30代でも持ち家は少数派?2023年データで見る住宅所有の年齢差
日本の持ち家率は全体では約6割ですが、若い世帯に限ると様子が大きく変わります。2023年は、家計を主に支える人が25~29歳の世帯で持ち家が約9%、30~34歳で約26%、35~39歳でも約44%でした。
つまり、持ち家世帯が半数を超えるのは40代前半からです。さらに30代を長期で見ると、1983年の53.3%から2023年の約35.6%へ低下しており、住宅を持つ時期が後ろにずれたことが数字に表れています。
この記事で押さえるポイントは次の4つです。
- 2023年の持ち家率は25~29歳で約9%、30代全体で約36%
- 40~44歳では約55%となり、初めて半数を超える
- 30代の持ち家率は1983年の53.3%から約17.7ポイント低下
- 単身世帯を含む統計と、二人以上世帯だけの統計は直接比較できない
使用したデータと比較条件
中心に使うのは、総務省統計局の「2023年住宅・土地統計調査」です。 2023年10月1日時点の住宅と世帯を対象とし、住宅・世帯に関する基本集計の確報は2024年9月25日に公表されました。
年齢別の主世帯数と持ち家世帯数は、e-Statの表52-1と、総務省統計局「日本の統計2026」の表21-10で確認できます。年齢は住宅の名義人ではなく、原則として「家計を主に支える者」の年齢です。
比較条件は次のとおりです。
- 対象地域:全国
- 基準日:2023年10月1日
- 対象:住宅に居住する主世帯
- 年齢区分:家計を主に支える者の年齢
- 持ち家率:各年齢区分の主世帯総数に占める持ち家世帯数の割合
- 過去比較:同じ住宅・土地統計調査を基にした国土交通省の時系列資料
ここで扱うのは「持ち家に住む世帯の割合」です。人が居住する住宅のうち持ち家が占める割合である「持ち家住宅率」とは、分母が異なります。
2023年は40代前半で持ち家が半数を超える
年齢差は20代後半から40代前半にかけて最も大きく動きます。 2023年の世帯数から計算すると、25~29歳の約8.8%に対し、40~44歳は約54.8%でした。
| 家計を主に支える者の年齢 | 主世帯総数 | 持ち家世帯数 | 持ち家率 |
|---|---|---|---|
| 25歳未満 | 185万7千世帯 | 6万8千世帯 | 約3.7% |
| 25~29歳 | 237万5千世帯 | 21万世帯 | 約8.8% |
| 30~34歳 | 254万9千世帯 | 65万9千世帯 | 約25.9% |
| 35~39歳 | 292万6千世帯 | 129万2千世帯 | 約44.2% |
| 40~44歳 | 338万6千世帯 | 185万7千世帯 | 約54.8% |
| 45~49歳 | 429万世帯 | 259万7千世帯 | 約60.5% |
| 50~54歳 | 499万世帯 | 317万5千世帯 | 約63.6% |
30代の中でも差は大きく、30~34歳から35~39歳へ進むと持ち家率は約18.3ポイント上がります。住宅取得が特定の年齢で一斉に起きるのではなく、就職、結婚、子育て、転居などが重なる30代に徐々に進むことが読み取れます。
ただし、これは同じ人を追跡した結果ではありません。2023年時点の異なる年齢集団を並べた数字なので、「5歳年を取れば持ち家率が必ず18ポイント上がる」という意味ではない点に注意が必要です。
ここがポイント: 全国平均の約6割だけを見ると住宅所有が一般的に見えますが、30代全体では持ち家は約35.6%です。年齢構成を外した平均値では、若い世帯の住まい方を捉えられません。
30代の持ち家率は40年で約18ポイント低下
長期比較で目立つのは、若い世代ほど持ち家率の低下幅が大きいことです。
国土交通省が住宅・土地統計調査を基に整理した資料では、30代の持ち家率は1983年の53.3%から2008年には39.0%へ低下しました。2023年の30~34歳と35~39歳を合算すると、30代全体は約35.6%です。
- 1983年:53.3%
- 2008年:39.0%
- 2023年:約35.6%
- 1983年から2023年の変化:約17.7ポイント低下
1983年には30代世帯の半数以上が持ち家でした。2023年は3世帯に1世帯強です。40年間の変化を単純な世帯数に置き換えると、同じ100世帯でも持ち家世帯が約53世帯から約36世帯へ減った計算になります。
25~29歳では過去の3分の1程度
さらに長い期間を同じ細かな年齢区分で追える資料では、25~29歳の持ち家率は1978年の27.9%から2003年の12.7%へ低下していました。2023年は約8.8%です。
1978年と2023年を比べると約19.1ポイント低く、比率では当時の3分の1程度になりました。20代後半で住宅を持つことは、過去より明らかに少なくなっています。
一方、2023年の30~34歳と35~39歳は、2013年の28.9%、46.1%と比べると、それぞれ約3.0ポイント、約1.9ポイントの低下です。最近10年間だけを見れば、1980年代から続いた下落と同じ速さで減り続けているわけではありません。
「若者が家を買わなくなった」だけでは説明できない
この変化には、住宅価格や所得だけでなく、若い世帯の構成そのものが関係します。
国土交通省が1998~2023年を世帯人員別に整理した資料では、すべての年代で単身世帯の持ち家率が低くなっています。一方、二人以上世帯では、30代と40代の持ち家率が直近で微増に転じました。
これは重要な違いです。若い単身世帯が増えれば、同じ年齢層で住宅取得の意向が変わらなくても、その年齢層全体の持ち家率は下がる可能性があります。
数字から確認できること
- 30代全体の持ち家率は1983年より低い
- 2023年も単身世帯は二人以上世帯より持ち家率が低い
- 二人以上世帯の30代・40代では、直近の持ち家率が微増している
- 年齢が上がるほど持ち家率が高くなる傾向は続いている
この統計だけでは断定できないこと
- 住宅価格の上昇だけで持ち家率が低下した
- 若者の住宅所有意欲そのものが失われた
- 住宅ローン審査や金利だけが取得時期を遅らせた
- 賃貸を選ぶ世帯がすべて自発的に購入を見送った
住宅・土地統計調査は「どの住宅に住んでいるか」を把握する調査です。購入希望、頭金、住宅ローン審査、親からの資金援助まで一つの表で説明するものではありません。価格、所得、家族構成、勤務地などとの関係を調べるには、別の統計を組み合わせる必要があります。
単身世帯を含むかどうかで数字は大きく変わる
持ち家率を比較するとき、最も誤読しやすいのが調査対象の違いです。
たとえば家計調査の「二人以上の世帯」では、30代の持ち家率が6割台になる年があります。住宅・土地統計調査による2023年の30代全体の約35.6%とは大幅に違いますが、どちらかが誤りなのではありません。
主な違いは次のとおりです。
- 住宅・土地統計調査:単身世帯を含む主世帯が中心
- 家計調査の二人以上世帯集計:単身世帯を含まない
- 年齢の基準:世帯主、家計を主に支える者など、統計ごとに表現や定義が異なる
- 公表値の単位:10歳区分と5歳区分が混在する
若い単身世帯は借家が多いため、単身世帯を除けば持ち家率は高くなります。「30代の持ち家率」という同じ表現でも、分母を確認しなければ正しく比較できません。
国際比較にも同じ問題があります。国によって世帯の定義、持ち家に住宅ローン返済中の世帯を含める方法、年齢の基準、親族との同居の扱いが異なります。条件をそろえられない国別の数字を、日本の年齢別推移と同じ表に並べるのは避けるべきです。
地域差を見る前に年齢構成をそろえる
都道府県別の持ち家率には、住宅価格だけでなく人口構成や世帯形態も表れます。
高齢世帯が多い地域は、年齢とともに持ち家率が上がる影響を受け、地域全体の率も高くなりやすい傾向があります。反対に、進学や就職で若い単身者が集まる大都市は、借家世帯が増えて全体の率が低くなりやすくなります。
そのため地域を比べるなら、次の順で確認する必要があります。
- 地域全体の持ち家率を見る
- 30代、40代など同じ年齢階級で比較する
- 単身世帯と二人以上世帯を分ける
- 住宅価格、所得、世帯人員などを別データで確かめる
全体値だけを並べて「住宅を買いやすい県」「買いにくい県」と評価すると、年齢構成や都市への人口移動を住宅市場の差と取り違えるおそれがあります。
データを読むときの注意点
この比較には、いくつか限界があります。
調査は5年ごと
住宅・土地統計調査は5年周期です。2023年以降の住宅価格や金利、所得の変化は、今回の数字には反映されていません。
年齢別比較は同じ人の追跡ではない
1983年の30代と2023年の30代は別の世代です。景気、雇用、結婚年齢、世帯規模、住宅供給などの条件も違います。時系列の差は確認できますが、特定の原因による変化とは断定できません。
「持ち家」は取得方法を問わない
購入した住宅だけでなく、相続などで所有する住宅も持ち家に含まれます。持ち家率は、その年に住宅を購入した人の割合でも、住宅ローンを抱える人の割合でもありません。
公表値は推計値
住宅・土地統計調査は標本調査です。表の世帯数は推計値であり、千世帯単位に丸められています。本記事の率は公表された世帯数から計算しているため、小数点以下には丸めの影響があります。
次に見るべきは「誰が持てないのか」
2023年の数字が示す核心は、若い世帯が一様に住宅を持たなくなったということではありません。30代全体では持ち家が少数派である一方、二人以上世帯では直近に持ち直しも見られ、単身かどうかで差が大きいという点です。
今後の確認点は明確です。
- 2028年調査で30代の持ち家率が下げ止まるか
- 単身世帯と二人以上世帯の差がさらに広がるか
- 同じ年齢・世帯人員で見た都道府県差はどの程度か
- 所得に対する住宅価格や返済負担がどう変わるか
若者の住宅所有を読むときは、全国の持ち家率だけでは足りません。まず年齢をそろえ、次に世帯人員を分ける。そのうえで価格や所得を見ることが、実態に近づく最短の手順です。
