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中古住宅の購入は増えた?取引量の伸びと「中古シェア」の違いを読む

戸建て住宅とマンションが並ぶ日本の住宅街。

中古住宅の購入は増えた?取引量の伸びと「中古シェア」の違いを読む

中古住宅の取引量は、長期で見ると増えている。ただし、増えた取引件数をそのまま「中古を選んで住む人が増えた」と読み替えることはできない。個人の投資用物件購入も含まれるためだ。

国土交通省の全国データでは、2008年から2024年に既存住宅の流通量が25.9万戸から34.1万戸へ増えた。同省の比較方法による中古のシェアも29.6%から43.6%へ上昇しているが、こちらには新築側の減少も効いている。

この記事では、次の3点を分けて見る。

  • 取引量:中古住宅そのものがどれだけ売買されたか。
  • 流通シェア:中古と新築を合わせた戸数のうち、中古がどれだけを占めるか。
  • 購入目的と住宅の種類:自宅用か投資用か、戸建てかマンションかで、変化の意味は異なる。
目次

使用データは「個人が買った住宅」の登記が中心

今回の数字が捉えるのは、購入者の人数ではなく、個人が取得した中古住宅の取引量だ。

主に使うのは、国土交通省の「既存住宅販売量指数」。建物の売買による所有権移転登記をもとに、個人が購入した既存住宅の動きを集計する。全国だけでなく、地域別、戸建て・マンション別にも確認できる。国土交通省のデータ掲載ページで、最新のExcelと過去の公表資料が公開されている。

比較条件は次のとおりだ。

  • 長期比較:全国、2008〜2024年。国土交通省の審議会関連資料に掲載された年次の流通量とシェアを使用。
  • 足元の確認:全国、2026年6月。2026年9月30日公表の既存住宅販売量指数を使用。2026年10月8日時点で掲載されている最新月に当たる。
  • 指数の基準:2010年平均を100とする。月次の動きを見る際は、季節的な増減を調整した値を使う。

ここで重要なのは、登記から分かるのは住宅の取得であって、その後に購入者が住んだかどうかではない点だ。同じ人が複数の物件を買う場合もあるため、戸数と人数は一致しない。

長期では中古取引が増え、新築との比率も変わった

中古の存在感が高まったのは、中古取引の増加と、新築側の減少が同時に起きたためだ。

国土交通省が示す全国の比較は、次のようになる。新築は注文住宅、分譲戸建て、分譲マンションの合計であり、貸家を含む新設住宅全体との比較ではない。

指標・単位2008年2024年
既存住宅流通量(万戸)25.934.1
比較対象の新築住宅(万戸)61.744.2
既存住宅流通シェア(%)29.643.6

出典:国土交通省「中間とりまとめ(素案)関連資料」掲載の既存住宅流通シェア。戸数は資料の表示値。

既存住宅は8.2万戸増え、表示値から計算すると増加率は約31.7%。一方、比較対象の新築は17.5万戸減った。中古のシェアは14.0ポイント上昇している。

「シェアが増えた」と「取引が増えた」は別の変化

シェアの式は、既存住宅流通量を「既存住宅流通量+比較対象の新築戸数」で割ったものだ。

このため、中古取引が横ばいでも新築が減ればシェアは上がる。逆に、中古取引が増えても新築がそれ以上に増えればシェアは下がる。今回の長期比較では、実際に中古の戸数も増えているため、単なる分母の変化ではない。

ただし、43.6%は「住宅購入者の43.6%が中古を選んだ」という調査結果ではない。中古側は登記に基づく取得、新築側は着工に基づく戸数を組み合わせている。取得と着工には時点の違いもあるため、住宅流通の方向を知る指標として読むのが適切だ。

また、2008年は比較の出発点であって、平常時の市場を代表する年と決まっているわけではない。始点と終点の差だけから、毎年一定のペースで中古購入が増えたとは判断できない。

マンションと戸建てでは、中古の位置づけが違う

中古への移行は住宅の種類によって一様ではなく、マンションで中古のシェアがより高い。

同じ国土交通省資料の2024年値では、既存住宅流通シェアは次のとおりだ。

  • 戸建住宅:33.3%。
  • マンション:62.6%。

2008年はそれぞれ24.7%、39.0%だった。戸建ては8.6ポイント、マンションは23.6ポイント上昇しており、種類によって変化の大きさにも差がある。

この比較方法では、マンションはすでに中古が過半を占める。一方、戸建てでは新築がなお多数を占める。「日本の住宅市場は新築中心」という一言だけでは、両者の違いを見落とす。

ただし、この差は中古への好みだけを表すものではない。新築供給の量、過去に建てられた住宅の蓄積、投資用取得など、複数の要素が重なった結果だ。中古マンションのシェアが高いことから、購入者が新築より中古を積極的に好むようになったとまでは断定できない。

最新月でも取引は増加、ただし小型マンションで見え方が変わる

2026年6月の中古取引は前月から増えたが、長期の伸びは床面積の範囲によって異なる。

全国の既存住宅販売量指数は、戸建て・マンション合計で131.3。前月比4.4%増だった。2010年平均を100とする季節調整済み指数なので、基準年の平均水準を31.3%上回る。2026年6月分の国土交通省公表資料では、次の内訳も確認できる。

対象指数前月比
戸建て・マンション合計131.3+4.4%
同合計・マンションの30㎡未満を除く119.4+3.7%
戸建住宅130.1+3.7%
マンション130.3+4.3%
マンション・30㎡未満を除く105.3+4.1%

注:全国、2026年6月、2010年平均=100、季節調整値・確報値。指数は戸数でもシェアでもない。

自宅用の需要を見るなら、面積別の数字も必要

マンション全体は基準年を30.3%上回る一方、30㎡未満を除くと5.3%上回る水準にとどまる。小型住戸を含めるかどうかで、長期の増え方が大きく変わる。

国土交通省は、個人による30㎡未満のワンルームマンション取得が増えていることを踏まえ、これを含む系列と除く系列を併せて公表している。指数には、自宅のほか別荘、セカンドハウス、投資用物件も含まれる。

このため、マンション全体の伸びを家族の住み替え需要だけで説明することはできない。ただし、30㎡未満を除けば自宅用だけになるわけでもない。小型住戸に住む購入者もいれば、広い住戸を投資用に買う購入者もいる。面積は購入目的を考える手がかりであり、目的そのものを識別する条件ではない。

前月比の増加だけでは、増加基調は確定しない

全国合計の季節調整値は、2026年3月130.5、4月129.9、5月125.7、6月131.3と動いている。6月は反発したが、月ごとには上下している。

「最新月に増えた」と「継続的に増えている」は別の判断だ。足元の勢いは数カ月の推移で確認し、長期の変化は年単位の流通量と分けて読む必要がある。

中古を買う人が増えた理由は、この統計だけでは決まらない

確認できるのは取引の増加であり、その理由や購入者の満足度までは分からない。

中古住宅の選択肢が広がった可能性と、新築を購入しにくくなって中古へ向かった可能性は、どちらも考えられる。しかし、今回の取引量とシェアだけでは区別できない。

理由を検証するには、別のデータを組み合わせる必要がある。

  • 価格による選択か:同じ地域、広さ、住宅の種類で、新築と中古の価格を比較する。
  • 立地による選択か:駅距離や通勤条件をそろえ、購入理由の調査も確認する。
  • 住み替えか追加取得か:初めての持ち家取得、買い替え、投資用取得を分ける。
  • 改修を前提とした購入か:購入費だけでなく、改修費と工事内容を確認する。

価格が上がった時期に中古取引も増えたとしても、それだけで「価格上昇が中古購入を増やした」とは言えない。供給された物件の数や種類が変わった可能性もあるからだ。

購入を考える世帯にとっても、市場全体の中古シェアは個別物件の買いやすさを保証しない。取引が増えることと、希望する場所で予算に合う住宅が見つかることは別である。

比較で見落としやすいのは、人数・用途・時点のずれ

数字を読む際は、何を数え、何と比べたかを最後までそろえる必要がある。

住宅・土地統計調査の「中古取得」と同じではない

住宅・土地統計調査は、居住する世帯と住宅の状態を捉える。一方、既存住宅販売量指数には、その調査の既存住宅取引量には含まれない投資用物件なども入る。

両者は競合する数字ではなく、答える問いが異なる。暮らすための住宅取得を知りたいのか、売買市場の動きを知りたいのかで使い分ける。

全国の増加を、すべての地域に当てはめない

全国値が上がっても、各市町村で取引が増えたとは限らない。また、地域別指数は各地域の2010年平均を基準にするため、指数の高い地域ほど取引戸数が多いわけではない。

地域の住宅市場を比べるなら、増減率に加えて実際の件数や住宅ストックの規模も必要だ。指数だけを並べて「中古住宅が最も売れる地域」のランキングを作ると、基準年からの伸びと市場規模を取り違える。

公表月と対象月には差がある

2026年9月30日の公表資料が示すのは、同年6月の取引動向だ。10月時点の市況そのものを表す数字ではない。

既存住宅販売量指数は試験運用として公表されている。過去の公表資料と最新系列を混ぜる際には、更新や季節調整による数値の違いにも注意したい。継続して追う場合は、最新のExcelで同じ条件の系列をまとめて確認する。

次に見るべきは「自宅用の中古取得」がどこまで広がったか

中古取引の増加は確認できるが、住宅選びの変化を判断するには購入目的まで確かめたい。

長期の戸数増加とシェア上昇は、既存住宅が住宅流通の中で大きな役割を持つようになったことを示す。ただ、その広がりは戸建てとマンションで異なり、小型住戸を含めるかどうかでも見え方が変わる。

今後の確認点は、次の3つだ。

  • 30㎡未満を除いたマンションの取引も、複数年で増えるか。
  • 中古シェアだけでなく、中古の取引戸数そのものが増えるか。
  • 自宅用の取得が、どの地域・世帯で広がっているか。

家計への変化を知るには、さらに購入費と改修費を合わせて見る必要がある。中古を買う取引が増えた先で、住まいを確保する負担が軽くなったのか。そこは取引量だけでは答えが出ない。

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