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私立在学率は上昇、でも人数は横ばい?小中高10年のデータで読む学校選択

小中高の児童生徒が公立と私立の学校へ分かれて進む様子。

私立在学率は上昇、でも人数は横ばい?小中高10年のデータで読む学校選択

私立学校に通う子どもの割合は、小学校・中学校・高校のすべてで上昇しています。ただし、私立の児童・生徒そのものが一様に増えたわけではありません。

文部科学省の2025年度「学校基本調査」を2016年度と比べると、私立在学率は小学校が1.2%から1.4%、中学校が7.1%から8.0%、高校が31.7%から34.7%へ上昇しました。一方、私立の在学者数は中学校を除いて減少しています。

この記事で分かること

  • 2025年度の私立在学率は小学校1.4%、中学校8.0%、高校34.7%
  • 2016年度からの上昇幅は高校が最大の3.0ポイント
  • 在学率上昇の主因は、私立人数の急増よりも児童・生徒総数の減少
  • 私立中学校の割合は東京都26.7%、高知県18.6%など地域差が大きい
目次

使用データと比較条件

比較の軸は、同じ学校種の全在学者に占める私立在学者の割合です。

主に使用するのは、文部科学省が毎年5月1日現在で実施する学校基本調査です。最新値は2025年度の確定値で、2016年度から10年分の推移を確認します。

この記事でいう「私立在学率」は、次の式で計算された割合です。

私立在学率 = 私立の児童・生徒数 ÷ 国立・公立・私立の児童・生徒総数 × 100

比較対象は次の3区分です。

  • 小学校
  • 中学校
  • 高等学校の全日制・定時制課程(専攻科・別科を含む)

義務教育学校、中等教育学校、高校通信制は、学校制度や集計区分が異なるため主要比較から外しました。特に通信制高校は私立比率が高く、2025年度は79.7%です。これを全日制・定時制と混ぜると、高校段階の変化を読み違えるおそれがあります。

2025年度は小学校1.4%、中学校8.0%、高校34.7%

私立を選ぶ割合は、学校段階が上がるほど大きくなります。

2025年度の児童・生徒数を国公私立の合計と私立に分けると、次のようになります。

学校段階在学者総数私立在学者数私立在学率
小学校5,812,375人79,333人1.4%
中学校3,105,297人249,161人8.0%
高校(全日制・定時制)2,873,619人997,917人34.7%

小学校では、私立に通う児童は約71人に1人です。中学校では約12人に1人、高校では約3人に1人まで比率が上がります。

この差は、単に年齢が上がるほど私立志向が強くなるという話ではありません。高校は義務教育ではなく、地域によって公立の募集枠や私立校の配置が異なります。公立と私立を組み合わせて進学先を確保する地域の高校教育構造も、約3分の1という数字に含まれています。

10年間で割合は上昇、人数の動きは学校段階で違う

2016年度から2025年度まで、私立在学率は3段階すべてで上がりました。

学校段階2016年度2025年度変化
小学校1.2%1.4%+0.2ポイント
中学校7.1%8.0%+0.9ポイント
高校(全日制・定時制)31.7%34.7%+3.0ポイント

上昇幅だけを見れば、高校が最も大きくなっています。しかし、割合と実数を分けると別の姿が見えます。

小学校:私立児童数はほぼ横ばい

小学校全体の児童数は、2016年度の648万3,515人から2025年度の581万2,375人へ、67万1,140人減りました。減少率は10.4%です。

同じ期間の私立児童数は7万7,187人から7万9,333人へ2,146人増え、2.8%の増加でした。ただし、2023年度の8万57人を頂点に、2024年度、2025年度は減少しています。

したがって、小学校の私立在学率上昇は「私立小学校の児童が増え続けている」と表現するより、全体が縮小するなかで私立の規模が比較的維持されたと読む方が正確です。

中学校:3段階で唯一、私立人数も増加

中学校全体は340万6,029人から310万5,297人へ30万732人減りました。減少率は8.8%です。

一方、私立中学校の生徒数は24万1,545人から24万9,161人へ7,616人増えました。増加率は3.2%です。2020年度以降は毎年度増加し、2025年度にこの10年間で最多となりました。

中学校では分母の縮小だけでなく、私立在学者の実数増加も比率を押し上げています。小中高を比べたとき、「私立を選ぶ子どもが実数でも増えている」と最も明確に言えるのは中学校です。

高校:私立は減ったが、公立はさらに大きく減少

高校全体は330万9,342人から287万3,619人へ43万5,723人減り、減少率は13.2%でした。

私立高校の生徒数も104万7,770人から99万7,917人へ4万9,853人減っています。ところが、公立は225万2,942人から186万7,684人へ38万5,258人減少しました。私立より公立の減少率が大きいため、私立在学率は31.7%から34.7%へ上がったのです。

ここがポイント: 私立在学率の上昇は、私立在学者数の増加と同じ意味ではありません。小学校はほぼ横ばい、高校は実数減、中学校だけが実数でも増えています。

地域差は中学校で特に大きい

全国平均8.0%だけでは、地域ごとの学校選択を十分に表せません。

2025年度の都道府県別データでは、私立中学校に通う割合の上位は次の通りです。

  • 東京都:26.7%
  • 高知県:18.6%
  • 京都府:14.4%
  • 奈良県:13.2%
  • 神奈川県:11.5%
  • 大阪府:10.5%

東京都では4人に1人を超える一方、全国平均は12人に1人程度です。大都市圏には私立校が多く、鉄道などで自治体境界を越えて通えるため、選択肢が広がりやすい面があります。

ただし、高知県が東京都に次ぐ18.6%であることから、私立中学在学率を「大都市ほど高い」という一つの要因だけでは説明できません。学校数、定員、中高一貫校の配置、公立校との役割分担など、地域固有の教育環境も確認する必要があります。

高校でも差は大きく、2025年度の私立割合は東京都59.6%、京都府48.3%、大阪府46.8%でした。その一方で徳島県は4.1%、沖縄県は7.4%です。全国平均34.7%は、すべての地域で私立が約3分の1を担っているという意味ではありません。

家計負担を見ると「割合」だけでは語れない

私立を選べるかどうかには、学校の分布だけでなく家計負担も関わります。

文部科学省の2023年度「子供の学習費調査」によると、保護者が1年間に支出した子ども1人当たりの学習費総額は次の通りです。学校教育費だけでなく、給食費や塾・習い事などの学校外活動費も含みます。

学校段階公立私立私立/公立
小学校366,599円1,741,516円4.8倍
中学校542,450円1,560,359円2.9倍
高校(全日制)596,954円1,179,261円2.0倍

私立小学校の在学率が1.4%にとどまる背景を、この費用差だけで断定することはできません。それでも、公私の選択を考える家庭にとって、年額で約137万円ある学習費総額の差は無視できない条件です。

なお、この金額は授業料だけではありません。学校外活動費を含む平均値であり、全家庭が同額を支払うわけでもありません。所得支援や授業料軽減制度の効果を検討する場合は、制度適用後の実負担を別に見る必要があります。

私立在学率上昇の背景をどう読むか

数字が直接示すのは在学者数の変化までで、選択理由や因果関係までは示しません。

データから確実に確認できるのは、次の3点です。

  • 少子化により、小中高すべてで在学者総数が減っている
  • 私立の減少率は、全体または公立より小さい
  • 中学校では、私立生徒数そのものも2016年度を上回った

その背景として考えられる要素には、中高一貫教育への需要、大学付属校や特色ある教育課程、通学圏の広がり、所得や教育費支援制度の変化があります。ただし、学校基本調査には家庭が私立を選んだ理由が収録されていません。

また、私立校が身近にない地域では、希望があっても選択肢になりません。したがって、在学率は家庭の志向だけでなく、学校供給と交通条件を合わせた結果です。

数字を読むときの注意点

学校種、課程、地域の範囲をそろえない比較は避ける必要があります。

中高一貫校の一部は別区分

中等教育学校は、中学校と高校とは別に集計されています。2025年度の中等教育学校は3万4,914人で、私立は8,260人、私立割合は23.7%でした。本記事の中学校8.0%、高校34.7%には含めていません。

高校通信制は別に見る

通信制高校は2025年度に30万5,197人が在籍し、私立は24万3,189人、私立割合は79.7%です。2016年度の私立通信制は11万8,248人、割合は65.3%だったため、全日制・定時制とは異なる増加傾向にあります。

「高校生全体の私立割合」を論じるなら通信制も考慮すべきですが、課程をまたいだ単純合算では在籍者の範囲や学校の数え方を慎重にそろえる必要があります。

国際比較には同じ指標をそのまま使えない

各国では義務教育の範囲、私立校への公費負担、宗教系学校の位置づけ、学校段階の区切りが異なります。日本の「私立在学率」を海外のprivate institution比率と並べても、家計負担や学校選択の意味が同じとは限りません。

国際差を読む場合は、在学率だけでなく、政府依存私立校と独立私立校の区別、公費負担、授業料制度をそろえる必要があります。

学習費は調査年が異なる

在学率は2025年度、学習費は2023年度のデータです。子供の学習費調査は標本調査で、2023年度分は2026年1月に数値が訂正されています。本記事では訂正後の値を使用しました。

次に見るべきは「比率」より選択可能性

私立在学率は上がっていますが、全国で私立志向が一様に強まったとは結論づけられません。

今後は、次の点を分けて追う必要があります。

  • 私立中学校の生徒数が2026年度以降も増えるか
  • 私立小学校の児童数が2023年度のピークを再び超えるか
  • 高校の公私別減少率が、授業料支援の拡大後にどう変わるか
  • 通信制高校の増加が高校全体の公私構成をどう変えるか
  • 都道府県別の差が学校配置、通学圏、家計負担とどう結びつくか

家庭にとって重要なのは、全国平均の順位ではなく、居住地域から通える学校が何校あり、制度適用後にいくら負担するかです。次の学校基本調査では、私立比率だけでなく私立の実人数と地域別の選択肢が維持されているかを確認する必要があります。

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