製造業で働く人は30年で423万人減――サービス化の中身を産業別に読む
日本の就業者に占める製造業の割合は、1995年の22.5%から2025年の15.1%へ下がった。人数も1,456万人から1,033万人へ、423万人減っている。働く先の構成はサービスを提供する産業へ傾いたが、直近10年を見ると、製造業の人数はほぼ横ばいで、医療・福祉や情報通信の増加が目立つ。
つまり、30年間の変化を「工場で働いていた人がサービス業へ転職した」と読み替えることはできない。確認できるのは、働く人全体の中で、どの産業が大きな割合を占めるようになったかである。
この記事で分かることは、次の3点だ。
- 1995〜2025年に製造業の人数と割合がどれだけ変わったか
- 直近10年に増えたサービス分野と、増えなかった分野
- 就業者数から読み取れることと、生産・賃金・転職について別のデータが必要なこと
使用データは全国の年平均――産業分類の違いを踏まえて比較する
比較するのは、総務省統計局「労働力調査」の全国・男女計・年平均の就業者数である。
長期比較の両端を1995年と2025年に置き、サービス分野の内訳は2015年と2025年で比べる。2026年10月8日時点で、暦年の年平均として最新の公表値は2025年分だ。月次の2026年データと年平均を混ぜず、季節による違いを抑えて読む。
資料の位置づけは次のとおり。
- 1995年:国立国会図書館で公開されている厚生労働省の「主要労働統計表」に収録された、労働力調査の産業別就業者数を使用する。
- 2015年・2025年:統計局「2025年平均結果の概要」の表Ⅰ-8を使用する。2025年平均結果は2026年1月30日公表、概要資料は同年3月31日掲載。
- 比較上の注意:統計局の産業分類に関する説明と、長期時系列データの利用案内を参照する。
就業者には、会社などに雇われている人だけでなく、自営業主や家族従業者も含まれる。労働力調査は月末の1週間の就業状態を捉える調査であり、求人件数や事業所数とは異なる。
また、産業は勤め先・事業の活動による分類で、本人の職種ではない。製造業の会社で働く事務職も製造業に含まれる。この違いは、後で「仕事が移った」と解釈するときに重要になる。統計局の調査説明
製造業は423万人減ったが、就業者全体は372万人増えた
30年間で製造業は縮小した一方、全国の就業者総数は増えている。
| 指標 | 1995年平均 | 2025年平均 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 就業者総数 | 6,457万人 | 6,829万人 | 372万人増 |
| 製造業の就業者数 | 1,456万人 | 1,033万人 | 423万人減 |
| 総数に占める製造業の割合 | 22.5% | 15.1% | 7.4ポイント低下 |
出典:1995年は主要労働統計表・第4表-1、2025年は労働力調査・年平均結果。割合と増減は掲載値から計算し、割合は小数第1位に丸めた。1995年と2025年では産業分類の版が異なるため、厳密に同一分類へ再集計した比較ではない。
製造業の人数は約29.1%減った。割合で見ると、1995年は就業者のおよそ4.4人に1人、2025年は約6.6人に1人が製造業で働いている計算になる。
この割合低下には二つの動きが重なっている。製造業そのものの人数が減ったことと、比較の分母となる就業者総数が約5.8%増えたことだ。
製造業以外をまとめると、就業者数は5,001万人から5,796万人へ795万人増えた。ただし、この差分には建設業や農林業なども含まれる。「製造業以外の増加」をそのまま「サービス業の増加」と呼んではいけない。
サービス化は進んだ――ただし「サービス業」という一つの欄では測れない
サービス化を見るには、小売、医療、教育、運輸などを含む第三次産業と、統計表の個別項目「サービス業」を区別する必要がある。
第三次産業は、卸売・小売、情報通信、金融、医療・福祉、公務などを広く含む。一方、現在の「サービス業(他に分類されないもの)」は、その一部にすぎない。
長期的な方向を確認すると、日本統計年鑑に掲載された第三次産業の割合は、1995年の61.0%から2024年の72.9%へ上昇している。29年間で11.9ポイントの上昇だ。2025年の製造業比較とは終点が1年異なるが、サービスを提供する産業の比重が高まったことを裏づける。1995年の割合を収録した日本統計年鑑、2024年までの日本統計年鑑
ここで見落とせないのは、1995年の時点ですでに第三次産業が6割を占めていたことだ。30年前の日本を、製造業が就業者の多数を占める社会と捉えるのは正確ではない。もともと大きかった第三次産業が、さらに比重を増したのである。
古い「サービス業」と現在の欄を直接つなぐと誤る
産業分類は途中で改定され、情報通信や医療・福祉などの区分も変わっている。1995年の旧分類にある「サービス業」と、2025年の「サービス業(他に分類されないもの)」の数値を並べても、同じ範囲の増減にはならない。
統計局は分類別に利用可能な時系列を案内し、2002〜2006年の一部遡及推計値には数万人程度の推計誤差があり得ると説明している。細かな業種ほど、名称だけでなく分類の対応関係を確認する必要がある。産業分類別の結果について
このため、30年比較では製造業と産業全体の大きな変化を押さえ、増えたサービス分野の具体像は、より比較しやすい直近10年で見る。
直近10年の主役は医療・福祉と情報通信――製造業はほぼ横ばい
2015〜2025年では、製造業の減少よりも、サービス分野の中で増加幅が分かれたことが目立つ。
| 産業 | 2015年 | 2025年 | 10年間の増減 |
|---|---|---|---|
| 製造業 | 1,039万人 | 1,033万人 | 6万人減 |
| 医療、福祉 | 788万人 | 947万人 | 159万人増 |
| 情報通信業 | 210万人 | 302万人 | 92万人増 |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 215万人 | 270万人 | 55万人増 |
| 教育、学習支援業 | 304万人 | 356万人 | 52万人増 |
| 卸売業、小売業 | 1,058万人 | 1,029万人 | 29万人減 |
出典:総務省統計局「2025年平均結果の概要」表Ⅰ-8。全国、男女計、年平均、単位は万人。増減は筆者計算。
医療・福祉は人数、情報通信は伸び率が大きい
医療・福祉は159万人、約20.2%増えた。2025年には製造業との差が86万人まで縮まっている。病院や福祉施設など、生活を支える分野が大きな就業先になっていることが分かる。
情報通信業は92万人増で、人数の増加幅は医療・福祉より小さい。しかし、2015年の規模を分母にした伸び率は約43.8%だ。増加人数と増加率では、目立つ産業が異なる。
専門・技術サービスや教育・学習支援も増えている。サービス化は飲食店や接客業の拡大だけを意味しない。医療、情報、専門知識を提供する仕事も含む変化である。
小売が減ったことは、サービス化への反証になるか
卸売・小売は29万人、約2.7%減った。これは「第三次産業ならどの業種も増える」という説明への反証になるが、第三次産業全体の比重が高まったこととは両立する。
大きな分類の中には、増える業種と減る業種がある。サービス分野をまとめた数字だけでは、買い物を支える仕事と、医療や情報を支える仕事の違いが隠れてしまう。
製造業の減少は30年間ずっと同じ速度ではない
製造業の就業者数は、1995年の1,456万人から2015年の1,039万人へ417万人減り、その後の10年は6万人減にとどまった。
分類改定の影響に注意は必要だが、30年間の減少の大半が、比較上は2015年までの期間に現れている。過去30年の減少率を、そのまま次の10年へ延ばす根拠はない。
なお、2015年と2025年の両端が近くても、途中の毎年が横ばいだったわけではない。長期の構成変化と、短期の景気による増減は分けて見る必要がある。
人数の変化は、転職の流れや産業の強さを直接示さない
産業別就業者数は「どこで何人が働いているか」を示すが、「誰がどこから移ったか」までは示さない。
製造業が423万人減り、別の分野が増えたとしても、その全員が産業間で転職したとは限らない。退職、新卒者の就職、非就業者の就業開始などでも人数は変わる。個人の移動を確かめるには、前職と現職を結びつけた転職関連の統計が必要だ。
背景を考える際も、説明候補と確認済みの事実を分けたい。
- 医療・福祉の増加:高齢化に伴う需要やサービス提供体制の変化は説明候補になる。ただし、この人数表だけでは要因ごとの寄与を測れない。
- 情報通信の増加:企業や生活でのデジタル利用拡大と整合的だが、それが92万人増のどれだけを説明するかは別の分析が必要。
- 製造業の減少:省力化、海外生産、業務の外部委託などが候補になる。就業者数だけで、いずれか一つを主因と断定できない。
外部委託では、同じ仕事でも産業の計上先が変わり得る
例えば、製造企業が社内で行っていた情報システム業務を外部の情報通信企業へ委託すれば、機能としては製造を支える仕事でも、就業者の産業分類は変わり得る。これは分類上の仕組みを説明する例であり、今回の増減のうち何万人が外部委託によるものかを示すものではない。
そのため、就業先のサービス化と、製造に関わる仕事そのものの縮小は一致するとは限らない。
人数が減っても、生産額が同じ割合で減るとは限らない
機械や設備によって1人当たりの生産量が増えれば、働く人数と生産量は違う動きをする。逆に、サービス分野で人数が増えても、労働時間が短い人の増加なら、延べ労働時間の伸びは小さくなる。
産業の経済的な大きさを判断するには、就業者数に加えて、生産額や付加価値、労働時間を確認したい。賃金や雇用の安定性も、この表からは判断できない。
読み違いを防ぐには、分類・時間・地域の三つを確認する
全国の人数だけで、仕事の中身や地元の雇用環境まで決めつけないことが大切だ。
分類と推計値の更新をそろえる
1995年は旧産業分類、2025年はその後の改定を経た分類である。製造業という大分類の長期変化を読む場合でも、完全に同じ範囲を固定した比較ではないことを残しておく必要がある。
また、労働力調査は国勢調査を基準とする人口の切替えなどで過去値が改定される。統計局は、時系列比較には最新の時系列接続用数値を優先するよう案内している。古い報告書と最新表の同じ年の数字が違っていたら、まず改定の有無を確認したい。労働力調査の主な結果・利用案内
人数と労働時間を分ける
就業者数では、短時間勤務の人も長時間勤務の人も1人として数える。サービス分野が何人増えたかは分かっても、提供できる業務量が同じ割合で増えたとは限らない。
病院、介護施設、店舗などの人手を考えるなら、人数に加えて労働時間や職種構成が必要になる。人数の増加だけを根拠に、人手不足が解消したとも判断できない。
全国の傾向を地域や個人に当てはめない
全国で製造業の割合が下がっても、製造業が重要な就業先である地域の役割まで小さくなったとは限らない。地域差を調べるなら、国勢調査などの地域別データで、同じ年・同じ定義の構成比を比較する必要がある。
その際には、住んでいる地域で数える「常住地」と、働いている地域で数える「従業地」も区別したい。通勤が多い地域では、住民の就業先と地域内にある仕事の数が異なるからだ。
次に見るべきは「サービス全体」ではなく、増えた分野の働き方
今回の数字が示すのは、製造業の長期的な比重低下と、サービス分野の中でも異なる増減である。
2025年の製造業にはなお1,033万人が働いている。一方、2015年以降は医療・福祉や情報通信の増加が目立ち、卸売・小売は減った。「サービス化」という一語だけでは、この違いを説明できない。
生活や地域の仕事を見るときは、次の組合せで確かめると変化を捉えやすい。
- 就業先の広がり:人数と、就業者全体に占める割合
- 働き方の変化:人数と、労働時間・雇用形態
- 地域での仕事の役割:全国の傾向と、地域別・従業地別の構成
医療・福祉で159万人、情報通信で92万人増えた直近10年。その増加がどの職種に集中し、どれだけの労働時間を支えたのかが、次に確かめるべき点になる。
