

使用データと比較条件

中心に使うのは、2024年度の大学学部入学者を対象にした都道府県間の進学移動データです。

出典は、内閣府「男女共同参画白書 令和7年版」に掲載された「大学進学時の流入・流出者数」。基礎となる文部科学省「学校基本調査」では、大学の学部所在地と入学者の出身高校所在地を組み合わせて集計しています。

比較条件は次のとおりです。

  • 対象:2024年度の大学学部入学者
  • 地域単位:47都道府県
  • 流入:県外の高校から、その都道府県にある大学へ入学した人
  • 流出:その都道府県の高校から、県外の大学へ入学した人
  • 流出入差:流入者数から流出者数を引いた値
  • 大学所在地:大学本部ではなく、入学した学部の所在地

文部科学省の学校基本調査では、2025年度についても「出身高校の所在地県別 入学者数」が2025年12月26日に公開されています。ただし、この記事では男女別の地域差や大学定員との関係まで同じ条件で確認できる白書の2024年度集計を中心に読み解きます。

東京は約7.8万人の流入超過

進学先を引き寄せる力は東京が突出し、京都と大阪が続く構図です。

内閣府の集計で示された主な流入超過・流出超過は、次のようになっています。数値は白書の本文に合わせて千人単位で丸めています。

区分都道府県2024年度の流出入差
流入超過東京都約7.8万人
流入超過京都府約1.9万人
流入超過大阪府約1.1万人
流出超過茨城県約1.0万人
流出超過静岡県約0.9万人
流出超過埼玉県約0.8万人

東京都の流入超過は、京都府の約4倍、大阪府の約7倍です。単に東京の18歳人口が多いからでは説明できません。都内には地元の高校卒業者だけでは埋まらない規模の大学定員があり、全国から入学者を受け入れています。

京都府も同じ性格を持ちます。人口規模では東京都や大阪府より小さいものの、多数の大学が立地するため、進学者を送り出す側ではなく受け入れる側になります。

流出が多い県にも異なる事情がある

茨城県、静岡県、埼玉県はいずれも流出超過ですが、地理的な条件は同じではありません。

  • 埼玉県:都県境を越えて東京都内へ通学できる地域が広い
  • 茨城県:県南部から東京圏の大学へ移動しやすい一方、県内全域では大学の選択肢に差がある
  • 静岡県:東京圏と中京圏の間に位置し、県外の大学を選べる方向が複数ある

したがって、流出超過をそのまま「若者が地域を見限った結果」と読むのは適切ではありません。自宅から県境を越えて通学する人も、下宿や寮へ転居する人も、同じ流出者として数えられます。

ここがポイント: この統計が表すのは人口移動そのものではなく、「どの県の高校から、どの県の大学へ進んだか」です。流出超過は、県外進学の多さを示しますが、転出届を出した人数とは一致しません。

大学定員の地域差が進学移動の土台になる

若者が移動する前に、大学の座席そのものが都市部へ偏っています。

2023年度の18歳人口に対する大学入学定員の比率は、東京都が164.5%、京都府が158.4%でした。地元の18歳人口を上回る定員があるため、県外から入学者を受け入れなければ多くの席を満たせない規模です。

ほかの主な地域は次のとおりです。

  • 大阪府:74.3%
  • 石川県:66.3%
  • 愛知県:60.8%

さらに、2024年度に流入超過となった9都府県は、すべて18歳人口に対する大学入学定員の比率が50%以上でした。流入超過は大学の知名度だけでなく、地域にどれだけ入学枠が置かれているかと強く結び付いています。

定員が多いほど地元に残りやすい

自県内大学進学率と、18歳人口に対する大学定員比率には強い正の相関があります。内閣府の分析では、相関係数は男性が0.78、女性が0.82でした。

相関係数は、2つの指標が同じ方向へ動く強さを示します。1に近いほど、一方が高い地域で他方も高い傾向が強くなります。0.78と0.82は、大学の定員が多い地域ほど県内進学率も高いという、はっきりした関係を示す値です。

ただし、これだけで「大学を増やせば必ず地元進学率が上がる」とは断定できません。進学先は次の条件にも左右されます。

  • 希望する学部や専攻があるか
  • 入試難易度や学費が家計に合うか
  • 自宅から通学できる場所にキャンパスがあるか
  • 卒業後に希望する仕事へつながるか
  • 国公立、私立など設置形態の選択肢があるか

重要なのは、大学数だけでなく、進学希望者が選べる学部、費用、通学圏まで含めた「実際に使える選択肢」です。

私立大学の集中が流入構造を支える

大都市圏の大きな受け入れ能力は、主に私立大学によって成り立っています。

2023年度の大学入学定員に占める私立大学の割合は、東京圏の4都県ですべて9割を超えました。

  • 東京都:93.1%
  • 神奈川県:92.4%
  • 埼玉県:92.1%
  • 千葉県:90.3%

大阪府は87.6%、京都府は86.6%、愛知県は86.1%です。東京、京都、大阪などが多くの進学者を受け入れられる背景には、国公立大学だけでなく、規模の大きい私立大学や多様な学部の集積があります。

一方、私立中心の供給には家計面の論点もあります。県外進学では授業料に加え、住居費、食費、帰省交通費が発生する場合があります。地元に希望分野がなければ、受験生は「県外へ移る費用」と「希望する教育を受ける機会」を同時に比較しなければなりません。

県内に大学が存在していても、希望学部がなければ選択肢にはなりません。定員比率は地域の受け入れ能力を示す重要な指標ですが、進学機会の質や費用まで測るものではない点に注意が必要です。

男女で異なる県外進学の動き

大学進学率は男性が高い地域が多い一方、県内進学率は女性の方が高い傾向があります。

2024年度の大学進学率は、女性では東京都が77.6%で最高、宮崎県が38.7%で最低でした。男性では山梨県が83.3%で最高、宮崎県が42.9%で最低です。

県外進学の動きにも男女差があります。内閣府は、大阪府と神奈川県では男性の流入が多く、兵庫県では男性、千葉県では女性の流出が多いと整理しています。

また、自県内大学進学率と大学定員比率の相関は、男性の0.78より女性の0.82が高くなっています。地域内に大学の席がどの程度あるかが、女性の県内進学とより強く結び付いている形です。

白書は背景の可能性として、自宅から通学できる大学を女性が希望する傾向や、進学先を決める際に家族の意見を受けやすいことを挙げています。ただし、学校基本調査だけでは個々の志望理由や家計判断までは確認できません。

ここで言えるのは、大学配置の地域差が男女に同じように作用しているわけではないということです。県内の定員や専攻の充実は、進学率だけでなく、誰が県外へ移動せざるを得ないかにも関わります。

流出超過を「地域の損失」だけで見ない

県外進学は選択肢を広げる機会である一方、地域に若者が戻る仕組みがなければ人口流出の入口にもなります。

進学時点の流出には、二つの側面があります。

本人にとっては選択肢の拡大

県境を越えることで、地元にはない専攻、研究設備、資格課程を選べます。都市圏へ進むことだけが目的ではなく、特定分野を学ぶために地方の大学へ移るケースも統計には含まれます。

そのため、自県内進学率が高いほど良く、流出率が高いほど悪いとは一概に言えません。重要なのは、居住地によって進学先が過度に制約されないことです。

地域にとっては18歳人口流出の起点

大学進学は、10代後半から20代前半に起きる大きな地域間移動の一つです。卒業後に地元へ戻らなければ、進学時の移動が就職、結婚、居住地選択へ続く可能性があります。

ただし、進学データだけで卒業後の定着まで追うことはできません。「県外進学者が多いから人口減少が起きた」という因果関係も、この表だけでは証明できません。

進学後の影響を見るには、別の統計を組み合わせる必要があります。

  • 住民基本台帳人口移動報告の年齢別転入・転出
  • 大学卒業者の就職地域
  • Uターン・Iターンに関する自治体調査
  • 地域別の若年雇用、賃金、職種構成

進学時の流出入は、若者の移動を捉える「入口の指標」と位置付けるのが妥当です。

このデータを読むときの注意点

流出入差だけを見ると、移動の規模や通学実態を誤解するおそれがあります。

流入超過は流入者の総数ではない

流出入差は「流入者数-流出者数」です。流入超過が1万人でも、実際にはそれ以上の流入と流出が同時に起きています。差し引きだけでは、県境を越えた進学者の総規模は分かりません。

出身地ではなく出身高校の所在地である

寮のある高校や県境を越えて通う高校の出身者は、本人の実家がある都道府県と異なる地域に計上される場合があります。「出身県」という表現より、「出身高校所在地」と理解する方が正確です。

転居を伴うとは限らない

埼玉、千葉、神奈川、奈良、滋賀などでは、県境を越えて自宅通学できる経路があります。統計上の流出者が、そのまま地域外へ住所を移したとは限りません。

大学学部と短期大学を混ぜない

この記事の中心値は大学学部入学者の集計です。短期大学、専門学校、大学院を含めると、地域ごとの進学先構成が変わります。異なる統計表の率や人数を比べる場合は、対象範囲をそろえる必要があります。

年度の違う指標を直結させない

進学移動は2024年度、大学定員比率は2023年度の値です。白書が関係性を分析するために並べた近接年度のデータですが、同一年の完全な断面ではありません。翌年度の大学新設、学部移転、定員変更がある場合には差が生じます。

次に見るべきは「進学後に戻れるか」

進学時の移動だけでなく、卒業後の就職地域まで追って初めて、地域の若者流出の全体像が見えます。

2024年度のデータは、大学の受け入れ能力が少数の都府県に集中し、多くの地域が進学者を送り出している事実を示しました。特に東京都の約7.8万人という流入超過は、大学配置の偏りを端的に表しています。

今後確認すべき点は明確です。

  • 2025年度の学校基本調査でも、流入超過が同じ地域に集中しているか
  • 学部新設やキャンパス移転で地域間の流れが変わったか
  • 県外進学者のうち、卒業後に地元へ戻る割合はどの程度か
  • 自宅外通学の住居費や生活費が進学先の選択を狭めていないか
  • 地方大学の定員だけでなく、希望される専攻と地元雇用が結び付いているか

地域に大学の席を増やすだけでは、若者の定着まで保証できません。次に見るべき数字は、進学者数の差し引きではなく、学びたい分野を地域で選べるか、そして卒業後に戻れる仕事があるかです。

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