NISAは3,048万口座へ――年代別に見る「口座の広がり」と買付額の違い
NISA口座数は、2026年6月末に全国で3,048万口座まで増えた。2023年末の2,125万口座から約923万口座増えており、制度を使う入口は大きく広がっている。
ただし、口座数が多い年代と、買付額が多い年代は一致しない。証券会社全社の2025年データでは、口座数は40歳代、年間買付額は50歳代が最多だった。普及を見るには、口座を持つ人の広がりと、実際に買った金額を分ける必要がある。
この記事では、次の3点を確認する。
- 全国の口座数と累計買付額は、制度開始後にどこまで増えたか。
- 年代別の口座数と年間買付額は、どこで順位が入れ替わるか。
- 買付額から、利用率や保有資産、個人の投資額まで読み取れるか。
使用データ:全国の最新値と年代別比較は集計範囲を分ける
全国の最新状況は金融庁、年代別の比較は日本証券業協会の全証券会社集計で見る。
金融庁の2026年6月末調査は、NISAを取り扱う全金融機関が対象だ。2026年10月2日に公表され、2026年10月8日時点で利用状況調査の一覧に掲載されている最新の調査となる。
年代別比較には、日本証券業協会が2026年5月に公表した全証券会社の2025年12月末データを使う。同じ資料に証券会社10社の月次集計も掲載されているが、ここで使うのは「全証券会社対象」と明記された部分だ。
比較条件は以下のとおり。
- 全国の推移:全金融機関。口座数は各時点の口座数、買付額は制度開始からの累計。
- 年代別の口座数:全証券会社。2025年12月末時点。
- 年代別の買付額:全証券会社。2025年1~12月の年間新規買付額。
銀行などの口座を含む全国値と、証券会社だけの年代別値は、同じ母集団ではない。年代別の順位を、そのまま全金融機関の順位として扱うことはできない。
全国の推移:2023年末から口座数は約43%増えた
NISAの口座数は、新制度が始まる直前の2023年末から2026年6月末までに約1.43倍になった。
金融庁の最新の推移グラフから、主な時点を抜き出す。数値は同資料の丸め値で、増減率もその丸め値から計算した概算だ。
| 時点 | 口座数 | 累計買付額 |
|---|---|---|
| 2014年末 | 825万口座 | 3兆円 |
| 2018年末 | 1,254万口座 | 16兆円 |
| 2020年末 | 1,523万口座 | 21兆円 |
| 2023年末 | 2,125万口座 | 35兆円 |
| 2024年末 | 2,559万口座 | 53兆円 |
| 2025年末 | 2,821万口座 | 71兆円 |
| 2026年6月末 | 3,048万口座 | 85兆円 |
2024年の口座純増は約434万口座、2025年は約262万口座。2026年は上半期だけで約227万口座増えている。2025年には前年より増加幅が縮まったものの、2026年上半期も口座の拡大は続いた。
ただし、半年の増加を単純に2倍して年間値を予測することはできない。口座開設の時期に偏りがあれば、下半期の増加幅は上半期と変わる。
累計85兆円は「今ある資産」の金額ではない
累計買付額は、過去に購入された金額を積み上げた数字だ。2026年6月末の85兆円には、2023年までの旧制度での買付額も含まれる。新NISAだけで85兆円を買った、という意味ではない。
また、売却済みの購入分も累計には残る。保有商品の値上がり・値下がりを反映した時価残高とも異なる。
そのため、累計買付額の増加だけを見て「家計の資産が同額増えた」「預金から同額が移った」と結論づけることはできない。確認できるのは、NISAを通じた購入の累積規模が拡大したことだ。
年代別の比較:口座数は40歳代、買付額は50歳代が最多
証券会社の2025年データでは、30~50歳代に口座数と買付額が集中しているが、その並び順は異なる。
以下は同協会資料の年代別グラフによる。口座数の単位は万口座、買付額は億円。買付額は成長投資枠とつみたて投資枠の合計で、四捨五入により内訳の和と合計が一致しない場合がある。
| 年代 | 2025年末の口座数 万口座 | 2025年の年間買付額 億円 |
|---|---|---|
| 10歳代 | 11 | 250 |
| 20歳代 | 285 | 11,566 |
| 30歳代 | 414 | 30,416 |
| 40歳代 | 417 | 34,531 |
| 50歳代 | 373 | 33,009 |
| 60歳代 | 238 | 23,499 |
| 70歳代 | 179 | 14,778 |
| 80歳代以上 | 107 | 5,491 |
この表では、年間買付額の最多は40歳代の3兆4,531億円で、50歳代は3兆3,009億円となる。証券会社集計では、口座数・年間買付額ともに40歳代が最多だ。全国の全金融機関集計と証券会社集計を区別しないと、年代別の順位を取り違える。
30歳代と40歳代の口座数は、414万口座と417万口座でほぼ同じ。一方、年間買付額は40歳代が4,115億円多い。口座数だけでは、この購入規模の差は見えない。
口座数が少なくても、買付額の差は小さい年代がある
50歳代の口座数は40歳代より約44万口座少ない。それでも、年間買付額の差は約1,522億円にとどまる。
これは、口座の数と購入金額が別の指標であることを示す。ただし、年末口座数で年間買付額を割った値を、その年代の「普通の投資額」と考えるのは適切ではない。年間を通じて利用した口座と年末に存在する口座は完全には一致せず、購入額の大きな口座が平均を押し上げることもある。
年代別の口座数は、年代別の普及率ではない
417万口座という数字だけでは、40歳代が最も高い割合でNISAを利用しているとは判断できない。年代ごとに人口が違うからだ。
利用の広がりを割合で比較するなら、各年代の対象人口を分母にそろえる必要がある。しかも今回の表は証券会社だけの集計なので、人口で割っても全金融機関を通じたNISA保有率にはならない。
10歳代にも注意が必要だ。現在のNISAの対象は、その年の1月1日時点で18歳以上の国内居住者であり、10歳代全体が対象になるわけではない。20~70歳代の10年幅の区分と、同じ条件で順位を比べることはできない。金融庁の制度説明
買付額の推移:口座が増える速さと購入が増える速さは違う
証券会社では、2025年に口座増加の幅が縮まっても、年間買付額は前年を上回った。
全証券会社の口座数は2023年末の約1,428万口座から、2024年末に約1,803万口座、2025年末に約2,025万口座へ増えた。一方、年間買付額は2024年の14兆447億円から、2025年の15兆3,540億円へ約9.3%増加している。
新しく口座を開く人が増えることと、既存の口座も含めて購入金額が増えることは、分けて捉えたい。口座数の伸びが鈍ったからといって、購入も同じように減速したとは限らない。
ただし、これらは全体の推移であり、前節の年代別表は2025年の断面だ。全体の増加を、そのまま「どの年代が増加をけん引したか」という説明に置き換えることはできない。年代別の増減を検証するには、同じ範囲・同じ期間の各年代データを並べる必要がある。
数字の読み方:買付額の多さだけでは利用の定着を測れない
NISAが生活にどこまで根づいたかを見るには、保有口座数に加えて、購入の継続と金額の分布を確認する必要がある。
年代差の理由は、この集計だけでは分からない
年代別の差には、所得、保有資産、退職前後の資金需要、証券会社と銀行の利用の違いなどが関係する可能性がある。しかし、今回の集計はそれらを同時に観測していない。
したがって、「50歳代は教育費が落ち着いたから買付額が多い」「20歳代は余裕がないから少ない」といった説明は、この数字だけでは確定できない。同じ年代にも、収入や支出、投資経験の異なる人がいる。
総額、平均、中央値は答える問いが違う
指標は、知りたいことに合わせて選ぶ。
- 総額:その年代・集団が、全体としていくら購入したか。
- 平均:購入金額を対象口座数などで割った規模。分母の定義が必要。
- 中央値:購入額の順に並べた中央の値。総額と口座数だけでは計算できない。
- 買付があった口座の割合:口座の保有から、実際の購入にどれだけつながったか。
平均購入額が上がっても、一部の大口購入によるものか、幅広い利用者が増額した結果かは分からない。逆に、購入額が小さい人が多くても、継続して利用していれば、口座保有だけの広がりとは異なる変化になる。
制度変更をまたぐ比較には段差がある
2023年以前は一般NISAとつみたてNISA、2024年以降は新NISAという制度の違いがある。購入できる枠や利用条件が変わった時期の増加を、利用者の意欲だけで説明することはできない。
さらに、金融庁は報告値の誤りなどにより、過去の計数を修正する場合があると明記している。過去の速報値と最新の確報値を混ぜず、できるだけ最新版の時系列を使うことが必要だ。金融庁・利用状況調査
次に見る数字:新規開設から継続購入へつながっているか
今後の普及を確かめる焦点は、口座数の増加に、実際の購入が伴っているかどうかだ。
確認したいのは、次の3点になる。
- 各年代で、口座数と買付があった口座数がそれぞれ増えているか。
- 買付額の増加が、一部の大口購入に偏っていないか。
- 売却額や時価残高も合わせたとき、購入後の保有がどう変化しているか。
3,048万口座という全国値は、制度を利用する入口が広がったことを示している。次の更新では、その入口から継続的な購入に進む口座がどれだけ増えたかを、対象期間と集計範囲をそろえて追いたい。
