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糖尿病が強く疑われる人は27年で410万人増 最新調査で見えた「予備群減少」との逆方向

糖尿病に関する公的統計の上昇線と下降線を示したイメージ。

糖尿病が強く疑われる人は27年で410万人増 最新調査で見えた「予備群減少」との逆方向

日本で「糖尿病が強く疑われる人」は増えています。厚生労働省の最新推計では、20歳以上で約1,100万人。1997年の約690万人から27年間で約410万人、率にして約59%増えました。

一方、「糖尿病の可能性を否定できない人」は2007年の約1,320万人をピークに、2024年は約700万人まで減少しています。疑いの強い層は増え、境界域に当たる層は減るという、逆方向の動きが最新データの核心です。

この記事で分かることは次の4点です。

  • 「糖尿病が強く疑われる人」の27年間の推移
  • 2024年の男女差・年代差
  • 予備群が減っても安心とは言い切れない理由
  • 人口高齢化や判定基準を踏まえた読み方
目次

使用データと比較条件

比較の中心は、厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査」です。 2024年10~11月に実施された4年に1度の拡大調査で、糖尿病に関する全国推計が1997年までさかのぼって整理されています。

今回扱う条件は以下のとおりです。

  • 対象地域:全国
  • 対象年齢:20歳以上
  • 比較年:1997年、2002年、2007年、2012年、2016年、2024年
  • 主な指標:「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」
  • 推計方法:性別・年齢階級別の割合に、各年10月1日時点の人口推計を掛けて全国人数を算出

2024年調査では25,816世帯を対象とし、少なくとも1項目に回答した世帯は10,414世帯でした。糖尿病の推計に用いた解析対象者は男性3,260人、女性4,220人です。

「疑いが強い」は診断名そのものではない

「糖尿病が強く疑われる人」は、HbA1cの測定値と問診結果から判定されます。2024年調査では、次のいずれかに当てはまる人です。

  • HbA1c(NGSP)が6.5%以上
  • 医療機関や健診で糖尿病を指摘され、現在治療を受けている

「糖尿病の可能性を否定できない人」は、HbA1cが6.0%以上6.5%未満で、上の「強く疑われる人」に含まれない人です。

これは統計上の分類であり、調査結果だけで個人を診断するものではありません。実際の診断では、医療機関が血糖値、HbA1c、症状、再検査などを組み合わせて判断します。

27年間で690万人から1,100万人へ

長期推移では、「糖尿病が強く疑われる人」の増加が明確です。 1997年から2024年まで、一度も前回調査を下回っていません。

調査年強く疑われる人可能性を否定できない人両者の合計
1997年約690万人約680万人約1,370万人
2002年約740万人約880万人約1,620万人
2007年約890万人約1,320万人約2,210万人
2012年約950万人約1,100万人約2,050万人
2016年約1,000万人約1,000万人約2,000万人
2024年約1,100万人約700万人約1,800万人

「強く疑われる人」は1997年から2024年までに約410万人増えました。特に2016年から2024年までの8年間でも、約100万人増えています。

ただし、2区分の合計は2007年の約2,210万人を頂点に減少し、2024年は約1,800万人です。したがって、「糖尿病リスクに関係する2区分がそろって増え続けている」という読み方は正確ではありません。

ここがポイント: 予備群を含む合計人数は2007年より少ない一方、より状態が進んだ人や治療中の人を含む「強く疑われる層」は過去最多です。

2024年は成人の12.9%、男性では17.7%

最新年の大きな特徴は、男女差と年代差です。 2024年に「糖尿病が強く疑われる人」は20歳以上の12.9%を占めました。

男女別では次のとおりです。

  • 男性:17.7%
  • 女性:9.3%
  • 男女差:8.4ポイント

男性はおよそ6人に1人、女性はおよそ11人に1人に相当します。一方、「糖尿病の可能性を否定できない人」は男女とも8.2%でした。

年代が上がるほど割合が高い

「糖尿病が強く疑われる人」の割合は、男女とも高い年代ほど上昇します。

年代男性女性
20~29歳1.6%1.3%
30~39歳4.9%1.0%
40~49歳15.2%4.9%
50~59歳20.5%11.2%
60~69歳26.0%16.5%
70歳以上数値は図中で判別困難数値は図中で判別困難

男性では30代の4.9%から40代の15.2%へ、10.3ポイント上がります。女性も40代の4.9%から50代の11.2%へ上昇しており、健診や受診の重要性が増す年代が数字に表れています。

ただし、各年代の割合が上がったことと、全国推計人数が増えたことは同じ意味ではありません。推計人数には、糖尿病の割合が高い高齢層の人口が増えた影響も含まれます。

増加のすべてを生活習慣だけで説明できない

全国人数の増加には、個人の生活だけでなく人口構成や治療継続も関わります。 今回の調査だけから「食生活の悪化が原因」と断定することはできません。

高齢化で推計人数は増えやすい

2024年の解析対象者では、70歳以上が男性の42.9%、女性の39.1%を占めました。1997年は男性16.3%、女性15.2%です。

これは調査参加者の構成であり、日本全体の人口構成をそのまま表す数字ではありません。それでも、年代別の割合に人口を掛ける全国推計では、高齢者人口の増加が総数を押し上げる方向に働きます。

長期変化を詳しく判断するには、実数だけでなく、同じ基準人口にそろえた年齢調整率も確認する必要があります。推計人数だけでは、「各年代で糖尿病が増えた分」と「高齢者が増えた分」を分離できません。

治療中の人も集計に含まれる

この指標には、HbA1cが6.5%以上の人だけでなく、現在治療を受けている人も含まれます。治療を続けてHbA1cが改善していても、調査上は「糖尿病が強く疑われる人」に分類されます。

したがって、治療への接続や治療継続が進むと、この区分に残る人が増える可能性があります。人数の増加を、そのまま「未治療の人が増えた」と読み替えることはできません。

予備群の減少は何を意味するのか

約1,320万人から約700万人への減少は好ましい動きですが、理由はこの表だけでは確定できません。 「予備群だった人が健康な範囲に戻った」場合と、「強く疑われる区分へ移った」場合では、意味が正反対だからです。

考えられる動きは少なくとも3つあります。

  • HbA1cが下がり、6.0%未満になった
  • HbA1cが上がる、または治療が始まり「強く疑われる人」に移った
  • 調査参加者や年齢構成の違いによって推計が変わった

国民健康・栄養調査は同じ個人を追い続ける追跡調査ではありません。このため、2007年の予備群が2024年にどの区分へ移ったかは分かりません。

確実に言えるのは、2024年時点で境界域の推計人数がピーク時より少なく、同時に「強く疑われる人」が増えていることまでです。

治療につながっていない働き盛りが課題

人数の増減以上に生活へ直結するのは、指摘後も治療を受けていない人がいることです。 2024年調査では、糖尿病を指摘されたことがある人のうち、現在治療中なのは67.4%でした。

男女別では男性73.1%、女性60.5%です。さらに厚生労働省は、30~40代では治療を受けていない割合が他の年代より高いとしています。

この年代では、通院時間の確保や仕事との調整が必要になります。統計から個々の中断理由までは分かりませんが、自治体や職場の対策を見る際は、健診受診率だけでなく次の点が重要です。

  • 異常を指摘された後に医療機関へつながったか
  • 初回受診後も治療を継続できているか
  • 平日の日中以外にも受診できる環境があるか
  • 健診結果を本人が理解できる説明になっているか

「検査を受けた人の数」と「治療を続けている人の数」の間を埋めなければ、早期発見は健康改善に直結しません。

地域差・国際差をこの数字で比べてはいけない

今回の糖尿病データは全国推計であり、都道府県ランキングには使えません。 2024年は拡大調査として一部項目の都道府県別集計も行われましたが、概要に掲載された糖尿病の結果は全国値です。

都道府県別の患者数、特定健診の有所見率、糖尿病による死亡率などは、それぞれ母集団と定義が異なります。全国のHbA1c・治療状況による推計と混ぜて順位を作ると、地域差を誤読します。

国際比較も同様です。国によって、診断済み患者を数えるのか、検査値から未診断者も推定するのか、対象年齢をどこに置くのかが違います。日本の「約1,100万人」を他国の患者登録数と直接比べることはできません。

データを読むときの5つの注意点

最も大切なのは、実数・割合・年齢構成を分けて見ることです。 数字を生活上の判断につなげる前に、次の限界を押さえておく必要があります。

  1. 推計値である
    約1,100万人は全住民を検査した人数ではなく、標本調査から人口全体を推計した値です。

  2. 古い年とHbA1cの表記体系が異なる
    2007年以前はJDS値6.1%以上、現在はNGSP値6.5%以上が基準です。厚生労働省は対応する基準として推移を示していますが、表記だけを見て単純比較しない注意が必要です。

  3. 2024年は拡大調査である
    通常年より大きい規模で実施され、全国値には都道府県ごとの実施世帯数の違いを補う重み付けが行われています。

  4. コロナ禍の2020年と2021年は調査が中止された
    年ごとの連続データではないため、その期間の変化を直接追うことはできません。

  5. 因果関係は分からない
    食事、運動、所得、労働時間、受診環境などとの関連を検討するには、別のデータや個人単位の分析が必要です。

次に見るべき数字

最新結果への答えは明確です。「糖尿病が強く疑われる人」は長期的に増え、2024年に約1,100万人となりました。 ただし、増加分を生活習慣の変化だけに帰すことはできず、高齢化や治療中の人を含む定義も影響します。

今後の公表で確認したいのは、総数の増減だけではありません。

  • 年齢調整後でも増加が続くか
  • 30~40代の未治療割合が下がるか
  • 約700万人となった境界域がさらに減るか
  • 健診後の受診・治療継続を示すデータが改善するか

健康診断でHbA1cや血糖値を指摘された人にとって、全国推計は診断の代わりにはなりません。数字から導ける具体的な行動は、結果を放置せず、医療機関で自分の検査条件と再検査の要否を確認することです。

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